居酒屋明日のモバイルほろ酔い語り

読者投稿がTwitterやニコ動で済む時代の“メディア”の価値とは? - 明日のモバイルほろ酔い語り

「雑誌冬の時代」、雑誌の“場”やコンテンツの考え方は、形やメディアを変えて発展しているものもある。

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居酒屋明日のモバイルほろ酔い語り

ここは、東京下町のとある居酒屋。板だけ載せた酒瓶ケースの上に、ずらりと焼鳥やもつ煮を並べ、路上で立ち飲みが基本の店だ。気さくなおかみさんが、手作りの肴を振る舞ってくれ、深夜までずっと賑わっている。

そんな気取らない店に、IT系勤務のホットなやつらが夜な夜なつどって業界の噂話に花を咲かせ、ときには激高しときには愚痴をこぼし、ときには成功を喜び合う……。店内では、聞き逃せないような最新情報、そしてモバイルの未来に関わるような貴重なアイデアが飛び交っているのだ。

今日も、おもしろそうな会話が耳に飛び込んできたようだ。

文、写真:清水亮(ユビキタスエンターテインメント)

今回のテーマは、「雑誌」。Webがさかんになる一方で、紙媒体は冬の時代と言われ続けている。実際に、書店も出版社も商業的に厳しい状況が続いている。しかし、「雑誌」という“場”のありようや、コンテンツの考え方は、Webの時代でも、形を変えてメディアを変えて発展しているものもある。今回はその周辺事情を語り尽くしてみた。

登場人物

筆者

筆者=モバイル技術集団ユビキタスエンターテインメント(UEI)を率いる、さすらいのモバイル馬鹿一代。
H氏=某誌編集長。筆者とは長年の知己だったが最後に会ったのは5年前。

代わりゆくメディアとモバイル

■雑誌の先行きは暗い?

筆者

「遅いから先にやってたよ」

H氏「ごめんごめん。ずいぶん久しぶりだね」

筆者

「君は変わってないなー。結婚とかしたの?」

H氏「そうそう。編集長になったよ。まあでも雑誌の編集長なんてさ、今頃なっても先行き暗いぜ」

筆者

「そうかなあ」

H氏「でもこうしてひさしぶりに会って、さらに感じたけど、いまって驚きの時代なんだよな。個人的には」

筆者

「どういうこと?」

H氏「いや、だってさ、2010年だぜ。おれ、10年前には絶対、2010年にもなったら紙媒体なんか消滅してると思ってたもん。

筆者

「ははは。そうだね。結構しぶといよね」

H氏「しぶといよ。ただ今はサッカーで言えばロスタイムみたいなもんだからさ。ここでそろそろ次につながるシュート決めないと」

筆者

「うんうん」

H氏「それに情報誌なんて一番キツいぜ? だいたい情報なんて全部ネットとケータイにあるんだからさー」

筆者

「きみんところもあれなの? 収入の大半は広告なの?」

H氏「それがさー。実売(本の売上げの収入)なんだよね。広告ももちろんあるけど、ほとんどは実売」

筆者

「すごいねそれ。この時代に実売で情報誌出してるって」

H氏「やっぱ広告主体にすると、どうしても誌面がつまんなくなるんだよね。逆にそれこそネットの媒体って広告企画みたいなのばっかりじゃん? うちはガチンコでスキモノが集まって気に入ったネタしか載せないからさ。それくらいしか勝負どころないと思ってるし」

筆者

「やっぱクレバーだねぇ、Hさんは」

H氏「ただ、それくらいしか勝負どころないんだよなー」

筆者

「これ、久しぶりにみたけど、オモシロいね。誌面」

H氏「っていうか久しぶりに見るなよ!」

筆者

「いやー、こういうの読むと浪費しちゃうから」

H氏「まあそのための情報誌だしねえ」

■熱狂的な読者はどこにいった

筆者

「うちのCMSのクライアントも、結構出版社とか雑誌の編集部が多いんだよね」

H氏「あ、そうなの?」

筆者

「1つ買ってよ」

H氏「そう来るか(笑)。まあ買ってもいいけど…なんか新しくてオモシロいことできないかなって考えてたんだよね」

筆者

「すごい漠然としてるけど本質だよね。それ。新しくてオモシロいこと」

「i書道」紹介ページ
「i書道」紹介ページ(iTunes Storeより)

H氏「雑誌の機能って、まさに“新しいことないかなー”“オモシロいことないかなー”って思ってる人に買ってもらうわけじゃん?おれ、知らなかったんだけど、『i書道』ってiPhoneの書道アプリって、清水んとこのやつなんだって?」

筆者

「そうだよ。いいでしょ」

H氏「ああいうの、いいよね。なんかわかりやすいけど新しくて」

筆者

「こないだ誰かが見つけたんだけど、あのアプリ使ってネットに個展開いてる人がいて、それが無茶苦茶に上手いのよ。ページや見せ方も僕らが作った本家より、ぜんぜんよくできてて……」

H氏「そういうダイナミズムが今の雑誌にはなくなってきちゃったんだよね。なんかすごい熱狂的な読者が勝手にすごいもの作って送り付けてくるとか。昔は結構あったんだけどな」

筆者

「ああ、熱狂的な読者といえば、『月刊I/O』っていうパソコン誌があってさ。こないだ通巻400号を達成したんだけど…」

H氏「400号!?すごいねそれ。月刊誌ってことは、30年くらいやってんの?」

「月刊I/O」
『月刊I/O』(2010年2月号)
筆者

「そう。日本で一番古いパソコン誌なんだよね」

H氏「おれも聞いたことないような雑誌作ってて、よく会社も編集部も維持できてるよなー。しかもパソコン誌かあ。熱狂的な読者がいるんだろうね」

筆者

「まさにそれでさ。いまだに投稿とか載ってるの。それがすごいなと思って。巻末で投稿記事募集してるんだよね」

H氏「投稿って言葉自体、なんだか懐かしい響きあるね」

筆者

「うん。なんかワクワクするね。個人的には」

H氏「清水とか投稿やってそうだよな」

筆者

「いや、まさに月刊I/Oに投稿してたよ。それがキャリアの始まりだもん」

H氏「あ、そうなんだ」

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