【漫画】デジマはつらいよ

「お客様を理解している」は思い込み!?「無知の知」で真のインサイトにたどり着け!/【漫画】デジマはつらいよ・第12話

顧客のインサイトがつかめずに焦っているルリに対し、虎は「無知の知でお客様の目線に立ち戻れ」と檄を飛ばす。

前回までのあらすじ!

社長の肝いりで始まったOMOプロジェクト。リーダーに抜擢されたルリは、顧客の真の欲求、真のインサイトがつかめずに悩んでいた。

ここから始まります

インサイトとは何なのか?ようやくわかりましたね!お客様の潜在的な欲求を探り当てて…最高の体験を提供できるように頑張ればいいんだな!あれ…あれ…実はそれってめちゃくちゃ難しいんじゃ…
お客様の真の欲求は何なのか…そして何を提供すればその欲求は満たされるのか宝石を買う人の心の奥にあるもの大金を出してまでも宝石に何を求めているの…?同世代の私が一番お客様のことをわかっているはず
私がなんとかしなきゃ1週間後おーどうだーうちの顧客のインサイトはわかったかわかりません~まぁそう簡単じゃないからな
どれどれ石をたくさん買ってくれる優良顧客のインサイト案●もっとオシャレがしたい●人と違うものをつけて目立ちたい●服装に合わせて石を身につけたい●大人になりたい●特別な時間を演出したい●きれいだから手元に置いておきたい●投資●気分を上げるため●幸せになれるなかなかピンとくるものが見つからなくて私の経験から言って――ほとんどのお客様はオシャレがしたくて石を買うと思うんですよでもそれは今までの顧客アンケートでもわかっていた事です前に教わった「右目・左目分析」などもやってみたんですけど新しい発見が中々なくて…う~んムチムチが足りないかなへ
無知の知ギリシアの哲学者ソクラテスの言葉だと言われているソクラテス(紀元前469年~紀元前399年頃)ソクラテスは知恵者との対話を通して自分の知識が完全ではないことに気がついたしかしソクラテスは無知であることを知っている点において知恵者と自認する相手よりわずかに優れていると考えた「知らないことを自覚する」それがムチムチだ無知の知ですね
なるほどそれがどうしたんですか?ルリはさっき「私の経験から言って――」と言ったよねええその言葉は『お客様の事を自分はわかっている』っていう思い込みが前提にあるんじゃないかな!確かに…マーケターが最も陥りやすい罠のひとつがデータや経験から「自分はお客様の事を理解している」と思い込んでしまう事だしかし俺たちはお客様の事なんて本当は何もわかっていない
「無知の知」の意識でお客様の目線に立ち戻らなければ真のインサイトにはたどり着けない!!なるほどわかりましたもう一度何も知らないという前提で調べてみます絶対にインサイトにたどり着いてやる!あの……そういえばちょっと気になるデータがあるんだけどへ
優良顧客の分布にバラツキが無いか調べてみたんだけど明らかに特定の店舗に偏ってるんだよねここは若い人が集まるからだろうなって思い込んでいたんだけどまさに無知の知なにか秘密があるのかもしれない特にこの店は優良顧客構成比が顕著に高いんだよねあれ ここってパイセンのお店じゃほぉそうなんだパイセンのお店にヒントがあるかもしれないなにか寒気がする

次回に続く

第12話のまとめコラム:無知の知とFACTFULNESS(中澤伸也)

こんにちは、『デジマはつらいよ』原案者の中澤です。

マーケティング支援企業のReproでCMOをやっています。noteで定期的に情報発信もしているので、興味ある方はそちらも読んでみてください。

今回のテーマは、マーケターが持つべき姿勢(体幹と呼んでいます)の1つ、「無知の知」です。

このテーマを選んだ理由は、昨年たいへん話題となった本、ハンス・ロスリングほか著『FACTFULNESS』(日経BP、2019年)でも指摘されているとおり、ネットでさまざまな噂や憶測が飛び交い、情報量が加速度的に増えていく世界の中で、思い込みをいかに捨て、正しく世界を見ることができるかが、マーケターにとって非常に重要であると感じているからです。

無知の知とは何か?

「無知の知」とは、漫画でも解説しているとおり、古代ギリシアの哲学者ソクラテスが言ったとされる言葉で、「自分の知識が完全ではないことに気がついている」人こそ知恵者であり、「無知であることを自覚することで、新たな学びを行うことを促進し、その結果、無知を克服し成長する」という姿勢を表します。

自分の考えとしては「無知の知」を、常に自分の知識や常識だと思っていた「前提」を疑い、データをもとに正しく知識や理解をアップデートしていくことであると捉えており、顧客と企業・サービスをつなぐ役割であるマーケターにとって、必須のスキル、姿勢であると考えています。

なぜ、マーケターが常に「無知の知」を意識して行動しなければならないのか。それは「人は意外なほど思い込みに左右されやすい」という背景があるからに他なりません。

人は思い込みの生き物

『FACTFULNESS』は、「人は思い込みに支配されやすい。だからこそデータにもとづいて世界を正しく見る習慣を身に着けるべきである」ということを提唱している本です。人が陥りやすい「10の思い込み」を本能と呼び、世界をリードする知識人などでも、皆、思い込みによって世界が正しく見えていないということを指摘しています。

特に有名なのが、書籍の冒頭で出される、世界の変化の常識に関する12の質問(3択)です。人間の平均点は「12問中2問正解」で、これは答えをランダムに選んだチンパンジーの正解率(12問中4問正解)に負ける、という事実です。

たとえば、第1問はこのような質問なのですが、あなたは正解できるでしょうか?

質問1:現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を修了するでしょう?

  • A:20%
  • B:40%
  • C:60%

答えを知りたい方は、本を読むか、共訳者の上杉周作氏が作成したオンライン版のクイズがあるので、ぜひ一度チャレンジをしてみることをお勧めします。

思い込みを捨てるということは、自分の頭で考えるということ

思い込みを捨てるということは、言い換えれば、事実を正しく認識し自分の頭で考える、ということに他なりません。たとえば、こんな言葉が社内で飛び交っていたりしないでしょうか?

  • 「お客さまが一番気にするのは、結局価格だよ!」
  • 「競合に比べて機能が足りないから、うちの製品は売れないんだよ!」
  • 「チラシはもう効かないよね」

本当にそうでしょうか? お客さまが気にしているのは、価格や機能の豊富さでしょうか?「右目左目分析」により、正しくお客さまの課題やインサイトを捉えているでしょうか?

社内の常識というものは、思いのほか強力です。意外なほど多くの場面で、この「常識(前提)」をもとに議論が行われ、企画が立案されていたりします。

われわれマーケターは顧客と企業・サービスをつなぐ役割を担っています。その基本姿勢、体幹として、常に「無知の知」を意識し、それを実践していく必要がある。そう私は考えます。

次回に続く

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