検索に強いコンテンツは「曖昧キーワード」からでも作れます。 隠れた検索意図を見つけだす方法とは?
検索エンジンからの集客を考えるなら、検索意図を満たすコンテンツを作ることが大切です。それはわかっていても、検索意図がすぐにわかるものばかりなら苦労はしません。なかには、検索意図が「わかりづらい」キーワードもありますよね?
キーワードに反映されていない「隠れた意図」が存在することもあれば、同じキーワードでも入力したユーザーによって「まったく別の視点や意図」を持っていることもあります。
私たちは、検索意図がわかりづらいキーワードを「曖昧キーワード」と呼び、意図が明確なキーワードとは違う工程でコンテンツを設計しています。今回は、曖昧キーワードの本当の検索意図をひもときながらコンテンツを作る方法を解説します。
キーワードには「明確キーワード」と「曖昧キーワード」がある
同じ検索クエリでも、「明確キーワード(意図を特定しやすい)」と「曖昧キーワード(意図が不明確・複数ある)」が存在します。以下の表を見てみてください。明確キーワードは検索の意図が1つなことに対し、曖昧キーワードはいくつもの意図があります。
キーワードの種類 | 意図 | ||
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明確キーワード | ① | ディズニーランド 行き方 |
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② | ズボン たたみ方 |
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③ | 妊娠 報告 職場 |
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曖昧キーワード | ④ | USJ アトラクション |
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⑤ | ズボン 収納 |
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⑥ | 職場 女性 |
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意図が1つである明確なキーワードなのか、意図が不明確もしくは複数存在するのかは、実際の検索結果を注意深く観察しながら、ユーザーの心理を考えていくと分類することが可能です。
たとえば、次の図は明確キーワードの③「妊娠 報告 職場」と曖昧キーワードの⑥「職場 女性」の2つのキーワードの検索結果を比較したものです。「妊娠 報告 職場」が1つの意図なのに対し、「職場 女性」は意図にばらつきがあることがわかります。
意図が明確なキーワードの検索結果では、上位に表示されるコンテンツすべてが同様の内容です。それに対し、曖昧キーワードの検索結果では、上位に表示されるコンテンツの内容にばらつきがあります。「職場 女性」というキーワードは、検索するユーザー(ペルソナ)も男性と女性がいるうえ、内容も「恋愛」と「人間関係」でばらつきがあります。
曖昧キーワードは「1つの意図」をめがけてコンテンツを作る
意図にばらつきがあるキーワードなら、「すべてを網羅してコンテンツを作れば多くのユーザーを集客できるのではないか」と考えるかもしれませんが、それはおすすめできません。複数の意図を無理に網羅しようとすると、「職場の女性へのアプローチ法と、職場で人気の女性になる方法、さらに職場の女性と人間関係に悩む方への対処法まで」というおかしなコンテンツを作ることになってしまいます。
「曖昧キーワード」に関しては、次の手順を踏んで意図の種類を1つに特定し、その「ユーザー」に向けたコンテンツに絞り込む必要があります。
- 意図を分解する
- どの意図を選ぶか判断する
たとえば「ペルソナ=男性で、職場に気になる女性がいる人」と1つの意図に絞り込むなら、「職場の女性、脈あり?の判断とアプローチ法」というようなコンテンツを作っていくという具合です。
明確キーワードでも隠れた意図があることも
先ほどの表の「明確キーワード」のなかに1つ「入力されない意図」が存在することにお気付きでしょうか?
答えは②の「ズボン たたみ方」です。これは目的がはっきりしている明確キーワードですが、実はキーワードにはない「上手に、キレイにたたみたい」という隠れた意図があります。検索結果上位を見てみると、次の図のようにテクニックを意味する言葉が多く見られるのです。
ズボンは「たたみ方A、たたみ方B、……たたみ方10選」のような「複雑なたたみ方の網羅コンテンツ」が望まれているわけではなさそうです。「ズボン たたみ方」と検索する人は、一体何を知りたいのでしょうか。
「シワができる」「今のたたみ方だとうまく収納できない」などの悩みがあるからこそ検索しているのではないでしょうか。それを読み取らずに、キーワードだけを見て網羅系のコンテンツを作ると、意図ズレを起こしてしまいます。
健康系の曖昧キーワードは、意図によって検索結果がまったく違う
もう1つ曖昧キーワードの事例を挙げましょう。健康系キーワードで、複合ワードではない1単語のキーワード、たとえば「肩こり」や「冷え性」などは月間検索回数が1万以上のビッグワードです。検索結果を見ると、ナビゲーション(目次)ページではない1ページコンテンツ(記事)が多くヒットしています。
1単語だけなので意図がわかりづらい「曖昧キーワード」ではありますが、「入力されない隠れた意図」を読み取って、コンテンツに盛り込むことで1ページで上位を獲得する確率を上げることができます。具体的な例を挙げて説明しましょう。
「肩こり」と「冷え性」の検索意図の差とは?
「肩こり」と「冷え性」、どちらも血行不良から来る悩みなのに、検索結果が大きく違ってきます。次の図は、左側に「肩こり」の検索結果を、右側に「冷え性」の検索結果を並べたものです。
「肩こり」の検索は「今すぐ対策」が欲しいユーザーが多い
まず「肩こり」の検索結果を分析してみましょう。検索結果を見ると、「肩こり」と検索する人は「今すぐ対策」を求める傾向が強いのではないかと感じます。それは、「○分で解消できるストレッチ」や「ツボ押し」など「つらい肩こりを今すぐ解消したい」というコンテンツが上位に来ていることから推測できます。
キーワードに対するニーズはキーワードサジェストからも傾向がうかがえます。「肩こり」で表示されるキーワードサジェストでは、原因・改善など「根本から解決しよう」と考えるキーワードよりも、いっときの解消法を求めるキーワードの方が、検索回数やキーワードのバリエーションが多く見られます。
「冷え性」の検索は「根本解決」が欲しいユーザーが多い
同様に「冷え性」の検索結果も分析してみましょう。「肩こり」と違って、「冷え性」の検索結果ページの上位には「原因」「改善」などのコンテンツが多く見られました。この傾向はキーワードサジェストを見ても明らかです。「冷え性」で表示されるキーワードサジェストでは、「冷え性改善 食べ物」など、根本的に体質改善を考えているキーワードが多く見られます。
もしあなたが「肩こり」や「冷え性」でコンテンツを作るのならば、こうしたユーザーの意図をしっかり把握しておかなければなりません。どちらも慢性化する症状で悩みが深い、一見似たキーワードではあります。しかし「肩こり」と検索する人は「今まさに症状が出ている状態」で検索しています。一方、「冷え性」と検索する人は「日々の悩みにサヨナラしたい」と思いながら入力しています。
そうした心の動きを感じ取ったうえで提供するコンテンツを設計していきましょう。ここからは、「肩こり」と「冷え性」のキーワードで実際にコンテンツを設計してみます。
「肩こり」と「冷え性」でコンテンツを作るなら?
それぞれの注意点を踏まえて全体の設計をイメージする
まずは「肩こり」のコンテンツを作ると想定して考えてみます。
通常なら、起承転結を考えて「原因 → 対策1 → 対策2……」と進めたいところです。「肩こり」コンテンツではそうもいきません。なぜなら、「肩こり」で検索するユーザーは「今すぐ対策を知りたい」気持ちが強いので、今すぐ解決にならないウンチクを記事の前半でつらつら書いては、短時間で直帰してしまう恐れがあるからです。必ず「今すぐ実践できる具体的な内容」からコンテンツを開始しましょう。
とはいえ、「肩こり」も根本解決案を出しておきたい悩みキーワードではあります。実は筆者も肩こりが慢性化してつらい時期があり、食事や入浴、睡眠で根本から体質改善した経験があるので、「原因+改善コンテンツ」はぜひコンテンツ化したいところです。しかし、いきなりそれを伝えても受け入れられないことが、検索結果・キーワードサジェストからわかったのでグッと我慢して、構成案を作成します。
次に「冷え性」のコンテンツを作るときの注意点です。
「冷え性」のキーワードでは「肩こり」の場合とは別に「原因を特定し体質から改善したい」というユーザーの意図が見えました。そのため、教科書的に「原因」+「体質改善」の提案をわかりやすく、実践しやすい内容で設計をすることが望ましいと考えます。
- 「肩こり」……これだけでは何が知りたいかわからない曖昧ワード
→「今すぐ解消できる方法を知りたい」というユーザー・意図に特定 - 「冷え性」……これだけでは何が知りたいかわからない曖昧ワード
→「原因を学び、根本的な改善法を知りたい」というユーザー・意図に特定
このように意図を特定してコンテンツを設計していきます。それでは、ここからは実際にコンテンツを作っていきましょう。
なお、ここでは「検索意図に応える」ことを重視したコンテンツの構成例を解説しますが、これは、「良質なコンテンツ」を作ることが大前提で、さらに検索意図の観点を追加するという視点で理解してください。
今のSEOでは「キーワード」よりも「検索意図」の重要性が高まっていますが、何よりも重要なのは「良質なオリジナルのコンテンツ」です。コンテンツ制作にあたっては、検索意図に応えるという切り口を意識したうえで、訪問者に価値を提供できる、正しい内容の良質なコンテンツを心がけましょう。
「肩こり」の検索意図に応えるコンテンツの構成例
まず、「肩こり」のキーワードサジェストを月間検索回数順に見ていきます。
キーワード | 月間ボリューム |
---|---|
肩こり | 15.0万 |
肩こり 解消 | 5.5万 |
肩こり ストレッチ | 3.7万 |
肩こり 頭痛 | 3.0万 |
肩こり 原因 | 2.0万 |
肩こり ツボ | 1.7万 |
肩こり 薬 | 1.4万 |
肩こり ネックレス | 1.4万 |
肩こり 解消 グッズ | 1.1万 |
肩こり 病院 | 0.7万 |
肩こり ひどい | 0.6万 |
肩こり グッズ | 0.6万 |
肩こり 吐き気 | 0.6万 |
肩こり 体操 | 0.5万 |
肩こり 湿布 | 0.5万 |
肩こり 枕 | 0.4万 |
肩こり 頭痛 吐き気 | 0.4万 |
肩こり めまい | 0.3万 |
肩こり 整体 | 0.3万 |
「解消」が最も人気キーワードでその次が「ストレッチ」です。「頭痛」とのかけ合わせは、併発しているユーザー特有の悩み・意図があるので、別のコンテンツで対応した方がよさそうです。今回は対象から外します。
その次に、「原因」「ツボ」などがきます。すべてを網羅する必要はありませんが、記事の最初で語る「今すぐ対策」に効果を感じられない場合、その補助的な役割として「ツボ」「グッズ」は語ってもよさそうです。
このような構成案にしてみました。
根本解決型のコンテンツは最後にし、オマケコンテンツにしています。ストレッチだけで解決するユーザーにはここまで読まれないかもしれませんが、今すぐ対策を読んだ後に「余力がある」「もっと読みたい」と望んだユーザーだけ誘導できればいいと割り切って考えます。
「冷え性」の検索意図に応えるコンテンツの構成例
「冷え性」も同様に月間検索回数が多い順にサジェストキーワードを見て、強い意図を把握していきましょう。「冷え性」は、根本解決を求めるユーザーが多いことがわかっています。
キーワード | 月間ボリューム |
---|---|
冷え性 | 2.5万 |
冷え性 改善 | 2.5万 |
冷え性対策 | 0.6万 |
冷え性 漢方 | 0.4万 |
冷え性 原因 | 0.3万 |
冷え性 ツボ | 0.3万 |
冷え性 足 | 0.1万 |
冷え性 サプリ | 0.1万 |
冷え性 靴下 | 0.1万 |
冷え性 症状 | 0.1万 |
冷え性 食べ物 | 0.1万 |
冷え性 改善 食べ物 | 0.1万 |
改善案が最も求められてはいるのですが、根本解決に原因を省いて話すことは難しいので「原因」から語ることになります。それを理解してもらうよう、タイトルに「原因を知ることが改善への近道」といったフレーズを入れましょう。
また、根本解決ではない「冷えが起こったときに対処する方法」である「ツボ」「靴下」も要望があるので、少し入れてもよさそうですね。サプリメントは薬事法があり効果効能を提示するのはNGです。食事の話の補助として語ることがおすすめです。
原因と改善策がメインで、最後がオマケコンテンツになっています。2つ目の見出しまでで結論は出ていますが、冷え性の根本改善までは時間がかかるので、「今すぐ対策」である対処法も有益なコンテンツとして読んでもらえる可能性が高いと考え、最後に入れています。
「良質」なコンテンツも検索意図に合わなければ受け入れられない
「その分野に精通していれば、検索意図を調べなくても良いコンテンツは書ける」という意見もあるかと思いますが、検索意図の把握とコンテンツの品質は別の軸の話です。
たとえば、まったく意図を考えずに、「肩こり」の根本解決を目指した専門的なコンテンツを作ったとしましょう。それは「コンテンツの正しさ」という意味ではまったく問題ありませんし、すばらしい内容だと思います。しかし「肩こり」と検索しているユーザーに合っているかというと、そうではないのです。
「ウンチクはいらないから今すぐ解消したい」とつらい気持ちでいる方に「そもそも君の生活スタイルがダメなんだ」と根本解決論を説教しているようなものです。これでは、どんなに良質な内容でも受け入れてもらえません。たとえ検索結果に表示されても、検索順位が上がらない、CTR(クリック率)が上がらない、精読率が悪い……という結果になってしまいます。
このような場合は、月間検索回数は減りますが、「肩こり 原因」「肩こり 食べ物」など根本解決を望んでいるユーザーが入力するキーワードを探し、そちらをターゲットにしていきましょう。また、ソーシャルやコンテンツ型の広告など、検索以外の入り口を使うことも1つの手法です。
「肩こり」と検索して対症療法を探している人に、どうしても根本解決を提示したい。そんな場合は、先ほど示した例のようにコンテンツの下部に少しだけ根本解決の内容を入れて、詳細は別ページに誘導をかけるのもありですね。
今回は例として「肩こり」「冷え性」のテーマを使いましたが、健康系のコンテンツは「根拠」の提示が強く望まれます。ただ単にどこにでもあるような情報を集めて監修した(=チェックしてもらった)だけのコンテンツは、今後通用しなくなってくるでしょう。
「改善」を提示するような健康・美容のコンテンツにおいては、監修は最低限のラインで、できればアンケート・体験レポートに加え、専門家への取材で新しい提案を掲載できるように作り込みましょう。また、数字を提示する場合は、出典元を必ず記載する必要がありますし、データがない場合は自社でアンケート調査を行います。健康系コンテンツは、特に次のようなことを心がけましょう。
- 必ず専門家監修(マッサージやストレッチならスポーツトレーナーや整体師、食事改善なら管理栄養士、体質改善なら専門医など)
- できればインタビューなどで専門家の意見・セリフが入るように
- 数字を語るなら必ず出典・データ元を記載(○○が□%程度といわれています……など)
このような手順を踏んだ信頼性のあるコンテンツは、コストはかかりますが必ず財産になり、ユーザーからも評価されます。「10本の簡単なコンテンツを作るより、1本の質の高いコンテンツを」。ストック型コンテンツは、量より質で勝負しましょう。
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