デジタルマーケの5年先を見据えたAdobe Marketing Cloudの進化――LINE連携やAI活用など新機能を一気に紹介

LINE連携、組織内外とのコラボレーション機能、アセット自動管理機能の強化など、アドビは着実に機能を強化している

Adobe Digital Marketing Symposium 2016の基調講演をお届けするこの記事は、前後編の2回でお届けしている。

前編では、企業に迫る「エクスペリエンスビジネス」への変革の波とその背後にある「顧客体験中心の時代」のビジネスのあり方を解説した。

後編となる今回は、そうした変革を進める企業を支援するAdobe Marketing Cloudの機能を、LINEとの連携やLivefyreの統合などの情報とあわせて紹介する。

まず前編を読んでおく

Adobe Marketing Cloudによりエクスペリエンスビジネスの革新企業にとって真のパートナーを目指すアドビ 

企業に「エクスペリエンスビジネス」への変革の波が迫っているとは言うものの、デジタルによって変化していく顧客のニーズに企業が応えるのは、容易ではない。

「最適なタイミングで」「最適なコンテンツを」「それぞれの人にあわせて」届け、コミュニケーションするということを企業として一貫して行うには、それを助ける仕組みが必要だ。

米Adobe Systemsデジタルマーケティング担当のブラッド・レンチャー氏は、その仕組みについて、

5年先・10年先を見据えて、土台を築いていく必要がある。

と述べたうえで、その実現を助けるためにAdobe Marketing Cloudも進化を続けると強調した。

Adobe Marketing Cloudは、次の5つのソリューションを統合している。

  • Adobe Experience Manager(AEM) ―― コンテンツ管理を中心に、エクスペリエンスビジネスを実現するマネジメントソリューション
  • Adobe Target ―― テストによるコンテンツ最適化とパーソナライゼーションを実現するソリューション
  • Adobe Analytics ―― Webサイトやモバイルアプリなどの高度なマーケティング分析
  • Adobe Audience Manager ―― 顧客プロファイルを構築するデータ管理プラットフォーム
  • Adobe Campaign ―― クロスチャネルキャンペーンを実現するカスタマージャーニーコントロール

これらのソリューションは、基礎となるプラットフォームの上に構築されているが、それぞれのソリューションを有機的に接続する役割を果たすものとして、「コアサービス」が用意されている。コアサービスには、タグマネジメントや顧客のプロファイル情報を整備するものなどが含まれる。

また、マーケティング担当者、開発者、デザイナー、アナリストなど異なる役割の人がコラボレーションするための共有機能も用意されている。

さらにAdobe Marketing Cloudは、アドビ以外の提供するソリューションとも連携できるように、エコシステムとしての環境を整備していっている。たとえば、過去にはSAPとの提携や最近ではMicrosoft Azureとの提携が発表されている。

またアドビでは、そうした技術面・システム面の充実だけでなく、それらのソリューションを駆使するためのトレーニングプログラムや事例を学ぶ機会などにも力を入れていることを、レンチャー氏は強調した。

アドビのこうしたサービスをすべて活用できれば、企業がエクスペリエンス時代に合わせて変革を進める強力な助けになる。しかし、実際にはそういうわけにはいかないだろう。企業はそれぞれ環境も違うし、現状と理想像のギャップをどこから埋めていくのかの優先度も異なる。それぞれのニーズに合ったサービスを組み合わせて活用していく判断も重要だろう。

今回のシンポジウムでは、そうした「ニーズに合ったサービスを選んで活用」している企業の事例セッションもいくつかあった。たとえば、広告でAdobe Audience ManagerとAdobe Analytics、Adobe Targetを活用しているリクルートライフスタイルや、Adobe Experience Managerを基盤に、テストや分析を利用する花王などの事例だ。

複数の組織間をまたがるワークフローをシンプルにつなげるAdobe Marketing Cloud

では、アドビのサービスを利用すると、企業のデジタルマーケティング施策はどのように改善されるのだろうか。

その一例として、Adobe Marketing Cloudのコラボレーション機能や新機能を、アドビ システムズのコンサルタントである安西敬介氏がデモンストレーションを交えて紹介した。

広告キャンペーンに限らず、デジタルマーケティングの施策の多くは、社内外のさまざまな役割の人が協力しながら進めていくものだ。よって、社内外のスタッフがスムーズに仕事を進めやすいシステムであるかどうかは、企業活動の効率に大きな影響を与える。

安西氏によるデモはロイヤルバンクオブスコットランドを題材に行われたが、新しい機能やインターフェイスは、デジタルマーケティングの実践に際して、ワークフローをシンプルにしようとしている点が興味深かった。

  • Adobe Marketing Cloudのインターフェイス

    企業ごとにカスタマイズしたログイン画面や、初期表示ツールのパーソナライズなど、より使いやすいインターフェイスに進化している。

  • Adobe Experience Manager

    デザイン担当者が用意した画像素材を、次のプロセスとなるテスト担当者へ渡して設定に進めるといったワークフローを簡単に設定できる。

    Adobe Marketing Cloudでは、各自の作業状況などをフィードとして投稿し、チームの他の関係者と共有ができる機能がある。こうした機能も、ワークフローの中で利用できる。

  • Adobe Target

     A/Bテスト配信について、オートアロケートという機械学習が搭載された。従来、A/Bテストはトラフィックを均等配分して行うのが通常だった。しかし、この機能では、効果の高いパターンにトラフィックの割り振りを自動最適化できるという。

    「テストが終わってから良いクリエイティブを決める」のではなく、テストを配信中でも成果が良さそうなパターンにトラフィックを寄せていくことで、効果を最大化させることが期待できる。

  • Adobe Campaign

    Adobe Campaignは、メール配信やモバイルPushなどカスタマージャーニーのコントロールを行うものである。

    メールの件名は、送信したメールを開いてもらううえで重要度の高い要素だが、この件名を機械学習で最適化する機能が実装されている。具体的には、効果を最大化できる件名を自動的に推奨するというものだ。

  • Adobe Analytics

    ブラウザ上で柔軟に深い分析ができる新しいワークスペース機能が紹介された。どんな切り口でどの指標を分析するのかを、ドラッグ&ドロップで設定したり入れ替えたりできるものだ。

    また、複数のセグメントを1つの画面内で同時に比較できる機能が追加された。ベン図で表示されるため、セグメント間で重複しているユーザーがどれくらいいるのかが可視化される。

    例として学生かつローンに興味があるカスタマーが何名いるか、さらにどのような行動傾向があるのかを分析する様子がデモされた。そして、モバイルでの離脱が多いことが判明したという仮定で次のワークフローに進められた。

  • Notification

    トリガー機能を用いると、メール配信やPush通知のタイミングをコントロールできるという。デモでは、先ほどのターゲット層に対して、「モバイル離脱をしてから10分後にローンのアプリケーションに関するPush通知を設定する」という設定を行った。

  • AEM Forms

    最後に紹介されたのは、従来、オフラインでの承認作業が必須だったものを、オンライン上で実現するものだ。

    たとえば、実際にローンを申し込む場合、本人確認の書類や、学生ならば保護者の確認などのプロセスが必要になる。しかし、申請書を記入して、また別途を書類送るとなると、処理にタイムラグが生じてしまう。

    デモでは、新しいAEM Formsという機能を用いて、それらを解決してしまうアプローチを試みた。申請者が学生であれば、保護者に承認を促すメールを自動的に送り、そのメールを受け取った保護者はオンラインで署名を行えるというものだ。

デモで示されていた流れは、それぞれのソリューションを利用する際に課題となっていたものを解消しつつ、ワークフローが簡略化される様子を伝える内容だった。機械学習などの新しいテクノロジーを随所に取り入れているのも印象的だった。

テクノロジーの活用と組織のコラボレーションを支援することについて、アドビはこれまでもイベントで言及してきていたが、その実現を実直に進めている様子が伺えた。

LINEでリアルタイムマーケティングを実現させる ―― Adobe CampaignがLINEと連携 

基調講演では、続いてLINE株式会社の田端信太郎氏が登壇した。

というのも、アドビのクロスチャネル管理ソリューション「Adobe Campaign」と「LINEビジネスコネクト」の連携が、イベント当日の10月5日に発表されていたのだ。

田端氏は、今回の提携発表に言及したうえで、LINEによる企業支援事例を紹介した。

LINEをエンドユーザーとして使っている人は多くても、企業のマーケティング活用の視点でLINEを使っている人はまだ多くないかもしれない。

しかし、すでにLINEの収益の約40%は広告とマーケティングによるものであるという。メインの売上チャネルであることから、LINEとしてはこうした分野をゲーム課金よりも重視しているのだという。

田端氏によると、企業によるマーケティング活用実績は着実に増えており、特に、単なるプロモーショナルなメッセージ配信を超えて、実際にマーケティングのためのプラットフォームとして使われるケースが増えてきているという。

その具体的な事例として、田端氏は次のようなものを紹介した。

LINEのマーケティング活用事例

  • みずほ銀行が、LINEでスタンプを送信することで残高照会ができる仕組みを作った。

  • ユニクロは、LINE登録をしている画面を店舗で見せることで、会員顧客の認識をしている。

  • ドミノピザでは、LINEでピザが簡単に注文できる。

  • クロネコヤマトは、不在通知をLINEに送ったり、再配送の時間指定をLINE上で完結したりできるようにしている。

現在は、メールアドレスを持たず、LINEをメインのコミュニケーションチャネルとしている世代が出てきている。

LINEがマーケティングコミュニケーションに向いている理由として、田端氏は次の特徴を挙げる。

  • リアルタイム性が高い
  • メッセージの開封率が高い

メッセージを送付したら数分で閲覧するユーザーが多いため、企業がリアルタイムマーケティングを実施することに適した環境だと言えそうだ。

ユーザー生成コンテンツを有効活用できる LivefyreをAdobe Marketing Cloudに統合

田端氏の登壇に続いて、もう1つ新しい機能が紹介された。コンテンツキュレーションとオーディエンスエンゲージメントを提供する「AEM Livefyre(エーイーエム・ライブファイヤ)」が、新たにAdobe Marketing Cloudに加わったのだ。

Livefyreは、ソーシャルメディアでユーザーが投稿したコンテンツを、特定の条件で絞り込むなどしながら、自社のサイト、広告、電子メールなどでリアルタイムに表示させる機能を持っている。すでに、CNNやコカコーラ、インテル、メジャーリーグベースボールなどが顧客として利用実績がある(アドビはLivefyreを2016年5月に買収していた)。

今回、LivefyreはAdobe Experience Managerの一部としてAdobe Marketing Cloudに統合され、その他のマーケティングソリューションからもUGCを活用できるようになるという。

基調講演では、Livefyreの創業者であるジョーダン・クレッチマー氏が登壇して、その概要説明とデモを行った。

Adobe Experience Managerの3つの新機能

続いて、コンテンツ管理を中心にWebサイトなどで顧客に提供する体験をコントロールするAdobe Experience Manager(AEM)の新機能を、アドビ システムズのソリューションコンサルタントである高橋サラ氏がデモを交えて紹介した。

行動パターンや属性の異なる顧客に対して、それぞれ最適なエクスペリエンスを提供し続けるためには、パーソナライズのための複数のコンテンツを、できる限りスピーディに用意する必要がある。

そのためには、コンテンツの作成・分析・修正をいかに早く行えるかという、「コンテンツ提供のベロシティ(速度)」が重要になる。AEMに追加した3つの新機能は、そうした課題に対応するためのものだ。

  • スマートタグ機能 ~スピーディに作成するために

    AEMは、以前からアセット(画像などのコンテンツの部品)を管理する機能を備えている。しかし、これまでは、登録された大量のアセットから目的のものを探せるようにするために、アセットごとに手動でタイトルやタグといったメタデータを登録する必要があった。

    日々増える素材それぞれに対してそうしたメタデータをいちいち入力するのは面倒だし、適切な情報を入力していないと、あとから検索しても見つけられなくなってしまう。

    しかし、スマートタグ機能を用いると、デザイナーが手動でメタデータを登録しなくても、画像をアップロードした瞬間に、自動的に適切なタグが付けさられるという。

    たとえば、すでにアセット管理システムに素材が登録されていて、それぞれ適切なメタデータが付いているとする。「Beach(海辺)」と検索すると100万件以上の素材がヒットする状態だ。

    ここに、新たにブレスレットの写真をアップロードするとする。その写真の背景は、海辺の風景だ。

    すると、担当者が何もタグ付けしていなくても、「Beach ブレスレット」と検索すると、先ほどアップロードした写真がヒットする。アップロード時に機械が自動的に画像解析してタグ付けを済ませているからだ。

    大量のアセットから検索する機能は、マーケッターやデザイナーなどコンテンツ作成担当者にとって便利な機能だ。この機能は、以前のAdobe Summitでコンセプトが発表されていたものだが、開発が進み現在はβ版として機能を提供しているものだという。

  • アセットインサイト機能 ~より早く適切に分析するために

    AEMの管理画面上で、アセット単位で利用状況などをデータで確認できる「アセットインサイト」の機能が追加された。それぞれのアセットがどれくらい使われているのかを把握できるのだ。

    社内の全担当者が共通のアセット管理機能を使っていれば、最近いつ使われたのかを情報を参考に、どのアセットを使うと良いか判断する参考になる。

    また、どのチャネルでアセットが表示されクリックされたのかを分析できる機能も備わっている。

  • コンテンツフラグメント機能 ~早急に修正が行えるように

    通常、ウェブサイトやアプリやメールで使用している文字コンテンツに修正が必要であるとわかった場合、個々のページを修正していく必要があり、手間が掛かるものである。

    AEMにはコンテンツフラグメンツ機能が搭載されており、キャッチコピーやタグラインなどのテキストもアセットとして利用できる。

    コンテンツフラグメント登録した文字コンテンツを修正すれば、そのコンテンツフラグメントを利用しているコンテンツに即座に反映される機能だ。

デジタルマーケティングで一貫したブランドイメージとエクスペリエンスを提供するには、全体のコミュニケーション設計も重要だが、それに加えて、現場での作業も効率化する必要がある。そうした実際の現場ニーズに応えた新機能だと言えるだろう。

Adobe Digital Marketing Symposium 2016は、基調講演の他に、事例報告やマーケティング著名人同士の対談などのセッションが行われた。また、パートナーブースも出展されていたが、それぞれ足を止めてサービスを聞いている参加者が大勢いた。

◇◇◇

Adobe Marketing Cloudは、デジタルマーケティングやアドビが提唱するエクスペリエンスビジネス時代のマーケティング活用を強力に支援するプラットフォームであると認識し、今後も企業活用の事例が生み出されていくものであると期待させるカンファレンスだった。

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