居酒屋明日のモバイルほろ酔い語り

“iPhoneとAndroidの時代”のWEBデザイン- 明日のモバイルほろ酔い語り

iモードは十周年を迎えるが、ここに来てiPhoneやAndroidが登場し、時代が大きく変わろうとしている。

清水 亮(ユビキタスエンターテインメント)

2009年4月23日 10:00

居酒屋明日のモバイルほろ酔い語り

ここは、東京下町のとある居酒屋。板だけ載せた酒瓶ケースの上に、ずらりと焼鳥やもつ煮を並べ、路上で立ち飲みが基本の店だ。気さくなおかみさんが、手作りの肴を振る舞ってくれ、深夜までずっと賑わっている。

そんな気取らない店に、IT系勤務のホットなやつらが夜な夜なつどって業界の噂話に花を咲かせ、ときには激高しときには愚痴をこぼし、ときには成功を喜び合う……。店内では、聞き逃せないような最新情報、そしてモバイルの未来に関わるような貴重なアイデアが飛び交っているのだ。

今日も、おもしろそうな会話が耳に飛び込んできたようだ。

文、写真:清水亮(ユビキタスエンターテインメント)

登場人物

筆者

筆者=モバイル業界10年選手の零細企業経営者。iPhoneにも対応したモバイルCMS“ZEKE CMS”を販売する。
N氏=某コンテンツプロバイダのモバイルプロデューサー。

今年でiモードは十周年を迎える。夏野剛氏が描いた未来はそのまま日本のケータイシーンとなったが、ここに来てiPhone、そしてAndroidが登場し、時代が大きく変わろうとしている。今回も日本酒の美味しい居酒屋で、あらためて日本のケータイ事情とWebデザインに想いを馳せる。

“iPhoneとAndroidの時代”のWEBデザイン

■日本のWebサイトはまだまだiPhone未対応?

筆者

「ご無沙汰してますが最近いかがですか」

N氏「以前に比べると少しヒマになりましたね」

筆者

「やっぱり不景気だから?」」

N氏「いや、仕事は前より増えてるんですよ。広告収入じゃなくて有料サイトが多いので」

筆者

「やっぱり有料サイトはまだ不況の影響は受けてないですか」

N氏「どちらかというと、端末の値段が上がって機種変する人が減ってることが問題かな」

筆者

「ああ、機種変するとコンテンツ買いますからね」

N氏「そういうのは減ってるから、新規サイトも前ほど激しくはなくなりましたね」

筆者

「最近の端末は新機能が結構地味なんだよね」

N氏「そう、それで端末の値段のせいか知らないけど、最近iPhone売れているらしいじゃないですか?」

筆者

「いまどき0円キャンペーンとかやってるしね」

N氏「IT業界にいると、いまiPhone持ってない方が少数派でしょ?」

筆者

「Googleの社員も平気でiPhone持ち歩いてたの見ましたよ」

N氏「Androidはどうしたんだっていう(笑)」

筆者

「まあまだ日本だと使いづらいでしょうけどね」

N氏「昔からこの業界にいた人って、自分のためにコンテンツ作ってる人が多いじゃないですか」

筆者

「そうですね。誰も使わなくても俺が欲しいから作るっていう」

N氏「そうなると、いままでのサイトをiPhone対応にしようって話も当然出てくるわけですよ」

筆者

「そうですね」

N氏「それが思ったより簡単で。PC向けのサイトをなるたけシンプルにしておけば、iPhoneにもPCにも対応したサイトって、ヘッダーに一行書くだけでなんとかなるんですよ」

筆者

「うちも去年の夏からずっとiPhone向けのアプリ出してるんですけど、iPhoneから見たときにちゃんと見られるサポートページを作ってる会社は意外と少ないですね」

N氏「なぜなんでしょう?結構簡単なのに」

筆者

「よくあるのは、日本の会社だから日本語でしかページがないとか。日英表示に対応したサイトを作るのはそんなに手間ではないんですけど、なんか抜けちゃうんですよね。また、ブログやニュースなどを多国語対応でやっている会社もあまり見ないですね。そういうシステムはまだ日本では珍しいからではないでしょうか」

N氏「清水さんの会社は?」

筆者

「CMS(コンテンツ管理システム)は本業ですからもちろん対応してますよ。特にニュースやRSSを多国語対応しているので、英語環境で見ると英語の表示と英語のRSS、日本語環境で見ると日本語の表示と日本語のRSS、というように自動的に切り替わるようになっています」

N氏「あ、それは便利かも」

筆者

「英文を用意する手間はありますけど、こうしておけば間違いないです。特にブログ以外のサイトでトップページがRSS対応しているサイトはまだまだ少ないですね。そういうものをきちんとやるにはCMSを使う必要があるんですけど、日本のサイトはモバイルサイト以外はなかなかCMS化されてないし、モバイルサイトの場合、RSSっていままで不要なものでしたから、そんなものそもそも用意してないんですよね。iPhoneはそのちょうど中間だから、PCサイト系に寄ったところだとRSSは出るけど画面が対応してないとか、モバイル系に寄ったところだと画面はちゃんと出るけどRSSは出ないとか、偏ってますね」

■iPhone向けサイトのもっとも大きなアドバンストは?

N氏「海外のサイトとかで、やたらiPhoneのインターフェイスを意識し過ぎて却って使いにくくなってるサイトありますよね。あれは嫌ですね」

筆者

「まあやりたくなる気持ちはわかるっていうか」

N氏「その点、Tumblrみたいな、もともとシンプルなサイトはiPhoneでも見やすいですよ」

筆者

「iPhoneのズーミングインターフェイスって、最初はおもしろいけど慣れてくると使いづらいと感じて来ますね」

N氏「そう。しかも、このあと、国内の端末も少しずつAndroidになっていく方向じゃないですか」

筆者

「方向はわからないけど、そういう発表はちらほらありますね」

N氏「そのときはiPhoneみたいにズーミングできないわけですよ。そしたらやっぱり最初からズーミングが不要なサイトにしとくのがいいかなと」

筆者

「マルチタッチオペレーションの多くはAppleの特許ですからね」

N氏「幸い、iPhoneとAndroidは同じレンダリングエンジンだからCSSやJavaScriptの挙動はいっしょだって言うじゃないですか」

筆者

「まあどちらもWebkitベースだけど完全にいっしょではないですね」

N氏「それでもIEとOperaほどには違わないわけでしょ。それは結構でかい」

筆者

JavaScriptが使えるっていうのが、実はいまのいわゆるケータイとの最大の違いなんですよね。そのおかげでFlash Liteにもできなかったようなサイトが簡単に作れる」

N氏「内部で通信を行う、いわゆるAjaxが携帯でもできるってことですね。それは確かに革命的に便利だ」

筆者

「iPhoneは最近アプリが注目されがちだけど、実はWebアプリケーションのプラットフォームとして決定的な強みがあるのはそこですね。Androidも同じ」

N氏「お財布ケータイとかは確かに便利だけど、表面的なことですよね」

この記事をシェアしてほしいパン!

人気記事トップ10

人気記事ランキングをもっと見る