自社サイトを強化する「ビッグコンテンツ」を作るための5つのステップ(後編)
3回に分けてお届けしてきたこの記事もいよいよ最終回を迎えた。今回は、ステップ4「休息を取るべきときを知る」とステップ5「活用する」について見ていこう。→まず前編と中編を読む
戦略的ビッグコンテンツ制作ステップ4
休息を取るべきときを知る
ビッグコンテンツは、それだけで大変な労力を要する。公開前後のプロモーションをすべて合わせると、かなり大規模なプロジェクトだ。このガイドの制作は極めてやりがいのあるものだったが、私たちのチームや会社に膨大なストレスがかかってもいた。
ガイド公開までの最後の数週間、私たちは猛烈な追い込みをかけた。メンバーの多くが十分な睡眠や休息を取っていなかった。夜も週末も働いた。休みを取るように言われても、だれも休もうとしなかった。とにかくこの仕事を片付けたかったのだ。
そんなわけで、ようやく目的を達したとき、チームで一緒に休息を取って祝う日を作った。私たちはオフィスを後にしてハイキングに出かけた。激務のごほうびで、心から必要としていた1日だった。
私個人にとって、この日は二重の勝利そのものだった。私の場合、常に前進していないと気が済まない。ペースを落としたり達成感に浸ったりするには、チームに協力してもらう必要がある。メンバーは、私からこの点に留意するよう言われているので、少し離れてみるべきときは気づかせてくれる。
効果を上げる取り組み
私たちは、ガイドを公開する前だけでなく、公開してからもあらゆる種類のプロモーションを行った。当然ながら、こうした取り組みにおける私たちの目的は、ガイドの認知度を高めて登録数を増やす(ひいてはダウンロードにつなげる)ことだった。私たちは以下のことを実施した。
ウェブサイトのデザインを刷新した
そう、考えが甘かった。私たちは、このガイドが当社サイトへのトラフィックを急増させることを願っていたが、既存のサイトは事業内容を必ずしも正確に伝えていなかった。そのため、本腰を入れてデザインとメッセージの見直しをすべて並行して行った(それでも何とか過労死せずに済んだ)。
サイトのデザイン変更には、ガイドを掲載するページを効果的に最適化するという目的もあった。SEOビギナーズガイドを作成したMozのやり方を手本に、アクセスしやすいものにして、リンクも張ってもらいやすくした。
ガイドを公開した日、私たちのウェブサイトへの訪問数は1200近くにのぼった。
さらに、The Moz Top Ten(の8番目)でガイドが紹介された日も、ほぼ同数のトラフィックを記録した。
獲得したトラフィックを見ると、ビッグコンテンツの公開に合わせてサイトのデザインを変えただけの価値は十分にあった。会社に関する情報を反映させてガイドを構築したのと同じように、私たちの優先事項と個性を反映させたウェブサイトが必要だった。製品と会社が乖離してしまったら、あまりよい印象は残らなかっただろう。私たちのウェブサイト、ブログ、SNS、ガイドを、デザインやメッセージングに完全に調和させたことが、成果という点で大きな差を生んだようだ。
動画を作成し、Google+ハングアウトでビデオ会議を開いた
公開前の最後の数週間、私たちはブログを利用して、コミュニティ構築の重要なポイントを伝える動画を毎週公開した。
動画というメディアを使うのは私たちにとって初めてだったが、幸運にもメンバーのタイラー・ブルックスには映像を扱った経歴があったし、動画配信サービスのWistiaも事前の計画プロセス全体を通じて指南役となってくれた。
動画は大きな成功を収め、5本ともすばらしいエンゲージメントを生み出した。動画の制作は本当に楽しかったし、私たちについてオーディエンスに新たな視点を提供する大きな助けになってくれた。
動画に加えて、私たちは検索マーケティング業界で活躍するコミュニティマネージャー数名とGoogle+ハングアウトを使ったビデオ会議を実施した。その様子を記録した動画は、3300回以上も視聴された。Google+だけで、新たに36件のガイド登録があった。だがそれ以上に、私たちはSNSやコミュニティにおけるすばらしいイノベーターたちと新たな関係を確立した。
動画やハングアウトを使った公開前の取り組みは、LaunchRockへの登録を推進する上で非常に役立った。こうした取り組みを行う前の登録件数は245件だったが、公開時には343件になっていた。
顧客に伝えた
公開の数日前、私たちは(ウェブサイトとガイドの両方の)状況を既存の顧客に伝えた。
すでに「コンバージョンのじょうご」の中にいる人たちについては、つい忘れてしまいがちだ。どちらにせよ私たちに任せてもらっている内容なので、顧客もガイドを読むこと自体にはあまり興味がないかもしれないが、このような成果や重要な節目について伝えることで、大きな信頼を築くことになる。
私はさらに、既存の顧客に情報を伝えるだけでなく、対話を続けていた見込み顧客にもアプローチした。個人的に電子メールを送ってガイドを共有することは、実際にミーティングの日程を決め、そうした見込み顧客の一部を「じょうご」のさらに下部へ送る助けになった。
コミュニティの仲間になった
公開日には、チーム全員がツイートや電子メール、質問への回答に対応した。その合間に、私たちはちょっとした朝食パーティーを催し、結構楽しんだ。私たちは皆、ようやくガイドが完成して読者の手に渡ったことを実感し、至福のひとときを味わった。
ガイドの公開から数週間にわたって、当社のコミュニティマネージャーを務めるアイェレット・ゴルツは、ガイドを読み終えた人を探し、一人ひとりにラマのマスコット「アーサー」からのメッセージを送信した。
ビッグコンテンツに取り組む際は、もし可能なら、スケジュールに少し余裕を持たせて、合間に何回か休息を入れること。日々の仕事の疲れが和らぐ場所を探そう(私も公開前の1か月は、ソーシャルメディアで過ごす時間が少なくなってしまっていた)。
プロジェクトの中で外注できる部分を探して、外部の支援を受けよう。
もちろんあなただって、ビッグコンテンツを公開するためだけに会社を限界まで追い込むようなことはしたくないはず。それなら、起こり得るストレスを考えて、プレッシャーを和らげるためにできることをしよう。
戦略的ビッグコンテンツ制作ステップ5
もっと発展的に活用する
ビッグコンテンツができたなら、そこからさらに多くの成果を得る方法は、山ほどある。ビッグコンテンツを発展可能な製品ととらえ、ブログ記事、ケーススタディ、さらには新しいツールにさえ活用できるものだと考えよう。最初の制作物から派生させられる価値を判断する最初の一歩は、利用者たちに聞くことだ。
ちょうど今、私たちは感想を聞いているところだ。読者らに呼びかけ、率直な意見を聞いている。具体的なフィードバックや実際の応用例が得られるよう取り組んでいる。これらは、私たちが次にやることの種になってくれるだろう。
山を越え、最後の下り坂へ
コンテンツを公開した週は難なく過ぎた。もちろん、大きな興奮はあった。だが本当に重要なのは、ビッグコンテンツ公開後の数週間から数か月だ。作業を終えた今、すでに完成したものから最大限の価値を引き出すにはどうすればいいだろうか?
そこで私たちは、いくつかのことを計画した。
現在は、HTMLバージョンをまとめてからアップデートできたらいいと考えている(ちょうど、MozがSEOビギナーズガイドをアップデートするのと同じように)。それだけでもかなり大変だが、その方向に進むことは予期していた部分もあった。それに、HTMLバージョンを作れば、ユーザー体験のためにやりたい構造化も進められる(PDFでは時間がなくてできなかったが)。
私たちはまた、読者がガイドと併用できる動画を追加することも検討している。そうすることにより、読者の質問や課題に対処したり、(おそらくはHTMLバージョンに埋め込んで)ガイドを補完する追加のリソースを作成したりできる。
さらに私たちは、読者の声を掲載し、ガイドのランディングページそのものについてもさらに改善を進めたい。私たちの希望は、このページへ向けてあらゆる種類のリンクを構築し続けることだ。それができれば、ソーシャルプルーフ(賛同者の増加によって信頼性が高まる根拠)や他のコミュニティ構築リソースを通じて、アップデートしたり価値を高めたりすることが間違いなく有意義になるだろう。
私たちがやりたいのは、ビッグコンテンツに費やした投資から確実に最大限の成果を引き出すことだ。そして、この点がビッグコンテンツのすばらしさでもある。戦略的に取り組めば資産になる。作ってから長年にわたり、有機的に役立つ現役のコンテンツとして活用されてゆく。
利用価値は間違いなくある
私たちのビッグコンテンツは、さまざまな形で恩恵をもたらし続けている。私たちはそれを手がけることで前に進む勢いを得たし、会社にとっても大きな学習体験になった。今回失敗した点に学び、次回の痛みを減らせるだろう(そしておそらく私たちの事例は、あなたの番が来たときにさまざまな失敗を避ける助けになるだろう)。
ビッグコンテンツは、チーム全体にとって自慢であると同時に、チームのなかに誇りを生む源泉にもなった。すでに指摘した、ブランドの認知度、リーチ、信頼、信憑性、人間関係、オーソリティ、リンクについては言うまでもない。
だが、こうした利点について文句をつけようというつもりはさらさらないが、これらは副次的効果にすぎない。
ガイドを構築した本当の理由、すなわちビッグコンテンツに取り組んだ本当の理由は、当社の使命をさらに推し進めたかったからで、具体的には、企業各社が、独自のコミュニティを構築することによってビジネスを改善できるよう支援することだ。私たちにとって幸運なことに、ビッグコンテンツをめぐる旅は、当社にとっても実に大きな重要性を持っていた。
私たちの事例があなた方にとって刺激となることを願っている。あなたの会社の「より高い目標」に貢献させるために、どんなビッグコンテンツを構築できるだろうか?
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