■夏野剛が描いた「日本のケータイ像」は今後どうなる?
■夏野剛が描いた「日本のケータイ像」は今後どうなる?
「話が外れるけど、このままいくと日本のいわゆるケータイはそう遠くない未来にAndroidにとって変わられてしまうとして、日本的なケータイの最後の砦が、夏野さんの悲願だったお財布ケータイというのは…」
N氏「凄いですよね。今年でiモードも十周年だけど」
「みんなジョブズのことばかり褒めるけれども、夏野さんをもっと称えたほうがいい。なんのかんの言って、日本のモバイル産業を一兆円にまで育てたのは彼のアイデアと情熱なんだから」
N氏「ほんとそうですね。彼が学生時代にリクルートでバイトしてなかったらここまで発展したかどうか」
「夏野さんの本は彼が自分で書いたものしかないんですよね。プレゼンのうまさも頭の良さもジョブズに匹敵する日本人は彼しかいないと思います。僕、書こうかな。『夏野剛、偉大なるビジョナリーの道程』とか」
N氏「それちょっと読みたいかも。清水さんは面識あるんですよね」
「あるけど、この十年で10回あるかないかかな。雲の上の人なので、僕のことなんか忘れてるとおもいますが」
N氏「え、そんなもんなんだ」
「うん、でも最初のインパクトがすごかったから。それ以来の夏野教徒ですよ」
N氏「どんなこと言ってたんですか?」
「『君は今日、プレゼンするのにパソコンを持ってきたけど、10年すればケータイで済むようになる。そんな世界を作ろう』と」
N氏「ええっ、それいつの話ですか?」
「99年の7月。ビックリするでしょ。次に会ったときはこうおっしゃっていた『最近は財布を忘れてもそれほど困らないが、ケータイを忘れたら家に取りに帰る。いつか財布の機能がケータイに内蔵されるべきだ』ってね」
N氏「その頃からそんな先まで見通していたんですね」
「実は、あの頃モバイルの公式サイトをやってる人はみんな知ってるんだけど、あのときに夏野さんは通信技術の進化とそれによって実現するサービスやコンテンツの進化に関して詳細なロードマップを書いていたんだよね。そのなかにはテレビを携帯で見るとか、お財布とかがすでに計画に入っていたわけ。モバイルCP各社は夏野さんが98年に予言したロードマップをもとに長期計画を立てていたわけだ」
N氏「当時はインターネットですら動画配信がまだ一般的ではなかったですよね」
「だからさ、これはもうとてつもない人だなと。その当時、僕はインテルやマイクロソフトの長期ロードマップを見て戦略を立てる仕事をしてたんだけど、夏野さんは別格だと思った。ただ、携帯電話に通信機能を付けるだけで社会的なインフラまで変えてしまうようなロードマップを書ける人はそうはいない。ましてや実現できる人は……」
N氏「もうやめちゃったんでしたっけ?」
「その理由が『iPhoneはドコモでは作れないから』だとかね。悔しいという気持ちもあったんじゃないんですかねえ」
N氏「そのドコモはAndroid端末を出すと発表してますけど、どうなりそうですか?」
「Android端末はGoogleがどの段階までEvilにならないか、というのが成否の鍵だと思いますね。かなり彼らがクレバーにならないと成功しないでしょう」
N氏「海外ではすでに発売されてるわけですよね」
「出てますよ。それで、黙殺されてる。ある意味で、すでに失敗しているとも言えますよね」
N氏「iPhoneのときはすごかったですもんね」
「Androidも予約だけで150万台の注文があったというニュースがありましたが、それ以来まったくニュースを聞かなくなりましたからね」
N氏「どうしちゃったんでしょう?」
「いろいろな考え方があると思いますが、単純に魅力がないんだと思いますよ。目新しさもないし」
N氏「Androidを買いそうな人はすでにiPhoneを持っていそうですよね」
「一般ユーザーはそうでしょうね。そうなると“GooglePhone”という名称はむしろiPhoneのほうがふさわしいとすら思えますね」
■Androidはどの程度日本で普及するのか?
N氏「じゃあAndroidって普及しないんですか」
「いまのGoogleのロードマップどおりに売れて行くというシナリオは薄くなってきましたね。けれどもだからと言ってAndroidが普及しないというわけでもないかなと思っているんですよ」
N氏「それはどういう意味で?」
「いまの国産ケータイのOSってすでに限界に達しているんですよね。今までのOSを使い続ける限りiPhoneくらいのフィーリングの端末を作るのは難しいんです。もっとモダンなOSのほうが理想的です。けれどもOSをゼロから新規開発するような予算はないわけですよ」
N氏「しかも作ったとしても海外には売れないわけですしね」
「国産端末はそうですね。そういうことを考えたときに、オープンソースで枯れた技術基盤を持つAndroidは魅力的なんですよ」
N氏「そのまんま使うのではなく、基盤OSとして使う?」
「そう。たとえば現状でも、Linuxベースだったり、Symbian OSベースだったり、いろんな基盤OSのiモード端末があるわけですけど、ユーザーは気づかないわけです」
N氏「そうですね」
「だから、そういう基盤OSとしてAndroidを採用すると、かなりの数のハードウェアメーカーは国内向け、海外向け、ドコモ向け、KDDI向けというバラバラの開発リソースのかなりの部分を共有化できて、結果的に業界全体のコストダウンにつながると思うんですよ」
N氏「最近は端末も高いですからね」
「そういう問題も解決できるハズです。技術の共有化によって、全体コストが下がれば、EeePCをはじめとしたネットブックのように低価格かつ高性能な携帯を供給できるはずです」
N氏「Eee携帯(笑)」
「ただ、特許の問題があって、iPhoneほど洗練されたマルチタッチUIを使う端末はAndroidに限らず出てこないでしょうね」
N氏「iPhoneが欲しかったらiPhoneを買うしかないと」
「ただ、国産ケータイならではの機能というのはこれからも追求されて行くと思います。そういう意味ではまだ勝負が付いていませんから、モバイル業界もまたおもしろくなってきたという印象ですね」
N氏「今年はおもしろいニュースがいろいろ出てきそうですね」
その七!
AndroidとiPhone両方に注目すべし!
iPhone向けサイトを作るのは難しくない!けれども多言語対応は意識すべし!
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この記事の筆者
清水 亮
株式会社ユビキタスエンターテインメント
代表取締役 兼 CEO
電気通信大学在学中に米Microsoft Corp.の次世代ゲーム機向けOSの開発に関わり、1998年末に株式会社ドワンゴ入社。1999年に同社で携帯電話事業を立ち上げる。2002年退社し、米 DWANGO North America Inc.のコンテント開発担当副社長を経て2003年独立。2005年、独立行政法人情報処理推進機構により、天才プログラマー/スーパークリエイターとして認定される。
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