インタレストマッチが検索連動型の10倍インプレッションへ本格化 - ヤフー井上社長も登壇
ヤフーは10月22日、グランドハイアット東京においてイベント「インタレストマッチフォーラム」を開催した。同社が2008年9月にスタートした興味関心連動型広告「インタレストマッチ」をテーマとしたものだ。
会場にはスポンサードサーチの広告主を中心とした700人強が参加し、ヤフーが進める新しい広告の姿を共有した。
ジャーナリストの佐々木 俊尚 氏による基調講演や、ヤフーの井上 雅博氏によるセッションなど、濃い1日となったイベントの様子をレポートしよう。
[基調講演]
広告テクノロジはどこへ向かうのか
佐々木 俊尚 氏
イベントの皮切りは、ジャーナリストの佐々木 俊尚 氏による基調講演「広告テクノロジはどこへ向かうのか」。
佐々木氏の基調講演は、インタレストマッチそのものに関するものではなく、広告が今後どうなっていくのかに関する全般的な内容。佐々木氏によると、これからの広告で重要になってくる要素は次の3つ。
- ターゲティング
- レコメンデーション
- セレンディピティ
佐々木氏は、ターゲティングは「アルゴリズム」によるものだけでなく、「ソーシャルグラフ」を取り入れた手法が重要になっていくと言う。ソーシャルグラフとは、人と人のつながりなどの関係のこと。Webの広告ターゲティングは、アルゴリズムを練りソーシャルグラフを取り入れて進化することで、5年もすると劇的に変わり、今のかたちとはまったく異なるようになるだろうと予言した。
佐々木氏は、その例として、「ライフログ」と呼ばれる、人の行動をありとあらゆる形で記録していく手法を挙げた。どんなサイトを訪問したか、どんな買い物をしたか、どこに行ったか、どんな人と会ったかといったことを記録し、解析していくことで、ターゲティングの精度を高められるというものだが、現在の携帯電話にはGPSもあるし、おサイフケータイで購買履歴をとれるし、加速度センサーで移動のしかたもわかる。もちろん、電話やメールでだれといつコミュニケーションをしているのかの状況もわかる。現在のテクノロジーは、ライフログを達成するのに十分な進化をしているというのだ。そして、こういった情報を利用すれば、広告のターゲティングはさらに進化する可能性がある。
佐々木氏はさらに、「空間の構造化」や「拡張現実(AR)」といった、リアル空間とネット空間をうまくつなぎ込んだサービスを紹介し、広告のさらなる変化の姿を示した。
こういった技術や、リアル空間とバーチャル情報をつなぎ合わせたり混ぜていく技術が、広告のターゲティング精度向上を果たしていくのだという。
CGMサービスでのランキングも例として示された。たとえば食べログやクックパッドなどのユーザー投稿情報サービスでは、人気レストランなどのランキングがあるが、ランキングはあくまでも万人向けのものなので、必ずしも自分に合ったレストランやレシピが見つかるとは限らない。そこで佐々木氏は、サービス事業者の「自分に合ったレビューアを見つけて、その人の紹介しているものを選ぶと良い」というコメントを紹介する。つまり、人と人のつながり(必ずしも知り合いである必要はなく、趣味が合っている、地域が合っているなどの意味)による「マッチング」「レコメンデーション」が価値を増しているのだ。
しかし、ターゲティングとレコメンデーションを解決しても、それだけでは広告の進化は進められないのだと佐々木氏はいう。セレンディピティとは、「偶然にも良いものにめぐり会う能力」といった意味で使われるもの。佐々木氏は、現在のネット広告(特にリスティング系)では、「広告のクリエイティブ」が忘れられてきていると強調する。クリエイティブが今後重要になってくるというのだ。
クリエイティブの例の1つとして、佐々木氏は物語性を挙げる。取り寄せグルメのクチコミサイトである「おとりよせネット」は、サイト上に商品の背景や物語をしっかりと出している。その物語があることによって、商品を買おうと思う気持ちを引き起こしているのだという。
クリエイティブの力を活用するということは、既存のマス広告では当然のように行われていたものだが、ネットではさほど重視されていない。ネット広告は進化していくには、マッチングの精度が高まったうえで、さらにこうした物語性などを生み出すクリエイティブの力を復権させていくことが重要になるのだと佐々木氏は強調した。
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