Web広告研究会セミナーレポート

iPhone発売から10年、ヤフー 志立氏が語るインターネット50年の歴史とデジタルマーケティングの未来

ヤフー執行役員 社長室長の志立氏がインターネット50年の歴史とデジタルマーケの未来を語った
Web広告研究会セミナーレポート

この記事は、公益社団法人 日本アドバタイザーズ協会 Web広告研究会が開催およびレポートしたセミナー記事を、クリエイティブ・コモンズライセンスのもと一部編集して転載したものです。オリジナルの記事はWeb広告研究会のサイトでご覧ください。

2007年に初代iPhoneが発売されてから10年、スマートフォンが浸透して生活者のライフスタイルは大きく変化した。Web広告研究会5月の月例セミナー、第一部では「日本のインターネットの奇跡 ~Yahoo! JAPANの歩み~」をテーマにヤフーの志立氏が講演。インターネット登場から現在までのできごとを振り返り、今後のデジタルマーケティングの潮流を探った。

軍事研究から始まったインターネットの歴史

ヤフー株式会社
執行役員 社長室長
志立 正嗣 氏

「そもそもインターネットとは何か」と志立氏は語り、インターネットの歴史をなぞっていく。

インターネットの始まりは、米国の軍事利用にかかわる研究が発端だった。

1958年、米国国防総省の高等研究計画局としてARPA(アーパネット:Advanced Research Projects Agency)が設立される。そして、1969年にインターネットの起源となるパケット通信ネットワークARPANET(Advanced Research Projects Agency Network)が誕生した。

ARPANETで最初に送信したメッセージは、カルフォルニア大学からスタンフォード研究所へ送った「login:」というテキストだったが、「lo」まで送信したところでシステムがクラッシュしてしまったという。

TCP/IPが生まれた1973年

その後、1973年に現在も広く使われているインターネット通信プロトコル「TCP/IP」(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)の初期バージョンが開発される。

1982年にはTCP/IPの完成によってインターネットという概念が提唱され、1983年にARPANETの標準プロトコルとして採用された。同じ1983年には軍事用ネットワークがARPANETから分離し、ARPANETは研究目的のネットワークに変化していった。

1986年にはインターネット技術の標準化推進団体であるIETF(Internet Engineering Task Force)が設立される。1989年には、CERN(欧州原子核研究機構)がWWW(World Wide Web)を提唱して構築した。

WWWの父と世界初のWebサイト

世界初のWebサイトが公開されたのは1991年。WWWのもとになるグローバル・ハイパーテキスト・プロジェクトを提案していたティム・バーナーズ・リー氏が公開したものだ。

1992年にはISOC(Internet Society)が設立され、翌1993年には米国立スーパーコンピュータ応用研究所(NCSA)のマーク・アンドリーセン氏が、テキストと画像を同時に表示できる最初のWebブラウザ「Mosaic」を開発した。

電話などの規格は国や国際機関が決めているが、インターネットはIETFなどの民間の団体がオープンな環境で標準規格を決めているところが大きく違う(志立氏)

インターネットは「フラット」「オープン」「グローバル」でなければならないと志立氏は続け、特定の国に閉じることなく、フラットかつオープンな議論によって、グローバルに規格などを決めるべきだと述べる。

日本におけるインターネットの歴史

ここまでは世界的なインターネットの歴史だ。日本の歴史を振り返ると、1992年にAT&T Jensが日本初の商用ISPを開始した。Windows 95が発売された1995年には、深夜に電話代が定額となるテレホーダイサービスをNTTが提供開始し、ブロードバンドがないダイヤルアップ時代にインターネットを低価格で利用しやすくなった。

「Windows 95の登場は、インターネットにとってエポックメーキングな出来事だ」と志立氏は話す。インターネット接続機能が標準搭載されたWindows 95の登場によって、個人のインターネット利用が爆発的に増えたのだ。

そして、翌年の1996年4月にYahoo! JAPANがサービスを開始する。総務省の情報通信白書によれば、2015年時点のインターネット人口普及率は83%となっているが、96年の日本のインターネット普及率は3.3%、日本のWebサイトの数は3万件ほどだった。

iモードとiPhoneが加速させた日本のモバイルインターネット

1999年2月にはNTTドコモのiモードが登場し、モバイルのインターネット端末化が始まる。インターネットがいつでもどこでも利用できるようになり、メールコミュニケーションが浸透して、時代とともに音楽ダウンロードやニュース配信など、携帯電話の使い方が進化していった。

2001年には、Yahoo! BBをはじめとしたブロードバンドサービスによって、家庭へのインターネット普及が進んでいく。ブロードバンド普及期の様子を振り返りながら、志立氏は「通信が高速化したからといって、むやみにコンテンツをリッチ化しようと考えるべきではない」と語る。考えなくてはならないのは、ユーザーが何を求めているかということだ。

ブロードバンド化が進んだとき、Yahoo! BBポータルを作ってリッチコンテンツを配信しようとした。しかし、実際にユーザーが求めていたのは、高速通信でリッチコンテンツを楽しむことではなく、より多くのニュースを読んだり、より多く検索したりすることだった(志立氏)

米国に1年遅れた2008年、日本でもiPhoneが発売されて国内のスマートフォン市場が大きく拡大していく。スマートフォンやタブレット端末の普及に比例して、インターネット利用者数や利用時間が爆発的に増加し、ソーシャルメディアの利用率も増加していった。

デバイスの進化とインターネットの傾向

インターネットの普及には、前述のスマートフォンのようにデバイスの進化も大きく関与している。

PCデバイスの進化を振り返ると、世界初のPCは、1970年にゼロックスのパロアルト研究所で開発されたAltoだという。1976年には、アップルから後の創業につながるApple Iが発売される。

日本で最初に家庭用PCが発売されたのは1979年、マイクロソフトのOSを搭載したNECのPC-8001だった。1992年には、世界中に普及するPCの原型になったDOS/V機(PC/AT互換機)が日本で普及し、1995年にWindows 95が発売する。1998年には初代iMacが登場し、デザインが話題となった。

PCデバイスの進化

モバイルデバイスは、1999年に初代iモードが発売され、2000年に写メールケータイが登場。2001年にiPodが発売され、2004年にはFelica対応ケータイ、2008年にiPhone、2009年にAndroid OSのスマートフォン、2010年に初代iPadが発売されている。

モバイルデバイスの進化

2015年になると、インターネットの利用端末でスマートフォンがPCを上回り、現在までインターネット利用時間の増加を牽引している。

現在のスマートフォンのインターネット利用時間は、ブラウザ22%に対してアプリ78%と、アプリが圧倒的なシェアを占めている(2015年ニールセン調査)。「Yahoo! JAPANは、スマートフォンファーストで成功したが、今後はアプリファーストに挑戦していかなければならない」と志立氏は話す。

インターネット市場で繰り返される2つのトレンド

「インターネットはオープンな市場とクローズな市場の行き来を繰り返している」と、インターネットの歴史を振り返って志立氏は説明する。

インターネットが普及する前の1980年~1995年はクローズなパソコン通信が使われていた。1995年からPCインターネットが普及してオープンになったが、その後は再びクローズなiモードが使われるようになった。そして、2008年からオープンなスマートフォンでWebを見るようになり、2013年からは再びクローズなスマホアプリが使われているというのだ。

インターネット市場2つのトレンド

また、日本のインターネットはガラパゴスでの成長の後、グローバルに合流してきたと志立氏は話す。

たとえば、PC市場ではドメスティックなPC-9800の登場後にグローバルなPC/AT互換機が利用されるようになった。モバイルでも同様に、ドメスティックなガラケーの登場後にグローバルなスマートフォンが登場した。

ソーシャルメディアでもドメスティックなmixiやGREEが普及した後にFacebookが利用されるようになってきており、日本で成長したYahoo! JAPANのサービスも、グローバルに合流していくと志立氏は最後に語った。

Web広告研究会サイト掲載のオリジナル版はこちら:「ヤフー 志立氏が語るインターネット50年の歴史とデジタルマーケティングの未来」2017年5月24日開催 月例セミナーレポート 第1部

用語集
GREE / ISP / WWW / Webブラウザ / mixi / ガラケー / スマートフォン / ソーシャルメディア / ダウンロード
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