デジタルマーケティングのキーパーソンは誰?
連載「やってはいけないWeb集客 6つの罠」では、これまで6回にわたって、実はやっても効果があがらない、むしろ逆効果なWeb集客とその対策について解説してきました。今回は番外編として、「デジタルマーケティングのキーパーソンの活用」について紹介します。
デジタルマーケティングチームの立上げ時は、「社内にチームを立ち上げて取り組んではきたものの、ブログもSNSも反応がいまいち……」「だけど、どこを改善したらいいかわからない……」という担当者が多いようです。そしてしばらくすると、今度は「もっとフォロワー数を拡大したい」「反応率を上げたい」というお悩みが出てくるもの。
しかし、社内にあるマンパワーやスキルだけでは、なかなか解決しないことが多いようです。そこで私がおすすめしたいのが「キーパーソン」の活用です。ではどんなキーパーソンが必要なのか、活用したことで得られるメリットは何なのか。今回は、そこのところをお伝えしていきたいと思います。
自社だけだと限界が……チームに必要なキーパーソン6種
SNSやブログ、オウンドメディア、広告の運用といったデジタルマーケティングの施策について、社内の何名かでチームを編成して取り組んでいる企業が多いことでしょう。すべて自社で完結できれば、情報共有がスムーズですしコストも抑えられるため、一見ベストの方法に感じます。しかし実は、それが原因で思うように結果が出せず、「なぜうまくいかないの?」と悩んでいる企業も少なくないのです。
そんなとき考えたいのは、専門家の力を借りること。たとえば、以下のような専門家たちは、デジタルマーケティングで良い結果へと導いてくれるキーパーソンとなる可能性が高いです。
- Webプロデューサー
- Webディレクター
- Webエンジニア、Webデザイナー、Webライター
- Webマーケター(広告代理店)
- SNS専門家
- Webコンサルタント
6種類並べましたが、WebプロデューサーとWebディレクターに関しては、その名はついてなくとも、すでに社内チームに存在しているかもしれません。たとえば、予算の調整や施策の企画を担う方は「プロデューサー」的な役割を果たしていますし、コンテンツ制作や外注を取り仕切る方は「ディレクター」と捉えて相違ないでしょう。
Webエンジニア、Webデザイナー、Webライターも、Web施策には必要な役割ですから、社内もしくは外注で確保している企業が多いのではないかと思います。
それを踏まえると、多くの企業のデジタルマーケティングチームに配置されていない専門家は、Webマーケター、SNS専門家、Webコンサルタントの3つとなります。みなさんのチームではいかがでしょうか?
役割を兼任する弊害
では、実際にこうした専門家がいないチームではどんなことが起こるのでしょうか?
たとえば、ディレクターが広告やメルマガの運用もする、プロデューサーがSNSの分析もする、のように役割の兼任がよくみられます。するとどうしても自分の本来の業務の片手間となり、どちらも中途半端になってしまうことがあります。Google、Yahoo、Facebookなどの広告は、低価格で簡単に出せることを売りにしてはいますが、実際にやってみると細かな設定などが多く、片手間でやるのは正直大変です。
それだけでなく、さまざまなSNS媒体やアクセスを分析するためのツールなどを使いこなせない、といった問題も起こるでしょう。こうしたツール類は、設定を1個間違っただけで「届けたいターゲットに広告が配信されない」といった、目的どおりの使い方ができない場合があります。感覚的に操作してしまうことで失敗するケースも多々あるのです。
また、何か問題が起こったときの対処ができない、ということもあげられます。たとえばGoogleは1年に複数回アルゴリズムが変わります。しかも事前告知されるわけではないので、「今まで検索結果ページで上位表示されていたのに、いきなり順位が大幅に下がって表示されなくなる」なんてこともあります。
普段からアルゴリズムの動向などを注視していれば、原因の見当がつくかもしれませんが、兼任担当者だとそこまで手が回らないのが現状です。なぜ表示されなくなったのか、どうすれば改善できるのか、原因と対策の究明に時間がかかってしまうのです。
自社だけでデジタルマーケティングに取り組むと、このようにどうしても“素人が手探りでやる”部分が出てきてしまいます。取り組んでいくうちにスキルが身に付く場合もあると思いますが、非効率といわざるを得ません。
専門家活用のメリット
その点、専門家はその道のプロです。知識や経験値が豊富なことはもちろん、SNSや検索エンジンの動向、他社がどんな施策をしているか、どんな投稿がバズっているのかといったトレンドなども把握しています。そのため、より効果的な施策の提案やスムーズなトラブルシューティングが可能なのです。
社内チームだけでは足りない知識やスキルなどを補い、「たくさんの人に認知を広げる」「お問合せを増やす」といったWeb施策の目標に、より早く効率的に辿り着く。専門家の力を借りるメリットは、そこにあります。
「でも、専門家を何人も入れたらコストが増えるよな……」と懸念される方もいらっしゃることでしょう。その場合、Web施策を総合的に見たアドバイスがもらえる「Webコンサルタント」に頼るのも一案です。
停滞期をどれだけ耐えられるかが鍵! Webコンサルタントで成功した好事例
ここからは、私が実際に経験した「Webコンサルタントが入ったことで事業に良い変化をもたらした事例」を紹介します。
停滞期を超えて、問い合わせ月30件以上に!
問い合わせを増やす目的で、オウンドメディアを制作したA社。しかしなかなか訪問されず結果に結びつきません。「効果がない」と施策を縮小しかけたとき、Webコンサルタントがお手伝いすることになりました。
検索キーワードをきちんと決め、SEO記事などコンテンツをコツコツ作ること8カ月。だんだん検索される数が増え、問い合わせもポツポツくるように。10カ月を超えると、検索結果が1ページ目に表示され、問い合わせは1日1〜2件、月30件以上くるようになり、成約数も増加しました。
結果が出始めるまでの8〜10カ月間は、いわば“停滞期”。ここを乗り越えれば一気に反応が増える場合が多いのですが、その知識がないために施策をあきらめてしまう企業も少なくありません。上記は、Webコンサルタントの存在でそうした危機を回避でき、良い結果につながった事例です。
SNSの分析でアカウントが活発に!
顧客増加を目的にFacebookを毎日更新していたB社。実例や社員の紹介、購入者の声などさまざまな投稿をしても、うんともすんとも反応がない。そんな状況が3カ月以上続き、Webコンサルタントが入りました。
Facebookの投稿は、基本的には検索エンジンの結果には表示されません。そのため早く成果を出すには、コストはかかるものの広告を出してアピールする方が効果的です。またSNSに関しては投稿時間も非常に重要な要素で、何時ごろにどんな閲覧者が多いのかといった分析が成功の鍵となります。そうしたことを踏まえた施策を進めた結果、1年ほどで1投稿に50件以上の「いいね」がつくようになりました。
社内チームだけだとなかなか分析まで手が回らず、投稿はルーチンワークになりがち。Webコンサルタントという第三者からのアドバイスは、そうした定型業務を改善しやすくする一面もあります。
停滞期をいかに待てるかが、成功の分かれ道
では、Webコンサルタントを入れればすぐに効果が出るかというと、2つの事例からわかるように、効果を出すまでにある程度の時間が必要です。少なくとも、半年〜1年はかかると考えるのがよいでしょう。
たとえるなら「釣り」です。餌を入れてもすぐ釣れることはまずなく、時折、餌を変えてみたり、場所を変えてみたり……試行錯誤を繰り返しながら、じっくり成果を目指す。この停滞期をいかに待てるかが、成功の分かれ道であることはぜひ知っておいてください。
チームに入れるならこんな人! コンサルタント選び3つのポイント
「わが社のWeb周りの問題を解決するなら、Webコンサルタントに入ってもらえばいいのか!」と思った方もいらっしゃると思います。しかし、ちょっと待ってください。Webコンサルタントといってもいろいろな人がいます。やみくもにコンサルタントにお願いしても結果が出ずにお金をドブに捨てることにもなりかねません。そこで私の経験を含め、「コンサルタントを選ぶ際の抑えておきたい3つのポイント」を紹介します。
【ポイント1】肩書きよりも経験重視
最適な施策は、企業や目指すゴールなどによって十人十色。そのため、Webコンサルタントは資格や学歴、職歴などではなく、「どれだけ多くの業種やシチュエーションを経験してきたか」を重視したいものです。多様な経験があれば、トラブルなどイレギュラー事案の対処方法も数々もっているはずなので、柔軟に対応できるでしょう。
【ポイント2】失敗経験を踏まえて提案できる!
Webコンサルタントは、成功経験だけでなく失敗経験も重要です。なぜならWeb施策は、アルゴリズム変更をはじめ予期せぬ出来事で急に結果が出なくなることもしばしばあり、原因分析が要となるからです。
過去の自分の失敗経験を分析・整理し、企業の施策に落とし込んだ改善方法を提案できる。そんなコンサルタントは非常に頼りになります。コンサルタントを選ぶ際は、ぜひ「今まで失敗した事例を教えてもらえませんか?」と聞いてみてください。ネガティブな情報を包み隠さず答えてくれるかどうかも、人選のポイントになるでしょう。
【ポイント3】感性や価値観が合う
この点を見落としている企業が意外と多いのですが、コンサルタントと感性や価値観が合うことは、かなり大切なポイントです。仕事とはいえ、人と人。この部分が合わないと、コミュニケーションや信頼関係の構築がスムーズにいかないのです。コンサルティングというサービスは、「Webサイト制作」などのように形のあるものではありません。しかも、結果が出るまでに時間もかかります。
そのため、コンサルタントと会社側での意思疎通がうまくできていないと、「お金をかけているのに、なぜ効果が出ないの?」といった不満などが生まれやすくなります。施策で気になっていることは、いつでもざっくばらんに話せるコンサルタントが理想的です。そのためには、契約前に雑談を含めた対話を通して人となりを知ることが重要です。また、チームに迎えるなら、上記にあげたポイントのうち、少なくとも2つ以上のポイントをクリアするWebコンサルタントがおすすめです。
予算ありきで人選すると失敗する可能性が高いので避けましょう。たとえば、「300万円かけて100件の問い合わせが見込めるコンサルタント」と「3万円かけて1件の問い合わせが見込めるコンサルタント」がいた場合、つい後者を選びたくなってしまいますよね。ですが、お伝えしてきたようにWebコンサルティングに即効性はないので、3万円で必ず1件取れるわけでもありません。
また、小さな施策をちょこちょこ打つのは、熱々のフライパンに1滴ずつ水を垂らすようなもの。すぐにジュッと蒸発してしまいゼロの状態に戻ってしまうため、効果はイマイチです。それならば、1滴たらすのを10回分我慢して一気に入れてあげた方が、多少は水(結果)が残ります。
たまに1滴でも偶然ヒットすることはありますが、望む成果を得るためには、やはりまとまった施策を打ち出すことが必要です。そのためにはある程度のコストがかかると考えてもらえればと思います。
コンサルタントからの卒業時期は?
デジタルマーケティングを成功に導くキーパーソンについて、ご理解いただけましたでしょうか?
Webコンサルタントとして活動する私個人の考えとしては、Web施策のノウハウを企業に浸透させた後、将来的には自分の席を社内チームの担当者の方へ引き継ぐことも自らの務めだと思っています。冒頭の話と少し矛盾しますが、専門家は必要であるものの長く使うものではありません。自社で広告やSNS運用、コンサルティングまで完結できた方が、効率的にもコスト的にもそれに越したことはないからです。
ぜひ専門家を導入した際は、「将来、自分たちがこの仕事を担うのだ」と考えながら、知識やスキルを学び取り、吸収する意識を忘れないでください。「検索順位が急激に落ちた」「いろいろな施策をしても全く反応がない」といったピンチのときの原因究明や対処法を自分たちでジャッジできるようになった時、それがコンサルタントから卒業する1つのバロメーターになるはずです。できれば、社内チームのみに切り替えるタイミングはコンサルタントと相談しながら決めるとよいでしょう。
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