【レポート】アナリティクス サミット2019

「SHOPPING GO」「LINEデリマ」などO2Oサービスを多数展開するLINEが語るデータ活動のポイントと事例

「セールスやマーケター」「データアナリスト」「エンジニア」の3者が密にコミュニケーションを取ることが重要

データ分析は、どれだけビジネスに直接的に貢献できるかが重要である。そのために、「セールス・マーケター」「データアナリスト」「エンジニア」の3者がコミュニケーションを取り、活用目的やデータに対する共通理解を持つ必要がある。

アナリティクス アソシエーション(a2i)主催で4月9日に開催された「アナリティクス サミット 2019」に登壇したLINEの保田氏は、「新サービスを出し続けるLINEのO2Oビジネスデータ活動」と題し、LINEがどのようにデータの収集、分析、活用を行っているか明かした。

保田昌彦氏
LINE株式会社 O2Oカンパニー ストラテジックテクノロジーチーム マネージャー 保田昌彦氏

O2Oの新サービス創出にデータを活用するLINE

2019年に社内カンパニー制度によりO2Oカンパニーを設立したLINEは、現在までさまざまなO2Oサービスを展開し、その範囲を広げてきている。LINEでは、どのようにデータを活用して新サービスを設計し、サービスの質の向上や新規ユーザー獲得を行っているのだろうか。

O2Oカンパニーでは、この2年間で「LINEショッピング」「LINEデリマ」「LINEトラベル」「SHOPPING GO」と、4つのサービスを始めており、さらに2019年春には「テイクアウトサービス」をリリースする計画だ(「LINEポケオ」の名称で4月18日に先行リリース済み)。これらのサービスをベースに、下記3分野でO2Oサービスを展開している。

  • ショッピング
  • グルメ
  • トラベル
「ショッピング」「グルメ」「トラベル」の3分野でO2Oサービスを展開

データ分析チームは、事業部とは別にエンジニアサイドにある場合や、ビジネスサイドにあっても事業部とは別の組織となっている場合があるが、LINEでは、O2Oカンパニーの中で機能するようにデータ分析チームが置かれていると保田氏は説明する。

データ分析チームのミッションは「どれだけビジネスに直接的に貢献できるか」となる。ただデータを提出して終わりにしたり、目的が不明のままデータを提出したり、結果をわからないままにしたりすることはなく、共にビジネスについて考えるため、データ依頼者とコミュニケーションを取ることが重要だと保田氏は訴える。

データ活動の3段階「収集」「分析」「活用」

データ活動は下記の3段階に分かれる。

  1. データ収集
  2. データ分析
  3. データ活用

STEP ① データ収集

LINEのO2Oカンパニーでは、「データを収集してから活用を考える」のではなく、「活用を考えてから収集する」という手順を取る。やりたいことや目的を実現することを意識してデータを収集することで、活用や加工、分析を行いやすい形でデータを収集し、データ基盤を作ることができるというのだ。

このようにデータを収集するためには、「セールスやマーケター」「データアナリスト」「エンジニア」の3者が密にコミュニケーションを取ること、活用目的やデータに対する共通理解があることが重要だ。これは、新ビジネスにデータを活かしたり、既存ビジネスを活性化させたりすることにつながる。

データ収集活動においては、活用目的、データの共通理解が重要

STEP ② データ分析

データ分析活動は、下記の3つに分かれる。

  • データ抽出
  • レポーティング
  • データ分析

中でも注意が必要なのは「レポーティング」で、求められるままにレポートを作るだけでは、断片的で一貫性のあるものとならない。セールスやマーケターの活動シナリオに沿ったレポートにすることが重要となる。

「データ分析」では、「●●の効果はどうか」「××の影響はあったか」などといったアドホック(限定的)なデータ分析を行っているほか、各O2Oサービスの定例会には何かしらのデータを持って行って、データを共有するようにしているという。

データ分析活動の3分類

また、O2Oカンパニーのデータ分析チーム以外にも、LINE全社でのデータ分析を行うデータ専門研究開発組織「Data Labs」ともコミュニケーションとも連携しコミュニケーションを取りながら活動していることを保田氏は明かしている。

STEP ③ データ活用

このような段階を経て、O2Oカンパニーではどのようなデータ活用を実施したのだろうか。保田氏は、同社が行ったデータ活用の実事例を紹介した。

事例:SHOPPING GO

店舗でバーコードを提示することでLINEポイントがもらえる「SHOPPING GO」サービスでは、「もともと購入する予定の顧客がバーコードを提示して購入しているだけで、新規顧客は獲得できないのでは」というクライアントからの疑問があった。その疑問に答えるために、購入時にバーコード表示をするための流入経路を計測した。

その結果、店頭で案内している「LINEマイカードからの流入によりSHOPPING GOを利用した顧客」(27%)よりも、店頭で案内していない「SHOPPING GOの公式アカウントやホームアイコンからの流入によりSHOPPING GOを利用した顧客」(73%)の方が多いことが分かった。

これにより、SHOPPING GOからのユーザー集客(送客)が有効であろうとデータから導き出すことができた

事例:LINEデリマ

出前・宅配・デリバリーサービスの「LINEデリマ」には、「初回注文ユーザーを増やしたい」という課題があった。

そのためには、「エリアを登録しているが未注文」のユーザーに早めに初回注文をしてほしいと考えた。ユーザーがエリア登録後何日で初回注文を行っているかを調べると、半数以上が登録当日に注文しており、登録の翌週には注文から遠ざかってしまうということがわかった。

そこでLINEデリマでは、エリア登録後に注文を行っていないユーザーが翌週を迎えたタイミングで、初回注文および平日ランチ限定で30%のポイントバックがもらえるキャンペーン告知を配信。初回注文してくれるユーザーを増加させることに成功した。

事例:テイクアウトサービス(LINEポケオ)

保田氏は、2019年春にサービス開始するテイクアウトサービス(「LINEポケオ」の名称で4月18日にリリース済み)は、LINEデリマのデータを分析して活用することで生まれたものだと明かした。

LINEデリマでは週末の利用が多いが、利用者が少ない平日にビジネスチャンスを見出した。また、LINEデリマのユーザーは、同じ曜日に同じジャンルの食べ物をリピート注文することが多いという分析によって、食が習慣化していることがわかったという。

そこで、ONLINEでデリバリーしてくれるLINEデリマは週末に利用し、平日は会社帰りにOFFLINEでお店からテイクアウトするというビジネスモデルができあがったのだ。

テイクアウトサービス(LINEポケオ)のO2Oモデル

最後に保田氏は、「LINE COMMERCE GATEWAY(LINEはすべてのショップの入り口へ)というサービスコンセプトで、これからもO2Oを盛り上げていきたい」と語り、講演を締めくくった。

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