「マーケティングの再創造」を現実のものとするAdobe Marketing Cloudの驚くべき新機能と戦略
デジタルを主軸においた「マーケティングの再創造」が、夢物語ではなく、現実になってきている。スターウッドホテルが実現した「デジタル体験の高度化」を、それを支えるAdobe Marketing Cloudの新しいソリューションや機能とともに、解説する。
コンバージョン数の急増のような異常値を検出し、その原因を探り、好ましい動きであれば同様のターゲットに対してアプローチできるセグメントを作るといった、これまで時間と手間をかけていた施策をだれでも簡単に実現する、Adobe Analyticsの新機能は要チェックだ。
デジタルマーケティングの大規模カンファレンス「Adobe Summit 2015」が、米国ユタ州ソルトレイクシティにて現地時間2015年3月9日から4日間、開催された。
今年は、44か国、7,000人を超える参加者が集まった。そのうち日本国内からも100名を超える参加者がデジタルマーケティングの最新トレンドや事例を学び、海外のマーケターとの情報交換を行った。
本記事では、初日の基調講演を中心に、Adobe Summitで得た情報をお届けする(筆者は、アドビ システムズの招待で参加した)。
マーケティングを超えるマーケティング ―― Marketing beyond Marketing
今年のAdobe Summit 2015で提唱されたコンセプトは、「マーケティングを超えるマーケティング(Marketing beyond Marketing」だ。
従来のデジタルマーケティングは、顧客リスト獲得などのプロモーションの範囲を超えないものであった。しかし米アドビのデジタルマーケティング事業部門担当シニアバイスプレジデントであるブラッド・レンチャー氏は、今のマーケティングはどうかと問い掛ける。
私の息子は最近、スキーアプリを使って、いままで体験したことがない楽しみを感じている。これは、マーケティングなのだろうか、そうではないのだろうか?
おそらく、多くの人は、そうしたアプリもマーケティングの一環だと考えているだろう。しかし、それは過去に考えられていた一般的な「マーケティング」とは異なるものだ。
先ほどのスキーアプリもそうだが、モバイル/ウェアラブル製品やリアル店舗などの場でデジタルが活用されることで、「マーケティングを超えるマーケティング」が顧客の体験をリッチにして、企業や製品のブランド意識の向上に影響を与える時代になっているのだ。
レンチャー氏はさらに、ホテルでのスマートフォンを使ったキーレスエントリーのほか、ウェアラブルのアプリ、自動車のダッシュボードでの情報提供スクリーン化など、「モノのインターネット(IoT)」化を取り上げ、次のように提唱する。
高度なデジタル体験によって、そのブランド価値を高めることが、あらゆる企業の取り組みに求められている。
そう、「体験こそがブランド(Experience is The Brand)」なのだ。
そして、ブランド価値を高めるためには、「一貫性と継続性(Consistent & Continuous)」が重要であり、Adobe Marketing Cloudのソリューション開発では、これらを実現するための挑戦をしているのだと加えた。
マーケティングの再創造は、現在進行中
レンチャー氏はここで、昨年開催された「Adobe Summit 2014」のコンセプトに触れた。
それは、「マーケティングの再創造」だ。
- マーケティングの再創造――それはデジタルをちゃんとやっていれば必ず行き着く場所だ(Adobe Summit 2014レポート記事)
この考えは大切なものではあるものの、実際にはまだその動きが現在進行中のものであり、さまざまな課題に取り組んでいる段階にあるとレンチャー氏は言う。
前回のAdobe Summit 2014では、「マーケティングの再創造」の象徴的な事例として、MGMリゾートインターナショナルが実施しているホテルのキーをスマートフォンで開けることができるというサービスについて取り上げていた。
そして、ある企業が高度なデジタル体験を提供すると、それを一度でも経験したユーザーはその体験に慣れてしまい、ほかの企業にも同様のデジタル体験を期待するため、多くの企業がそうした対応をしなければいけなくなる「デジタルディストレス」についても指摘していた。
それを裏付けるかのように、今年の基調講演には、昨年登壇したMGMの同業であるスターウッドホテルズ&リゾーツのクリス・ノートン氏が登壇して、同様のスマートキーのサービス展開を実施していることを伝えた。
「スマートフォンがホテルのキーになる」は、2014年には「新しい高度な体験」として紹介されていたが、すでに第2の導入事例が現れており、ホテル市場に高度なデジタル体験の波が浸透してきているということだ。
こうしたデジタル体験の波は、ホテル業界に限ったものではない。さまざまな業種において、多くの企業が、より具体的にマーケティング全体のデジタル化を考え、実行に移す時期が迫っているのだ。
企業マーケティングに求められる3つの原則
マーケティングは大きく変化をしてきているが、デジタルマーケティングの原則は変わるものではなく、3つの要素に集約される。
基調講演でブラッド・レンチャー氏は、続けて上記のように述べた。マーケティングの原則であり、エンタープライズソリューションに求められる3つの要素とは、次のものだ。
包括性(Comprehensive)
集客・コンテンツ作成・メール配信といった、マーケティング施策に関するさまざまな機能が1つにまとめられており、またその運用アルゴリズムも1つにまとめられることが重要である。
統合性(Integrated)
適切なコミュニケーションを図るためには、個々のユーザーを1人ひとりの訪問者として特定し、かつ、複数のチャネルにおけるそのユーザーの行動データを統合できることが重要である。それがオンラインの行動であっても、オフラインの行動であってもだ。そのためにマーケターにとって必要なワークフローを提供することで、業務を効率化させていかなければいけない。
アクションにつなげられる(Actionable)
データはアクション(行動)につなげられるものでなければ、意味がない。
この3つの原則は、Adobe Marketing Cloudが製品開発を進めるうえでの方向性でもあるとしたレンチャー氏は、「まだ道の半ばにいるが、サービスの利用ユーザーとともに作っていきたい
」と語った
デジタルマーティングを実現するための6つのソリューションもそれぞれ強化
ここからブラッド・レンチャー氏は、Adobe Marketing Cloudの全体像と、新たに追加された機能とそれによって実現できるマーケティングの詳細の解説に移る。
Adobe Marketing Cloudは、全体を統合するプラットフォーム基盤のうえに、「6つのソリューション」と「7つのコアサービス」を展開する構成として整理されている。この構造は、マーケターが必要とするものを全体として提供できるように設計されている。
そして、すばやくスマートにデータから知見を導き、アクションにつなげることを狙いとして技術強化を進めているのだという。
まず、6つのソリューションについて、現状のおさらいと進行中のプランについて説明された。
Adobe Analytics(アナリティクス)
Adobe Analytics Premiumで提供される「ワークベンチ」では、基幹データベース情報などを取り込み、ビッグデータ分析が可能だ。さらに、予測分析機能などが強化されている。
- マーケティング
- レポートと分析
- 深堀り分析
- 高度なデータ活用
- 予測分析
- リアルタイムウェブ分析
- モバイル分析
Adobe Experience Manager(エクスペリエンス・マネージャー)
マルチデバイスのコンテンツ管理ができるソリューションで、パーソナライズされた体験を提供するバックボーンとなる。
次世代のアセット(素材)管理ができる機能の提供を予定しているほか、中規模企業でも導入できるようなサービスも企画しているという。
- サイト管理(PC、モバイル)
- デジタルアセット管理(ダイナミックメディア、ビデオ)
- ソーシャルコミュニティ(オウンドソーシャル)
- モバイルアプリ
Adobe Target(ターゲット)
A/Bテストとターゲット配信、レコメンド配信によりROI最適化を図るためのソリューション。
今後は、PC・スマートフォン・タブレットに加えて、ウェアラブルやデジタルスクリーンを対象としていくということだ。
- A/Bテスト
- 多変量テスト
- ルールベースのターゲティング
- 自動的な行動ターゲティング
- セグメント設定
- レコメンデーション
Adobe Campaign(キャンペーン)
Eメールを中心としたキャンペーンを管理するソリューション。昨年買収したネオレーンだが、新しいインターフェイスと機能を開発しており、Adobe Campaign Standardとしてリリース予定だ。Adobe Marketing Cloudに加わることでシームレスなマーケティングシナリオの実施をサポートすることが狙いだ。
こうし大規模なソリューション同士を統合するのは非常に困難であり、だからこそ、統合を実現させることは市場にとって価値の高いものだと自負していると、レンチャー氏は説明した。
- 視覚的なキャンペーン設計
- 顧客プロファイル
- セグメント設定
- クロスチャネル対応
- リアルタイムのインタラクション管理
- 運用レポート
Adobe Social(ソーシャル)
ソーシャルメディアの運営、分析ソリューション。今後、コアサービスを通して、Adobe Creative Cloudと統合するとのこと。
- ソーシャル運営とガバナンス
- リスニングとモデレーション
- ソーシャル投稿の配信
- ソーシャルアプリ
- キャンペーン管理
- ソーシャル分析
Adobe Media Manager(メディア・マネージャー)
さまざまな広告の最適な組み合わせを予算に基づいて予測し、自動出稿する広告最適化ソリューション。
- 検索連動型広告の管理
- ディスプレイ広告の管理
- ソーシャル広告の管理
- 統合された分析機能
さらに2つの新ソリューションを追加して全8ソリューションに
今回、さらなる包括性・統合性・アクショナブル性を実現させるものとして、Adobe PrimetimeとAdobe Audience Managerがラインナップに加わることが発表された。
これらのソリューションは必ずしも新しい技術ではなく、すでに提供してきたものではあるが、その機能をAdobe Marketing Cloudに統合することにより、大きな価値を発揮することを狙いとしているという
Adobe Primetime(プライムタイム)は、動画コンテンツのマルチデバイス向け配信プラットフォーム
Adobe Primetimeは、すでにアドビが、オリンピックやスーパーボウルなどでのライブストリーミングで提供してきたものであるが、今後は、あらゆるデバイスで、広告やコンテンツなど用途はさまざまに用いることができるようになる。
このソリューションでは、動画の運用管理を容易にするだけでなく、さらに、セグメントされたオーディエンスに対して、最適な動画を配信できるようにするという。
また、クロスデバイスの配信調整ができる機能が備わる。つまり、iPhoneを見て、iPadで視聴をするときに同じ広告を何回も目にしなくてもいいということだ。
Adobe Audience Manager(オーディエンス・マネージャー)は、DMP(データ管理プラットフォーム)
多種多様の興味関心を持つユーザーをとらえて、それぞれに対して適切に訴求をパーソナライズすることは、最近のマーケターの関心のあるところだ。それを実現するには、ウェブ行動データに加えて、基幹データベース情報を統合し、継続性や一貫性を保つことが重要だと考えられている。
また、最近ではサードパーティのデータを用いて、オーディエンスの情報を拡張をすることも期待されている。
これらを支援するソリューションが、Adobe Audience Managerだ。
7つのコアサービス
「コアサービス」は、昨年のサミットで発表されたもので、あらゆるソリューションをつなげるための重要な機能となるものだ。
Adobe Marketing Cloudは統合サービスだとはいうものの、全ソリューションが100%密接に統合されているわけではない。そのため複数のソリューションを組み合わせて利用しようとすると、どうしてもスローダウンしてしまいがちになる。コアサービスは、こうした課題を解決するものだという。
たとえば、プロファイルやアセットをここから抽出してさまざまなソリューションで利用するというような使い方ができる。
- Profiles & Audiences ―― 顧客のプロファイル&オーディエンスデータを統合できる。
- Collaboration ―― オンラインで担当者同士のやりとりがスムーズにできる。
- Activation ―― タグを統合管理できる。
- Mobile Services ―― モバイルの分析管理などができる。
- Exchange ―― サードパーティのベンダーツールとの連携ができる。
- Assets ―― クリエイティブ素材を統合的に管理できる。
- Administration ―― ユーザーの権限を管理できる。
プロファイル管理の精度向上と要因分析できる新機能
これらAdobe Marketing Cloudの新ソリューションや新機能は、現場のマーケターにどんな変化をもたらすのだろうか。
米アドビのティム・ロッド氏とマシュー・ハノウズ氏が、スターウッドホテルを題材に、新機能をデモした。
ホテルで体験させる要素は何か。最高のベッド、枕、形式、アーリーチェックイン、レイトチェックアウト、無料Wi-Fi、割引やオプションなどがある。
これらはおもてなしとして提供されているが、同様の文脈で顧客にコミュニケーションを図ることが重要である。
ロッド氏はこう語り、「それをAdobe Marketing Cloudで実現させてみよう
」としてデモが始まった。
新機能1オーディエンスのプロファイルを管理する
顧客に最適なアプローチを図るためには、顧客のことを知らなければならない。
Adobe Marketing CloudのコアサービスであるProfiles & Audiencesを用いて、顧客情報を管理できることが紹介された。
今回紹介された新機能である「Customer Attributes」は、Adobe Analytics上のデータに基幹データベースからのデータを統合し、そこから顧客のロイヤリティ情報などを切り口として、セグメントを作ることができるものだ。
Profiles & AudiencesのCustomer Attributes 機能の画面は、次のようなものだ。
プロファイルの詳細は次のように表示される。過去の購入履歴がある基幹データベースや外部ソースであるMicrosoft、Salesforce、SAPなどのデータを統合できるようになっている。
このようなグラフィカルなインターフェイスで、ウェブ行動データと基幹データベース情報を統合して、購入履歴やデモグラフィック情報を一元管理できる。これをセグメントとして用意し、深堀り分析ができる環境を整えられるという。
新機能2問題の要因分析の手間が省ける「コントリビューションアナリシス」
続いて、ティム・ロッド氏は、異常データの要因を瞬時に発見する「コントリビューションアナリティクス」を紹介した。
実際の例で見てみよう。スターウッドのサイトで、あるときに予約数が通常よりも大幅に増えていたとする。こうした異常値が発生した場合、それが良いことであれ悪いことであれ、その原因を探りたいと考えるだろう。
そうした場合にも、ボタンを押すだけで、影響度の高い要因を統計的に自動算出し、わずかな時間でレポート表示してくれる。
右上のドット部分が異常値だ。こうした異常値を発見しやすいグラフィカルな画面であるのもメリットだ。
ボタンをクリックすると、その異常値の原因だと想定される要因がいくつか自動的に表示される。
1番目の「ゴルフサービスの紹介ページ」は、当然の結果といえるので、次を見てみよう。2番目に影響度が高いものは「リモートで動くゴルフカート」に関するビデオ視聴だ。
どうやら、この「リモートで動くゴルフカート」のビデオが、予約数の増加につながっていたようだ。従来ならば分析に3週間もかかっていたことを、ボタン1つで実行できた。
では、この分析をアクションにつなげていこう。予約数の増加につながる要素をもつユーザーのセグメントを作るのだ。
具体的には、過去にホテルを予約をしたことがある人で、「リモートで動くゴルフカート」の動画を見た人という定義で、セグメントを作るのだ。こうした処理もスムーズに行える。
セグメント作成画面の下部にあるチェックボックスをチェックすると、Adobe Marketing Cloud全体で使えるセグメントとして保存される。これは便利だ。
異常値検知とその要因分析ができる優れたレポート機能を拡充すること、これが、Adobe AnalyticsのReports & Analyticsに追加されると発表された機能だ。
異常値検知の仕組みは、通常予測される最大値と最小値から逸脱するものを検出するもので、そうした異常値の要因(指標・変数などが対象)をレポート表示できるため、従来、複数のレポートから要因を探っていた時間を、圧倒的に短縮できるという。
また、異常値を起こした要因となった行動を同様にしている訪問者に対するセグメントをつくることも、スムーズにできる。このセグメントに対してメッセージを配信することで、コンバージョン数を増加させる見込みの高い、最適化されたコミュニケーションが可能になるというわけだ。
新機能3未特定の訪問者と特定の訪問者に対する適切な訴求を実現させる
続いて登壇したのは、米アドビのマシュー・ハノウズ氏。まず、マーケティングにおいて施策を実行するターゲットの考え方として、次のように述べた。
「会員登録や購入後でメールアドレスや個人情報が取得されている特定訪問者の状態」か、それ以前の「未特定訪問者」なのかを分けて考えることが、重要である。
当然と言えば当然なのだが、ハノウズ氏は、単に個人を識別できる状態の顧客データが重要であることだけを述べているわけではない。
それぞれのターゲットに対して、適切な対策を、適切なソリューションとコアサービスを組み合わせることによって、一連の流れで最適なマーケティングを実現させられるのだ。
1. 個人未特定者に対する効果的な施策
先ほどAdobe Analyticsのレポートで異常検出の要因分析から作ったセグメントの対象オーディエンスは、4万2000人と、多くはないことがわかった。
そこで、セグメントに含まれるユーザーと類似した人に対して、ターゲットを拡張すると、ゴルフに興味がある属性のオーディエンスとして40万人もの人を対象にできるようになった。
これは、Adobe Audience Managerの管理画面で、あらかじめ統合していたサードパーティのデータを利用して実現できる。
作成した40万人のユーザーに対して、リターゲティングの広告配信を行おう。ゴルフに興味関心がある人が、ゴール貢献しやすいという考察をもとに、興味関心の高いオーディエンスに対して、それに興味の高いクリエイティブを作ることで、高いROIが見込める集客施策を行うことができるのだ。
ハノウズ氏は、こうした作業をほんの数分で行って見せた。
ターゲット配信をする対象者を設定する画面。「リモートゴルフカート」のビデオをみたのは、4万2000人と少なめだ。
サードパーティのデータを利用して、似ているオーディエンスを選択すると、リーチは40万人弱にまで増える。
Adobe Media Managerを利用して、見込み度の高いターゲット層に対して、広告メディアで集客を仕掛ける。
コアサービスで管理しているアセット(素材)からクリエイティブを選択して、広告配信に使う。
広告メディアごとに最適なクリエイティブを配信できる。
2. 特定者への効果的なアプローチ施策 ―― キャンペーンシナリオ設定
ここまでは「個人を特定できていない人」に対するアプローチだったが、ここからは「個人情報を得て、個人を特定できている人」に対するアプローチだ。
すでに個人を特定できている顧客群に対しては、取得したメールアドレスを利用して、キャンペーンシナリオを組み、アップセルやクロスセルを狙いたい。
ここで、Adobe Campaign Standardを用いたデモが行われた。さきほどティム・ロッド氏が作成したゴルフ興味者のセグメントをもとに、対象者を絞り込む。そしてEメールでメールを送るが、クリエイティブはゴルフに関するものをコアサービスのアセットから呼び出してセットした。
最後に、iBeaconを用いてパーソナライズ化された情報を最適なタイミングで提供することも、Adobe Campaign Standardで実現させることができると紹介された。
Adobe Camapaign Standardの管理画面でキャンペーンを選択する。
シナリオのうち、「Audience Segment」を設定する。
オーディエンス編集の画面で、オーディエンスカードを持ってくる。
対象のオーディエンスとして、「ゴルフカートゲスト」を選択した。これが、先ほど作成したセグメントだ。
次は、リマーケティング用のメールクリエイティブを編集する作業だ。
HTMLメールには、一般的なホテルのレストランの画像があらかじめ用意されているが、今回は、これをゴルフ好きな人向けの画像に変更するほうがいいだろう。
クリエイティブ素材は、コアサービスのアセットから呼び出して選択する。従来、この管理がまとまっていなくて手間がかかりやすいが、アセット管理がしっかりとされていれば、非常にスムーズになる。
あとは、新しいオーディエンス情報を編集するだけだ。
ターゲット名に「ゴルフリターゲティング」と記入して、新しいターゲットオーディエンスとして保存した。
iBeaconを利用することで、顧客がホテルに到着すると通知を表示し、デジタルによるおもてなしを行うことも可能だ。これもAdobe Campaignで制御できる。
さらに、時間が近づくと、ゴルフを予約していたことを通知してくれる。
このデモではEメールを使ったコミュニケーションが紹介されたが、ウェブ上のアプローチでは、Adobe Targetを用いることが最適な施策であり、両方の使い分けが大切なのだという。
また、Adobe Campaign Standardでは、ここで紹介したものよりも新しいインターフェイスが予定されているということだ。
1年前は夢物語だった「マーケティングの再創造」が現実的に
2014年に提唱された「マーケティングの再創造」というコンセプトは、具体的には、分断されていたいくつかマーケティング施策を統合させて、1つの流れのなかで、高度な体験をさせるという意図である。それはリアル店舗の場所も含めたものだった。
2014年の時点では、これを実現するには非常に大きなハードルがあり、「できるとすばらしいだろう」という夢物語という印象があった。
しかし、2015年の今、Adobe Marketing Cloudに追加された新しいソリューションや機能を見て、そして、実際にデジタル体験をする生活者が増えている市場を考えると、1年前は夢のように思われた「マーケティングの再創造」が、現実味を帯びてきていると感じられる。
組織の壁を壊すマトリクスチームが活躍し、高度なデジタル体験を提供するスターウッド
スターウッドのクリス・ノートン氏は、ホテルでの体験を高度化させるためには、さまざまな施設の構造改革や組織の変更を取り組んでいると語った。特に、ホテルでのさまざまな体験をデジタル化していくことを考えており、データの取得によるパーソナライズが重要だと語った。
スターウッドのホテルでは、部屋にタブレットを置いており、部屋の温度制御やルームサービスの申し込み内容など、過去の行動履歴データを蓄積している。当然、それらのデータは、ホテルのコンシェルジュも活用できるようになっている。相談に来た顧客のプロファイルを即座に呼び出して過去の嗜好歴を確認できるため、コンシェルジュは、より適切な接客対応が可能になるのだという。
ノートン氏はさらに、Apple Watchでデジタルキーとなるアプリを発表したことを伝えた。社内にマトリクスチームという、従来の「部署間の壁」を壊す役割を持った横断型な組織があり、彼らがホテル施設や運営チームと調整をはかり、実現させたものだという。
また、スターウッドでは、配車サービスのUberとの連携や航空会社のデルタと提携を行い、包括的な顧客満足度を高める取り組みを進めているという。これらのホテル宿泊に対する周辺のオプショナルサービスについても、ホテルの申し込みの段階でレコメンドすることが想定される。
現時点でも進んだ取り組みをしているスターウッドだが、これがゴールではない。これからも、顧客へのデジタル体験の提供をさらに強化していきたいと述べたノートン氏の脳裏にあるのは、他社の取り組みに追われる「デジタルディストレス」なのだろうか、それとも、より高度なデジタル体験で宿泊を心から楽しむ顧客の姿なのだろうか。
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