11月15日に開催された「オウンドメディアカンファレンス 2023」のショーケースのレポートをお届けします。
多くの企業が広告・広報の柱として据えるようになったオウンドメディア。大規模な投資をしなくとも、SNSアカウント1つから始められる手軽さが強みです。一方で、運営を1人で、どう進めていいか分からず悩む担当者も少なくないのではないでしょうか。今回のオウンドメディアカンファレンスはInstagram、TikTok、LINE、noteというSNS・プラットフォームの各担当者が登壇。企業はオウンドメディアとしてSNSをどう活用しているのか、データや成功例をもとに語ってもらいました。
※当日の様子はアーカイブ動画をご覧ください。本記事はイベント概要となります。
「好き」と「欲しい」をつなぐInstagram
Instagram担当者として登壇したのはFacebook Japan合同会社でマーケティングサイエンスリードを務める倉迫有沙さんです。倉迫さんは、まず企業が顧客とコミュニケーションを取る上での課題を3つ挙げます。
1つ目は「デジタルKPIへの疑問」、2つ目に「影響力の低下」、3つ目が「ファネルの分断」です。
3つ目の「ファネルの分解」に関して、説明を加えます。「ファネル」とは漏斗を示す言葉で、見込み顧客が成約に至るまでの購買プロセスを指します。ここではファネルを3つの層「アッパーファネル(初期・認知段階)」「ミドルファネル(検討段階)」「ローワーファネル(最終・購買促進段階)」に区別します。
倉迫さんは「アッパーファネル」と「ローワーファネル」に関しては、比較的社内で盛んに議論が行われているケースが多いといいます。
一方、これらの中間に当たる「ミドルファネル」は最も攻略が進んでおらず、コミュニケーション施策を打つのが難しいステージとされています。
そんな中、Instagramはこの「ミドルファネル」段階への訴求がしやすいSNSだと述べる倉迫さん。Instagramは、まずブランドと顧客間のコミュニケーションを通じて関係を構築することで、ブランドに対する「自分ごと化(自分に合ったブランドと思うか)」を促進させる効果があります。その結果、中長期的にもブランドへの好意度が上がりエクイティ(無形の資産)が蓄積され、消費者の購入促進へと促すのです。
Instagramはミドルファネルアプローチに価値共創マーケティングを提唱。ブランドだけでなく、ブランドのファンやクリエイターと一緒にブランドの価値を深めるとしています。
成功例として挙げたのが、花王ビオレUV様の施策です。UGC(ユーザー生成コンテンツ)の中から、特にエンゲージメントの高い投稿内容やフォーマットを分析し、クリエイターとのタイアップ投稿の見せ方を提案(動画で商品の利用シーンをうつす)。そしてクリエイターの投稿をパートナーシップ広告化することで、クリエイターごとの様々な利用シーンが生まれ、顧客が多様なユースケースを見ることができました。結果的にこれらが購入促進につながり、実購買リフトがアジア太平洋地域の平均19倍に。またキャンペーン期間中の商品名会話量(UGC投稿/コメント)もパートナーシップ広告接触により、非接触と比較して3.9倍増加しています。
「アッパーファネル」に向けて認知などを助成するにはブランド動画/静止画のクリエイティブでも効果的ですが、「ミドルファネル」へはインタラクティブ(双方向)な仕掛けを推奨しています。花王ビオレUV様であったようにクリエイターとのタイアップやARフィルターなどを活用することで、顧客の自分ごと化が促進しやすくなります。さらに縦長動画であるとCPA(顧客獲得単価)が48%改善し、音ありだと好意的反応スコアが15%上昇することも分析から明らかになっているため、リールズで配信するとより良い成果が期待できるでしょう。
「次に好きなもの」との出会いの場、TikTok
次に登壇したのはTikTok for Businessマネージャーの小林誉
さん。オウンドメディアにTikTokを活用したマーケティングについて語ってもらいました。
まず注目するのは、TikTokでバズったものが売れる「TikTok売れ」という現象についてです。この現象は、世の中に浸透していなかったものがTikTokの動画やコミュニティを通じて拡散し、一気に消費者の利用が広がるものとされています。
小林さんはTikTok売れを「次の好きなものとの出会い」と定義します。従来のメディアが「消費者がいま、好きなもの」を見つけるためにあるとすれば、TikTokは「次に好きになるもの」を探しにいける、いわば潜在的需要を喚起する場だというのです。
実際、TikTokユーザーの3人に1人が「TikTokをきっかけに商品やサービスを購入した経験がある」という調査結果も出ました。特に「日常Vlog」「How To動画」といった商品の特徴をリアルに紹介する動画は、消費者の購買行動につながりやすいといいます。気になった商品を見つけたユーザーは、動画を視聴した後にコメント欄などで追加情報を探す傾向も顕著に出ました。
実際にTikTok売れをしたケースの1つが、2月に実施したMizkan様のレシピ紹介動画です。動画を公開した結果、業界平均と比べてMizkan様公式TikTokアカウントのフォロー率は6.2倍になり、1フォロワーにかかるフォロー単価も−85%となりました。少人数のチームによる施策でしたが、TikTokがユーザーとブランドとの間にコミュニケーションを築く場として有効に機能した好例でしょう。
一方で、なぜこのレシピ紹介動画がTikTok売れにつながったのでしょうか?実際にユーザーとのコミュニティ形成を上手く行っていくポイントは4つあるといいます。
まずレシピ紹介動画では、油でポテトが揚がる様子など、食欲に訴えかける描写を冒頭で展開。キャッチーなタイトルも添えました。
次に目が肥えているTikTokユーザーの興味を引く工夫です。はかりで食材を量るような工程は全て省き、調理風景はできるだけシンプルにしました。これは「簡単に作れそう」とユーザーに思わせるのが狙いです。
そしてコメント欄を開放し、ブランド自らユーザーに語りかけたり、コメントに反応したりする工夫もしました。もらったコメントの内容が次のコンテンツのネタに生かせるほか、ブランド側からの返信に喜んでくれたユーザーの「ファン化」も見込めます。何よりコメント欄によってユーザーのオウンドメディア内での導線を確保し、コミュニティを広げた事例だといいます。
※さらに詳細を知りたい方は、「動画を見る」をクリック。アーカイブ動画をご視聴できます。
LINEヤフー、新たな巨大プラットフォームの展望
10月に法人統合で誕生したLINEヤフー株式会社から登壇したのは、ビジネスインキュベーション部・部長の佐藤将輝さん。LINEの法人向けサービス「LINE公式アカウント」を中心に、新会社の擁する巨大プラットフォームの展望を語りました。
LINEとヤフーのユーザー数は延べ計1億人超。(LINE:日本の月間アクティブユーザー数、ヤフー: 月間ログインユーザーID数 どちらも2023年6月末時点)統合の結果、ディスプレイ広告(ウェブサイトやアプリに表示される広告)やコマース広告(クリックのたびに課金される運用広告)など、法人のマーケティングを総合的に支援する体制に移行しました。
現在あらゆる法人の課題はビジネス、エンタメ、飲食など、事業領域ごとに異なっています。そんな中同社が新たに掲げるのが、LINE公式アカウントを中心に据えた「Connect One構想」です。Connect One構想では、まずユーザーと企業や店舗が運営するLINE公式アカウントと、「友だち」の関係になってもらいます。こうしてつながった多くのユーザーに対し、企業は広告宣伝や集客・販売といったコンテンツを届けることで、プラットフォームにおけるLTV(顧客生涯価値。顧客が取引終了まで自社に貢献する利益のこと)の最大化を目指します。
今やLINE公式アカウントは44万超の企業・店舗が活用しており、配信の開封率も高水準で推移。(※認証済アカウントのアクティブアカウント数 2023年8月末時点)これらに加えて店舗やECサイトをはじめとした体験の場、サービスや商品を予約・購入(=行動)するプラットフォームとしてのLINEアプリ、そこでユーザー許諾の上取得した消費者データの分析・活用。このようなマーケティングの大きな流れを一気通貫して行えるのがLINEヤフーの強みだと、佐藤さんは強調します。
LINEとヤフーの統合により、両社の持つ広告メディアを横断する形で、ユーザーに幅広く情報を届けられるようになりました。今後はヤフーのディスプレイ広告、LINEのTalk Head View(トークリスト最上部に動画や静止画を配信する広告)など両社の広告プラットフォームをいち早く統合していくことで、各メディアでバラバラになりがちだったユーザーの「解像度」を飛躍的に上げていきます。
企業への「共感」を創り出すnoteの戦略
最後に登壇したのはnoteの半田美幸さん。note pro事業部長の立場から、企業への「共感」を生み出すオウンドメディア戦略について語りました。
多くのモノやサービスがあふれる現代で、多くの企業が情報発信に余念がありません。各社による消費者の可処分時間の争奪戦が起きていると言えます。そんな中、企業が消費者に「指名」してもらうためには「共感を生み出し、コアなファンを増やす」ことが重要。肩肘を張った表向きの情報より、企業の意思や想いを等身大で伝える姿勢こそが共感を得やすいと述べます。
「うちには特徴がない」という企業の担当者もいますが、人の集まりである会社には従業員の数だけストーリーがあります。自社のサービスに込められた想い、現場からの声など実はストーリーとして活用できる話題は社内に多く存在し、それらをぜひコンテンツにして発信してほしいと半田さんは考えます。
次に、情報発信は誰に向けてすべきでしょうか。note proではまずコアファンへの情報発信を勧めています。半田さんは「上位20%のコアファンが売り上げの80%をつくる」という「パレートの法則」を参考に、既に企業やそのサービスに愛着、信頼を感じているファンに向けて発信し、共感の輪を同心円状に広げていくのが理想的なコミュニケーションだと伝えました。
プラットフォームとしてのnoteの強みは「広告がなくストーリーを伝えやすい」「個人視点でフラットに発信できる」「コンテンツをストックしやすい」などが挙げられます。総じてnoteは双方向的なコミュニケーションの場に向いていると言えるでしょう。さらにnoteでの発信だけでなく、他プラットフォームやSNSと連携することで、より多様な顧客との関係を築くことが可能です。
現在、約3万件の企業がnoteを利用しています。主な活用法は「BtoC(一般消費者)向けブランディング」「BtoB(事業者)向けブランディング」「採用広報」の3種類です。
企業への共感を生むnoteの活用例として挙げたのがカルビー株式会社様(以下、カルビー)の取り組みです。もともとカルビーの情報発信は商品PRがメインでしたが、より企業に親近感を持ってもらうために開発者の意図やこだわりなどを消費者に伝えるようにしました。「堅あげポテトの開発秘話」などがその好例です。半田さんもコンビニやスーパーでこの商品を見るたびに、noteのストーリーを思い出すとか。コンテンツを通じて商品や企業への愛着を沸かせることで、読者にファンになってもらえる良質な施策と言えます。
まとめ
BtoC、BtoBを問わず、今や企業の広報活動においてSNS・プラットフォームの活用は欠かせない取り組みと言えます。一方で情報発信の方法が増えすぎたことで、どれが自社にとって最適な手段なのか、迷っている方々もいるでしょう。note proでは今後も、そんな方々にとって手助けとなるような情報や事例を継続して発信していきます。
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