[マーケターコラム] Half Empty? Half Full?

人生はマラソン? 産休前のリアルなマーケターの心境

マーケターコラム、今回はSTORES広報の加藤千穂さん。産休・育休の取得に伴う一会社員のリアルな心境について。
STORES 加藤千穂氏

こんにちは、STORESの"えんじぇる"こと、加藤です。

STORESを展開するストアーズ・ドット・ジェーピー株式会社の親会社である、hey株式会社(以下、hey)は、2020年8月にクービック株式会社(以下、クービック社)の全株式を取得しグループ化しました。併せて、大型の資金調達の実施を発表しました。

この買収によって、クービック社が展開するオンライン予約システムCoubicも私たちの仲間になったことで、heyが展開するサービスは、STORESSTORESターミナル(旧Coiney)、STORES 予約(旧:Coubic)の3つになりました。それによって社内も、この3サービスを横断した組織体制に変わり、私は広報からマーケティングチームへ異動になりました!

といっても、実は、9月下旬から第二子出産のための産休に入るので、異動後の仕事はほぼ引き継ぎだったのですが……。

子どもを授かることは本当にうれしいことではあるのですが、しばらくの間職場を離れることについてはいろいろ思うところもあります。そこで今回は、自身の産休・育休の取得に伴う一会社員のリアルな心境を、書いてみたいと思います。

申し訳なさと悔しさと、復帰後の不安

heyでは、2018年10月から「Fun for Kids」という子育て支援制度を開始しています。非常に充実した支援プログラムで、これまでもこの制度を活用して社員や社員のパートナーが子どもを産み・育てながら仕事を続けていて、子どもを育てながら働く環境としては申し分ないです! そんな社風ですので、妊娠を報告した際は、会社はもちろん、メンバーも120%祝福してくれました。

ただ、一個人としては、この状況にネガティブな気持ちになる部分もあります。

上述のとおり、会社では買収や資金調達に伴う大きな変化が起きていて、みんな慌ただしい状況です。それを見ながら、自分だけ引き継ぎ業務をするのは申し訳ない気持ちになると同時に、悔しさも湧いてきます。

そこには2つの悔しさがあります。1つは、会社に貢献できないこと。もう1つは、変化の波に立ち会えないことです。

一緒に働くメンバーはみんな優秀で、この変化に適応しながら挑戦を続けていて、たった数ヵ月で飛躍的な成長をするんじゃないかと感じています。その場に立ち会えない私は、成長の機会を逃してしまうのではないか、と考えてしまうこともあります。

また、この状況で職場を離れることで、復帰後についていけるのかという不安もあります。復帰時期は未定ですが、戻っても、新入社員みたいになるのではないか、自分が貢献できる余地はあるのか。心配してもどうしようもないのですが、そんな不安なあれこれが、頭をよぎるときもあります。

子どもを産む選択をしたのは自分自身なので、そんな悩みはわがままだとも思います。でも、仕事の都合を考えていたら、いつまでも妊娠・出産を先送りにしてしまうという危機感もありました。実際、私は第一子を出産してから5年がたっていて、今も時短勤務中ですが、もう1人子どもを欲しいという気持ちよりも、仕事をしたい気持ちを優先していました。

現在の職場に転職をし、特に経営メンバーの佐俣(奈緒子。ヘイ株式会社代表取締役副社長/コイニー株式会社代表取締役)を見ていて、仕事をしながら、同時に子どもを欲しいと思う気持ちに向き合うことは何も悪くないんだと感じたことから、妊娠を決意しました。

だから、今この状況で産休・育休に入るのは、すべて自分の選択なわけですが、でも、どこかもやもやとしてしまうところもあるのです。

不安をやわらげた1冊の本

そんなときに読んだのが、北野唯我さんの『これからの生き方。自分はこのままでいいのか? と問い直すときに読む本』(世界文化社)という本でした。

ド直球のタイトルに惹かれて手に取りましたが、実はこれまでにも「組織で働く」ことをテーマに多くの本を執筆している著者で、本書のテーマもそこにあります。私はこの本で「14の労働価値」という価値観を知り、とても心に残りました。

「14の労働価値」とは、アメリカの心理学者ドナルド・E・クーパーが「仕事の重要性研究」という研究の中でまとめた、人が仕事に対して求める価値観を14に分類したもので、1950年代に発表されたものながら、現在でもキャリアコンサルティングの場でよく使われているそうです。本書では、仕事をする上で自分自身が何を大切にしたいかを知るための指標として、アレンジして紹介されています。

私が特に、読んでハッとしたのは、次の一文です。

多くの人にとって、人生は長期戦であり、マラソンに近いものです。年齢やタイミングが変われば、価値観は変わっていくものですから、現実的には、分散させることも生きていくための手段として認めるべきだと私は思います。(『これからの生き方。」p.218)

これを読んで、職場を離れることで感じていた不安は、私が人生を短距離走のように捉えていたことに原因があるのではないかと気付きました。

それによって、ようやく、「人生100年時代」と言われる中で生きていくには、産休・育休など子育てに集中する時期もあってはいいのではないかと思えるようになったのです。まだあと50年はあるであろう仕事人生のたった数年を、子育てに費やしたって、何も焦ることはないじゃないかと。

また、同書では、労働価値を分散させる場所は趣味や副業でもいいと説いており、「職場を離れる=仕事から得られるやりがいがゼロになる」わけではない、とも思えるようになりました。逆に言えば、仕事をしているからといって「14の労働価値」をすべて満たせるわけでもないとも言うことができると思います。だからこそ、今は、14の労働価値のうち1つでも満たすために何かできることはないのか、を考える期間にしようと思います。

子どもが小さい間は、子どもを中心に生活も仕事も組み立てる必要があると思いますし、子育てがひと息ついたときには、世の中だけでなく、私自身の中にある労働価値も大きく変わっているだろうと思います。だから、その時々の変化に合わせて、仕事も価値観もアップデートしながらこれからの人生を生きていければいいんだと、思うことができるようになりました。

自分の選択を正解にしていく

進学、就職、転職、結婚、妊娠など、ライフステージごとに人生は選択の連続です。その時々で、いろいろな葛藤がありますが、どんな選択をしたとしても、それを選んでよかったと正解にできるのは自分自身です。

今回、私は職場を離れて、子育てに集中する期間を取ることを選択しましたが、この期間は、子どもと全力で向き合ったり、会社にいては出会えない、新しいことを吸収する機会でもあります。会社やメンバーが快く送り出してくれるからこそ、引け目を感じずに、産休・育休期間を自分なりに後悔しない時間にすることが、今、私にできる最善のことなのだと考えています。

また、わが家もそうですが、父親が育休を取得するケースや、子育てを夫婦で分担されている方も多いかと思います。今や、子どもを持つことで、仕事と家庭のバランスで葛藤するのは女性だけではありません。

この記事を読まれている男性の方でも、私と同じような葛藤を抱えた経験をお持ちの方がいらっしゃるのではないでしょうか。迷うことが多い時期だからこそ、男性女性問わずいろいろな方の話を聞いてみたいです。ぜひ、お気軽にTwitterにリプライください!

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