Googleマイビジネスは集客に効くのか? ユーザー行動を考えた施策で成果を出す
飲食店や施設選びをするとき、Googleマップや検索結果で表示されるクチコミ情報を参考にしている人も多いだろう。地図上や検索結果に表示されるお店の情報を、無料で管理編集できるツールが「Googleマイビジネス」だ。そのGoogleマイビジネスでユーザーに「行ってみたいお店」として選ばれるには、何が必要なのか。
「Web担当者Forumミーティング 2021 春」に登壇した、SEOとローカル検索のコンサルタントをしているiSchool合同会社代表の伊藤亜津佐氏が、ローカル検索の概念や仕組み、施策が及ぼす効果を解説した。
ナレッジパネルとローカルパック
ローカル検索を理解する
お店や施設に関するキーワードで検索した際に、検索結果の上部にナレッジパネルまたはローカルパックと呼ばれる情報の枠が表示されるのを見たことがあるだろう。これが、ローカル検索だ。
ローカル検索には、3つの特徴がある。
- お店選びに必要な情報がファーストビューに表示される
- 検索する場所と時間帯でローカルパックの検索結果が変わる
- 情報はGoogleのデータベースから読み出される
オーガニック検索の結果は、Webサイトのリンクのリストとして表示されるが、ローカル検索ではGoogleが提供する情報がそのまま表示される。その情報は、ビジネスリスティングというデータベースから読み出されていて、Google、店舗オーナー、ユーザーの三者によって情報が作られる。
Googleマイビジネスは、このビジネスリスティングの中のビジネスプロフィールというデータベースのダッシュボードを、オーナーに提供するサービスのことだ。情報の編集および追加と、検索数や閲覧数などのインサイト情報が閲覧可能になる。
Googleマップではユーザーも情報を登録できる点が他のサービスとの大きな違いだが、間違った情報が登録される可能性も出てくる。このため、オーナーはGoogleマイビジネスを利用して基本情報を優先的に登録できるようになっている。
検索結果は、以下のように見える。
指名検索した際に出てくる表示がナレッジパネルである。電話や経路案内のボタンがあるので、外出先で「電話番号を知りたい」「経路案内したい」「営業時間を知りたい」のような目的であれば、検索結果だけで目的は達成できる。
さらに下にスクロールするとメニューが固定され、検索結果がポータルサイトのようになる(図の中央上部)。その下に赤枠で囲んであるのは、店舗オーナーがGoogleマイビジネスから投稿した最新情報だ。さらに下にスクロールすると、図の右にあるようにグルメサイトのクチコミも検索結果に差し込まれる。
「業種名」や「業種名 地名」で検索した場合は、Googleがそのエリアでお勧めのお店を地図の下に2~3軒表示する。星やレビューを見ることができるので、ユーザーはそれを参考にお店を決め、タップすると詳細情報が表示される。
Googleがこのような検索結果を提供するようになった背景には、以下のようなユーザーの検索行動の変化があると伊藤氏は言う。
- モバイルの普及で現在地から今すぐ行動したいニーズが増えた
- 2015年以降Googleに掲載されるお店の情報量が飛躍的に増え、業種問わず検索できるようになった
ローカルSEOとは
お店を探すユーザーの検索体験を最大化すること
モバイルで検索するユーザーに対してお店の情報を的確に提供すれば、集客につながるはず。そのために必要なことは、「ユーザーがいる場所に情報を整備すること」だと、伊藤氏は言う。ユーザーはGoogleだけでお店を探すわけではなく、さまざまなWebサイトやSNSでお店と接触する。
ローカル検索の順位はGoogleマイビジネス以外の情報も考慮されるので、チャネルを分散して情報を出すことによって、ローカル検索に良い影響を与えることができる。また、検索アルゴリズムは突然変更されることがあり、検索順位が急に下がってしまう可能性もある。チャネルを分散してさまざまなプラットフォームに情報を出しておくことは、リスクヘッジにもなる。
インターネット上に情報を整備するステップは以下の3つだ。
- 基本的なお店の情報を整備
- お店の魅力を伝える情報発信
- ユーザーとのコミュニケーション
また、お店に行かなければわからないアナログな情報を、デジタル化することにも注意を向けなければいけない。
日替わりランチのメニューは、お店の黒板には書いてあるがインターネット上には載っていないケースがある。常連さんにとってはいいが、新規顧客にとっては不親切(伊藤氏)
ローカル検索で上位表示を目指すSEOは、ローカルSEOと呼ばれる。伊藤氏は「お店を探すユーザーの検索体験を最大化すること」と定義する。
上の図のようなサイクルを作ることが重要だが、ローカル検索は情報を表示するフォーマットが決まっているため、WebサイトのSEOのようにユーザー行動をふまえた理想的な情報構造やレイアウトなどはできない。Googleのヘルプページによれば、以下の3点で評価が決まるので、これに沿った施策を考える必要がある。
- 関連性(札幌ラーメンで検索すると、豚骨ラーメンの店は表示しない)
- 距離(駅前で検索すると、駅から遠い店は表示しにくい)
- 知名度(人気店や今話題の店は、優先的に表示する)
知名度は、「オンラインの知名度とオフラインの知名度を総合して評価している」と書かれているが、Googlebotはオンラインの情報しか収集できないため、知名度を測る手段もインターネット上にあるはずだ。
逆に、伊藤氏が「あまり意味がないこと」だと断ずるのは、順位が落ちたので回復するために「投稿」「写真」「クチコミ」を増やすという施策だ。
施策は、順位を上げることではなく、ユーザーに寄り添って顧客満足度を上げる視点で行う。数年前に低品質なコンテンツを量産するコンテンツSEOというものがあったが、その失敗を繰り返さないで(伊藤氏)
「関連性」強化でやるべき4つの施策
お店が選ばれるサイクルを作るための施策のひとつは、オンライン情報を整備して、関連性を強化すること。具体的には以下のように進める。
1. オンラインの情報を整備する
オンラインのさまざまなプラットフォームの情報を、鮮度を保って整備する。たとえば、ユーザーは以下のようなプラットフォームでお店と接触するので、できるだけ網羅して情報を整備する。
- Googleマイビジネス、Yahoo!プレイス
- ポータルサイト(情報・予約・クーポン・比較)
- お店のWebサイト
- SNS(Twitter、Instagram、Facebook)
- 地図アプリ(Appleマップ)
ただし、軸になるのはGoogleマイビジネスの情報整備だと伊藤氏は言う。なぜなら、魅力的なお店をSNSで見つければ、どんなお店なのか指名検索をするし、初めて行くお店ならば地図アプリでナビをすることが多い。Google公式の情報ではないが、モバイルにおけるGoogle検索のシェアは75%程度(Statcounter)、Googleマップアプリの月間利用者数はおよそ4700万人(ニールセン デジタル株式会社)といわれており、Googleのプラットフォームで検索するユーザーは多い。
2. NAPOの統一
複数チャネルで情報を出すとき、店舗名、住所、電話番号などの表記を統一する必要がある。さらに、コロナ禍においては営業時間が頻繁に変わるため、正しい営業時間の提供も重要になる。
- Name:店舗名・会社名
- Address:住所
- Phone:電話番号
- Operating hours:営業時間
3. お店の魅力を整理する
お店で体験できることをリストアップし、実際に検索して検索エンジンがどのような関連性を認識しているか確認する。
4. 検索結果を確認する
実際に検索してみると、ランキングがつかないキーワードが必ず出てくる。それに対して、お店の魅力や体験できることについての情報を追加していく。
このとき、検索する場所と時間帯に気をつけてください。『自分のお店の中』で、『競合のお店が閉まっている時間』に検索すれば、必ず自分のお店が上位に来るので、意味がありません(伊藤氏)
「知名度」強化でやるべき4つの施策
話題作りは、知名度を高めることにつながる。
1. ブランドシグナルを獲得
指名検索の獲得やサイテーション(リンクのない言及、クチコミ)によって、ブランドシグナルを獲得することで、Googleは知名度の評価を上げていく。といっても、何もないのに指名検索や言及が増えるはずはないため、良いサービスであることが前提だ。ただし、店舗名を覚えてもらえなければ指名検索されないので、その部分ではテクニックもある。
- 検索窓クリエイティブ付きの広告
- チラシ配布、屋外看板設置、テレビ番組で紹介
また、ツイートは鍵をかけていないかぎりGooglebotがクロール可能だが、Facebook/Instagramは基本的にGooglebotをブロックしている。このため、サイテーションにはTwitterの方がより効果的だ。
2. クチコミを書いてもらう導線の整備
お店選びにクチコミは欠かせないので、お店での体験が伝わるリアルな声を書いてもらうことが大切だ。一方、ユーザーにとって、クチコミを書くのはめんどうなことなので、簡単に書けるような導線を整備することが重要。たとえば、以下のような方法がある。
- QRコードを提供する
- ちょっとした待ち時間に書いてもらうようなオペレーションをする
- 「受けたサービスとその感想を書いてください」と具体的にお願いする
ただし、クチコミを集めるために、「見返りに特典を提供する行為」や「星5を付けてください」などと依頼することは、Googleマイビジネスのガイドライン違反となるので、注意が必要だ。
3. 被リンクを獲得
たとえば、市役所、商工会議所、商店街では、地域のお店を紹介するページをWebサイトに持っていることが多い。また、地元の新聞社、ポータルサイト、情報系のサイトなどで特集ページを作るときには、積極的に営業に行く。集客経路のひとつとして被リンクを獲得するもので、何でもいいからリンクを増やすという話ではない。
4. ユーザーと良好な関係性を構築
オウンドメディアを持っているなら、コンテンツを通じて話題作りができる。そこまでできない場合は、SNSやLINE、メルマガ、DMで顧客とつながることで、話題作りが可能。
改善には「インサイト」を確認。まず取り組みたい3つ
決まったフォーマットでしか表示されないローカル検索は、お店を探しているユーザーに、いかにスムーズに情報を伝達できるかがカギになる。そのためには、まずGoogleマイビジネスのインサイトで直接検索と間接検索の比率を確認し、それぞれに合った施策に取り組む。たとえば、以下のような施策が考えられる。
1. 直接検索が多い場合、投稿を使って最新情報を提供
直接検索の結果はポータル化していて、オーナーの投稿(図の赤枠の部分)が差し込まれる。ユーザーの目に触れる機会が多い部分なので、ここに情報を出す。
たとえば、キャンペーンがあると直接検索する新規ユーザーが増えるので、投稿機能でキャンペーンの情報を出す。逆に、リピーターの直接検索が多いなら、リピーター向けの特典やリピーターに刺さるコンテンツを出す。
2. 間接検索が多い場合、競合より魅力的に見えるように整備する
間接検索では、星やレビューがそのまま見える表示になる。選ばれるためには、近隣の同業店舗よりも魅力的に見えなければならない。また、飲食店の場合はサムネイルが表示されるので、適切な写真が表示されていることも重要だ。
適切な写真を届ける工夫:ブラウザではなくアプリを使う
Googleマイビジネスに写真をアップロードする際に、パソコンのブラウザではテキスト情報を入れられないが、モバイルでGoogleマイビジネスのアプリを使うとキャプションを入れることができる。ただし、入れたキャプションが必ず表示されるわけではないし、テキストを登録していなくてもGoogleが機械学習によって魅力的な画像を判断している。そのため魅力的な写真にキャプションを入れることを意識する。
「注目のメニュー」はAndroidのGoogleマップのアプリからのみ追加できる
飲食店の場合は、間接検索の結果に「注目のメニュー」が表示される。これは、AndroidのGoogleマップアプリにのみ追加ボタンがある。Googleが情報を管理しているので、料理名や写真を追加しても思い通りに表示されるわけではないが、ユーザーよりもオーナーからの投稿が優先される。活用したい飲食店の場合は、Android端末を用意するといいだろう。
3. ローカル検索とWebサイトをつなぐ
ローカル検索では、表示フォーマットが決まっているので、よりきめ細かい情報提供をしたいならWebサイトに遷移させる方がいい。その場合は、公式サイトへのリンクを設置する。
さらに伊藤氏は、「ローカル検索からWebサイトに送りっぱなしではなく、WebサイトからGoogleマップに戻るアクションのボタンを設置すること」が重要だと言う。ユーザーが次のアクションにつながる導線を整備することは、より良い検索体験にもつながるはずだ。
飲食店であれば地図に戻るボタンを、美容室などは予約ボタンや電話のボタンを設置してもいい(伊藤氏)
最後に伊藤氏は、「お店を探すユーザーの検索体験を上げることで、評価され、話題になり、検索結果から選ばれることを目指す。そのために、ローカル検索に注力をしていただければ」とまとめた。
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