コンバージョンに効くのはアフィリエイト、そう思ってました。間接効果を測定するまでは/らでぃっしゅぼーやの事例
最終的な決め手になる媒体はアフィリエイトだと、私はずっと思っていました。
純広告やリスティング広告の役割は認知にあり、純広告に触れてらでぃっしゅぼーやを知っていただいた方が、最終的にアフィリエイト経由で申し込みに結び付けばよいと考えていました。
ところが、広告効果測定ツールで調べてみると……。
そう話すのは、らでぃっしゅぼーやでWebプロデューサーを務める金森 賢広氏。Webマーケ担当として独自の理論に基づいて集客施策を行ってきた金森氏だが、広告効果測定ツールを導入して、コンバージョンに至るまでの「間接効果測定」のデータを分析していくと、その理論とは異なるケースもあることを、把握できたのだという。
「アフィリエイトには比較サイトやポイントサイトなどもありますが、お客さまはいろいろな情報を見たうえで最終的に判断したり、特典目当てで購入に踏み切ったりするのだと考えていました。
ところが、実際にコンバージョンに至ったユーザーの広告接触レポートを分析してみると、実はアフィリエイトで認知して、最終的にもアフィリエイトからコンバージョンするルートや、最初に純広告でらでぃっしゅぼーやに触れた人が最後も純広告でコンバージョンするルートなど、当初の想定とは異なる結果もそれなりにあることがわかったのです。決め手になる広告は、実際にはアフィリエイトだけでなかったのです
」(金森氏)
らでぃっしゅぼーやは、有機低農薬野菜や無添加食品の会員制宅配サービス。利用者はまずトライアル(お試し)に申し込み、8週間のお試し期間を経て、9週目から“本入会”となる。金森氏は、お試し期間から本入会に至る割合を「本入会率」として重要な指標だととらえ、本入会率と流入元との関係を分析する際にも広告効果測定ツールを活用している。
「お試し期間だけで(本入会に至らずに)やめてしまう方もいらっしゃいますので、本入会まで至るお客さまの傾向を知るために、流入元別に本入会率を計測しています。とはいえ、本入会されたかどうかのデータはウェブサイトにはありません。ですので、広告効果測定ツールのデータと基幹システムのデータをひもづけて分析しています。
そうして分析してみてわかったのは、“本入会率が一番高いのは自然検索から”ということでした。また、お試しのコンバージョン率と本入会率の傾向は、ほぼ比例するということも明らかになりました。今では、こうしたデータを参考に、全体のマーケ施策を少しずつ改善していっています
」(金森氏)
らでぃっしゅぼーやの事例から、広告効果を測定していくことで見えてくる、マーケ担当者の成すべきことや、ユーザーの本当の動きを見ていこう。
オフラインからオンラインへと集客基盤を転換
「らでぃっしゅぼーや」は、利用者に「安全でおいしい食品や環境にやさしい商品の提供を通じて豊かで上質な暮らしをご提案する」ことを目指す、有機低農薬野菜や無添加食品の会員制宅配サービスだ。会員になると、「ぱれっと」と呼ばれる野菜と果物のセットが毎週届くほか、年間7000品目の中からそのときどきに応じて好きな食品の指定買いもできる。
会員の中心は、幼児がいる家庭の20~30代の主婦。1988年の創業時から一貫して宅配事業を柱としてきた同社だが、2年前からネットマーケティングにも本格的に取り組み始めている。そして、集客を目的とした広告宣伝をより的確に把握するために広告効果測定ツール「ウェブアンテナ」を導入している。
同社のネット事業戦略とネットマーケティングへの取り組みや広告効果測定の動きについて、金森氏は次のように説明する。
「らでぃっしゅぼーやの宅配サービスは、もともと訪問営業がメインでした。新聞の折り込み広告などを見て資料請求してくださった方のお宅を、スタッフがサンプルを持って訪問するというスタイルだったのです。しかし2009年ごろに、戸別宅配サービスにオンラインから直接申し込めるようにしたことで、ウェブサイトの役割として顧客の獲得が重要になったのです
」(金森氏)
らでぃっしゅぼーやのWebサイトとしては、ほかに単品販売のeらでぃっしゅもある。しかし、こちらは「ECを強化」というよりは、会費がかかる会員制を負担に感じてしまう人や、まずは気軽に単品購入から始めたいという人に向けたものとのこと。柱はあくまでも会員制宅配サービスだ。
間接効果測定や基幹システム連携など4つの課題
同社では、ネットでの集客方法として「純広告」「リスティング広告」「アフィリエイト」の3つを展開している。ネットマーケティングを強化するうえで、広告効果測定もそれまで以上にしっかりと行う必要が出てきたという。
導入前の課題
- 申し込みのきっかけになった広告がどれかを、間接効果を含めて正しく調べたい
- 基幹システムの顧客データとひもづけて分析したい
- リアルタイムで把握したい
- 複数代理店のパフォーマンス評価をしたい
「実は、以前にも広告効果測定ツールを利用していたのですが、そもそもネットマーケティングに重点を置いていない頃でしたので、ほとんど活用できていませんでした。
しかし、ネットの重要度が高まり広告の効果を把握したいと考えるようになってくると、そのツールでは満足できないことがわかってきたのです。たとえば、会員申し込みのシステムに、“申し込みのきっかけとなった媒体”のアンケートを設置していましたが、回答者の自己申告に頼る仕組みでしたので正確な情報はわかりませんでした。また、申し込みの管理システムが基幹システムに依存していたため、そのデータと連携してリアルタイムで集計して把握するということが難しかったのです。
らでぃっしゅぼーやの宅配サービス申し込んでくださった方が、本当は何がきっかけで申し込んだのかという間接効果までリアルタイムで把握したいというニーズが、本格的にWebサイトを利用していくにしたがって社内で強くなってきました。そこで、広告効果を正しく測定できるツールとして、それまで利用していたツールから乗り換える形で2009年の春から利用し始めたのが、ビービットさんのウェブアンテナでした
」(金森氏)
オンラインマーケティングの本格化にともなって、それまで1社だった広告代理店を十社ほど利用するようになったことで、各代理店のパフォーマンスを比べて評価できるようにしたかったことも、ウェブアンテナを選んだポイントの1つだったといいう。
実は、以前使っていた広告効果測定ツールは広告代理店から無償で提供されていたもの。となると、新しい商用の広告効果測定ツールに切り替えるには新たなコストが発生してしまう。しかし、その費用について社内的に問題になることはなく、すんなりと導入できたという。
「もともと、オフラインだけでビジネスが完結する事業でしたから、当時はまだ社内におけるネットの知識やそこへの関心が薄かったのです(苦笑)。とはいうものの、20年以上オフラインを中心にやってきた弊社ですが、今後の社会環境を考えるとネットを避けては通れません。社内的にネットに力を入れ始めたタイミングだったこともあり、“必要なものなら構わないだろう”という雰囲気でした
」(金森氏)
らでぃっしゅぼーやのネット広告予算は、2010年度には対前年比で倍増して年間数億円という規模、2011年度にはさらに増やする予定だという。そもそもコストがかかる広告効果測定だが、この投資に対するリターンを適切に把握したいというニーズが強くなるのも当然だろう。
社内的にネット強化の方向に進みつつあるという、Web担当者には追い風ともいえるなかで、さらに増額されたネット広告予算。その増加額について金森氏は、「効果が見えてきたこともありますが、それ以上に会社が成長するためにはここで思い切って投資して結果を出すという方針でした
」と説明する。
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