登場人物
有名イラストレーターA氏
古参モバイル業界人のB氏
居酒屋というのは楽しいもので、アルコールの滑らかさと、わいわいがやがやという喧噪が、コミュニケーションをしやすくしてくれる。
ある夜、久々に集まった3人が酒を酌み交わしていると、話題は自然と「iPhone」のこととなり……。
iPhone「なにがあっても買うべし! 買うべし!」
■iPhone、とりあえず欲しい
A氏「予約しましたよ。といっても、すでに何人かキャンセルが出てるみたい」
B氏「まあとにかく欲しいよね」
B氏「そんなに売れるとは思わないけど、誰よりも早く欲しいね」
A氏「欲しい」
B氏「国内で年内50万〜100万台は堅いでしょう」
A氏「そんなに行きますか。iPhone自体の良さってなんなんでしょう?」
B氏「何が良いって、まあ見た目でしょ。あと、べらぼうに便利だと思う」
スティーブ・ジョブズが2007年のMacworld基調講演でiPhoneを発表する際に使った言葉。「電話」「iPod」そして「ブレークスルー・インターネットデバイス」と3つの製品があるかのように見せかけて、実は1つの製品「iPhone」であると明かすと、会場の興奮は最高潮に達した。
A氏「電話もできるのがいい」
B氏「ココに来て、“ブレークスルー・インターネット・デバイス※1”とジョブズが言ったキーワードが活きてくるね。最初にそう言われたときは“なに大げさなこと言ってんだ”と思ったけど。実はマジでそうなってる」
■iPhoneの良さはブラウザのできの良さだ
A氏「インターネットマシンとの関連はどうなるんだろう」
B氏「インターネットマシンはいい機械だよ。
まずOSがウィンドウズモバイルじゃない。ウィンドウズモバイルはあくまでも汎用的な組み込みOSだから必ずしも電話に特化してない。けど、電話は電話特有の機能やしきたりが多すぎるから、汎用OSだと難しい部分があるのは事実。その点インターネットマシンは、電話としての従来のOSを踏襲していたから、iPhone以前の世界ではベストだったろうね。
そしてキーボードはたぶんiPhoneより打ちやすい。ただ、iPhoneに対して劣るところを1つだけ挙げるとすれば、ブラウザかな」
B氏「次のインターネットマシンも考えていると思う。孫さんは毎日寝る前にインターネットマシンを使ってるらしいし」
A氏「インターネットマシン2.0か」
Webkitは、オープンソースのWebブラウザ。マックとiPhoneの標準ブラウザSafariもWebkitをベースに作られている。海外のウィンドウズモバイル以外のスマートフォンではWebkitが使われていることが多い。Adobe Airでも内部ではWebkitを使用。Webkit自体はマックでもウィンドウズでもLinuxでもそれ以外の環境でも動作する。
Androidは、Googleが開発しているオープンソースの携帯電話向けOS環境。ブラウザとしてWebkitを使っている。
B氏「いっそSafariと同じWebkit※2にすればいいんだよね。いっそAndroid※3にしちゃうとか」
B氏「あとから真似してあれに追いつくのはマジで大変だと思う。不可能かもしれない。他社の五年先を行くっていうジョブズ発言も、あながちデタラメとは思えない」
A氏「タッチパネル付きのケータイはすでに各社からぼちぼち出たよね。あれとの違いは?」
B氏「なにもかも違うでしょ。タッチパネルだけなら、もっと以前からあったし。iPhoneの凄いのは、タッチパネルではなくてトータルのインターフェイス、主にソフトとOSのポテンシャルの凄さ、全体の完成度の高さ。統一感」
■世の中全部iPhoneになんてならない?
A氏「世の中全部iPhoneになるのかな」
ウィンドウズモバイルを搭載したり、フルキーボードが搭載されたりした、いわゆる“小さなインターネット端末”としての携帯電話を特にスマートフォンと呼び、北米では一定の支持を集めた定番商品となっている。
そもそも現在のようなマウスとキーボードとウィンドウがあるという作業環境を最初に統一的に具現化したのはゼロックスのパロアルト研究所(PARC)であると言われている。PARCでは他にもイーサネット(LAN)やレーザープリンタ、ユビキタスという概念などその後のコンピュータに影響を与えるさまざまな研究が行われていたが、とりわけ有名なのは『アルト』と呼ばれるウィンドウベースのオペレーティングシステムである。
若き日のスティーブ・ジョブズとビル・ゲイツはPARCを見学した際にこの先進的な概念に衝撃を受け、すぐに模倣商品の開発を行った。ジョブズが開発したものは、のちにマッキントッシュとなり、ゲイツが開発したものはウィンドウズとなった。しかしアルト自体は極めて原始的な環境に過ぎず、ウィンドウズの多くの要素は、アルトよりもマッキントッシュを参考にしたと思われる部分が多い。
B氏「iPhoneは、究極の二台目端末。お金に余裕がある人と、余裕がないけどノートPCを持ち歩きたくない人が買うんだと思う。けれども米国のスマートフォン※4のシェアとしてもまだ2位だし、騒いでる人の興奮度がめちゃくちゃ高いというだけで、これがスタンダードになる日は永久に来ないかもしれない。マックみたいに」
A氏「確かに。Macに移行すると、ウィンドウズなんか不便で絶対に戻れない気がするけど、マックユーザーってそんなに増えないしね」
B氏「それは言い過ぎ(笑)」
A氏「けれども、フォントが奇麗ということがこれほど自分の生活というか、コンピュータの利用スタイルを変えるとはMacを使ってみるまで夢にも思わなかったな。Macの特徴って、基本的にフォントが奇麗。これに集約されると思う。フォントとか、とにかく画面が奇麗」
ポストスクリプトは元来、プリンタに高度な印刷指示を出すためにアドビが開発したページ記述言語であったが、アップルを追われたジョブズが開発したNeXTワークステーションで画面表示にも使われるようになる。これを「ディスプレイ・ポストスクリプトと」呼ぶ。
印刷品質を実現するため、高度な字詰め処理(カーニング)や、美しいフォントの再現などが機能として盛り込まれた。ポストスクリプトを発展させたものがPDFであり、Mac OSXの描画コアエンジンである「Quartz」(クォーツ)は、PDFをベースとしたシステムになっている。驚くべきことに、iPhoneでも同様のエンジンが内蔵されている。このため、iPhoneの画面はハーフVGAサイズとは思えないくらいに美しいのだ。
B氏「ディスプレイ・ポストスクリプト※6の頃から執念のようにフォントにこだわってるものね」
A氏「それはもう圧倒的だね。iPhoneより奇麗な画面の端末って存在しないんじゃないかな。Macも含めて」
B氏「解像度は意外と低いんだよね。320×480のハーフVGAサイズ」
A氏「それ自体にはかなり驚き。実物を見るまで、まさかこんな奇麗な画面だなんて信じられなかった」
■iPhoneでマンガを読むのが流行る!?
A氏「いや、思ったよりずっと読みやすいね。これなら読みたいかも」
B氏「問題は文字かな。そのまま縮小すると、さすがに解像度が低くて、6×6ドットくらいの大きさになっちゃう。さすがにこれだと文字を判別するのは難しいよ」
A氏「かといってケータイコミックみたいに拡大しながら読むっていうのも違うんだよね」
A氏「コミックを書く立場の人間から言わせてもらうと、iPhone向けだからといってコマ割りを少なくしたりはしたくないんだよね。変な癖が付いちゃうと困るから、できるだけ紙の原稿と同じものがiPhoneマンガでも使えるといい」
B氏「そういう苦労もあるんだ。マンガにとってコマ割りって重要だもんね。それがマンガのアイデンティティでもあるし」
■iPhoneはモバイル業界の黒船となるか!?
A氏「iPhone向けにもサイトやコンテンツを作るのかというと、やはりノーかな。入力は日本のケータイの方がずっとしやすいよ。身体感覚に連動しているのは大事だと思う」
B氏「マルチタッチの特性を活かしたようなコンテンツが出てくるんだと思う。この分野のアプリケーションはまだ誰も作ったことがないから、凄いビジネスになる可能性がある」
A氏「マルチタッチの場合、コンテンツの内容そのものよりもどんな体験を提供できるかが大事になってくるね」
A氏「ということはiPhoneやAndroidのようなマルチタッチ端末が主流になっていくと、マルチタッチ体験をいかにうまくデザインできるかというのがコンテンツ成功の鍵になるわけか」
B氏「そういうこと」
A氏「PCのウェブがあんなに奇麗に見られるのに、専用コンテンツなんか必要かなって疑問に思ってたけど、体験を提供するってことなら納得かな」
A氏「ということは、iPhone時代になっても、PCとモバイルでコンテンツの表示のさせ方を微妙に変えなきゃならないわけだ」
B氏「自分の土俵に持ってきたね(笑)」
■iPhoneを最速でゲットするには?
B氏「行列でしょう」
A氏「どこに並べば良いんだろう?銀座のアップルストア?」
B氏「そもそもアップルストアで売るのかな?ソフトバンクショップじゃない?」
B氏「じゃあ俺、7月7日からちょっと会社休むわ」
A氏「並ぶの?」
B氏「そう。銀座のアップルストアの前で」
A氏「むしろ行列に並ぶんじゃなくて、行列に並んでいる人に対して温かいお茶とかビールとか弁当とか売るってのはどうだ?」
B氏「それだ!」
B氏「とりあえず7月7日からギョーレツするってことで」
※写真はイメージです。
その一! 銀座アップルストアでねじり込むように並ぶべし!
※Web担編注 筆者の清水氏は、ホントに並んじゃっていました → 「ソフトバンク表参道に早くもiPhone行列、一番乗りはアノ社長」
羅針盤
住所:東京都文京区本郷4丁目2-1(地図)
電話:03-3815-5258
本郷三丁目交差点そばの居酒屋。UEIの社員が週に一度は訪れる魂の故郷的な店。お勧めは4コ190円という脅威のサービス価格の餃子と、刺身がたっぷり入ったシーフードサラダ。そして謎のオリジナルメニュー「まきば」。リーズナブルなお値段で美味しく飲めるお店だとのこと。
ソーシャルもやってます!