「大物をやった!」と新米証券マンのバド・フォックスは叫んだ。1987年の映画『ウォール街』で、大物投資家のゴードン・ゲッコーを新しい顧客にした場面だ。それにしても、新米のバドが、競争の激しい株取引の世界でトップに君臨するゲッコーを、どうやって顧客に釣り上げたのだろう。自社のサービスの価値をまくし立てたのか、必殺の株情報を少しばかり提供したのか、それとも、すでにいた信頼できる顧客の名前をそれとなく出したのか。これはどれも正解ではない。
バドは、執拗なまでのアプローチを行い、「価値」を実際に届けることで、大物顧客を獲得した。バドがゲッコーに届けた「価値」とは、父から得た情報――まだ新聞に掲載されていない情報だった。その情報の「価値」により、バドはすぐさまゲッコーの片腕になったのだ。
新しいクライアントを獲得することがいかに大変かは誰もが知っている。注意を引くだけでも、たいてい「特別な何か」がなければならない。そこで登場するのが「Mozbait(モズベイト)」だ。ターゲットの会社を次なるステップへといざなう特別な何かだと思ってほしい。
今、あなたが何を考えているか、私には手に取るようにわかる。「OK、わかった。でも、Mozbaitっていったい何だ? どこで手に入るんだ?」ってね。喜んでお答えしよう。
Mozbaitとは、SEOmozツールを使って調べられる情報のことだ――それはたとえばページの強さを問い合わせた結果だったり、インデックス化されているページだったり、最も強いページの情報だったり、キーワードに関する報告だったりする。そしてここだけの話、この情報はとても簡単に入手できる。事業改善の方法を常に模索している多くの企業にしてみれば、本当に魔法のようなもので、すばらしい「価値」のあるものと見なされ得るものだ。「専門家であるあなたからすればいたってシンプルな作業でも、そうでない人には大変な苦労に見えることがある」という事実を見くびってはならない。少なくとも、誰かのために事前の措置を講じたという事実は、たいてい肯定的にとらえられる。
フライフィッシングをやったことがおありだろうか。フライフィッシングと顧客の獲得には、かなり多くの類似点がある。
フライフィッシングでは、おいしそうなカゲロウに見える擬似餌をラインに結び、それを正確な軌道でターゲットの上流に美しくキャストする。流れにまかせると、フライは目指す魚のほうに優雅に流されていく、あとは魚が口を開いて食いついてくれればいい。しかし、何度繰り返しても魚は動かず、興味を示さない。「たぶんお腹がすいていないんだな」とあなたは考える(実際には、きっと小声で魚をののしるのだろう)。しかし、たいていの場合は、使ったフライが魚に合っていなかったか、フライに魅力が足りなかったというのがその理由なんだ。とにかく、その魚からすると、使われたフライは行動を起こすに足るだけの価値がなかった。逆に言うと、魚が求めるフライであれば……パクリ! そして、届ける価値は顧客の獲得に直接比例するのだ。
それでは前置きこれくらいにして、「Mozbaitを使って大漁を狙う5つのステップ」を紹介しよう。
以下では、SEOmozが提供しているSEO関連のツールの使い方が紹介されている。しかし現時点では、紹介されているツールの一部は、日本語をうまく扱えない。
読者のリクエストが多ければ、これらのツールの日本語版をWeb担で提供するか、SEOmozに日本語対応と日本語インターフェイスの作成を依頼するかを検討してみようと思う。
Mozbaitを使って大漁を狙う5つのステップ
ステップ1
ターゲットの会社について調査を行う。会社のウェブサイトに目を通し、事業、製品およびサービス、経営陣とバックグラウンド、理念、価値などの情報を書き出す。競合相手を1社か2社見つける。ウェブサイトの現状から、その会社にとって価値がありそうなのは何か、手早く評価する。ステップ2
重要なページを1ページか2ページ選んで「キーワード抽出ツール」にかけて、(あるとすれば)ターゲットになっているキーワードについて理解を深め、効果的にターゲット化ができているかどうかをみる。それから僕はいつも「ページの強さ」と、いくつかの「キーワードの難易度(SEOmozプレミアムメンバーのみ利用可)」をツールで調べ、仕上げに非常に関連性の高いキーワードを1つ2つ選んで「キーワードターゲティング」のレポートを入手する。そして最初の評価を再検討する。ステップ3
入手した情報を整理されたレポートにまとめる。ステップ4
収集してまとめた情報に基づいて、具体的な提案の候補リストを作る。これが顧客に示す提案の基礎となる。ステップ5
相手に連絡を取り、「提供できる価値」に的を絞ったメッセージを伝える。たとえば、こんな感じだ。はじめまして、Joe。
業界誌で、Joe's Paintの成功とこれからの事業展開計画に関する記事を読みました。joespaint.comを訪問して、サイトのレイアウト、美意識、そしてコンテンツに感銘を受けました。そして、どうかお気を悪くしないでいただきたいのですが、ウェブサイトの検索エンジン最適化(SEO)とインターネットマーケティングの専門家として、勝手ながらサイトを分析し、アクセスを集めビジターを顧客に変えるという点で十分な最適化が行われているか、見させていただきました。
ウェブマスターの方はすばらしい仕事をしておられるようです。ただ、一部につきましては、処置を講じることで、サイトへのアクセス量の面でもコンバージョン率の面でも、大きなプラスの効果が得られるように思われます。
ウェブサイトの現在の効果について、具体的かつ印象的に理解していただける、10ページほどの簡潔なレポートを作成いたしました。改善の手順も詳しく記してあります。
できればお会いして(30分ほどいただきます)、レポートの結果をご説明したいと思うのですが、いかがでしょうか。あわせて、joespaint.comを次々と新しい顧客をもたらす価値ある資産へと変えるためにお薦めする、最良の5つのステップを、わかりやすくご説明したいと思っています。
お薦めするステップは、私たちが提供できるサービスですが、もちろん、仕事を依頼しなければならないということは一切ありません。私たちはデータの概要を説明するだけで、それからどうなさるかはお任せします。何もしなくてもかまいませんし、私たちの提案を社内でやってみようということになっても結構です。その場合もレポートは、お時間を取っていただいたことに対する私たちの感謝のしるしですので、どうぞそのままお持ちください。
明日、ご都合のいい時間をお伺いするためにご連絡します。それまでに、他のお客様が弊社のサービスについてどう言っておられるのかをお知りになりたい場合は、こちらをクリックしてください。
以上謹んで申し上げます。
さて、あなたは今こう思っているかもしれない。「大げさな文章だな」「どうして直接連絡を取らず、前もってここまでしなくちゃならないんだ? 電話をかけるか共通の電子メールを送るかして、相手が興味を示してからレポートを用意すればいいのでは?」とね。本当のところ、細かい点でどんなやり方を選ぶかは重要ではなくて、目的達成の方法はいくらでもある。
ポイントは、潜在顧客に「価値」を届けて新たな顧客を獲得するために、自分が自由に使えるリソースと情報を駆使するということだ。僕は発見したのだけど、調査とレポート作成に取り組むことで(いつもは全部で30分ほどかかる)、相手に魅力的で訴求力のあるメッセージを送る準備をよりしっかりとできる。結果として、僕の勝率はずっと高くなった。
会社にもよるけど、僕は通常、マーケティングや販売を担当するバイスプレジデントやディレクターに連絡を取るようにしている。場合によってはCEOのこともある。電話をかけることもあれば、メールで連絡を取ることもある。それはケースバイケースだ。重要なのは、相手の関心を引くアプローチを採用すること、そして、いちばんうまくいくアプローチが見つかるまで、さまざまなアプローチを(フライを)試し続けるということだ。つまり、価値が届く、相手が食いつきたくなるものをってことだね。たぶんだけど、Mozbaitを正しく組み合わせて適切なやり方で相手に届ければ、たいていは釣り針にかかってくれるよ。
それでは、ハッピー・フィッシングを!
ソーシャルもやってます!