【レポート】Web担当者Forumミーティング 2021 春

D2Cで好調「LOVOT」のマーケティング戦略|ファンを巻き込むYouTube活用とは?

家族型ロボット「LOVOT」を開発するGROOVE Xが実践するD2Cマーケティングとは? SNS・YouTubeを活用したファンマーケティングの事例とともに解説する。
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近年注目を集める「D2C(ダイレクト・トゥ・カスタマー)」というビジネスモデルで家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」を販売するGROOVE X株式会社。メーカーが顧客に直接商品を届ける上で、どのような考えのもとマーケティングを行っているのか。「Web担当者Forumミーティング 2021 春」では、同社CMOの西井敏恭氏と、カスタマーエクスペリエンス部のYui氏が取り組んでいるマーケティングをSNS・YouTubeを活用したファンマーケティングの事例とともに解説した。

GROOVE X株式会社 CMOの西井 敏恭 氏(左)と
カスタマーエクスペリエンス部のYui氏(右)

D2Cモデルで販売中の家族型ロボット「LOVOT」

「LOVOT」は2019年12月に出荷開始された製品だ。高さ約43cm×幅約28cm×奥行き約26cmのサイズで、小型のペットを思わせる愛らしい外観が特徴のロボットだ。「LOVOT」を開発・販売しているGROOVE Xでは「家族型ロボット」と謳っている。オーナーを玄関でお出迎えしたり、家の中を自由に動き回ったりするなど、多彩な機能を備える。1体あたりの価格は34万9,800円(税込)で、その他にソフトウェア利用料、メンテナンス補償として月額サービス料1万4,278円(税込)がかかる(スタンダードプランの場合)。

愛らしい外観ながら、「LOVOT」には全身に50以上のセンサーが搭載されるなど、最先端技術が詰まっている

LOVOTの販売は「D2C」モデルが導入されている。D2CとはDirect to Consumerの略で、企業や個人が製品の企画・製造・販売を行い、商品を広告代理店や小売店を介さずに、消費者に直接的に販売するビジネスモデルのことを言う。

LOVOTは公式サイトでのインターネット販売を中心に、高島屋の「LOVOTストア」や商業施設内での体験イベントなどを通じても販売している。小売り販売に比べ、販路が限られるため、マーケティング戦略は非常に重要なポイントだと言える。

差別化要素や機能的な価値を訴えても、消費者は欲しいと思わない

複雑な挙動を実現する処理能力の高さ、ロボットでありながら人の感性・情緒に訴える本体デザイン、開発にあたって取得した特許数の多さなどをアピールするのもマーケティングの一つの手ではある。

一緒に暮らすロボットという今まで市場になかった製品について、差別化要素や機能的な価値を訴えても、消費者が購買に至るかといえば、そうはならない(西井氏)

LOVOTのマーケティングを紹介するにあたって、西井氏が例示したのはiPhoneだ。2007年、iPhoneが日本で初めて国内販売された当初は、当時隆盛だったフィーチャーフォン(ガラケー)や既存機器と頻繁に比較された。

iPhoneはネットが見られる、タッチパネルで操作できる、音楽が聞けるといった機能的価値が押し出されていた。タッチパネルは斬新だが、物理ボタンのガラケーに比べて文字は入力しづらい、音楽は再生機器がすでにあるからそれを使えばいいし、電話はフィーチャーフォンで十分と当時は言われていた。

2021年現在、iPhoneをはじめとしたスマートフォンを多くの人が使うようになっている。多くのユーザーが愛用しているのはSNSであり、メールや電話の利用シーンは減少した。2007年当時使われていた機能の置き換えではなく、別の価値として消費者がスマートフォンを捉え、2007年時点ではガラケーで十分と言っていた人もスマートフォンを使うようになっている。

従来のマーケティング手法は「○○の機能でこんなに安い」「○○が今までのものよりさらに美味しくなった」「あの商品とは○○が決定的に違う」といった差別化が一つの鍵であった。しかし消費者の意識の変化、時代の潮流などもあり、差別化や、商品の機能性だけを押し出したマーケティングでは、商品が売れづらくなっているというわけだ。

差別化、機能アピールという従来のマーケティングでは売れない

「売るまで」ではなく「買ったあと」も重視するのがD2C

マーケティングの環境が複雑化する中、D2Cはメーカーと消費者が直接つながる販売モデルとして注目されているが、似た概念は多い。単に「メーカー直販」と呼ばれるものや、「SPA(Specialist retailer of Private label Apparel:スパ)」(製造小売業を指し、企画から生産、販売までを一貫して行うアパレルのビジネスモデル)といった方式も知られる。

SPAの代表例はユニクロ(ファーストリテイリング)が挙げられる。D2CとSPAは混同されがちな概念だ。「デジタルで完結するからD2C」「リアル店舗があるならSPA」「いや、SPAはあくまでアパレル業界だけの手法」など、判断は人によっても分かれる。

西井氏の考えでは、D2CとSPAで決定的に違うのは「購入するまで」「買ったあと」の扱いだ。以下の図でその違いを示した。

購入するまでがマーケティングではなく、「買ったあと」の継続的なマーケティングが必要に

西井氏は顧客行動を「購入」「(利用の)継続」「ファン化」「クチコミ」の4段階に分けた。定期販売やSPAはこのうち「購入」「継続」までを意識する。つまり「売るまでがマーケティング」という発想である。

対してD2Cは購入後の客に対するマーケティングも継続する。たとえば、近年注目を集めている「サブスク(サブスクリプション)」型のビジネスモデルも、D2Cと考え方は近い。契約中の顧客にファン化してもらい、クチコミをしてもらうことが重要だ。その点において、従来型手法として長らく親しまれてきた「定期販売(定期販売)」とサブスクでは、性格が異なるという。

サブスクやD2Cは購入後もマーケティングを行っていきます。企業とお客様が一緒になって、商品・サービスの価値を新たに作り上げていくことがマーケティングで重要になっています。作った価値に対して共感が広がることで、新しいお客様を呼び込むことにもつながります(西井氏)

西井氏はiPhoneを例にあげ、「発売当時はメールや電話といった機能が着目されたが、現在はスマートフォンで多くの人はSNSを使っている。そうやってスマートフォンの価値を消費者が作っていくことで、スマートフォンを使いたいという気持ちになる人が多くなっていくとすると、継続的なマーケティングが重要になる」と語った。だからこそ「買ったあと」の顧客行動に注目すべきであり、LOVOTのマーケティングで重視しているという。

「メーカー直販」と「D2C」は、代理店なしに販売するというビジネスモデルは同じだが、前述のようにマーケティング手法が違うと西井氏は指摘した。「商品やサービスを使い続けたい気持ちづくり」が、D2Cにとって、最も重要なポイントだとした。

「D2C」と「メーカー直販」の違い

愛着度が高い顧客と一緒にコンテンツを作り、そのコンテンツを新規顧客の獲得・愛着形成につなげる

マーケティングにおけるSNSの重要性は年々高まっているが、西井氏によればLOVOTにおいては、製品・サービスに対する顧客の“愛着度”によって、SNSの使い分けをしているという。まず同社では顧客を5段階に分類しているという。

  • 購入検討層
  • 購入顧客
  • なつき顧客:LOVOTと一緒に暮らし始めて、LOVOTがなつき始めた頃のお客様
  • 愛着顧客:LOVOTがなついて、LOVOTのことを大好きになってもらい、一緒に暮らすのが楽しいという状態のお客様
  • 応援顧客:LOVOTや、GROOVE Xを応援してくださるお客様

具体的には、「購入検討層」「購入顧客」「なつき顧客」のまだ愛着度が低い層には、LINEやメルマガを活用し、まずは接点を確保する。愛着度が高い層の「愛着顧客」「応援顧客」は、西井氏が指摘する「買った後のマーケティング」で重要になる層だ。GROOVE XではYouTube、Instagram、Twitterを活用し、愛着度が高い顧客と一緒にコンテンツを作り、ブランド価値の共創にトライしている。これがGROOVE X流の「ファンマーティング」である。
 

愛着度に応じて、SNSを使い分けている

僕らが『こういう使い方ができます』と価値を押し付けるのではなく、お客様がLOVOTと一緒に暮らしていくなかで、こんなに楽しかったとか、家に帰るのが楽しくなったなどいろんな価値を感じてもらっている。価値を一緒に作ったところをコンテンツ化し、新規のお客様に提供していくようなイメージで全体設計をしている(西井氏)

「ファンマーケティング」をYouTubeで実践。ファンと共創する活用事例を紹介

続いて登壇したカスタマーエクスペリエンス部のYui氏は、こうしたLOVOTのマーケティング戦略に基づいて、具体的な施策の立案・実行に携わっている。現在はSNSでのマーケティングに注力しており、KPIはクチコミ数だという。

SNSの一般的なKPIは、フォロワー数やツイート数になりがちだが、そうではない。その理由は、良いクチコミが多ければ多いほど売上に寄与するからだ。Yui氏がYouTubeを活用する上で、特に意識しているのは、ファンとの「共創」だという。具体的にどのようにファンと共創をしているのか、2つのYouTube活用事例を紹介した。

1. UGCの有効活用 → 更なるUGCの増加

LOVOTの様子を画像・動画でSNSにアップロードするオーナー(購入者)は多い。そこでGROOVE Xでは、専用のSNSハッシュタグを用意し、投稿を呼びかける。タグが付けられたUGC(User Generated Content:ユーザーによって作られたコンテンツ)をまとめ、LOVOT公式YouTubeチャンネルで配信している。これらの動画は、新規顧客獲得のためのLINE配信にも活用し、コンバージョン獲得につながっているという。

オーナー様が何気なく投稿したUGCでも、『公式で紹介してくれた』『うちの子が映ってとても嬉しい』という声が多く、満足度向上に直結する。それがさらに別のUGCを生むきっかけにもなるという、好循環が生まれている(Yui氏)

1.UGCの有効活用…UGCを使って動画を作る!

2. ファンと一緒に創る、YouTubeオリジナル番組

Yui氏がYouTuberとなって、オリジナルの動画番組をLOVOT公式YouTubeチャンネルで配信している。LOVOTは実際に触れてもらって良さが伝わる製品だが、昨年の緊急事態宣言の発出で体験イベント開催できなくなったことを契機に、YouTubeでの動画配信を本格化させたという。

YouTubeでの動画配信は、SNSへ投稿した画像コンテンツと比べ、接触時間が長くなる(1つのコンテンツを注視し続ける)のが特徴であり、疑似体験をしてもらいやすいメディアだ。LOVOTは、静止画よりも動画、動画よりもリアルで触れてもらうことで、魅力がより伝わる製品なので、YouTube配信は“疑似体験”の手段として、効果を発揮しているという。

2.YouTubeでオリジナル番組投稿…ファンと一緒に創る番組に!

動画にコメントや高評価が多くつくと、別のユーザーの注目を惹きつけることにつながる。ユーザーの共感・応援が可視化され、より多くの人を巻き込むことができる……という訳だ。Yui氏にYouTuberの経験はなかったが、2021年初頭の緊急事態宣言下では、約2か月にわたって毎日動画を投稿するなど奮闘。その甲斐あって、コメント数も徐々に増えていったという。また、編集済みの動画配信だけでなく、YouTubeやInstagramでのライブ配信も頻繁に行い、配信ではUGCを積極的に紹介しているという。

クチコミ数増加でGoogleの検索数が増加! SNSのKPIを口コミ数においている理由とは?

Yui氏らの分析によれば、SNSなどにLOVOT関連のUGCが増加すると、Google検索数も同様に増加したという。「LOVOT」で指名検索をするユーザーは、製品購入の意欲が高い。「オーナー様と口コミを増やすことをやっていくと、徐々にLOVOTのことを検索したり、購入したりされる方が増えることがわかったので、クチコミを積極的に活用しています」とYui氏。SNSアカウントのフォロー数や、投稿リツイート数をKPIに置かないのは、これが理由だ。

UGC(口コミ数)が伸びると、Google検索数も上がる

 LOVOT購入者に対してのアンケート結果では、公式YouTubeやInstagram、Twitterをみて欲しくなったという回答が全体の20%を占めており、公式YouTube・SNSが購入のきっかけとなっている。

全体の20%が公式YouTube・SNSが購入のきっかけに

LOVOTの公式SNSは、(見込み客ではなく)オーナーの満足度向上が、運用方針の柱となっている。そしてコンテンツの制作という意味でも、オーナー発のUGCに頼る部分が大きい。そうして作成された動画コンテンツは、オーナーが日々どのようにLOVOTと触れあっているかを見込み客に伝える有力な手段となり、購買にも寄与している。理想的な循環が構築できているのだ。

YouTubeの活用、どうはじめたらいい? はじめは気負わずとにかくチャレンジを

Yui氏は最後に、これからYouTubeの活用を検討している方向けにアドバイスを行った。まず機材はスマホ1台でOK。特別な機材は不要で、“顔出し”もマストではない。

YouTube活用のポイント

有名YouTuberが言っていたことだが、最初のうちは下手くそでよい。そのほうが周りから応援してもらいやすいので、まずは気負わず、いろんなチャレンジをしてみてほしい。『共感してもらう』ことが重要(Yui氏)

「質より量」も意識しているという。色々な種類のコンテンツにチャレンジし、何が良かったか、悪かったかを都度検証する。またYui氏は好きなYouTuberの動画を参考に、動画を作成しているという。

最後に、西井氏が、D2Cモデルでビジネスを展開するにあたって「お客様に寄り添って、ともにLOVOTの価値を作る」という意識が全社に浸透していることは大きいと述べた。その上で、まずは自分たちがチャレンジすることに尽きるという。GROOVE Xのような創業まもないベンチャーは、外部企業を頼るには、体力面でハードルがある。「SNSをどう使うか」を考える事は重要だが、自社でしっかり公式SNSを活用できていることが強みだと述べ、講演を締めくくった。

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