フランチャイズのためのローカルマーケティング戦略構築6つの手順
家をおおまかに塗装するならローラーが適している。しかし、優れた芸術作品を制作するのならもっと細い筆が必要だ。
フランチャイズビジネスにおけるマーケティングが直面している問題がある。次のようなものだ:
全国レベルのマーケティングの方法は知っているが、より細かく各地の顧客にリーチするための道具立てが欠けている、そうしたフランチャイズが実に多い。
「いま取り組んでいるパーソナライズの最も重要なものは検索結果のローカライズだ」と、グーグルが明言している。マーケティング計画にローカルの視点がないフランチャイズは、機会を失っている。
実際には、競合相手もさほどローカル視点をもたずに進めていて、機会を失っていることだろう。つまり、チャンスだ。あなたがマーケティングを担当しているフランチャイズにとって、州・地域・コミュニティの差異を考慮した新しい絵を描くための大きなキャンバスが目の前に広がっているということだ。あなたは今、競合を気にせずに、自由に絵を描けるのだ。
マーケティングのローカライズの有名な例として、マクドナルドの例がある。マクドナルドは、ハワイ州ではスパムを出し、ニューメキシコ州ではグリーンチリチーズバーガーを提供している。みなさんのフランチャイズでマーケティングを進める場合に中心になるのは、
- 言葉の地域による違いにあわせたコンテンツのカスタマイズ(「サブマリン・サンドイッチ」と記述するのか「ポーボーイ」と書くのか)
- 季節商品をプロモーションするタイミングの地域差の把握(カリフォルニア州とノースダコタ州の天候の違い)
などになるのかもしれない。
必要なのは、全国規模の優先課題から地域特有の顧客まで対応できるマーケティング計画だ。包括的な戦略が欲しくなってきたなら、まずMozの提供する「フランチャイズマーケティングの実践的ガイド」をチェックしてみてほしい。
ローカルマーケティング戦略を策定するためのステップバイステップガイド
全国規模のフランチャイズがサービスをカスタマイズできるように、この記事では地域の顧客をよく知るための基本を見ていく。戦略は、以下で解説する内容を中心に構築していってほしい。
ターゲットオーディエンスを把握する
まずは、顧客がどんな人たちなのかを把握する必要がある。
既存のフランチャイズの場合は、観察や質問だけで済むから簡単だ。オンライン調査も1つの手だし、営業している場所で簡単な顧客アンケートを実施してもいいだろう。
調査すべき項目は以下のとおりだ。
デモグラフィック
顧客に多い年齢、性別、所得水準、およびそれらに関連する特徴。
サイコグラフィック
顧客の考え方。フランチャイズとかかわるうえでの顧客の態度、行動、信条など。
困っていること
こちらが解決できるかもしれない問題を顧客が抱えていないだろうか?
健康な食生活を送りたいのに時間がない顧客がいるかもしれないし、もっと体を鍛えるのに適したジムを知りたがっている顧客がいるかもしれない。
消費習慣
どこで購入するかを顧客はどう決めているのだろうか?
ネットを使っているのか?
スマートフォンを持っているのか?
レビューやレコメンデーションを重視しているのか?
動画やポッドキャストを好むのか?
よく使うソーシャルプラットフォームは何か?
どんなイベントに参加しているのか?
カスタマージャーニーを理解する
マーケターはいわゆる「カスタマージャーニー」の考察に多くの時間を使う。つまり知りたいのは、
- ブランドの存在を知る前
- ブランドの存在を知った後
- 買うまで
- 買った後
といった各段階で、顧客とブランドの間で何が起きているのかだ。
それには体験をいくつかの段階に分けるのがいちばんいい。各段階でプロセスから外れる人がいるのがわかる。
フランチャイズ事業者はほとんどが、カスタマージャーニーを「セールスファネル」という形で認識している。
このセールスファネルについて、次に解説していく。
セールスファネルをマッピングする
セールスファネルを単純化すると次のようになる。各段階で自分の顧客に何が起きているのかを、じっくりと解明しよう。そうすれば、次の段階に進んでもらうために何ができるのかについて、大きく理解が深まる。
認知
フランチャイズの存在を最初に見つける段階。これ以降、顧客は目にするものに基づいてそのブランドに関する意見を形成するようになる。
この段階になってもらうきっかけは、フランチャイズ事業者の活動による場合が多い(全国放送のテレビ広告キャンペーンなど)。
しかし、フランチャイズ加盟店の活動による紹介や参照を通じた認知もある(検索ユーザーがスマートフォンのGoogleマップで見つける場合など)。
発見
フランチャイズと商品に関する情報をすでに知っている顧客が、積極的にもっと詳しく知ろうとし始める段階。
このあたりからネットで調べる人も多くなる。潜在顧客とその友人や家族の間でやりとりされる局所的な口コミもある。
検討
そのカテゴリの商品を購入しようとは思っているものの、どの商品をどこで買うかはまだ決まっていない段階。
この段階での行動としては、店に立ち寄ったり、電話をかけてきたりすることがある。ウェブサイトやリスティングで営業時間やメニュー、価格表を見ることもある。
この段階を進んでもらうには、フランチャイズ事業者とフランチャイズ加盟店、両者の活動が影響する。
意志
特定の商品を特定店舗で購入しようと決めてくれた段階。
しかし、まだ安心はできない。
営業時間や地図に記載ミスがあるために顧客が店まで行けずに諦めてしまうなど、ローカルのビジネスリスティングに関する情報の不備でフランチャイズ事業者が顧客を失う可能性がある。
また、店舗まで行ってくれたとしても、
- 店が汚い
- 待ち時間が
- 在庫切れ
- 価格が高い
- 顧客対応がいい加減
といった店舗体験の問題によってフランチャイズ加盟店が顧客を失う可能性もある。
購入
購買などの行動が行われる段階。一般的にはすべてをフランチャイズ加盟店が取り仕切る。
忠誠
要はファン化だ。購入してくれた人がその後に次のような行動をしてくれるかを左右するのが、この段階だ。
- また来店して購入してくれる
- お店を人に薦めてくれる
- 良いレビューを書いてくれる
- 良い評価をつけてくれる
商品(メニュー)、価格、方針などフランチャイズ事業者のレベルで決定されるものを除くと、これも普通はフランチャイズ加盟店が取り仕切る部分だ。
こうした態度変容や行動は、短期間で進む場合もあれば、長い時間を要する場合もある。
アイスクリームの広告を見てダブルスクープのサンデーを買うときならば、ファネル全体は短時間で完了するだろう。しかし、適切なファイナンシャルアドバイザーを選ぶ場合ならば、何週間もかかることに不思議はない。
顧客の考え方や判断や行動のきっかけに何が影響するのか、それを把握することが重要なのであり、フランチャイズの事業者のレベルでも加盟店のレベルでも、意思決定と販売活動を左右する。
競合相手を調査する
ブランドの大半は、すでにほかの全国的ブランドのことを考えてポジショニングを工夫しているため、ここで調査するのはフランチャイズ加盟店が中心になる。
地元市場における直接の競合相手がどこなのか、時間をとって把握しよう。ほかの大きなブランドのほかにも、フランチャイズ事業者が把握していない地元の中小ビジネスがおそらくあるはずだ。
そうした競合に関して、次のようなことを調査しよう。
- 強みや弱み(自店との比較)
- ターゲット層(自店との比較)
- 実施しているマーケティング活動
こうした情報があると、地元市場でシェアを拡大するためのポジショニングに役立つはずだ。
たとえば、次のような状況で、あなたはどう考えるだろうか?
あなたはスポーツジムのフランチャイズでマーケティングを担当している。調査してみると、あるスポーツジムが競合していた。
競合相手はウェイトトレーニングやマシンエクササイズに力をいれていて、現状で自社ブランドはその点では相手にかなわないとしよう。向こうは若い男性とアスリートを中心にマーケティングしていて、地元のラジオに宣伝を打っているとする。
おそらく、次のようなことが考えられる。
- 有酸素運動とヨガのクラスに力をいれる
- 女性や年輩の顧客獲得にもっと取り組む
または、栄養学のクラスを追加すれば、体重を減らそうとしている人たちの力になれるかもしれない。
オーソリティを構築する
ここまで進めたら、顧客がどういう人たちでどのような流れで購入するかを理解し、地元市場におけるフランチャイズのポジショニングをどう計画するべきかがわかったはずだ。
次は行動だ。その計画を下支えしてくれるコンテンツを制作していこう。
フランチャイズ事業者側の人間にとって、ここで「コンテンツを制作する」ということが意味するのは、ダイナミックで魅力的なコンテンツを用いて、有益な情報が得られるおもしいウェブサイトを作成することだ。
ここでは、「売るため」のコンテンツに走ってはいけない。
ものを売るためだけではなく、次のようなことを目指さなければならない。
- 顧客の啓発
- 情報提供
- 人を楽しませること
ウェブサイトは、エンゲージメントのポイントを顧客にたくさん提供するほど、顧客がコンテンツを読み、共有し、リンクする理由が増え、オーソリティ(信頼性)の構築につながる。
最初に「売ることに走ってはいけない」とは言ったが、実際に最も価値が高いコンテンツとは、訪問者がすぐに顧客へと変わる要素やページだ。その点も忘れてはいけない。
ソーシャルメディアに載せるコンテンツも同じ指針に従い、できるだけサイトに誘導する。その際に大切なポイントとして、専門家らが次のように提案していることを知っておいてほしい。
作成する投稿のポートフォリオは次のようにすべきだ:
- 60%は注目を集めるタイムリーなコンテンツ
- 30%は共有コンテンツ
- 10%は商品やサービスの宣伝
商売につなげるための投稿は10%程度にとどめるべきだ。
(Mediumより)
そして、忘れてはいけないのがリンクビルディングだ。
グーグルのアルゴリズムにサイトの影響力を示してオーソリティと検索順位を高めるために、リンクビルディングに時間をかけよう。
リンクビルディングのコツをいくつか紹介する。
競合相手にはリンクしているが自分のところには(まだ)リンクしてくれていないサイトを見つける(Mozの「Find Opportunities」機能を使うと楽だろう)。
すでに自分のサイトに言及してくれている人を探してリンクを依頼する。
広報コミュニケーションやニュース作りのようなことをして、サイトにリンクしてくれるよう記事でお願いする(こういうことは地元のフランチャイズ加盟店が得意だ)。
地元の業界団体、コミュニティ組織、商業団体にリンクを依頼する。
イベントを後援してリンクを依頼する。
奨学金を創設して地元の教育機関のサイトに掲示する。
リンクビルディングと非構造化サイテーションについて、詳細な情報と増やし方を知りたい人は、Mozの記事「ローカルSEOのためのリンク付き非構造化サイテーションビルディングガイド」を参照してほしい(英語のみ)。
チャネルと予算を効率よく管理する
オーソリティのある質の高いコンテンツと効果的なウェブサイトがそろったら、使えるチャネルの管理に力を注ごう。
これは、予算の効果的な管理も含んでいる。フランチャイズ事業者は予算の大半をブランドに集中させており、フランチャイズ加盟店によるローカルマーケティングのための予算はあまり残されていないことが多いかもしれない。考えるべきポイントを紹介する。
まずはリスティング:
ローカルリスティング(グーグルマイビジネス)を作って管理することには、それほどお金がかからない。しかし、ローカルリスティングがマーケティングにもたらす全体的な価値はきわめて大きく、文字通りレジまで人々を連れてきてくれることもある。ローカルビジネスのリスティングの充実は最優先事項だ。
ソーシャルプロフィールは全部盛りで:
フランチャイズ事業者は、ディレクトリリスティングとソーシャルプロフィールをきちんと管理するようにしよう。Googleマイビジネスのプロフィールを完成させ、FacebookやYelpといった主要なソーシャルメディアやレビュープラットフォームでプレゼンスを構築しよう。
予算は賢く:
フランチャイズの事業者や加盟店のマーケティング予算は、顧客がどんな人たちでどのようにリーチするのが最適なのかを戦略的に把握してから配分を決める。
フランチャイズの「点描画」
フランチャイズマーケティングをうまくやるためには、点描画を確立した画家、ジョルジュ・スーラの目が必要だ。つまり、無数の小さな点の中に命を見いだし、傑作を描き出す能力が求められる。この「フランチャイズの点描画」は、次のような点で構成される。
- 一人ひとりの顧客を表す点
- 顧客のコミュニティ全体を示す点
- 地図上の所在地を示す点
- エンゲージメントが生じるウェブ上の点
- エンゲージメントが生じるオフラインの点
- フランチャイズ事業者から加盟店まで、フランチャイズのあらゆるレベルのリソースを示す点
Mozの専門家の力を借りてもっと詳しく知りたい人は、このガイドをダウンロードしよう(再掲)。
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