成果につなげる! コンテンツマーケティング最前線

SNSとの“バズ連携”で検索上位を連発! SEOマーケターとタッグを組んだコンテンツとは?

文具市場の8割を占めるライトユーザーをファン化しようと、コクヨがオウンドメディア「コクヨマガジン」を立ち上げ、SNS連携でバズを生んでいる。そのコンテンツ作りや運営術を紹介する。
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「身近すぎてわざわざ検索しない商材」の代表格ともいえる文具。その文具のライトユーザーをファン化しようと、コクヨが日常生活密接型メディア「コクヨマガジン」の運用をスタートした。奥山由希子さんはその立上げから関わり、SEOでもSNSでも快進撃を続けている。

SEOマーケターや敏腕ライターを味方につけて、「文具ファンでなくてもついつい文具を話題にしたくなる」記事作りに成功した。そんなメディア運営の秘訣を、サポートしているFaber Companyの粟倉拓哉、中本俊一とともに探った。

(左から)コクヨ株式会社 ステーショナリー事業本部 奥山由希子さん/株式会社Faber Company ミエルカコネクト事業部 粟倉拓哉、中本俊一/(円の中)PerCoRe合同会社 山ノ内智也さん 

この事例をざっくりまとめると

  • 市場1割のコアファン向けメディアを、8割のライトユーザー向けメディアにシフト。日常生活を切り口に文具への興味喚起を図った
  • コンテンツマーケティングを内製化。SEOに特化したプロ人材を投入し、早期に成果を上げてやる気を維持!
  • 時流を捉え、ユーザーの「困った」に、すぐに応えたコンテンツで、SNSとの“バズ連携“に成功

8割のライトユーザーに情報を届けるには?

――コクヨさんの創業は1905年(明治38年)。100年以上の歴史をもち、商品ユーザーも多いコクヨさんが、なぜ今、新しいオウンドメディアに挑戦されたんですか?

奥山由希子さん(以下、奥山): 文具について日常的に情報収集をする習慣がある、いわゆる文具のコアファンは私たちの調査では1割強ほどです。8割近い人は「自分の文具がどのメーカーのものかはあまり気にせず、能動的に情報収集をしていないライトユーザー」です。

幸い、「コクヨ」自体のブランド認知度は高く、好意的なイメージも持っていただいています。ですからコアファンではない方々にも、1つ1つの文具に意外な工夫やストーリーがあることを認知してもらい、「次はこれ買ってみようか」と商品の指名買いにつなげる流れを作りたいと考えて「コクヨマガジン」を立ち上げました。

「広報としてリリースや社内報を作ってきました。書くことには免疫があったものの、Webで書くのは初めてだった」というコクヨ株式会社 奥山由希子さん

――なるほど。これまでにメディア運営のご経験はありましたか?

奥山: いいえ。私は広報畑で「書く」仕事は長年していましたが、2019年に文具のマーケティング部門に異動し、Faber Companyの営業の片山さんからMIERUCA(ミエルカ)というツールを教えてもらうまで、コンテンツマーケティング、SEOについてはまったくの素人でした。ユーザーの検索意図の話にとても納得感があり、「これはもしかしたら弊社の課題解決に使えるかもしれないな」と感じました。

中本俊一(以下、中本): もともと、コアファン向けに運営しておられたオウンドメディアがありましたよね。

奥山: はい。2015年から「inspi(インスピ)」という文具好きのためのメディアをやっていました。文具業界全体のプラットフォーム的なメディアになることを志して始めたものですが、ここ数年は何となく「コクヨの文具に関する興味深いコラムを出す場所」として落ち着いてしまっていたんですね。

そこでたとえば「在宅勤務の効率を上げたい」「子どもの学校からくる大量のプリントをどうしよう」といった、「ライトユーザーの日常生活の課題」を入り口にした、解決に役立つ文具を紹介するメディアへとinspiを刷新しようと思いました。その際にはドメインを自社サイトに移し、商品情報との行き来がしやすい導線を確保するべき、とも上長に提案しました。

明確なゴールを示す企画書を作成する

中本: 「コクヨマガジン」の企画書を見せていただいた時、コンセプトやカスタマージャーニーをすごくしっかり作られているなと感じました。

「生活の困りごとの解決法の提案」などから、商品の背後にあるストーリーを知ってもらう狙い
ライトユーザーにはメディアに訪問してもらった後、回遊やリピートで関係を深めていくストーリーも練った

奥山: 実は最初に御社カスタマーサクセス(CS)担当の方が、弊社の10人ぐらいにミエルカのレクチャーをしてくださったんです。気合の入った内容で、「SEOは筋トレです」みたいな(笑)。でも他に業務を持っている状況なので、みんな「筋トレ嫌だな」「なんか大変そうだな」って及び腰でした。なので、まずはやりたいことの全体感について、仲間の理解を得ようと企画書を作ったのです。

中本: 素晴らしいご判断ですね。上司の方からすぐ承認は降りたのでしょうか。

Faber Company 中本俊一

奥山: 一時的に多少のコストはかかっても、「目的がわからないものにお金をかけ続けるよりは、新しいことをやってみよう」ということになりました。確実に成果を出せるスキルがない中でやらせてくれたことに感謝しましたし、何とかして結果を出さなくては、とも思いました。

コンテンツ制作のノウハウがたまる体制をつくる

――当初は、ヒト・モノ・カネでいうと、ヒトが足りない状況だったんですね。

奥山: そうですね。私自身が「ミエルカ大学」に通ってSEOの知識を習得し始めていましたが、コクヨマガジン編集部はみな兼任。「ヒト」も「時間」も足りません。かたや、ミエルカ導入時の稟議の条件には、「コンテンツマーケティングの内製化」を明確に入れていました。

制作会社に丸投げではなく社内でスキルを高めて、ノウハウがたまるような運用をしたい。Faber Companyの粟倉さんに相談すると、「記事構成案まで社内で作り、SEOを熟知したプロ人材に執筆を依頼する案」をすすめられました。そして、SEOマーケターであるPerCoReの山ノ内智也さんに、記事の執筆をお任せすることにしたのです。

「コクヨマガジン」コンテンツ制作の体制

――粟倉さんはなぜ山ノ内さんをアサインしたのでしょう?

粟倉拓哉(以下、粟倉): 山ノ内さんは私たちの提供するWebマーケターマッチングサービス「ミエルカコネクト」を活用してくださっていたので、マーケターとしての実績を私たちは知っていました。ECサイト併設のBtoCオウンドメディアを成功に導いたご経験が、この案件とぴったりだったんです。

Faber Company 粟倉拓哉

奥山: 粟倉さんの熱いおすすめで(笑)お会いしてみると、確かにスキルセットがすごくマッチしていました。さらにこちらのオーダーに対して慎重に答える人だなと感じましたね。成果を出すことに対してこだわっているから、安請け合いはしないという印象で、細かい提案も返してくださり、安心感がありました。山ノ内さんだからこそ、最初の依頼原稿でヒットが生まれたんだと思います。

最初の記事が検索1位に! アンケートで一次情報を発信する

――どんなコンテンツでしたか?

奥山: 2020年8月現在、「ノート ルーズリーフ」「大学生 ノート」「大学生 ルーズリーフ」で検索順位1位になっている、こちらのコンテンツです。

現役大学生100人にアンケート! ルーズリーフvsノート どちら派?(2020年8月現在「ノート ルーズリーフ」で検索1位)

奥山: ターゲットは大学新入生。これから始まる授業を前に「ルーズリーフと大学ノート、どちらを用意すればいい?」と悩む気持ちに応えたコンテンツでした。

3月に投稿し、4月で4,000PV、5月で約14,000PVと急増。5月に伸びたのは、やはり今年はコロナで4月が休校だったからと思われます。それ以降は上記の通り、狙っていたキーワードでずっと検索1位をキープし続けています。

――最初のコンテンツで検索順位1位は達成感がありますね。

奥山: ええ。ミエルカの分析データから記事構成案を練り、山ノ内さんに見せてご相談した時、「アンケートをとりませんか?」とアドバイスしてもらえたおかげです。細かな提案をいただき、非常に集客効果の高い、良い記事になりました。

コクヨ公式SNSはTwitter、Instagramともに8万人以上のフォロワーがついていて、文具に関連する話題はかなり皆さんチェックしてくれているんですが、やっぱり1日で終わるんですよね。その点、良いコンテンツをユーザーニーズに合わせてちゃんとキープしておけば、これからも新学期などのタイミングで必ず検索され、見られていくはずです。

奥山さんがライター依頼時に指示書として渡している記事構成案。当初はアンケートや動画はなかった
山ノ内
さん

山ノ内さんに聞いたこの記事のポイント

対象キーワードのSERPs(検索結果画面)を見ると、現役大学生がノートとルーズリーフの比較やおすすめに言及しているコンテンツが上位にきていましたが、n=1でしかない情報です。そこで奥山さんに現役大学生100名へのアンケートをご提案しました。さらにおすすめしたい商材である紙質の違うルーズリーフや、プリントをまとめて綴じられる2穴ルーズリーフバインダーも、実際使っている動画や写真を僕が撮影し、埋め込みました。誰でも知っている「コクヨ」というブランドから、エビデンスのある一次情報が発信できれば、必ず成果が出ると読んでいましたが、狙い通り検索1位を獲得できて良かったです。

ユーザーニーズの読み解き方、構成の立て方は、僕が以前やっていたファッションでも文具でも同じ。改めて私自身も学びになりました。

たった一人の声も大切に。高校生の悩みに応えてSNSでバズを生む

――メディアのターゲットは20〜40代ですが、これで若年層も狙えるとわかったのですね。

奥山: 中高生は主要購買層の1つですが、SNSでしかリーチできないと思っていました。ところが、Instagram(以下、インスタ)で面白いことがあったんですよ。当社のインスタ公式アカウントに一人の高校1年生から「高校の勉強にはノートとルーズリーフ、どっちがいいのか本当に迷っている」と質問があったのです。

そこでアンケートをインスタのストーリー機能であげたら、1日で500名近いフォロワーの方から回答が寄せられました。

ユーザーの声にすぐ答えるスピードもSNS運用では重要なポイント

奥山: それをコクヨマガジンでコンテンツとしてまとめて再度シェアしたところ、ものすごく反響がありました。読んでくれた人からは「私も同じことで困っていた新高校1年生です」といった反応があったり、回答者からは「自分が役に立てたのがすごくうれしかった」との反応がきたりして。一晩で終わっていくストーリーの世界がマガジンの中に続いていき、ストックコンテンツとして活かされていく。この役割分担、いいなと感じました。

高校生からの「自分たちに寄り添ってくれた」「またこういうのが見たい」という感想

粟倉: 双方向コミュニケーションが記事に活かされている点が素晴らしいですね。「高校生 ノート」で8月現在でも検索2位に表示されています。

「お客様の課題解決になっているか」を常に自分に問いかけ、「カラーノート研究会」を始動

奥山: SEOに取り組むと、つい検索順位やPVを追うのが面白くなってきますが、目的は「コクヨについてよりよく知ってもらうこと」「こんな商品が世の中にあったんだと気づいてもらうこと」です。

なかでも「お客様の課題解決につながっているのか」という視点は、絶対忘れちゃいけないポイントだと感じています。「視覚過敏」に関する記事も、そんな課題解決のために、山ノ内さんに依頼しました。

――きっかけは何でしょう?

奥山: 昨年5万人にシェアされたつぶやきがありました。「白いノートだと直射日光を見るように眩しくて目が痛い」。視覚過敏をお持ちの高校生のツイートです。「グリーンの紙のノートが廃番になって困っている」という切実な悩みでした。

コクヨにはグリーンを含めて色上質紙を使ったノートはあったのですが、売れ筋ではないので廃番寸前。しかし求めている人がいる。文具メーカーとして何ができるか考えたいと、4月に「カラーノート研究会」を立ち上げました。

「モニターの方に10冊お配りします。障害をお持ちの方も持っていない方も、あなたのカラーノート活用アイデアを聞かせてください」と。そうしたら90名の枠に対し、なんと6,000人もの応募が殺到しました。

多くのモニター希望者から、カラーノートを待ち望む声が寄せられた

中本: 強烈な数字ですね。ニーズがそれほどあったわけですね。

奥山: しかも「私にやらせてくれ」「これは私のための企画だ」と熱さMAXのコメントがいっぱい集まりました。取組みを知ってもらうことそのものが1つの目的でもあったので、上司からコクヨマガジンでうまく拡散できないかと相談を受けたんです。私も一過性の話題で終わらせたくなかったので、不定期の連載記事にしたいと山ノ内さんに相談しました。

山ノ内
さん

山ノ内さんに聞いたこの記事のポイント

奥山さんは依頼時に必ずWebミーティングで記事の方向性を相談してくださいます。この記事の依頼時に、はじめて「視覚過敏」という障害のことを知りました。求めている人とプロダクトが出会えていなかった状態をつなげるようなコンテンツには何が必要か。検索意図だけでなく、研究会発足の経緯や、コクヨさん側の社会に役に立ちたい気持ちが伝わるような内容をご提案しました。モニター応募した方々の熱いコメントも功を奏し、2020年8月現在も狙っていた「視覚過敏 ノート」で検索1位をキープしています。

世の中のニーズを先読みして、素早く情報発信し、検索順位1位に

――社会課題の解決といえば、今年は新型コロナウイルスの問題でずいぶんライフスタイルが変わりました。メディアで取り組んだことはありますか?

奥山: 弊社では早い時期から在宅勤務が始まっていたので、在宅勤務が一気にスタンダード化する過程では必ず戸惑いが生じるだろうと感じていました。そこで、企画会議で話をし、メリット・デメリット、困っていること、良かったこと等、社員アンケートをとってまとめたんですが、この内容については、大手新聞社からも問い合わせがありました。

――新聞やテレビにとっては格好の素材でしたね。

奥山: 保育園や幼稚園が休校になれば、子どもとのおうち時間の過ごし方に悩む親が必ず出てくる、ということも話し合いました。そこで「コロナ 家遊び」というキーワードで、しかけ絵本を使った家遊びの記事を企画。

山ノ内さんが実際遊んだ様子をとてもリアルに記事(おうち時間を親子で楽しく過ごすための創作絵本・しかけ絵本ベスト5)にしてくださったので、4月は43,000PVに達し、「コロナ 家遊び」で検索順位1位になりました。

山ノ内さんを含む大人6人で真剣に遊んだ作品
山ノ内
さん

山ノ内さんに聞いたこの記事のポイント

構成案をいただいた時、「これは『やってみた』記事にして、豊富に写真を入れましょう」「コロナでの家遊び需要が一段落した後も、少しリライトすれば長く集客し続けられる記事にしましょう」という2点をご提案しました。ただ、納期までに親子で遊ぶ写真を撮ることが困難だったので、親世代にあたる大人6人で、とにかく全力でしかけ絵本で遊ぼうと(笑)。福笑いのシールでも「だれが一番面白いのを作れるか」を勝負して、写真と本文を構成しました。

世の中のニーズの高まりに対し、今すぐできることで素材を集め、スピード感をもって記事を投稿したことも成功の要因だと思います。

奥山: 世の中のニーズにちょっと早く反応して、皆が1番困っているタイミングにはすでに情報を出せていることが大切ですね。在宅勤務関連ではびっくりするぐらいアクセスを集めることができました。

ほかにも、世の「お父さん」の大半は自分の書斎などは持っておらず、リビングのテーブルで仕事をしている、という情報も入ってきたので、「ご飯を食べよう」となった時にすぐ書類やPCを片付けられるファイルボックスの使い方を提案した記事も作りました。

在宅勤務関連記事で紹介したフェルト製のファイルボックス「モ・バコ」を手にする奥山さん

社内でも頼りにされるメディアに

中本:コクヨマガジンの社内での評価はいかがですか?

奥山: 別部署のオウンドメディア担当者から「どうやるの?」と聞かれたり、「認知さえされれば売上が伸びると思っているラベルシールがあるんだけど、メディアで活用術を取り上げてもらえないか」といった依頼が舞い込むことも増えています。

上長にはPV数、平均ページ滞在時間、セッション当たりのPV数、直帰率、リピート率などを月次でKPIレポートとして出していますが、数字を見ながら一緒に試行錯誤を楽しんでくれています。

中本: 周囲を説得するために自分の構想を企画書で伝えることや、数字できちんと成果をレポートして周囲をやる気にさせること。奥山さんの「施策の見える化」はプロジェクトを推進する上で、大変で難しいことですがすごく大事な点ですよね。

リアルイベントとの連携でファン化を加速したい!

――「コクヨマガジン」の今後の目標を教えてください。

奥山: 短期的には、内部リンクなどの導線をしっかり整えるなどして、回遊率の向上を目指しています。長期的には、Webとリアルでコミュニケーションがとれるメディアに育てられたら面白いですね。「モニター会やります」とか、「マガジン読者の方だけの即売会やります」「限定品を作りました」とか。

無関心から入ってきた人たちを集客→接客→ファン化していくために、単なる商品認知だけに留まらない文房具全般に対する興味や、コクヨに対する興味が少しでも上がっていくような取組みを続けたいです。

――リアルイベントとメディアの連携も楽しみですね。ありがとうございました!

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