■電子書籍は来る?来ない?
■電子書籍は来る?来ない?
H氏「その感覚は大事だよな。情報誌も、紙である意味とかメリットとかを、もっと出せればいいと思うんだけど。本と同じ内容を有料配信しても売れる気がしないんだよね。電通がiPhoneで雑誌売ってるじゃん。あれとかもさ、なんか違うよなって」
「あれは試みとしてはすばらしいと思うけど、実際的にビジネスとして軌道に載せるのは難しいのかもね」
H氏「なんかオモシロいことしたいんだよ。そっから次の突破口を見つけていかないと」
「でもさ、出版って僕はまだまだ強いと思うんだよね。なんといっても、“現実の物体を作って流通させる”という仕組みそのものが凄いんだよ。凄い説得力がある」
H氏「そうかあ」
「いまだに僕は一番頻繁に買うの、本だからね。“僕が”だよ」
H氏「ネット中毒みたいな人間なのに、そんなに本を買うんだ」
「まあ古い人間なのかもしれないけど、どうしてもネットだと深い情報まで追えないじゃない。必然的に本を読むことになるよね。マンガみたいなのは、電子書籍でもうすべてOKだと思うけど」
H氏「まあまだまだ電子書籍って、意外と読みたい本は売ってないんだよな」
「それは凄くあるね」
H氏「Kindleが来るとそのあたりの事情は一変するかもしれないけど」
「あれはまだ端末が遅すぎるね。iPhone版のKindleはまだ試せてないけど」
H氏「最近、本を裁断してスキャンしてPDFにするのが流行ってるらしいじゃない」
「ああ、あれは本がかわいそうな気がしてなかなかできないんだけど」
H氏「そういうノスタルジーが清水の口から出てくるとはなぁ…」
「おれもジジイになったってことかな。まあでも便利は便利だろうね。積んだままになってる本があるからやってみようかな」
H氏「ということは、やっぱりコンテンツは残っていくんだろうなあ。いまは本の内容がネット化されてないってことだよね」
「そうだね。だから出版社というか、編集能力のある人はこれからも重要だと思う。媒体が紙になるか電子になるかの違いで」
H氏「でも、雑誌はやっぱり冬の時代かな」
「ブロガーとしてがんばるしかないんじゃない? EngadgetとかGizmodoみたいに」
H氏「それをいまからするにはちょっと出遅れた感じなんだよなー。それに同じようなことやってもねえ」
■第三の選択
H氏「いまんとこ、電子書籍に期待するか、ブロガーとか、まあブロガーじゃないけど何らかのWebサービスへ転身するか、どっちかかなーと思ってんだけどね」
「うーん、でも逆に、なにか紙ならではの仕掛けってあると思うんだよね。流通にのっかるからこその強みというか。付録とかさ」
H氏「付録ね。付録はいいよね」
「付録欲しくて思わず買っちゃう、みたいな」
H氏「でもいまどきそんなに欲しい付録ってあるかな」
「いやー、結構あるんじゃないかな。最近おれ、D&Dやってるんだけど」
H氏「D&Dって?」
「『ダンジョンズ&ドラゴンズ』っていうゲーム」
H氏「Wiiとかの?」
「いや、テーブルトークRPGっていって、人が集まって楽しむアナログゲームだよ」
H氏「へーっ」
「これがさ、世界最古のやつなんだけど、最近新しいバージョンになって、ビギナーズセット買ってくるとだいたい遊べるようになってんだよね。これが結構楽しい」
H氏「どんな風に?」
「なんか、地図が入っててね。ダンジョンの地図。それと、サイコロ。ふつうの立方体だけじゃなくて20面のやつとか4面のやつとかいろいろあるんだ。それとフィギュア。そいつを地図に乗せて遊ぶんだよ」
H氏「なんかジオラマやってる感じで楽しそうだね」
「そう。まさにそれなんだよね。んで、こういう感覚はコンピュータゲームにはないなあって久しぶりに思い出したんだ」
H氏「フィギュアを付録に付けるとかはアリかもだな」
「雑誌は紙じゃん。だから地図とか付けるといいと思うんだよ。ARタグとか。で、iPhoneとかケータイと組み合わせて遊ぶわけ」
H氏「ああ、なるほど。そういうのオモシロいね!」
「紙を完全に置き換えるんじゃなくて、うまい形で共存していくようなのがこれからオモシロいんじゃないかな。なんかあえてサイコロを付録に付けたりとか(笑)」
H氏「そんなんうちの読者はイラネーよ!(笑)。けど、なにか新しいことはできそうだよね。なんか清水と久しぶりに話したら、オモシロいことできそうな気がしてきた」
「じゃ、今日は編集長就任祝いで僕のオゴり!」
H氏「サンキュー。これからまたよろしくたのんますよ」
その十三! 既存メディアはモバイルとのユニークな組み合わせに活路を見いだすべし!
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この記事の筆者
清水 亮
株式会社ユビキタスエンターテインメント
代表取締役 兼 CEO
電気通信大学在学中に米Microsoft Corp.の次世代ゲーム機向けOSの開発に関わり、1998年末に株式会社ドワンゴ入社。1999年に同社で携帯電話事業を立ち上げる。2002年退社し、米 DWANGO North America Inc.のコンテント開発担当副社長を経て2003年独立。2005年、独立行政法人情報処理推進機構により、天才プログラマー/スーパークリエイターとして認定される。
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