登場人物
筆者=モバイル業界10年選手の零細企業経営者。iPhoneにも対応したモバイルCMS“ZEKE CMS”を販売する。
N氏=某コンテンツプロバイダのモバイルプロデューサー。
今年でiモードは十周年を迎える。夏野剛氏が描いた未来はそのまま日本のケータイシーンとなったが、ここに来てiPhone、そしてAndroidが登場し、時代が大きく変わろうとしている。今回も日本酒の美味しい居酒屋で、あらためて日本のケータイ事情とWebデザインに想いを馳せる。
“iPhoneとAndroidの時代”のWEBデザイン
■日本のWebサイトはまだまだiPhone未対応?
「ご無沙汰してますが最近いかがですか」
N氏「以前に比べると少しヒマになりましたね」
「やっぱり不景気だから?」」
N氏「いや、仕事は前より増えてるんですよ。広告収入じゃなくて有料サイトが多いので」
「やっぱり有料サイトはまだ不況の影響は受けてないですか」
N氏「どちらかというと、端末の値段が上がって機種変する人が減ってることが問題かな」
「ああ、機種変するとコンテンツ買いますからね」
N氏「そういうのは減ってるから、新規サイトも前ほど激しくはなくなりましたね」
「最近の端末は新機能が結構地味なんだよね」
N氏「そう、それで端末の値段のせいか知らないけど、最近iPhone売れているらしいじゃないですか?」
「いまどき0円キャンペーンとかやってるしね」
N氏「IT業界にいると、いまiPhone持ってない方が少数派でしょ?」
「Googleの社員も平気でiPhone持ち歩いてたの見ましたよ」
N氏「Androidはどうしたんだっていう(笑)」
「まあまだ日本だと使いづらいでしょうけどね」
N氏「昔からこの業界にいた人って、自分のためにコンテンツ作ってる人が多いじゃないですか」
「そうですね。誰も使わなくても俺が欲しいから作るっていう」
N氏「そうなると、いままでのサイトをiPhone対応にしようって話も当然出てくるわけですよ」
「そうですね」
N氏「それが思ったより簡単で。PC向けのサイトをなるたけシンプルにしておけば、iPhoneにもPCにも対応したサイトって、ヘッダーに一行書くだけでなんとかなるんですよ」
「うちも去年の夏からずっとiPhone向けのアプリ出してるんですけど、iPhoneから見たときにちゃんと見られるサポートページを作ってる会社は意外と少ないですね」
N氏「なぜなんでしょう?結構簡単なのに」
「よくあるのは、日本の会社だから日本語でしかページがないとか。日英表示に対応したサイトを作るのはそんなに手間ではないんですけど、なんか抜けちゃうんですよね。また、ブログやニュースなどを多国語対応でやっている会社もあまり見ないですね。そういうシステムはまだ日本では珍しいからではないでしょうか」
N氏「清水さんの会社は?」
「CMS(コンテンツ管理システム)は本業ですからもちろん対応してますよ。特にニュースやRSSを多国語対応しているので、英語環境で見ると英語の表示と英語のRSS、日本語環境で見ると日本語の表示と日本語のRSS、というように自動的に切り替わるようになっています」
N氏「あ、それは便利かも」
「英文を用意する手間はありますけど、こうしておけば間違いないです。特にブログ以外のサイトでトップページがRSS対応しているサイトはまだまだ少ないですね。そういうものをきちんとやるにはCMSを使う必要があるんですけど、日本のサイトはモバイルサイト以外はなかなかCMS化されてないし、モバイルサイトの場合、RSSっていままで不要なものでしたから、そんなものそもそも用意してないんですよね。iPhoneはそのちょうど中間だから、PCサイト系に寄ったところだとRSSは出るけど画面が対応してないとか、モバイル系に寄ったところだと画面はちゃんと出るけどRSSは出ないとか、偏ってますね」
■iPhone向けサイトのもっとも大きなアドバンストは?
N氏「海外のサイトとかで、やたらiPhoneのインターフェイスを意識し過ぎて却って使いにくくなってるサイトありますよね。あれは嫌ですね」
「まあやりたくなる気持ちはわかるっていうか」
N氏「その点、Tumblrみたいな、もともとシンプルなサイトはiPhoneでも見やすいですよ」
「iPhoneのズーミングインターフェイスって、最初はおもしろいけど慣れてくると使いづらいと感じて来ますね」
N氏「そう。しかも、このあと、国内の端末も少しずつAndroidになっていく方向じゃないですか」
「方向はわからないけど、そういう発表はちらほらありますね」
N氏「そのときはiPhoneみたいにズーミングできないわけですよ。そしたらやっぱり最初からズーミングが不要なサイトにしとくのがいいかなと」
「マルチタッチオペレーションの多くはAppleの特許ですからね」
N氏「幸い、iPhoneとAndroidは同じレンダリングエンジンだからCSSやJavaScriptの挙動はいっしょだって言うじゃないですか」
「まあどちらもWebkitベースだけど完全にいっしょではないですね」
N氏「それでもIEとOperaほどには違わないわけでしょ。それは結構でかい」
「JavaScriptが使えるっていうのが、実はいまのいわゆるケータイとの最大の違いなんですよね。そのおかげでFlash Liteにもできなかったようなサイトが簡単に作れる」
N氏「内部で通信を行う、いわゆるAjaxが携帯でもできるってことですね。それは確かに革命的に便利だ」
「iPhoneは最近アプリが注目されがちだけど、実はWebアプリケーションのプラットフォームとして決定的な強みがあるのはそこですね。Androidも同じ」
N氏「お財布ケータイとかは確かに便利だけど、表面的なことですよね」
- この記事のキーワード :
関連記事
iPhone「なにがあっても買うべし! 買うべし!」 - 明日のモバイルほろ酔い語り
2008年7月7日 9:00
黒船襲来! 日の丸モバイルの明日はあるか? - shi3zの明日のモバイルほろ酔い語り
2008年12月24日 9:00
iPhone「発売一か月。正直どうなの?」 - shi3zの明日のモバイルほろ酔い語り
2008年8月19日 11:00
世界がもし“なんでも1つだけ”の村だったら - 明日のモバイルほろ酔い語り
2009年5月25日 9:30
AjaxとFlash Liteでどう変わる? “10年目のケータイUI”のこれから- 明日のモバイルほろ酔い語り
2009年6月26日 10:00
人類の歴史上もっとも成功したモバイルコンテンツとは? - shi3zの明日のモバイルほろ酔い語り
2008年10月30日 10:00
バックナンバー
この記事の筆者
清水 亮
株式会社ユビキタスエンターテインメント
代表取締役 兼 CEO
電気通信大学在学中に米Microsoft Corp.の次世代ゲーム機向けOSの開発に関わり、1998年末に株式会社ドワンゴ入社。1999年に同社で携帯電話事業を立ち上げる。2002年退社し、米 DWANGO North America Inc.のコンテント開発担当副社長を経て2003年独立。2005年、独立行政法人情報処理推進機構により、天才プログラマー/スーパークリエイターとして認定される。
筆者の人気記事
ソーシャルアプリが1か月で100万人も集められた裏事情 - 明日のモバイルほろ酔い語り
2009年12月22日 10:00
いま再び注目を集めるTwitter - 明日のモバイルほろ酔い語り
2009年11月9日 8:00
AR(拡張現実感)から見たモバイルゲームの未来像- 明日のモバイルほろ酔い語り
2010年5月6日 9:00
“iPhoneとAndroidの時代”のWEBデザイン- 明日のモバイルほろ酔い語り
2009年4月23日 10:00
バイバイ・コンピュータ ― Androidはクラウド携帯の夢を見るか?- 明日のモバイルほろ酔い語り
2009年9月17日 10:00
人類の歴史上もっとも成功したモバイルコンテンツとは? - shi3zの明日のモバイルほろ酔い語り
2008年10月30日 10:00

