コロナ禍でUGC活用を促進する施策とは? カルビー×RoomClipのオンラインイベント成功事例
コロナウイルスの影響もあり、企業の対顧客コミュニケーションが大きく変化しつつある。カルビーもまた、従来のマーケティングプランが中止になったことを機に、生活者を起点としたマーケティング施策を模索。”暮らし”の写真投稿サービス「RoomClip」との連携のもと、オンラインイベント「おうち夏祭り」を実施した。
そこで得られた気づきや知見について、カルビーの小島彰朗氏、ルームクリップの当寺ヶ盛佳奈氏が、「Web担当者Forumミーティング 2020 秋」において紹介した。
組織・業界をこえたオンラインイベント「おうち夏祭り」
昨年70周年を迎えたカルビー。かっぱえびせんやポテトチップスなどスナック類をメインとした商品を展開している誰もがおなじみの食品メーカーだ。その中で小島氏は「じゃがりこ」「Jagabee」「ミーノ」などのマーケティング・宣伝を担当している。
そして、オンラインイベント「おうち夏祭り」の協賛を小島氏に呼びかけたのが、ルームクリップの当寺ヶ盛氏だ。「RoomClip」は月間600万ユーザーが利用し、写真枚数は450万枚を超える人気ソーシャルメディア。コロナ禍で在宅時間が増えたこともあってユーザーが急増し、インテリアや収納に加え、飲食やメイク、余暇などのテーマも増えているという。
コロナ前後で何が変わったか?
まず冒頭で、オンラインでの聴講者に対して「コロナ前後で、自社またはクライアント先のマーケティング施策は変わったか?」とアンケートを実施。76%の聴講者が「変わった」と回答した。カルビーもCMなどについては予定通り進めていたものの、店頭での「食べてみる」施策はほぼ実施できなくなり、デジタルの施策にシフトせざるを得なくなったという。
一方「RoomClip」でもコロナ禍によってユーザーが増えただけでなく、「家の中でどのように過ごすのか」についての投稿が急増した。当寺ヶ盛氏は「特に“おうちカフェ”“おうちキャンプ”といった、本来外で楽しむアクティビティを家で楽しむという内容が増えた。しかもインテリアなど”モノ”の紹介よりも、体験を紹介する”コト”の投稿が目立つようになった」と分析する。
変化状況を踏まえて、オンラインイベント「おうち夏祭り」を実施
ルームクリップ内で「おうち夏祭り」の企画が持ち上がったのは4月。緊急事態宣言が発令され、ルームクリップも在宅勤務となっていたが、Slack上で「ステイホーム中のユーザーさんを楽しませたい」という声が起こった。そして、おうちで夏祭りを楽しむためのアイデアやイベントを届けるRoomClipの企画「おうち夏祭り」につながっていった。そして4月終わり頃、カルビーなど複数企業の協賛を得て、急ピッチで実施に向けて動き出したという。
一方、カルビーでは2020年ゴールデンウィーク前に、“Jagabee”の食感リニューアルを発売以降初めて行った。そこで”素材の良さ”を訴求したいと考えていたが、コロナの影響で実際に食べてもらうサンプリング実施が見送りになってしまった。
そうした中、小島氏は「手をこまねいていてもしかない。競合や業界への意識を柔軟にして、各企業と手を取り合ってコンテンツを盛り上げていくコミュニケーションが必要なのでは」と考えていたという。「そんな時におうち夏祭りの話があり、考えていたことを体現できるのではないかと協賛を決定した」と、その経緯について語った。
「おうち夏祭り」では、ルームクリップのテーマ設定・呼びかけによる「投稿イベント」、さらに“ワークショップ”や“おうち花火大会”など投稿を促す「ライブ配信」、そしてカルビーなど協賛企業と連携した「モニターキャンペーンやライブ配信」も行われた。
カルビー全社で協力し合い、イベントは大盛況
カルビー社内の各部門と連携し、短期間でイベントを実施
8月3日から9月2日までのイベント期間中、カルビーは共同でニュースリリースを出し、1週間毎に第1フェーズ、第2フェーズとしてSNSでの告知を行い、9月以降はInstagramでのフォローアップを行ってきた。
この図を見ると順調そうに見えるが、実は協賛金としての予算は確保したものの、施策に使用する予算はなかった。そこでPR宣伝担当である小島氏を中心に、社内の広報やデジタル部門、“Jagabee”の事業部などの部門と連携し、協力して施策を実現させていった。
小島氏は、「予算規模が大きくなくても、全体的な盛り上げがかなったのは、全社で協力し合ったことが大きい」と語り、「協賛というと“与えられたメニューを実効する”という受け身になりがち。しかし、今回は自ら盛り上げていこう、一緒にやろうというスタンスで取り組めたことが成功につながった」と協働の大切さを強調した。
当寺ヶ盛氏も「多くの企業で、短期間に多部署を巻き込んで連携させていくことは難しいと聞く。その調整が上手く行ったところほど盛り上がり、成果も大きかった」と振り返る。
さまざまな投稿から得られた新たな発見
イベントはおおいに盛り上がり、「おうち夏祭り」関連の投稿画像は1,000枚以上、カルビー関連だけでも300枚近く集まり、次の図のように、”Jagabee”を盛り上げアイテムとして使った投稿が数多くみられた。
また、新しいパッケージデザインへの反応や、ディップするといった食べ方のアレンジなどの投稿も多く、小島氏は「嬉しく思い、また想定外の発見もできた」と評価した。また、投稿した写真がライブ配信で取り上げられたことを受けて再度投稿する人もあり、それに対するコメントや反応によってコミュニケーションが拡散していったという。
さらなる成長のきっかけを発見できたイベント
リーチ数や売上に貢献
楽しみのためのイベントならば「大いに盛り上がった」が総括となるが、マーケティングや宣伝を目的とした施策としてはそれだけでは十分とはいえない。はたして、目標とするKPIに対しての成果はどうだったのか。
小島氏は「目標としていたリーチ数の180%に到達し、夏に落ち込みがちなスナック菓子の消費向上に貢献したと感じる。他にも施策があり一概にはいえないが、期間中の売上は昨年に対して数十パーセント上がった」と語る。
ユーザー投稿から新しい成長のきっかけを発見
カルビーでは、“Jagabee”のリニューアルにあたり、当初は企業目線での発信が主体だった。しかし、ユーザーにブランドで遊んでもらう“余白”を大切にしたプロモーションの必要性も感じていたという。小島氏は、「拡散を目的にしたTwitterでのプレゼントキャンペーンは、接触人数は増やせても、裾野を広げることは難しく、ブランドの“余白”は見つからない。そこを払拭し、成長のきっかけを見つけることができたイベントだった」と評価した。
当寺ヶ盛氏も、「企業が“こういう食べ方をしてほしい”と提案するのもいいが、ユーザーが見つけたことをいかに拾うかが大切」と語った。
「おうち夏祭り」タグの投稿が急増
RoomClipでは、2019年には1回しかなかった「おうち夏祭り」のタグ付投稿が、2020年の夏には800以上に急増した。今までキャンペーンによって企業名などのタグを増やしたことはあったものの、「今まで投稿がなかったテーマでコンテンツを作り出した」という意味では、RoomClipとしてもほぼ初めての体験だった。
当寺ヶ盛氏は、「ここまで一緒に“おうち夏祭り”というテーマで広げていけたのはすばらしいこと。カルビーさんはじめ協賛企業の告知のTwitterでもRoomClipを起点にしてもらえ、アクセスも増えた。協賛企業、ユーザーと三者が”一緒にやった感”が強く、たいへん印象深い施策だった」と振り返る。
UGCを用いたコミュニケーション施策で大切なこと
ユーザーの機微に敏感になり、「種を見つけ、育てる」サイクルが重要
メディアだけがテーマや概念を作成し、広げようとしても、ユーザーの実感が伴わなければ難しい。当寺ヶ盛氏は、「ユーザーがもともと“おうち〇〇”というものをコミュニケーションとして広げているところにヒントを得て、そこからユーザーが求めているものを推測していって、実際に一緒に盛り上げられた。その過程に企業さんも入ってくださったことが非常に大きいことだった」と語った。
さらに、「ユーザーが何を求めているのかを知るきっかけとしての”種”を見つけ、それを育てる。そして、その過程でまた新たな種を見つけて育てる。その地道なサイクルが重要」だと当寺ヶ盛氏はいう。そのサイクルの中でブランド認知や愛着が醸成されるとともに、企業やメディアにとっても成長のための新しい気づきが得られるというわけだ。そのために、メディアや企業側も「ユーザーの機微に敏感であること」が重要だと強調した。
また、“場”を選ぶことも大切だ。小島氏は「TwitterやInstagramなどの広範囲なSNSでは、“おうち夏祭り”のようなテーマを気づいてもらえるのは難しい。インテリアやライフスタイルなど家での生活を楽しむ人が集まるRoomClipというメディアだったからこそ、“おうち夏祭り”に気づいてもらえた」と話す。
ユーザーの温度感・目線に合わせることが重要
そして、「もう1つの気づき」として小島氏は、SNSキャンペーンで使用したビジュアルを提示。片方が使用したものだというが、採用の決め手となったのは「お客様の温度感」だった。
最初は図の左側の花火のイラストを使おうとしていたが少々違和感があったという。ユーザーからの投稿内容をみると「もっと遊んでもいいんじゃないか」と感じたからだ。そこで、右側の画像を作成して、手作り感が今回の施策になじむだろうとこちらを採用。反応もとてもよかったそうだ。UGC(User-Generated-Content:ユーザー生成コンテンツ)を活用したコミュニケーション施策については、「言葉なども大事だが、ユーザーの温度感に合わせることも重要だと実感した」と小島氏は振り返った。
当寺ヶ盛氏は、「UGCの活用というと、メディアやプラットフォームはユーザーの写真をそのまま使うことを強調しがちだ。しかし、キャンペーンの主催者が取り組みを”自分ごと化”して温度感や目線を合わせ、種を見つけて反応することも重要であることを伝えたい」と語った。
そして最後に、小島氏が「大変勉強になった施策だった。これらの知見は協賛するだけでなく、一緒になって盛り上げたからこそ得られた。今後もそうした施策を継続していきたい」と語れば、当寺ヶ盛氏も「そうしたマインドをもった企業とともに、一緒に世の中を明るくする施策に取り組んでいきたい」と応じ、結びの言葉とした。
\参加無料 11/19火・20水 リアル開催/
「Web担当者Fourm ミーティング 2024 秋」全50講演超!
ソーシャルもやってます!