中小企業もサイテーション管理に費用をかけるべきなのか? ―― ローカルSEOの疑問に答える(後編)
この記事は、ローカルSEOの疑問について、前後編の2回に分けてお届けしている。 →まず前編を読んでおく
前編で紹介した大規模調査のデータから、ローカルSEOに関してだいたいの事情はわかってきただろう。ローカルSEOの効果を発揮したいなら、Googleマイビジネス以外のビジネスリスティングも活用したほうがいい。また大企業でも中小企業でも、約31~40件のディレクトリに配信するのが望ましいことを学んだ。
後半となる今回は、次のようなことを知っていこう:
- 顧客の体験にサイテーションが影響を与える仕組み
- サイテーション管理を怠ることで起こりうるリスク
- サイテーション管理にコストをかけるべきかどうか
記事の最後では、中小企業のローカルSEOにおけるサイテーション管理のアドバイスもお届けする。
顧客: サイテーションの正確さや一貫性が顧客サービスの基本を成す理由は?
次に、顧客について考える必要がある。結局のところ、ブランドを左右するのは顧客に提供するサービスだからだ。
Mozによる2020年の調査では、ローカルビジネスのオーナーとマーケターの66%が、コンバージョンと売り上げを最優先事項に挙げていた。サイテーション※は、適切に管理すればコンバージョンと売り上げの原動力になる。しかし、放置すれば機会は失われてしまう。
同業者のBrightLocalの調査によると、消費者は次のような体験をしている:
- 2021年にビジネスリスティングで誤った情報や不完全な情報を目にした人は85%
- ウェブでは営業中と表示されていたのに、実際に訪れるとパンデミックのために閉店していたという経験をした人は81%
- リスティング情報が誤っているブランドとは取り引きしたくないと答えた人は63%
圧倒的多数の検索ユーザーが、閉店した場所に車で出かけたり、古い番号に電話したりと、ひどい顧客体験をしているということだ。これが否定的なレビューにつながり、そのビジネスの全体的な評価が下がることになる。次のような状況は、信頼できる顧客サービスを提供するうえで大きな障害になる:
- 1件のリスティングでデータが不正確
- 複数のリスティングでデータが誤っている
このようなパターンが雪だるま式に増えると、低評価が蓄積されて、恒久的な廃業に至ることもある。サイテーションを無視すると、潜在顧客の63%を失い、評判や利益が悪化することといった損失が必然的に発生するのは明らかだ。
では、サイテーション管理に費用をかけるべきなのか?
ネット上で間違った名前や電話番号が表示されるのが心配なら、我慢して年額料金を払うのが得策かもしれない(Sterling Sky ジョイ・ホーキンス氏)
信頼できるのは誰か
Mozは「Moz Local」というローカルビジネスのリスティング管理製品を販売している。素直に認めよう。この種の研究や調査を公開している多くの同業者と同様に、私たちも、ローカルビジネス情報の配信や管理を有料で支援することを有益な事業戦略としており、そこに既得権益を持っている。
そこで私が気づいた傾向がある:
- 継続的なローカルビジネス情報管理サービスを販売している企業は自分たちの手法が最善だと考える
- 「1回登録すればOK」というサービスを提供している企業も自分たちのやり方が正しいと考える
個人的な見解を言えば、重要なのは自分がマーケティングしているローカルビジネスに最適なのはどれかだ。これについても、自分自身の意見に依拠するのではなく、実際の調査を確認したいと思っていた。
もっとリアルなデータが必要だ
独立系のローカル検索マーケティング会社Sterling Sky(ローカルビジネスのリスティングソフトウェアは開発していない)が、ローカルビジネス情報アグリゲータの情報を管理するサービスの年間契約を解除する実験に、私は注目した。
調査期間中は検索順位やリンクに影響は見られなかったが、最大の発見は、ローカルビジネス情報の管理サービスを使わなくなると、リスティングが低品質な情報で汚染されるようになったことだ。次のようなソースから取得されたと思われる:
- 公的機関
- その他のオフラインソース
Sterling Skyは、賢明にも評判や顧客を失う脅威が迫っていることを見て取ったようで、正確さを確保するために、ビジネスリスティングを継続的に管理するための費用は事業経費として計画した方がよさそうだと結論づけた。
重要な点を付け加えておくと、Googleマイビジネスのリスティングを含め、多くのサイテーションは基本的にオープンソースだ。これは、大手データアグリゲータが政府の記録から情報を取得する場合に限らない。競合他社やスパム業者を含め、誰でも公開リスティングに不正確な編集を提案できる。
これを把握しておくことで、ブランドのマーケティングでは最小限のダメージにコントロールできる。
リスティングには、どのアプローチを取るべきか
先ごろ私が参加したバーチャル会議では、サイテーションサービスを手がける企業2社の担当者の意見が一致していた:
- 複数の拠点を持つビジネスは手作業によるリスティング管理を拡張できないため、支援を必要としている
- 拠点が1~2か所しかない小規模なブランドの場合は、サイテーションサービスの価値に疑問が生じる傾向がある
このようなローカルビジネスは、ローカルビジネス情報の配信や管理の支援サービスに費用をかけるべきだろうか? 私は常に中小規模の独立系ローカルビジネスに関心を持っているため、この問題について数年にわたって熟考した。
その結論を、ここから「中小企業へのアドバイス」として紹介していく。
結論と中小企業へのアドバイス
まずは、調査データや分析をもとに、ローカルSEOを上手に進めるための結論を3つ。
結論1
サイテーションを手作業で構築することは十分可能だが、それを管理することはまた別の話だ
Uberallの調査によると、ROI(投資利益率)を最大化するスイートスポットは31~40件のサイテーションだ。
となると、データの送信や送信先の管理だけでもかなりの作業が必要になる。そして、プラットフォームを記載した大規模なスプレッドシートを抱えることになる。
次のような状況ではそのスプレッドシートを見直さなければならなくなる:
- ビジネスで何か変更があるとき
- 季節ごとの仕入れに合わせてコンテンツを更新する必要があるとき
- レビュー管理の延々と続く作業があるとき
結論2
サイテーションは1回限りのものではない
新型コロナのパンデミックでは、ほぼすべてのローカルビジネスが営業時間を調整して、状況の変化に関する情報を迅速に配信し、一時的または恒久的な営業停止を告知しなければならなかった。
スプレッドシートを手動で管理していた人は、このシナリオで窮地に陥った。
1回限りのサイテーション構築サービスに料金を支払っていた人は、プロバイダーに再度料金を支払ってリスティングを更新しなければならなくなった
その一方で「Moz Local」など常時接続の製品を利用していたビジネスは、記録の1か所を数分編集するだけで、これらの変更をあらゆる場所に配信できた
結論3
管理用の中央ダッシュボードの価値を高めるサイテーションのレビューの側面も見落とせない
生活が一変したパンデミックの最中でも、スモールビジネスのデータはほとんど変更されないため、ローカルビジネス情報配信ソフトウェアの年間サブスクリプションの必要性は疑問視されている。
しかしレビューは絶えず寄せられるので、日々すぐに対応する必要がある。ローカルビジネス情報とレビューの管理をダッシュボードに集約したソフトウェアであれば、中小企業のオーナーやマーケターの仕事ははるかに楽になるだろう。
これら3つの結論を考慮し、私から中小企業に次の2つをアドバイスしたい。
中小企業へのアドバイス1
可能な限り、サイテーション管理を「必要な事業経費」と考えよう
上記で見てきた実際のデータや、顧客サービスをマーケティング計画の中心にすることの賢明さを考えると、これは余裕があるなら行うべき投資だ。
中小企業へのアドバイス2
予算がないなら、サイテーションを構築する時間を確保しよう
現時点で継続的なサブスクリプションの予算を確保できず、ローカルビジネスのリスティングを手作業で処理せざるを得ない場合もあるだろう。
できれば、ブランド名やコアビジネスのカテゴリで上位10件に表示されるディレクトリでGoogleマイビジネスのリスティングやサイテーションを構築する時間を確保しよう。
そして、ビジネスリスティングに関する情報をスプレッドシートで管理していくのがわかりやすいだろう。次のような情報も管理するのだ:
- 各プラットフォームにおける新着レビューの確認(日次)
- 正確を期すためのリスティング全体の確認(週次)
こうしたチェックのタスクは、あらかじめカレンダーに書き込んでおくといい。
より広範な配信や単一ダッシュボード管理のしやすさに投資できるようになるまで、このように時間に投資してほしい。
なお、1回限りのサービスには気を付けよう。なぜなら、複数の調査や実際の業務でも示されているように、社会やビジネスデータ、そして新着レビューは変化しており、「リスティングを設定したら後は任せておける」という考え方は神話にすぎないだからだ。
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今回見てきた調査が、あなたにとって正しい選択の助けになることを願っている。
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