ウェブ、紙、映像で真のミックスメディアを目指す/株式会社ブレイン
株式会社ブレイン
グループのシナジーが生み出すクリエイティビティ
ウェブ、紙、映像で真のミックスメディアを目指す
ブレインのコーポレートサイトには「出版、映像、インターネット、モバイル、ゲームなどの制作を手がける総合メディアプロダクションです」とある。映像に強い制作会社が、元々CMやテレビ番組の制作会社だったということはよくある話で、映像をウェブと連動させたいというクライアントニーズに応えるためにウェブに参入した、という例は多い。ところが、ブレインは正真正銘、映像に強い制作会社であり、ウェブから出発し発展の過程で映像表現の領域も取り込んでしまったという異色の制作会社である。
今回は、ブレインの取締役 プロデューサーである星野 智紀氏に、目指すべきミックスメディアの姿やウェブにおける編集作業のあり方について伺った。
ブレインの会社概要や制作実績は記事の末尾に記載。
取材・文:吉村正春(フリーライター)
世の中の変化をとらえて自らも変わり続ける姿勢
ブレインの前身は、出版社である三修社の電子ブックやCD-ROMを手がけるデジタル部門だという。その部門が1997年に独立してブレインを設立したのだが、その設立の原動力は何だったのだろうか。またそこからどのようにして映像に強い制作会社として成長してきたのだろうか。
「代表取締役である前田の『変わり続けることに価値がある』というポリシーもあり、特定分野にこだわって勝負していく、というよりも、今世の中に求められているものやクライアントニーズにマッチしたサービスや技術を柔軟に提供していきたいと考えていました。そこでフットワーク軽くいろいろなことに挑戦するために、出版業界を飛び出してブレインを設立したのですが、当初から総合メディアプロダクションを目指すという志を掲げていました」
そしてブレインは独立直後の1998年、テレビ番組サイトの運営という形でウェブに携わり始めた。「テレビ局内に常駐してサイトの更新していくのですが、実際にウェブサイトを制作していた会社は別にいて、私達は出演者のインタビューを行ったり、ウェブでの見せ方についての提案をしたりするなど、編集者的なポジションでウェブに関わっていました。当時は、インターネットという言葉こそ一般的になっていましたが、ウェブとテレビを連動させていく、といったことがあまり意識されていない時代でしたので、ウェブでの見せ方や番組サイトに求められているニーズを常に試行錯誤していた記憶があります」
もちろん、サイト運営だけではサイト構築のスキルを満足に積むことはできない。本格的にサイト構築を手がけるようになった契機は2000年、沖縄サミットやシドニーオリンピックといった大きなイベントを控え、放送業界がインターネットを活用して情報発信してみようという機運が高まっていたときだ。ネットを使った実験的な試みに参加することで、ウェブサイト構築に関するノウハウを蓄積していったのだという。
このようにしてウェブサイト構築のノウハウを蓄積していったブレイン。同社のもう1つの特徴が、映像コンテンツに対する制作体制だ。社内にノンリニアの編集機器を備え、ウェブとは別に映像専門の部隊を有している。
「映像については、ep(イーピー)という蓄積型の双方向放送サービスを通じて経験を積みました。epはチューナー内のハードディスクにテレビ番組を蓄積し、視聴者が好きなときに視聴できる蓄積型放送サービスなのですが、そのデータ管理にはデータ放送向けの記述言語であるBML(Broadcast Markup Language)が用いられています。BMLはウェブで用いられるXMLをベースとしているために元々ウェブサイトを手がけていた私達には馴染みがあったこともあり、プログラムを軸として映像コンテンツを捉えることができたことが大きな収穫でした。
ep終了後、撮影した数千の映像をベースに、ウェブ、モバイル、Tナビに向けたサービスとして展開する依頼も手がけました。このようにバックエンドのデータベースと連動したコンテンツをウェブで見せていきたい、という問い合わせが近年増えています。今後、データベースと洗練されたインターフェイスが密接に絡み合ったコンテンツのニーズが多くなるのではないかと予想していますが、そういった意味でもそういった意味でもあらゆるプラットホームで積み重ねてきたノウハウが活きていることを実感しています」
守備範囲の広さが生み出す多彩なコンテンツ
ブレインは、ウェブサイトの構築、映像制作など広範囲に活動領域を広げている。
ブレインのサイトでは制作体制が公開されているが、ウェブディレクター、ウェブデザイナー、プログラマといったお馴染みの職種のほかに、ECサイト運営、カスタマーサポート、映像ディレクター、構成作家、カメラ、といった一般のウェブサイト制作会社ではまず見かけない職種が並ぶ(図1)。
これだけ多様多彩な人材が制作会社内部に集うことは珍しく、この点をとってもブレインが異能な制作会社であることが伺える。
「制作体制図にある職種は、社内スタッフがすべて該当します。もちろん兼任の場合もありますし、1~2名しかいない職種もありますが、社内にこれだけのスキルと知識を備えていることがブレインの強みと言えるではないでしょうか。たとえば、『イベントをやりたい、それに連動したサイトも作りたい、イベントのためのステージを作りたい、そこで配布するパンフレットも作りたい』といったトータルプロモーション的な相談をいただいたとしても、すべて社内スタッフで対応できるくらいのナレッジを蓄積しています」
例を挙げると、2001年に日本で実施された「日本におけるイタリア2001年」の公式サイトを手がけている。現在は、「Love Italy」というイタリアの情報サイトに発展しているが(図2)、イタリアのどういった情報を発信していくか、という企画立案から、実際の記事執筆、そこで扱っている商品発送までを自社内で運営しているという。「ウェブサイトの運営、プランニング、ライティング、EC対応と、構築から運営に関連する業務をすべて自社内で行っていることになりますが、『まずは自分たちでやってみる』という社風だからこそ成立しているのではないかと思います。
ですから、『こういうことをやりたいんだけど……』という漠然とした相談をいただいたとしても、その場しのぎの適当な返答ではなく、各分野に精通した経験豊かなスタッフから、経験と知識に裏打ちされた答えをお返しすることができます」
ブレインには、純粋にウェブだけをやってきたというスタッフよりも、ウェブ以外の分野で経験を積んできたスタッフの方が多いのが特徴だという。
「ウェブ業界外から入ってきた人はウェブの常識に縛られていない分、発想が柔軟です。さらに、基本的にほぼ社内スタッフだけで案件に携わるために、社内で自由にアイデアを出し合える環境にあるのも、クリエイティビティが発揮しやすい理由の1つかもしれないですね」
編集者としての経験をウェブのコンテンツでも発揮
ブレインの前身が三修社のデジタル部門であることは冒頭に述べた通りだが、この三修社は外国語に関する書籍を多数発行している出版社である。その三修社はブレインのグループ企業として、ブレインとのシナジーを発揮すべく更なる進化を遂げようとしているが、お互いの強みを活かして、どのようにウェブの事業を進めていくのだろうか。
「前出のLove Italyも、三修社がイタリア語の書籍を扱っていたご縁で手がけることになりましたし、三修社とブレインが共同で外国語サイトの構築・運営を手がける機会も増えてきました。
たとえば、ブレインが運営に参加しているJTBグループの旅行サイトJTBグループの旅行サイト「JAPANiCAN.com(ジャパニカン)」(図3)は、英語、韓国語、中国語で、訪日外国人向けに日本の観光情報を発信しているサイトですが、このサイトもブレインと三修社の強みを持ち寄って運営されています。
こうした外国人向けのサイトは、日本語をそのまま翻訳したページの文字コードを変えて公開しただけでは、書いている内容を外国人に伝えることができても、心には響かないコンテンツになってしまいがちです。A国の人には興味を持ってもらえる情報でもB国の人は興味を示さない、日本人の感覚だとキレイな色づかいなんだけど他のアジアの人にとっては地味に見える、といった具合に国民性や文化によって捉え方・感じ方は異なります。
そこでネイティブの人を交えて、使われている文言や言い回しのチェックはもちろんのこと、どういった情報に興味を持っているのか、どういったデザインが好まれるのか、ということをしっかりとヒアリングして、掲載の順番を入れ替えたり、画面の構成を変えたりという調整も必要になってきます。この辺りの作業は編集の領域になってきますし、ネイティブの人との信頼関係も大事になってきますので、そこで三修社の強みが活かされています」
グローバルサイトを制作する際、単に日本語のコンテンツをそのまま多言語化するだけでは不十分だ。ユーザーがどんな情報を求めていて、どのような表現やコンテンツにするのがいいかという視点は、どんなサイトであっても変わらないはずである。そして、そこには編集という作業が必要になる。
「サイトのターゲットとしている人たちが、どのように感じているのか、どういった内容に興味を持っているのかを把握することは、日本人向けのサイトを作る上でも重要です。ウェブサイトは立ち上げるだけではなく、その後もきちんと運営し育てていかなくてはなりませんので、その方向性を吟味する必要があります。特に最近はコンテンツの見せ方や構造が複雑になってきているので、制作前の準備や調査をしっかりとやっておかないと、ターゲットニーズから離れたサイトになってしまいます。そういったミスマッチを避けるためにも、発注側は、まずは何をしたいのか、何を目的としているのか、という想いをきちんと持っておくことが重要です。想いさえ伝えていただければ、そこから私たちが必要なニーズを拾い上げていきます」
上司から「サイトのリニューアルをしろ」と唐突に話を振られた、というような場合でもヒアリングをして、サイトの問題点やニーズを拾っていくと胸を張るブレインのディレクター陣。ヒアリング能力には自信があるようだ。
映像、出版の分野から見たウェブの問題点と可能性
ウェブ、映像、出版とそれぞれの進め方や媒体の特性をつかんでいるブレインだが、映像や出版の分野からウェブはどのように見えているのだろうか、またどういったシナジーが期待できるだろうか。
「私たちが以前手がけていた書籍やCD-ROMは、市場に出回ったら修正することができないため、念には念を入れて事前チェックを行っていましたが、ウェブサイトでも同様に公開前のチェックはきっちりと行います。ウェブサイトは公開後でも修正が効きますので、事前のチェックが疎かになってしまい、結果としてリスクを抱えたまま公開日を迎えるということも起こりえるのですが、入念な事前チェックを通じてそれらのリスクを最低限に抑えることができると確信しています。
当然、クライアントからいただいた資料や仕様書をノーチェックで使うことはまずありません。資料に書かれている文言は適当なのか、表現として問題はないのか、と常に意識して注意を払う習慣をブレインのスタッフは持っています」
ウェブサイトでは明確な規制やルールはない。だからこそ、画像一枚、1行の文章、数秒の映像であっても細心の注意を払い公開すべきなのだという。
「また今後は、ウェブと映像の両方に精通したディレクターに対するニーズが高まってくるのではないかと予想しています。たしかに、さまざまな人の技術や知識を持ち寄ることで、いろいろなアイデアが出てくるのですが、ウェブと映像の両方を知っている人間がいれば、よりウェブと映像が密接に連携したコンテンツが生み出せるのではないかと期待しています」
映像の見せ方を取り入れたウェブのコンテンツ、あるいはパーツを組み上げて1つのコンテンツを作り上げていくウェブ的な手法で活かした映像制作と、映像とウェブのそれぞれ長所や手法をうまく取り入れながらコンテンツを制作していくには、ウェブと映像の両方を知っていないとやはり難しい。
「映像に対するクライアントニーズは2003年くらいから高まってきていますが、ウェブと映像がしっかりとリンクした真のミックスメディアを実現するためにも、マルチな視点を持つディレクターを育てていきたいですね」
項目 | 料金 | 備考 |
---|---|---|
企画/ディレクション | 80万円/1人月~ | |
トップページデザイン | 10万円~ | 要素の多さやFlashを使用する場合は別途相談 |
第二階層テンプレートデザイン | 3万円~ | |
素材制作(写真、アイコンなど) | 5,000円~1万円程度 点数によってご相談。ロゴデザインも別途相談 | |
HTMLコーディング | 8,000円~3万円/1ページ | 情報量や難易度によって変動 |
更新作業 | 80万円/1人月~ | 頻度や内容によって相談 |
アクセス解析 | 3万円~/月 | 月1回のレポート。分析の内容やその他運営作業とあわせて相談 |
アンケート調査 | 別途見積もり | 仕様、内容によって変動 |
レンタルサーバー選定・導入 | ||
CMS | ||
SEO | ||
SNS | ||
Flash | 10万円~ | 仕様、内容によって変動 |
株式会社ブレイン
http://www.brain-net.co.jp/
- 株式会社ブレイン
- 所在地●東京都渋谷区神宮前
- 設立●2002年7月15日
- 資本金●1,000万円
- 代表取締役●前田 俊秀
- 社員数●55名
●ウェブ制作
プロデューサー2名、ディレクター8名、デザイナー・プログラマ15名、システムエンジニア5名
●企画・ライター5名
●映像制作
プロデューサー2名、ディレクター3名、CG・編集7名 - 事業内容●
出版、映像、インターネット、モバイル、ゲームなどの制作を手がける総合メディアプロダクション。主にウェブと映像を中心とした企画制作業務を行う。
ウェブの制作においては、Web 2.0やワンセグなどの新技術、FlashによるインタラクティブコンテンツやXHTML+CSSによるサイト構築などの豊富な実績とノウハウを有し、単なるウェブサイト制作にとどまらず、動画の撮影編集、CG制作、デジタルコンテンツ化、データ放送(BML制作)、書籍化、さらには自社運営のECサイト、イベント・セミナー・記者発表の企画運営など、ウェブを中心にとした多角的な展開を得意としている。
※社名、所属部署、利用サービス、価格など、この記事内に記載の内容は、取材当時または記事初出当時のものです。
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