[マーケターコラム] Half Empty? Half Full?

ないなら自ら作り出す。マーケターのスキルとキャリア形成のロールモデルとは

マーケターコラム、今回はテレビ東京・明坂真太郎氏。マーケターのスキルの積み方とキャリアの作り方について。
テレビ東京 明坂真太郎氏

こんにちは、テレビ東京の明坂です。

気づけばすっかり寒くなりましたね。4月に新たな年度が始まったと思ったらもう半分以上が経過。あっという間だなと思いつつ、今回はマーケターのキャリアについてです。

4月に多くの方が新卒で入社、はたまた部署異動などを経て、新たな仕事を始めてから7ヵ月。今年は新型コロナウイルス感染症の影響にて在宅ワークが推奨され、例年とは仕事のやり方も大きく変わりました。特に同じ職場で働くメンバー同士のコミュニケーションが対面ではなく、チャットやWeb会議といった手段の比率が高まったことは大きな変化だと思います。

そんな折にもしかすると、「新卒で新たにマーケティング職になった方々は、気軽なコミュニケーションやキャリア相談できる環境が失われ、年度の半分が終わった中で悩んだりしていないだろうか」とおせっかいにも勝手に心配になりました。

そこで今回は、少しでもマーケターキャリアの標になればと思い、マーケターのスキルとキャリアをテーマにお話しします。

マーケターがスキルを得るうえでの避けがたい課題

いきなりですが、マーケティングを学ぶのは大変です。

マーケティングにも根幹の原理原則はありますが、最終的に物やサービスに対価を支払ってもらうには、常に変化する経済や社会の状況、進化する技術や競争相手、さらには業界ごとのトレンドなど、さまざまな要素を具体的に考慮する必要があります。

そのうえで、常に現場にてチャレンジと検証を繰り返していかなければ、いくら書籍を読もうが、いくら大学院でMBA(経営学修士)をとろうが意味のないことだと思います。

通常、特定の職で腕を上げようと思うと、以下のような手段が考えられます。

  1. 自社実務の中で経験を積む(社内の経験)
  2. 副業や、自らビジネスを行う(社外の経験)
  3. 上司や先輩など、社内のナレッジを受け取る(社内の知識)
  4. 書籍やセミナーや社外メンターから情報を得る(社外の知識)

1はもっとも重要で、実務の経験は多いに越したことはありません。ただし、例えばゴルフでガチャガチャに崩れたフォームのまま何回素振りをしたところで上達しないのと同じく、マーケティングにおいても守破離は重要。正しき構造の理解、評価とフィードバックがあることによって同じ経験でも得るものは大きく変わります。

3については、社内に適切なナレッジが存在しないという状況がけっこうあります。本当に使えるレベルのナレッジを残すためには、先人がその経験を整理、体系化する必要があるのですが、長期で同じ人がそのポジションに在籍できない(人事や組織の問題)、ナレッジを残す思想がない(仕組みや文化の問題)、手段の変化が早く情報の陳腐化も早い(職種問題)、といったことが、ナレッジが存在しない主な理由です。

なお、4についても業界や商材ごとの特性によるところがあるため、なかなか具体的かつ適切な知識を得づらいですし、2については、制度で縛られていたり土台のスキルや経験がないとやりづらい側面もあると思います。

さて、そんな問題提起をしておいてなんですが、「特定の職で腕を上げるには?」という問いに対しては、クリティカルな解決策はありません。「ない」という前提で状況を制御していくしかないと私は思います。

特に、ナレッジの蓄積方法を今後整備したり、具体的な相談ができる社外の相談相手を見つけたりするといったことは非常に重要です。もちろん、幸運にも社内に優れたナレッジが蓄積されている環境の方はぜひ最大限に活用してください。

どのようにスキルや経験を広げていくべきか

マーケターはどのようにスキルや経験を広げていけば良いのか? 結論から言うと、自分が行えるマーケティングのプロセスや業務範囲に近い部分から順に広げるのが良いと思います。

私は新卒でSIerに入社し、転職でマーケティング職につくまでエンジニアとして7年ほどシステム開発をしていました。当然コードが書けるので、今でもA/Bテストのコードを書いたり、各種APIと連携したり、タグマネジメントツールやアクセス解析ツールの計測設計をしたりなどは自分で行います。そのほうが他の人に依頼をするより(コミュニケーションや確認のコストを加味すると)早いし、認識間違いなどが起こらないからです。さらに作業効率だけでなく、アクセス解析をはじめ、ツールの活用レベルも上がるため、テクニカルな施策でより効果を出せるようになるでしょう。

ことデジタルマーケティングにおいて、エンジニアリングスキルは直接行える業務範囲をかなり増やす強いスキルです。その他では、統計、機械学習といった「データを活用する力」、デザインやライティングといった「伝える力」、インタビューやアンケート設計といった「ユーザーを理解する力」などは、それぞれが業務そのもの、もしくはそのすぐ隣で活用されるスキルであるため、スキル同士のシナジーが非常に大きいと思います。

集客ひとつとっても、検索エンジン(SEO)、有料広告、SNS、テレビをはじめとしたマス広告など、ユーザーはあらゆるメディアに触れ、さまざまなチャネルで接触します。1つのメディアへの施策が他のメディアに影響を出さないということはありません。

少なくともテレビCMを打てば検索エンジンにおけるブランド名の検索が増えることは間違いなく、例えばそれがSEOにどのような影響を及ぼすかなどにも気を配っていく必要があります。特定の集客チャネルにおける経験を積みつつも、可能であれば相互に影響を及ぼす周辺のチャネルでも経験が積めると良いと思います。

避けたいリスクととりたいリスク

ただ、ひとつ考慮したほうが良いのは、業務内容が変化するリスクです。

例えばデジタル広告の入札といった運用プロセスにおいてはアルゴリズムによる自動化の比率が増え、実際の数値感を詰めていくプロセスより、どういったデータを元に、どのようなロジックで自動化するべきかを設計するプロセスが重要になるといった形で、業務の内容が変化していくことが考えられます。

そういった状況においても、過去の経験はアドバンテージであり無にはなりません。しかし、極力機械学習に代替されることない、さらに言えば人間が関わることでよりバリューが上がるプロセスに注力するほうが中長期的に価値の高いスキルが得られると言えるでしょう。

また過去の経験上、習得難易度が高いスキルや、特性上同時に得づらいスキルも数多く存在しています。すべてのスキルは努力すれば習得できるというのは根性論かゲームの中の話で、実際はその人の能力特性によって習得効率が違い、適していないスキルを得るのはどれだけ時間を使っても難しい。ゆえに、自らが得意とする領域に注力するほうがはるかに効率が良いのですが、一方で苦手な人が多いもしくは同時に持っていることが少ない領域のスキルは、非常に希少で価値が高いため強みになります。周りの人があまりやりたがらない領域こそ率先して身につける意味がある、すなわち「とりたいリスク」とも言えます。

個人的な感覚では、アクセス解析やフロー構築などの「左脳的なスキル」とクリエイティブ制作やディレクションといった「右脳的なスキル」が同居している人はレアで、いた際には往々にして優れたマーケターとして強い影響力を持っていました。

Marketing has Fun. 自らのキャリアを作り、楽しもう。

よく言われていることですが、マーケターにはわかりやすい明確なロールモデルがありません。それはおそらく業界によって、さらには時代によってやらないといけないことや目指すべきものが極めて多様だからだと思います。

そんな状況で大切なのは、常に自ら目指すマーケターの像を見据えることです。

人によって働くモチベーションはそれぞれで、「給与を上げたい」「新しいものを生み出したい」「好きなものに関わりたい」などなどこれまた多様です。自らのモチベーションの源泉を見極め、常に顧客や社会に興味を持ち続けることで、「マーケティング(Marketing)」の文字通りMarket(市場=価値を交換する場所)を生み出し続けること、それに合わせ自分のキャリアも生み出し続けることこそが、今のマーケターに求められる能力なのではないかと思います。

どんなキャリアを歩むにせよ、仕事は楽しむに越したことはありません。ぜひ自らが楽しめるマーケティングのキャリアを生み出しましょう。

◇◇◇

次回はコンテンツマーケティングと動画マーケティングについて書きたいと思います。これについて聞きたい!などあればお気軽にTwitterへリプライください。

それでは。

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