初代編集長ブログ―安田英久

二重価格表示とは 「通常価格」表記は違法になる? 景表法を事例でわかりやすく

どんな場合に「通常価格」と示すべきか、あなたは理解していますか? 気をつけないと、景品表示法に違反する二重表記となってしまうかもしれません。今回は、商品やサービスを提供する人ならば知っておきたい二重価格表示(ダブルプライス)について、例を交えつつ簡単に解説。実は、「当店通常価格」や「セール前価格」の表記には、ルールがあるんです。ガイドラインを理解して、つい2重価格表示してしまうことを防ぎましょう。
Web担のなかの人

今日は二重価格表示に関する基本をおさらいしておきましょう。とある筋のサービスで最近特に注目されているこのキーワード、広告やマーケやセールスに携わる人間ならば知っておかなければいけない常識ですね。

二重価格表示とは、商品やサービスを提供する際に、実際よりも著しく有利であると思わせる表示のこと。「不当景品類及び不当表示防止法」(景品表示法)という法律の第4条第1項第2号で定められています。

第四条  事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。

……

 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの

違反した場合には内閣総理大臣から措置命令が出され、その命令に違反した者は2年以下の懲役または300万円以下の罰金に処されます。

法律ではそういった表示を「不当表示」と定めており、不当表示は次のように分けられます。

 対象:自社対象:競合他社
優良誤認商品やサービスの品質・規格その他の内容について、実際のものよりも著しく優良であると誤認される表示商品やサービスの品質・規格その他の内容について、競争事業者のものよりも著しく優良であると誤認される表示
有利誤認商品やサービスの価格や取引条件について、実際のものよりも著しく有利であると誤認される表示商品やサービスの価格や取引条件について、競争事業者のものよりも著しく有利であると誤認される表示

二重価格表示は、このうち「商品やサービスの価格や取引条件について、実際のものよりも著しく有利であると誤認される表示」を指します。

たとえば、「通常価格21,000円、割引率50%OFF、販売価格10,500円」と表記して商品を販売している場合に、その商品を以前に21,000円で販売した実績がなければ、根拠のない自社旧価格を比較対象とした「実際のものよりも著しく有利な取引条件であると誤認させる表示」ですから、二重価格表示だとみなされます。

ほかにも、比較対象価格として「架空のメーカー希望小売価格」「根拠のない市価」などを用いて自社の商品やサービスの販売価格を安く見せかけることも、二重価格表示(有利誤認の不当表示)だとみなされます。たとえば、

  • 市価600円の品に「市価1,000円を500円で提供」と表示
  • 粗悪品の割引販売なのに「市価の3割引」と表示

なども有利誤認の不当表示ですね。

「二重価格表示」だと考えると「どこの表示と二重なんだ?」とわからなくなりますが、「有利誤認」を軸に考えると、問題があるのかないのかはすぐにわかるはずですよね。

ちなみに、埼玉県 消費生活支援センターの「景品表示法(二重価格表示のルールについて)」のページでは、過去の販売価格を比較対象とした二重各区表示に関して、次のようなルールがあると示しています。

よく、「当店通常価格」や「セール前価格」などと表示されているもので、次のようなルールがあります。

  • 過去8週間のうち、4週間以上の販売実績があれば、過去の販売価格として表示することができます(例1)。
  • 販売開始から8週間未満のときは、販売期間の過半かつ2週間以上の販売実績があれば、過去の販売価格として表示することができます(例2)。
  • 上記(1)や(2)を満たす場合であっても、実際に販売した最後の日から2週間以上経過している場合には、過去の販売価格として表示することは、原則としてできません(例3)。
  • 販売期間が2週間未満のときは、過去の販売価格として表示することは、原則としてできません(例4)。

景品表示法(二重価格表示のルールについて)」より

売らんがために見せかけだけお得に見せる売り方って……昭和の初期じゃないんですから、そういうのはやめましょうね。ネットで暴かれる可能性も高いですし、お客さんが「自分は騙されたんじゃないか」と思ってしまったら、その猜疑心はあとあと強いダメージになって残っていきます。

あ、ちなみに、企業間取引で、一律の価格があるわけではなく個別に価格設定をする取引の場合は、また事情が違うようです。「本来○○万円のところ△△円に値引き」という表記をしている場合、「○○万円」が根拠のある適切な金額であれば、たとえその金額での販売実績がなくても問題なしとのこと。まぁ、一品モノやカスタムの場合は過去に販売実績があるはずがないですからね。

・二重価格表示(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/representation/index.html#m01

・過去の販売価格を用いた二重価格表示のルール(埼玉県 消費生活支援センター)
http://www.pref.saitama.jp/site/mametisiki/mametisiki-keihinhyouzihou2.html

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