企業とユーザー誰もがハッピーなサイトを構築/デジパ株式会社
デジパ株式会社
自社サービスで培った技術と運営ノウハウ
企業とユーザー誰もがハッピーなサイトを構築
これほど情報発信能力に長けたウェブサイト制作会社は類を見ないのではないだろうか。事業化まで果たした自社サービス群に、充実した社員ブログをいくつも抱え、まさにマルチな活躍を見せるのがデジパである。そのナレッジは、手がける案件にフィードバックされ、理想的な好循環の螺旋を描いている。今回は、クリエイティブ事業部 マネージャーの加藤 善規氏にデジパのユニークなサービス展開の源泉となっている考え方について聞いた。
デジパの会社概要や制作実績は記事の末尾に記載。
取材・文:吉村正春(ドラゴンフィールド株式会社)
検索エンジンの先に居るユーザーにフレンドリーなサイトを構築
デジパは代表取締役社長の桐谷氏が創業メンバーである、マーケティングおよび人材採用を行うワイキューブ社内の制作部門としてスタートしたのが始まりだ。もともと独立した会社としての事業を計画しており、2000年4月にデジパ株式会社を設立している。設立から約2年間はワイキューブの社内案件を中心にウェブサイト制作を行っていたが、2002年から創業という形で新たなコンセプトを打ち出して事業をスタートしたという。
「立ち上げ当初はワイキューブの仕事を中心に、徐々に外部の仕事を増やしていこうと考えていて、デジパの中では創業といっているのですが、外部案件中心へと移行した2002年に、ウェブサイト制作とSEOをワンストップで提供することをコンセプトにスタートしました。今が6期目に入ったところです」
社内の制作部門として、社内案件を中心にスタートしたデジパだが、その転機はSEOが日本でも一般的に知られるようになってきた2001年頃であったという。まだ日本でSEOと謳っている会社が数社しかない頃に、SEOを意識した制作に取り組みサービスを開始したという。
「2001年頃に日本でSEOが知られてきて、2002年がピークですね。代表の桐谷が会社設立当時からSEOに注目していて、SEOと謳っている会社が数社しかない2000年頃に、SEOをサービスとして始めていきました。折からのSEOブームに乗って、順調に業績を伸ばすことができ、クライアント様からSEOに対する高評価もいただいているのですが、現在はあまりSEOを前面に打ち出してはいません。
2004年ぐらいからは、弊社ではSEOはむしろ普通なことで、特別に打ち出すほどではないというのが社内の空気です。それまで、SEOというと、ユーザーはあまり考慮せずに、検索エンジンで1位になればいいという制作が増えてきていました。検索スパムが騒がれた時期でもあって、いつまでも検索エンジンのためにサイトを作っても仕方がない、デジパとしては、ユーザビリティやアクセシビリティを重視した、ユーザーにとって使いやすいサイトを作ることが結果的に検索結果に好影響をもたらすと考えています。検索エンジンだけを意識したユーザー不在のサイトにどれほどの意味があるのでしょうか。
ここ1年くらいで、検索結果上位に表示されるだけがすべてではないということに企業側も気づき始め、ブログがSEOに効くらしいのでうちも社長ブログを開設する、といった場当たり的なテクニックだけではなく、コンテンツの中身こそが重要だと理解いただけるようになってきました。
そういった風潮を反映して最近では、ユーザーはサイトにどのような感想を持っているのか、競合企業サイトをユーザーはどのように見ているのかといった、ユーザーの実際の声を知りたいというウェブブランディングを意識したクライアントニーズが高まってきています。
制作構築フローに効果検証は含まれているのですが、主にアクセス解析データを元に分析するので、数値化されている範囲でしか分析できません。そこで、2007年11月にリリースした『ウェブサイトROI分析サービス』では、アクセス解析とユーザーへのリサーチを組み合わせて、現状の自社サイトとの評価はどうなのか、競合サイトと比較しての強み、弱みをレポーティングしています」
クライアントの立場に立った営業体制でゴールへ導く
クライアントの要望に対して最大限の成果を目指したいと語る加藤氏の言葉は、そのままデジパの制作方針にも表れている。ほとんどの案件を直営業で獲得し、広告代理店経由の案件はわずかだという。
「内容が固まった案件が広告代理店から下りてくることはほとんどなく、ウェブコンサルタント(営業担当)がクライアントの要望をヒアリングして案件がスタートすることが大部分です。
営業の人間は、現在のウェブサイトの流れですとか、競合他社がなにをやっているかといった調査能力に長けていているので、それを基にお客様が喜ぶ提案をしていきます。営業には、技術に“あえて”精通していない担当者をおいています。ウェブの技術に精通し過ぎると、『これは技術的に無理です』といったように判断してしまいがちですが、あくまでもお客様の立場に立って、ウェブで何をすべきかを考え、そしてディレクタと立案したプランが実現可能なのかを確認しながら、現実性を帯びたプランに落とし込んでいきます」
サイトの企画や設計は制作のワークフローで特に重要フェイズだ。ウェブサイトの目標であるゴールをどこに定めるのか、そしてゴールに到達するためにどんなコンテンツを用意するべきか、どのようなシステムが必要なのか、競合他社の状況は、集客はどうするかなど、ウェブビジネス成功の可否がこのフェイズで決定されるといっても過言ではない。
「コンサルティングフェイズで案件の骨子が固まると、ディレクターが設計フェイズ、実装フェイズといった実制作工程を引き継ぎます。ほとんどの企業サイトは、売上アップにつなげることがビジネスゴールとなりますが、目標はあっても具体的な手段や数値までをイメージしている企業の担当者は少ないです。売上をいくらアップしたいのか、いつまでに達成したいのか、といった具体的な目標のヒアリングを繰り返し、客単価、コンバージョン率の目標、目標を達成するための導線を明確にしていきます。実制作工程の2/3を設計フェイズで占めるくらい、設計を重要視していますが、やはり最初の設計がまずいとオープン後の成果につながりません。
公開後は検証フェイズとして、公開3か月間で当初の目標は達成できたのかどうか、今後の課題などを洗い出し、次のリニューアルに備えます」
サイトの導線を再構築してコンバージョン率を向上
実際にデジパではどのようにクライアントのウェブサイトをゴールへと導いていくのだろうか。墓石や仏具の販売、葬祭業を行うメモリアルアートの大野屋のリニューアルを例に語っていただいた。
「大野屋さんはサイトを定期的にリニューアルしていて、予定が来たのでリニューアルしてほしいというご依頼から始まりました。リニューアルの目標としては、SEOを主眼に置いたユーザーの流入数の増加にありましたが、葬儀業界は大手数社がSEOで鎬を削っている状況でした。当然SEOは継続していかなくてはいけないのですが、SEOで流入数を増やすにしても限界があるのもまた事実でした。
今までは担当の方が社内でSEOをやられていたのですが、SEOに主眼を置きすぎたがためにサイトの構造としては使いづらいものになっていました。また、追加に次ぐ追加を繰り返していたために、数千ページにも達するコンテンツの全体像を担当者本人も把握しきれておらず、リンク切れなどの致命的なケースもあり、リニューアル課題はSEOの効果を高めつつ訪問者にとってのサイトの使い勝手を上げることでした。担当の方にも、最終的なゴールにお客様をどうもっていくかを改善しなくてはいけないとお話をさせていただくなかで、コンバージョンやユーザビリティといった点を納得いただきました。
作業としては、まず工程のほとんどを情報の再整理と導線の再設計に費やして大幅に導線を見直しました。また、メインターゲットは高齢者と思いがちなのですが、実はその息子さん、娘さんの世代にあたる30代~40代がメインターゲットです。これらの世代には、今までの制作経験から、サイトに十分な情報量がないと納得してもらえないので、営業所の方が新鮮な情報を発信できるように、ブログツールのMovbable Typeを導入しました。
お墓の販売では現地に足を運んでもらうことが目標なのですが、今まではユーザーに足を運んでもらうための動機付けとして、展示会やキャンペーン情報が書かれているぐらいでした。ブログを導入してからは、営業の方が『紅葉がきれいですよ』と写真入りの記事で現地の様子や見学会を紹介するなど、店舗からリアルタイムに情報発信ができるようになったことで、それを読んだユーザーが実際に現地に足を運ぶということも増えました。
大野屋さんに限らず、更新性を高めたいというニーズは高くなっていますので、案件の8割は何らかの形でMovable Typeを導入して更新性を高めています。もちろん、Movable Typeだけでニーズを完全に満たせるわけではないのですが、一からCMSを組むと予算がかかり過ぎるので、Movable Typeで実現できる部分はMovable Typeに任せ、足りない部分があれば自社で開発したCMSで補い対応しています。デジパでは、まだMovable Typeが日本語化されていない頃から社内で使って、CMSとしての可能性を模索してきましたので、そのカスタマイズのノウハウには自信があります」
自社サイトをモデルケースに積極的に情報を発信する
制作会社に依頼する前には、どんなサイトの制作が得意なのか、いままでにどんな規模のどういったクリエイティブを手がけてきたか、実績はチェックしておきたいものだ。ところが、医者の不養生という諺があるように、案件を優先している結果、制作会社自身のサイトの更新が後回しになってしまうことも珍しくない。その点、デジパのサイトは、自社サイトをデモサイトとして機能させているというだけあり、サービス案内から実績紹介など多くの情報が掲載されている。
「今のサイトは10月にリニューアルしたものですが、以前はインタビュー記事などを大きく掲載していました。当時はブログが流行ってきていたこともあり、『企業自らが積極的に情報発信するようになる』と予想して、自社サイトで情報発信をしてみようと、情報発信のモデルケースとしてリニューアルしました。その結果、自社サービスや案件実績を紹介するだけの普通の制作会社のサイトだったのが、『一体何の会社なんだろう?』と思うくらい、ニュースサイト然としたサイトに生まれ変わりました。その後、予想したように企業ブログブームが来て、『企業の情報発信はどうすればいいのか?』というお問い合わせをいただくことが多くなり、『まずうちのサイトを見てください』とお伝えして説明しました。営業がすごくやりやすかったと聞いています。
そして今のサイトでは、アクセシビリティ、ユーザビリティに力を入れているのですが、ウェブの業界で企業のWeb標準、アクセシビリティ、ユーザビリティ対応が注目されているのでそれを意識しました。
ただ、ユーザビリティやアクセシビリティと聞くと、障碍者や高齢者向けといったイメージを持たれる企業もまだまだ多いのですが、そうではなくユーザー属性や視聴環境が多様化している中、どのような環境下で見ても最低限の情報を伝えられるサイト、多くの人が気持ちよく使えることであると捉えるべきではないでしょうか。
サイトを構築する際に、ターゲットユーザーを選定して、そこに最適化された情報を発信していくことは重要なんですが、メインのターゲットユーザー以外の人たちであってもきちんと閲覧できるように配慮すべきだと考えています。もちろんコストパフォーマンスの点から、非ターゲットユーザーのために予算をかけることに価値を見出す企業は少ないのですが、デジパでは引き続き啓蒙し続けていきます」
世界に影響を与えるサービスを創り出す
いち早くSEOを考慮した制作サービスを開始し、実績を伸ばしてきたデジパ。2005年には「世界に影響を与えるインタネットサービスを創り出す」と会社のビジョンを掲げているが、その源泉はどこにあるのだろうか。
「SEOに強い会社としてご愛顧いただいたおかげで、スタッフ数も順調に増え、事業も軌道に乗ってきた2005年に、新たにデジパのビジョンを掲げました。
デジパには“ガリンペイロ制度”というものがあって、自分のアイデアを形にしてみたいというスタッフがいたら就業時間内にそれに携わって実現してもいいことになっています。そのガリンペイロ制度を使って立ち上げられた『サイトストック』というサイト売買サービスは、収益の目処が立ったので別会社として事業化しました。
逆に、収益の見通しが立たなかったからといって、すぐに潰してしまうことはありません。サービス自体のおもしろさより収益を優先すると、携わっているスタッフのモチベーションが下がってしまいますので、いずれ世の中にインパクトを与えられるサービスができればいいよね、というスタンスでサービスを産み出しています。
自社サービスで培ったノウハウ
「自社サービスを立ち上げると、いろいろなことがわかってきます。私が携わっている『iddy』というプロフィールサービスの運営を通しては、どういったシステムを組めばいいのか、必要なのはサーバーは何台なのかといったことが経験としてデジパに蓄積され、iddyのような会員登録サービスをやりたいというお問い合わせがあった場合に的確にお答えすることができます。
デジパがいろいろなサービスに取り組んでいることを知った、アンテナの高い企業のWeb担当者から『デジパなら最先端なことをやってくれるだろう』とお声がけいただくのですが、担当者の想いとサイトの成果はきちんと切り分けて考える必要があります。たとえば『CGMサイトをやりたい』と企業の担当者が思っても、果たしてそれが企業サイトに必要なことなのかどうか、サイトの成果につながるのかということは、きちんと見極めさせていただきます。
デジパとしても、携わる以上はクライアントのビジネスゴールを達成したいと考えていますので、『本当にそれは必要なんですか。その目的はどこにあるのですか』とお聞きします。逆説的に、もしWeb制作会社に仕事を発注した際に、何も疑問をぶつけてくることもなく、ただ仕事を請けているような場合は、本気でクライアントのビジネスゴールを考えていないかもしれません。
そして予算消化のためや担当者の想いだけが先走りしたサイトリニューアルではなく、リニューアルするからにはやはり問題点を改善し、強みを伸ばすことにご協力したいので、もっとPVを伸ばしたい、成果につなげたい、といったサイトの課題をWeb担当者もきちんと認識して、リニューアルに臨んでいただきたいと思っています。ヒアリングや調査を繰り返すうちに、本当の課題は別のところにあったと軌道修正するかもしれませんが、ビジョンやビジネスゴールが見えない状態では何も生み出すことはできないのです。クライアントと制作会社、共に疑問や課題をぶつけ合ってこそ、良いサイトができると信じています」
項目 | 料金 | 備考 |
---|---|---|
企画/ディレクション | 50万円/1人月~ | 企画内容、要件により変動。 |
トップページデザイン | 15万円~ | デザインのみの案件にも対応可。 |
第二階層テンプレートデザイン | 5万円~ | |
素材制作(写真、アイコンなど) | 3,000円~1万円/1点 | ロゴ、CIデザインは別途相談。 |
HTMLコーディング | 5,000円~/1ページ | トップページは10,000円~/1ページ。 |
更新作業 | 30,000円~/1ページ | 新規ページ追加時の目安。テキスト修正や画像修正であれば1万円~/1ページ。 |
Movable Type導入 | 20万円~ | 構築内容、要件により変動。その他CMS導入にも対応可能。 |
アクセス解析コンサルティング | 10万円~/月 | レポート提出、コンサルティング。 |
ウェブサイトブランド調査 | 43万円~ | ユーザーアンケート調査、集計、分析、レポート提出、改善提案。 |
ウェブサイトROI分析 | 54万円~ | アクセス解析コンサルティング+ウェブサイトブランド調査のパッケージ。 |
SEO | 75万円~/6か月 | 初期対策15万円~、定期対策10万円~/月、レポート提出、コンサルティング。 |
ウェブシステム開発 | 10万円~ | メールフォームなど簡易プログラムから顧客管理システムなど大規模開発まで対応可能。 |
Flash | 10万円~ | 内容により変動。 |
ユーザビリティテスト | 50万円~ | ユーザーテスト、ヒューリスティック評価、レポート提出。 |
アクセシビリティテスト | 30万円~ | ユーザーテスト、レポート提出。 |
ウェブ標準/アクセシビリティ準拠 | 50万円~ | ウェブサイトの内容により変動。 |
動的URL静的化サービス | 120万円~ | サイト規模などにより変動。 |
PPC(クリック課金型)広告 | 35万円~ | 出稿管理、レポート提出、コンサルティング。 |
デジパ株式会社
http://digiper.com/
- デジパ株式会社
- 所在地 ● 東京都港区三田
- 設立 ● 2000年4月
- 資本金 ● 2,000万円
- 代表取締役社長 ● 桐谷晃司
- 社員数 ● 21名
【社内制作スタッフ】
ディレクター4人、プログラマ2人、デザイナー3人、システムエンジニア1人、Flashエンジニア2人、SEMエンジニア2人、ウェブコンサルタント2人、アクセシビリティコンサルタント1人、ユーザビリティコンサルタント1人、マーケティングプランナー1人、マークアップエンジニア2人。※一部兼任あり - 事業内容 ●
ウェブサイトの企画、制作、運営から、プロモーション、SEMコンサルティング、システム開発などウェブサイトに関わるサービスを一貫して提供。日本でSEOが認知され始めた頃よりSEOに取り組み、SEMコンサルティングを得意とするほか、情報発信型のウェブサイト構築と企画戦略立案を得意とし、シックス・アパートのProNet会員企業として数多くのMovable Type導入実績を有する。また、ブロガー向けプロフィールページASPサービス「iddy」、サイト流通サービス「サイトストック」をはじめとした自社サービスを多数企画、開発、運営しており、自社サービスで培ったノウハウを基にしたウェブシステムの開発などの提案も行う。
※社名、所属部署、利用サービス、価格など、この記事内に記載の内容は、取材当時または記事初出当時のものです。
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