編集部ブログ―池田真也

楽天経済圏を支えるPDCAサイクルの仕組みとは、「アクセス解析サミット2010」レポート

今年スタートで5月25日開催されたイベント、アクセス解析サミット2010の様子を伝える

先月の5月25日、アクセス解析イニシアチブLLPと川崎市産業振興財団が主催するアクセス解析のイベント「アクセス解析サミット2010」が開催された。

会場ではアクセス解析を通じてPDCAに取り組む最先端の事例を中心に、楽天、ユニクロ、花王、ベネッセコーポレーション、リクルートほか多数の企業が講演し、各社が取り組むアクセス解析の効果検証プロセスや現場の課題などが語られた。

なお、アクセス解析サミットの講演資料はアクセス解析イニシアチブのサイトで公開されているので、こちらも参照してみてください。一部講演はUstreamで視聴することもできます。

講演資料

実録! 楽天流PDCAサイクルができるまで

楽天株式会社
アクセス解析・最適化推進リーダー
清水 誠氏

「10年後も勝ち続けるための新成功法則 実録!楽天流PDCAサイクルができるまで」と題した講演では、楽天でアクセス解析の導入と最適化を行う清水誠氏が、実際に楽天で行った改善プロセスとして、「楽天ぬいぐるみカード」の改善例を紹介した。楽天ぬいぐるみカードは、ぬいぐるみとセットでメッセージカードを届けるECサイトで、誕生日や結婚祝いなどのプレゼントで利用されるという。サイト改善のPDCAサイクルをまわすために、まず次の5つに取り組んだという。

  1. ヒトモノカネの流れと機能コンテンツの関係を図解
  2. 改善につながる疑問のリストアップ
  3. 解析の対象を絞り込み
  4. ページの現状を大枠で把握
  5. 各種の指標から訪問者の意図を想像

楽天では、アクセス解析・最適化推進チーム主導のもとでオムニチュアの「SiteCatalyst」を全社導入している。しかし、楽天には約40のサービスがあり、ユーザーの属性、集客方法、サイトの機能などがそれぞれ異なるため、まずはサイトの特性を把握することからはじめ、現場担当者と話し合いながら改善につながる要素をピックアップしていくという。

原因につながることを理解できなければ改善もできない」と話す清水氏は、さらに「接客・誘導」「在庫管理」「集客」「機能改善」という4つの改善につながる要素から、今回はカートのコンバージョン(CV)数が高かったことから、改善対象をサイトの接客と誘導に絞り込んだことを説明した。すべてを一度に改善することはできないので、優先順位をつけることが大切だ。

サイトの特性を把握し改善につながる「疑問」をリストアップ

次に行ったのが具体的な解析対象の絞り込みで、清水氏は今回、接客・誘導のなかでもコンテンツが重要と考え、特集ページを解析対象としている。また、「今回知りたかったことはデザイン的な成功法則」だと話し、掲載する商品の種類や数は最適なのか、商品とコンテンツの割合はどれくらいが最適か、ページの長さはどれくらいが良いのかなど、クリエイティブに関する効果測定を行ったという。

特集コンテンツのなかでは、一見すると一番右上のウエディングの購入件数と訪問数が高く優秀に見えるが、今回はクリエイティブとしての効果測定なので、結果的に売れたかではなく、訪れた人がどうすれば確実にCVしてくれるのかという視点で、コンバージョン率(CVR)を指標とした。そう考えると、購入件数は少ないが、キャラクタ特集と価格別ページとの2つのCVRが突出して高いことがわかった。

クリエイティブの効果測定としてCVRでベンチマーク

一方で清水氏は、「1つの指標だけではわからないこともある」と、なぜキャラクタ特集と価格別ページのCVRが高いのか、訪問数、出口率、クリック率(CTR)、CVR、カートドロップ率など複数の指標を組み合わせて考えたことを説明した。さらに、CVRだけでわからないならどうするか、その答えとして清水氏は今回、2010年3月に米国のオムニチュアサミットで聞いたスクロール計測のプラグインを利用してスクロール率と組み合わせて調べたという。

CVRで見ると(1)キャラクタ特集が最優秀

ユーザーが画面スクロールするシナリオを考えて分析

スクロール率を分析する際に、清水氏は1つ明確な数字として出せる指標に、一番下に掲載した商品までどれぐらい見られたのかを考えたという。CVRの優秀な3つのページを見ると、ページを訪れた人のうち、(1)キャラクタ特集では20%の人が、(2)価格別ページでは7%の人が、(3)文例集ページでは29%の人が一番下の商品まで見ていることがわかる。横に並んだグラフを見ると、(1)と(3)は最後に人が多く減り、(2)は少しずつ減り続けている。

どれくらいの人が一番下の商品まで見ているかを指標に

ここで清水氏は、単純にスクロール率だけを見てもしかたがないと、スクロールされるのが良いことなのか、次のような一連のフローをシナリオとして考えたという。

  1. 商品を探す
  2. 見つけてクリック
  3. 購入する

(2)の価格別ページを例に見ると、ページに来た人100%のうち、7%の人しか一番下の商品まで見ていないが、逆の視点で考えると、多くの人(100%-7%)が下まで探さずに途中で欲しいものを見つけて(クリックして)購入に至ったとも考えられる。

一方で、(1)のキャラクタ特集はCVRが5%と優秀に見えるが、20%の人が一番下の商品までスクロールしていることから、じっくり見て迷っているのではないかと考えたという。また、最後まで20%の人が見たにもかかわらず、CTRは(2)の価格別ページと比べて低いことがわかった。CVRが高いのにクリック率が低いことに関して清水氏は、ほしいキャラクタが明確で、迷いながらようやく見つけてクリックしたため購入意欲が高く、CVRが高かったのではないかという仮説を立てた。こうしたデータと仮説をもとに、いよいよ改善を実施していく。

 (1)キャラクタ特集(2)価格別ページ(3)文例集ページ
一番下の商品までスクロールした率20%7%29%
クリック率(CTR)27%31%2%
コンバージョン率(CVR)5.0%4.4%0.8%

仮説をもとに改善を実施

改善を実施する前に、清水氏はなぜこうした結果になったのか仮説検証を行っている。キャラクタ特集のページでは、訪れた人は好きなキャラクタが決まっていて、そのキャラクタがあるのか、じっくりページを見て探しているため、購入意欲が強いのではないか。それにもかかわらず、商品が見つかっていないのではないかという仮説を立て、そこから商品数やバリエーションを増やすことでCVRを改善できると考え、改善策を実施している。実際に商品を追加したことで、CTRが27%から33%に、CVRは5.0%から5.6%へと上がっている。

キャラクタ特集では商品を追加したことでCTRとCVRが共に向上

価格別ページについては、訪れる人は予算を決めていても何を贈るかまでは決めておらず、予算内で探してクリックし、違ったらやめたり戻ったりしているため、購買意欲がキャラクタ特集と比べて若干弱いのではないか。また、CVRは5.0%と高いので、ページをいじるよりも、流入を増やすことで、全体の件数が増えればいいのではと仮説を立て、改善を実施した。

具体的には、CVRが高いためページ内容はいじらず、他の5ページからリンクを増やして、流入を増やしている。結果として、最終的にCVRは0.2%ほど減少してしまったが、CTRは31%から37%へと大きく改善された。CVRは別の要因もあったため、誤差の範囲と考えた一方で、なぜCTRが上がったのかについては、「リンク元のページと誘導のテキストが適切だったため、クリック率が上がった」と、ランディングページとして適切だったことが考えられるとした。

文例集のページについては、出口率が高かったため、ローカルナビゲーションを設置し、かつページの途中にもリンクを設置することで、CTRが2%から4%に改善された。CVRも0.8%から1.9%に改善したという。

部分最適化だけでなく全体最適化を目指す

今回の改善結果を受けて、清水氏は「大事なのは狙った3ページの数字が上がったのはいいが、結果として全体が下がらなかったか」と、部分最適化の結果によって全体の成績が下がることがないかが大切だと話した。今回の例では、全体の数値を見てもCTRが3%、CVRが0.3%向上していることから、部分最適化と全体最適化の両方で成功している。

部分最適化の結果によって全体の成績下がっていないか注意する

また、清水氏は理想の改善として、「問題点と改善ポイントが明確」「ねらい通りコントロールできたか」「全体としても上がったか」の3つを挙げた。「いつも気にしているのが、結果としてなぜ上がったのか、問題点はなんだったか、何が改善ポイントだったのかを明確にするのが大事だと思っています」と、清水氏が言うように、結果だけでなく、原因と改善ポイントを明確にしていくことが、理想的なPDCAサイクルへとつながっていくはずだ。

また、今回は実験として行ったため、ロジックをいくつか省いて行ったと清水氏は話す。今回の事例では、スクロール計測の実装からレポート作成まで営業日でおよそ9日、時間にして16時間ほどかけたというが、一般的なルールとしてノウハウを蓄積していくには、A/Bテストや再検証が必要になる。しかし、長期的には目指すべきだが、実際の現場ではそこまで突き詰める余裕がないのが現状であり、これくらいのスピード間で進めるのが、現場のPDCAサイクルではちょうどいいと、楽天のPDCAサイクルを支える自身の経験を伝えた。

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