SMOを実施すればネガティブ情報は必ず出る - 住太陽氏との対談「SMOの今後」(後編)
[特集] 好感度上昇で人が集まる! 評判管理の技術SMO実践テクニック
この記事には前編「タイトルの巧拙でページビューに何倍もの差がつく - 住太陽氏との対談「SMOの今後」があります。まだ読んでいない方は併せてお読みください。
SMOを実施すれば、ネガティブ情報は必ず出る
フリーランスのWebプロデューサー、SEOエンジニア、Webマーケター。1999年にウェブデザイナーとして独立。2001年には国内でいち早くSEO(検索エンジン最適化)サービスを開始、同年には現存する国内最古参のSEO情報サイトである「SEO 検索エンジン最適化」を開設・運営するなど、トリックに頼らない正当なSEOの普及を目指す国内SEOの先駆者として知られています。現在は企業のWebマーケティングに関するコンサルティングや、Webサイトのプロデュースや制作実務などを行うかたわらで、講演や執筆、ブログなどを通じて精力的な情報発信を続けています。
紺野: ソーシャルメディア上に掲載されたネガティブ情報に起因して、ページビューが一気に上がるということもありますよね。こういうネガティブ情報には、どう対処するのがいいのでしょう。
住: まず前提として、SMOを本格的にやれば、ネガティブな情報は必ず出ます。この点は、理解しておいてほしいですね。
紺野: 企業サイドは、やはりネガティブ情報はリスクだと捉えてしまいます。もちろん、ネットの特性として、ネガティブ情報をゼロにすることは無理なんですが、それをどこまで企業が理解してくれるでしょうか。
住: ネガティブ情報が、逆に成果につながった例をいくつか挙げればいいと思います。例えば、数年前に出でペストセラーになった某書籍ですが、ベストセラーになりましたよね。この本は、ネット上でボロクソに叩かれていて、そのせいで僕も買っちゃった。
一同: (笑)
住: こんなに酷評されている本が、なんで売れてるの? どれだけつまんないのか、読んでみよう、と(笑)
紺野: 確かに、料理とか、食料品なんかだと、そんなに不味いのなら、食べてみたいって思いますね。
住: 中には、いわゆる「釣り」としか思えないもの。狙ってネガティブ情報を出させているような商品もあります。キュウリ味のペプシとか。
紺野: なるほど。
住: CGMキャンペーンでも、例えばナイキの「NikeCosplay」の動画キャンペーンも、ツッコミどころはいろいろありながらも、うまくヒットさせている。ネガティブな情報が一切ないコンテンツでは、ポジティブな情報も広まりません。
紺野: 株の掲示板であれば、誹謗中傷でもいいから何か書かれている方が、話題性があってよい、と。
はい。誹謗中傷ばかりの状況になると、擁護する人も出てくる。そうやって盛り上がっていくわけじゃないですか。
モニタリングビジネスが盛んになる
紺野: そういったネットの特性をよく理解することが大事ですよね。そういえば以前、ドワンゴが、2ちゃんねるで人材を募集※しましたよね。
住: ありました。僕もすごいなあと思って見ていました。
紺野: 募集しているのがエンジニアで、まさにネット特性にマッチする。
住: 単純に求人コストという点だけ見ても、削減につながっているし、会社自体のレピュテーションまで上げていますからね。私は、ネット上のレピュテーションをモニタリングするサービスが、そろそろ成り立つころだと思っています。日本語解析の技術を使って、自社のことに触れているWebページを、きっちり捉えてくる、という。
紺野: モニタリングの重要性に気がついていない企業も、まだまだ多いですよね。経営者がテレビ番組で初めてGoogleを知り、自社名で検索してみたら検索結果に表示されない。で、Web担当者がお叱りを受ける(笑)。
住: 本当は検索結果に出ているはずなんですよね。ただ検索結果の1ページ目しか見ないで、「出ていない」と思い込んだりする。あとは、大手企業の場合だと、検索結果の2ページ目以降が、めちゃくちゃになっているケースも目立ちます。
紺野: そうですね。1ページ目は、自社や関連会社のサイトで占めていても、2ページ目以降は、ひどい状態になっている。きちんと管理していく必要があるでしょうね。少し話がずれましたが、ブログのコメント欄は、ネイティブ情報というよりスパムの温床になっています。
渡辺: 多すぎますね。検索エンジン側では、スプログ(スパムのブログ)も含めて、一応対策は取っているようですが……。
住: スプログの生成ツールは、1分間に何万ページとかの勢いで、ブログを生成するわけです。それをほとんどはじいているわけですから、検索エンジンは賢くなっています。
紺野: 逆にコンテンツを自動生成するというサービスを、プレスリリースしているSEO会社もあります。いろいろなブログから情報を自動で引っ張ってきて、コンテンツを生成する、という。スパムと同レベルのサービスですね。
住: ある意味、驚くべきサービスです。
ネガティブ情報への過剰反応は禁物
紺野: コメント欄のネガティブ情報に話を戻すと、ブログにしろ、企業内のコミュニケーションサイトにしろ、程度の差はありますが、ネガティブ情報は必ず出ますよね。
住: ですね。ネガティブ情報を許容できるかどうかは、リテラシーの問題でもあると思います。だいたい、企業の偉い人というのは、普段は悪口を言われたりしないじゃないですか。
紺野: ……。
住: いや、本当は言われているんでしょうけど、それを直接耳にする機会は、あまりないと思います。でもネットでは、偉い人ほど悪口をいっぱい書かれている。偉い人は、それを見て、いちいち凹んでしまうんですよね。で、釣られて書き込んでしまい、さらに炎上しちゃったりする。
2ちゃんねるで見かける騙すための書き込みのこと。名前欄に「fusianasan」と半角英数で入力し書き込ませて、リモートホストを晒させるのが目的(はてなキーワードからの引用)。
紺野: 2ちゃんねるの「ふしあなトラップ※」に引っかかって、IPアドレスが割れてしまうというのは、たまに見ます。
住: ネット業界の若い人は引っかからないトラップに、企業の偉い人が引っかかってしまうんですよね。
紺野: アイレップの社員も、それだけのリテラシーを持っていると思いたいです(笑)
住: ネガティブ情報については、あって当然だし、むしろあってうれしいくらいに思った方がいいと思います。2ちゃんねるとかで、悪口でスレッドを立てられたとしても、面白くなければ全然続かない。ブログのエントリーも同じで、つまらない悪口はまったく注目されません。ネガティブな情報であろうと話題になるのは結構なことだ、と鷹揚に構えるくらいで、ちょうどいいと思います。
紺野: 打たれ強さは必要ですよね。
住: 無視されるよりはいい、みたいな。
火に油を注ぐエントリーやコメントの削除
紺野: ネガティブなコメントをされたから、エントリーを削除する、というケースも見られますが、それも逆効果だと思います。エントリーの一部をこっそり変えたりするのも、今はWebページのアーカイブが簡単に取れるサービスがあるわけですから、無意味ですよね。逆にそのことが原因で、炎上したりします。
住: コメントやエントリーを削除するくらいなら、最初からコメント欄を閉じておけばいいんです。実際、私のブログもコメント欄はつけていません。コメント欄は、いったん炎上してしまうと、手がつけられなくなってしまいますから。
紺野: 少なくともブログの運営には、ネットの特性を理解していて、リテラシーのある人が携わった方がいいでしょうね。
渡辺: 一方で、ユーザーとのコミュニケーションの取り方について、一定のルールを作っておくことも必要でしょう。
紺野: ネガティブ情報に対して、すぐに「訴える」と言わないとか。
住: あとは「その件につきましては〜」とかいちいち反応しないで、静観する。著名なブロガーは、わざと反応してネタを提供することもありますけど、企業の広報にはそういう対処法は向きません。
SMOに不可欠なリスク管理体制の構築
紺野: 普通は、著名ブロガーほどのストレス耐性を備えていませんからね。ネガティブ情報ではなく、問い合わせがあった場合はどうしますか?
住: 問い合わせは、難しいですよね。もちろん、きちんとした問い合わせもありますが、中には「釣り・煽り」を目的にしているものもある。意図的に「ひどい対応」を引きだそうとしているような。
紺野: 基本は、問い合わせには真摯に対応するしかない。悪意のある問い合わせに対しては、無防備に対応しないことでしょうね。ただ悪意あるユーザーへの対応も含めて、すべてを広報担当者に押しつけてしまうのは、無理があるように思います。
1999年に起きた東芝のクレーム処理に関する事件。経緯や電話応答の録音音声を「東芝のアフターサービスについて」と題する自身のウェブページでリアルオーディオ形式で公開した(ウィキペディアから引用)。
住: 1つ対応を誤ると、最悪、昔の東芝クレーマー事件※のようになってしまいます。ですから広報だけでなく、リスク管理の問題でもありますよね。
紺野: 確かにそうですね。今後は、ネットの特性、ソーシャルメディアの特性を踏まえながら、リスクを管理するチームが必要になってくるかもしれない。
住: ネット上の問題は、一度起こってしまうと、いつでも検索できるし、将来にわたってずっとログが残ってしまいますから、リスク管理は大切になります。
紺野ですから、本当にSMOをやるのであれば、技術的に対策を施すだけでなく、組織を変える必要も出てくると思います。広報だけでなく、品質管理やリスク管理のチームが、SMOに関わるケースも当然出てくるでしょう。ただ、今の大企業のトップマネジメントは、50代以上のケースがほとんどですから、インターネットにはあまり詳しくない。また若手でも、部署が異なるとWebマーケティングについてはほとんど知らなかったりする。組織を変えていくには、そういう壁を取り払うところから、まず始めていく必要があります。私たちもそのお手伝いをしていきたいですね。
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