居酒屋明日のモバイルほろ酔い語り

地球をぐるっとまわって考えた。フラット化って本当は…… - shi3zの明日のモバイルほろ酔い語り

日本酒の美味しい居酒屋で「フラット化する世界」の功罪を考える。世界各国を実際に巡って、著者が感じたこととは?

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居酒屋明日のモバイルほろ酔い語り

ここは、東京下町のとある居酒屋。板だけ載せた酒瓶ケースの上に、ずらりと焼鳥やもつ煮を並べ、路上で立ち飲みが基本の店だ。気さくなおかみさんが、手作りの肴を振る舞ってくれ、深夜までずっと賑わっている。

そんな気取らない店に、IT系勤務のホットなやつらが夜な夜なつどって業界の噂話に花を咲かせ、ときには激高しときには愚痴をこぼし、ときには成功を喜び合う……。店内では、聞き逃せないような最新情報、そしてモバイルの未来に関わるような貴重なアイデアが飛び交っているのだ。

今日も、おもしろそうな会話が耳に飛び込んできたようだ。

文、写真:清水亮(ユビキタスエンターテインメント)

日本酒の美味しい居酒屋で、今回は業界の先達とともに「フラット化する世界」の功罪を考えることに。世界各国を実際に巡って、著者が感じたこととは?

登場人物

筆者

筆者=さすらいの零細企業経営者。モバイルコンテンツ管理システム(CMS)の開発・販売を手がける。最近はiPhone関連の事業に力を入れる32歳。
T氏=大手ゲームメーカー取締役。筆者とは数年来の付き合い。上場経験あり

地球をぐるっとまわって考えたこと

■世界不況の波は、やはりここにも…

地酒 あさま01
筆者

「ご無沙汰しております」

T氏「どうもどうも。久しぶり」

筆者

「ここは日本酒が美味しいんですよ」

T氏「先にやらせてもらっていたよ。相変わらずいろんな店を知ってるねえ」

筆者

「知人に教えてもらったんです」

T氏「最近商売の方はどうだい?」

筆者

「それが大変で」

T氏「どんなところが?」

筆者

「不況のあおりをもろに受けてましてね。土壇場で発注取消になったのがここ1週間で2件もありました」

T氏「最近は大手でも危ないからねえ」

筆者

「ええ。2つとも大手だったんですけどね。コンペにも勝って、これからというときに予算縮小とやらで話自体がとりやめに…」

T氏「それは災難だったねえ。とはいってもこの時期じゃ仕方ないか」

筆者

「そうなんですよ。世界経済ってつながってるんですね

T氏「そうだよ。むしろ君がいつも言ってることじゃないか」

筆者

「頭で解っていても、実際影響受けると辛いですね。どうにもならないじゃないですか」

T氏「だから不況なんだよね。とはいっても君のところは一度も赤字出したことないし現金も潤沢だから、多少のことではびくともしないだろ?」

筆者

「そうですね。現金はできるだけ手元に残すことにしているので」

T氏「最近はiPhoneとかもやってるみたいだけど、円高も馬鹿にならないんじゃないのか?」

筆者

「そうなんですよ。海外の売上げがいま3割強なんですけど、振り込まれる日までいくらになるのか予想できなくて」

T氏「外貨口座を作った方が良いよ」

筆者

「そう思って今日、銀行と話をしました」

T氏「日本の場合、現金はあるのに使う気がしないという気分の問題もさることながら、政治が多少良くなってこないと辛いね」

筆者

「ちょっと前までデフレとかでなんでもかんでも安くなってましたからねえ」

T氏「余計に金の使い道がなくなるわけだよな」

筆者

「今、ネットみてるだけでたいていのヒマは潰せてしまいますからね。飽きたら自分で作れば良いし」

T氏「それがなあ。我々ゲーム業界でもうまく順応していかないといけないからねえ」

■ゲームやネットで“遊ぶ”から“作る”が増えている

リトルビッグプラネット

リトルビッグプラネット』はソニーPlayStation 3向けのゲーム。ポップで暖かみのあるキャラクター造形のアクションゲームで、惑星中を冒険しながら、国ごとに起こっているいろんな問題を解決するストーリーとなっている。だがそれ以上に、自由自在にステージを制作できる「クリエイトモード」で注目されている。物理演算と幅広い素材で、自由な世界を構築可能となっており、ネットには、さまざまな人たちが独自の世界やゲームを作り上げて公開している。

KORG DS-10

KORG DS-10』は、ニンテンドーDS向けのソフトだがゲームではなく、DSをアナログシンセサイザーにしてしまう楽器ソフト。DS特有のタッチコントロールを使って、2台のアナログシンセ・シミュレーターとドラム・マシン、多彩な制御が可能な6トラック/16ステップのシーケンサー、3種類のサウンド・エフェクトによる幅広い曲作りが可能となる。

筆者

「ソニーPlayStation 3の『リトルビッグプラネット』とかとても面白いと思うんですよね。これからの時代のゲームとして」

T氏「あれはいいね。個性的なステージがどんどん出てきているし」

筆者

「しかも結構面白い。決して新しいわけじゃないんですけどね」

T氏「そう。目新しいことはなにもないんだけど、今の時代にああいう見せ方をするのが上手いと思うね」

筆者

「ゲームじゃないですけど、ニンテンドーDSの『KORG DS-10』とか、YouTubeに自分で演奏したものをアップするのが少し流行したりしてますよね」

T氏「DS-10は流行っていうほどじゃないだろうけど、ユーザー同士が連合して盛り上がっているのは注目に値すると思うね」

筆者

「あれは相当売れたらしいですよ。Amazonで予約完売ですから」

T氏「そうらしいね」

筆者

「今の時代、ああいう、“遊ぶ”だけでなくて“作る”という部分が重視されてきているのは本当に面白いなと思いますね。毛色は少し違うけど、pixiv(ピクシブ)なんかも」

T氏「なにそれ?」

筆者

「お絵描き専門のSNSみたいなやつで、みんな自分で描いた絵を共有して遊んでるんですね」

T氏「素人の絵を集めて配信してるの?」

筆者

「まあそんなところです。面白いと思うのは、そんなに自分の絵を見せたいっていう人がいるのかっていう部分ですね」

T氏「いつの時代もそういう人は居るんだろうねえ」

筆者

「コミックマーケットみたいなのが盛り上がるっていうのは解るので、それがネットになったんだろうな、という感覚で想像はできますけどね。僕は昔ブログが流行ったときも、“こんなに自分の文章を他人に読ませたい人って居るんだぁ”と感心したくらいですから」

T氏「清水君自身、結構ブログとか書いてるじゃない?」

筆者

「いや、書いてますけどね。僕はもともとライター出身で、自己顕示欲の塊みたいな生き物ですから」

T氏「そこまで言うと清々しいね(笑)」

筆者

「目立たなければ死んだほうがいいという(笑)…まあそこまで思っていませんけど、寂しがり屋なので、誰かに構って欲しいんです。そのためにみんなにブログなり記事なりを読んでもらいたい。ソフトを使ってもらいたい。これがモチベーションですね

T氏「そういう人が一杯居るってことなんだろうね」

筆者

「まさにそうだと思いますよ」

■ネット時代になり投稿型媒体が変質した

地酒 あさま02

T氏「でもそういえば昔に比べて雑誌に投稿するプログラマーって減ったよね」

筆者

「あ、Tさんもそう思ってました? 僕もそう思ってたんですよ」

T氏「昔はさー、『ベーマガ』とか、『I/O』とかって半分は読者投稿の記事なりプログラムだったじゃない。今はそういう本自体がないのかもね」

筆者

「そうですね。ベーマガはもうないですし、そもそもダンプリストとか掲載されない時代ですからね」

T氏「でもああいうところでもさ、いちおう掲載される基準みたいなのがあって、それをクリアしようと頑張っていた時代があると思うんだよね。今の人たちはそういう感覚はないのかな」

筆者

ネットで目立つのって、雑誌に掲載されるよりはずっとハードルが低いですからね。それも善し悪しですけど」

T氏「雑誌に記事とプログラム書くとどのくらいの原稿料もらえたの?」

筆者

「僕の場合は一回あたり平均で10万円くらいですね。特集なんかやると30万円とか」

T氏「それは学生時代の話?」

筆者

「高校から大学にかけてですね」

T氏「それは凄く良い稼ぎじゃないの?」

筆者

「そうですね。当時はそう思いました」

T氏「今はどうなんだろう」

筆者

「なんかある時期から急激に原稿料が激減するんですよ。たぶんインターネットの流行とほぼ同時期だったんじゃないかな。今は内容に関わらず2万円いかないくらいですね」

T氏「ページ単位じゃないの?」

筆者

ネットだからページ単位っていう払い方がなくなったんですよ

T氏「ああそうか」

筆者

「それに、読者からお金とる手段が無いから、内容もどんどん無難でつまらない記事ばかり依頼されるようになって、それが嫌になってやめたんですよ」

T氏「つまらないってどんな記事?」

筆者

「一番つまらないのは、興味の無い新製品のレビューとか」

T氏「興味もない商品を紹介するの?」

筆者

「そう。それで思った訳ですよ。『こんな仕事は金をもらってもやりたくない』って。それで製品をレビューするより作る側の方が面白いと思って

T氏「なるほど。まあ仕事だもんな」

筆者

「もちろんそういう中でも歓びを見いだす人はいると思うんですけど、僕にはとにかく向いてなかった。やっぱり、そういう製品のレビューとかって独創性よりは正確性が要求されるんです」

T氏「そりゃ確かに向いてない。紙媒体は違ったの?」

筆者

「紙媒体の場合、5万部の雑誌でも読者の10%にウケる記事なら原稿料がちゃんと貰えるんです。20%の支持をうければヒット、30%以上は大ヒットかな」

T氏「Webは違う?」

筆者

「お金がないせいなのかわからないけど、5000人の読者と5000人のユニークユーザーというのは似ているようで価値がぜんぜん違う。紙媒体の読者はお金を払って読んでいる訳だから、ある程度人種も絞られるし書きやすいんです。5000人のユニークユーザーというのは、立読みしている人と同じ感覚ですね。どんな人なのかぜんぜんわからない。そもそも本当に読んでいるのかもわからないし、キーワードにひっかかって間違ってきちゃっただけかもしれない」

T氏「うん」

筆者

「それに読者当たりの単価がぜんぜん違う。昔専門誌って500円から1000円くらいしたけど、ネットはタダですからね」

T氏「広告はやっぱりダメかね?」

筆者

「広告だけじゃ厳しいですね。広告に頼るやり方って景気が良くないと難しいですよ。結局、最後に誰かがユーザーから直接お金を稼がなければ広告ベースのビジネスは成り立たない訳で」

T氏「でも時々Web媒体の仕事してるよね」

筆者

「Web担とか(笑)。やってますよ。ただね、半分趣味みたいなものですね。昔は原稿料収入だけで生活できるくらい稼げたけど、今の原稿当たりいくらというお金のもらい方だと、ライティングだけで食って行くのは相当難しいと思います」

T氏「話を戻すと、そういう環境の変化が投稿型媒体を変質させていったということかな」

筆者

「そういうことになりますね。しかも投稿する人のモチベーションって2種類あったんです。お金と名誉

T氏「うん」

筆者

「ところがお金はともかく、名誉はネットでも得られるようになってしまった。ちょっと目立ったことすればすぐに注目を浴びることができますからね」

T氏「それはそうかもわからんね。YouTubeとかホームページとかでね」

筆者

「ただ、それってすごくインスタントなんですよね。昔に比べるとずっと記憶に残りにくくなってる。昔の月刊誌ペースだと、少なくとも一か月の間に同じ本を何回か読み直すわけです。もったいないから(笑)」

T氏「そうすると印象に残るもんね」

筆者

「でもネットだと毎日玉石混淆の情報がダダっとストリームで流れて行くから、記憶に残らない。あんまり」

T氏「むしろ更新回数を控えめにしたらどうなんだろうね。月刊Webとか」

筆者

「ところが更新回数を減らすと、ユーザーが激減するんですよね。ネットの常識では。毎日なにかしら変化がないといけない」

T氏「あー、そういうもんなんだ」

筆者

「そういうもんです。だから一回あたりの更新の密度が減って行く訳ですよ」

T氏「その結果、原稿料も減る、と」

筆者

「そういうことになりますね。それに今ネットにプログラマの投稿媒体ってほとんどないですよ。CodeZineくらいかな」

T氏「そうするとますますアマチュアは減っていくのかも解らんね」

筆者

「いや、減るというよりは増えてるんですけど、質が高まる前にウケ狙いに走ってるような気がしますね。昔は権威というか、編集者なり教授なり誰か偉い人が『面白い、面白くない』を判断していたから、そのハードルを超える工夫が求められたけど、今はそれに比べると目立つのがあまりにも簡単になってしまいました。その結果、創作物のトータルな出来が悪くなってる部分は否めないですね」

T氏「インターネットもいいことばかりじゃないね」

筆者

「そうですね

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