国内1700サービスの統計にみる
共用サーバーを利用する場合、その中心となるサービスはウェブとメールになる。単にウェブで情報が公開できればよい、メールが送受信できればよいというのであれば、さほど重視する必要はないが、動的なサイトを構築する場合や業務で複数のメールアカウントが必要だという場合には、ディスク容量を含めてチェックすべき項目が複数ある。
TEXT:レンタルサーバー完全ガイド編集部
まずはディスク容量のチェックをしよう
共有サーバーでは、CPU、メモリーなどのハードウェアリソース、そして回線を他のユーザーと共用することになる。そこで、他のユーザーによる利用負荷が高ければパフォーマンスが低下する。これはサービスの形態上、避けることができないものだ。
これに対して、ハードディスク容量の割り当て分は上記のように動的なものではなく、「●●MB」あるいは「▲▲GB」といったように静的に割り当てられる。通常、これはクォータと呼ばれるプログラムで行われ、割り当て容量の上限に近づくと警告が出て、割り当て容量に達すると、それ以上は使用できなくなる。
こうした状況に陥らないようにするためには、使用できるディスク容量は多ければ多いほどよい。ただし、共有サーバーでは、この容量によりコース分けがなされ、ディスク容量の割り当てが多いほど費用も高くなる。現状、ディスク容量の割り当てが、どのように分布しているかを見てみることにしよう(グラフ1)。
このグラフではわからないが、ウェブ用のディスク容量が「なし」というサービスもある。しかし、その占有率はごくわずかで、95%以上がウェブ用としてディスクの割り当てがなされている。ウェブ用のディスク容量が「なし」となっているのは、メールボックスは別の領域に格納されるようなメール専用のサービスか、ストリーミング専用のサービスだろう。
さて、その容量だが、1000MB以上が3割超を占める一方、全体の4割強が「300MB未満」に含まれる。ウェブコンテンツの性質によって異なるので一概にはいえないが、ウェブコンテンツ1ファイルあたりの容量はHTMLファイルの場合、だいたい「20KB」と考えればよいだろう。すると300MBでは、15,360ファイル(ページ)が保存できることになる。ただし、これはすべてHTMLファイルであるという前提であり、イラストや写真、Flashによるアニメーションなどが入るとすると、その分を割り引いて考える必要がある。それに、ここでは「ウェブ用ディスク」とはなっているが、この領域にメールボックスが含まれることもある。容量の大きい添付ファイルもあるだろうし、スパムメールも無視できないので、この分も考慮に入れておいたほうがよいだろう。
また、特定商品のスペシャルサイトやキャンペーンサイトとして、情報公開に使用するだけであれば300MBでも十分だが、ブログやSNSなどのCGM系サイトとしては容量が不足する可能性も考えられる。サーバーの仕様により異なるが、Movable Typeを使用するような場合、システムもデータもこの領域に格納することになるので、写真を多くアップロードするような場合には、300MBという容量は安心できる容量とはいえない。
また、データベースを使用する場合にも、各ユーザーのデータは、ディスク容量として示されている領域に保存されるようになっていることが多い。そこで、ディスク容量は多めに見積もっておいたほうがよい。
動的なサイトを作るならSSIやCGIが使えるかを確認
ウェブで情報を公開するにあたり、単に情報を公開するだけではなく、クライアント環境に応じて、またはユーザーの操作状況に応じて表示するコンテンツを変更するような動的なサイトにしたいということもある。これにはさまざまな方法があるが、SSIやCGIなどもよく使われる。
こうした機能は共用サーバーでも対応しているところが多いので、SSIの対応状況を確認してみた(グラフ2)。
1割強が「不可」、2割弱が「非公開」となっているが、それ以外は使用可となっている。
ただし、CGIについてはアクセスカウンターなどレンタルサーバー事業者側であらかじめ用意されたものだけであり、独自のものは使用不可となっていることもある。そこで、この状況を調べてみた(グラフ3)。
「不可」と「非公開」を合わせると1割強あるが、それ以外は許可されている。なお、SSIは使用可となっているものの、execコマンドは使用不可の場合もある。
使用可能なスクリプト言語の確認バージョンにも注意が必要
CGIやスクリプト言語が使用できるとしても、それは画一的なものではない。そこで、どのような言語が使用できるようになっているかを調べてみた(グラフ4)。
CGIを使用する上で、もっともよく使われるPerlは、たいていのレンタルサーバー事業者で使用できるようになっている。次に多いのがPHP、そしてPythonと続く。
ここで注意すべきなのは、PHPのバージョンだ。現在、一般に使われているのはPHP4とPHP5だが、PHP4とPHP5は互換性が謳われてはいるものの、完全に互換性を有しているとは言い難い。そこで、PHP4用として作成したスクリプトを使用するのであれば、PHP4をサポートしたサービスを利用するのが安全だ。
データベースを使用するなら、サポートデータベースをチェック
データベースを使用するのであれば、使用予定のデータベースがサポートされているかのチェックが必要だ。Movable Typeをサポートしているサービスであれば、データベースが使用できないということはないはずだが、Movable Typeでサポートするすべてのデータベースが使用できるとは限らない。そこで、使用可能データベースを調べてみた(グラフ5)。
全体では6割以上がデータベースを使用できるが、MySQLとPostgreSQLが大半を占め、それぞれ8割強、5割弱を占める。それ以外はすべて1割弱という結果だ。
なお、ここに掲載されているデータベースから必要なデータベースを選択的に使用できるわけではないので、個別に確認することも必要だ。
ブログをやるならMovable Typeのサポート状況を確認
企業情報サイトの公開に伴い、ブログを使用することも多い。この場合、プログラムをフルスクラッチするのは時間の面でもコストの面でも効率が悪い。多くのサイトではMovable Typeを利用することでブログが使用できるようにしている。さて、それではどれだけの比率でMovable Typeが利用できるのだろうか(グラフ6)。
共用サーバーでは4割強が、専用サーバーでは4割強、仮想専用サーバーでは約8割が利用可となっている。
ただし、誤解してはいけないのが、「無料」の意味だ。Movable Typeは、1サーバー5ユーザーからの有料プログラム(個人利用は無償のライセンス)だが、これが無料になるというわけではない。そのサービスコースの標準状態でMovable Typeの利用がサポートされているということだ。
また、「無料」「有料」とあっても「動作確認を行っている」「動作実績がある」ということで、「Movable Typeを提供する」ということではないことも留意する必要がある。
メールは、マルチアカウント対応かアカウント数も確認しよう
企業情報の公開、ECサイトの運営には、多くのメールアカウント(アドレス)が必要になる。しかし、共用サーバーの場合には、使用できるメールアカウント数に制限がある場合が多い。そこで、使用できるメールアカウント数を調べてみた(グラフ7)。
6割弱が50個未満だが、それ以上使用できるというサービスも4割程度ある。ただし、こここでの「50個未満」には相当の幅があり、3個、5個、10個というものも含まれている。用途に応じて必要とするアカウント数が利用できるかを確認する必要がある。
ウイルスメール/スパムメール対策は提供されるのか
残念なことだが、メールを使用する以上、ウイルスが含まれるメールや不特定多数に送りつけられるスパムメールを完全に排除することはできない。ウイルスについては、アンチウイルスソフト、スパムについてはメールソフトにより対抗策を講じていると思うが、サーバー側でこれをフィルタリングできるようであれば、安全性が高まる。特にスパムメールが数多く届くと、それによりメールボックスがパンクしてメールが使用できなくなることもあるので対策が必要だ。
そこで、これらの対応状況をみてみよう(グラフ8、グラフ9)。
ウイルス対策では、「有料」および「無料」合わせて7割以上が対応している。スパムについては5割強の対応だ。
これだけをもって選択の基準とすることはできないが、なるべく双方とも対策を講じているサービスを選択したほうがよいだろう。
メーリングリストやメール転送機能のサポートはあるか
用途にもよるが、ビジネス用途であれば複数のアドレスに一斉同報が行えるメーリングリストや受信したメールを別のアドレスに転送するメール転送機能は必要だ。それぞれの機能が提供されているかどうかは、レンタルサーバー業者選択時の重要なポイントとなる。
グラフ10および11を見てほしい。メーリングリストは、6割程度が対応しているが2割強は提供されていない。メール転送は8割以上が対応している。1割強が「非公開」であるものの、「非対応」はごくわずかだ。
この記事で紹介したレンタルサーバーの調査データは、インプレスR&Dの発行する『レンタルサーバー事業者調査報告書2007』に掲載されているものをベースにしている。
調査報告書『レンタルサーバー事業者調査報告書2007』では、レンタルサーバー事業者を、サービス内容に応じて、専用サーバー、共用サーバー、仮想専用サーバーに分類し、さらに価格帯、ハードウェア仕様、ネットワーク仕様、運用体制、セキュリティー関連サービス、アクセスログ解析機能、ショッピングカートや決済代行などの付加サービスを詳細に分析、前年度データを使った時系列の分析も行っている。
調査対象企業一覧とそのサービス内容も掲載しているため、レンタルサーバー業界の需要や傾向はもちろん、提供事業間のサービス競合研究などにも役立つ。
本調査は、事業者に対する調査とユーザーに対する調査の2つからなっている。事業者調査は、2006年12月に、国内のレンタルサーバー事業者280社(1,733サービス)に対して、ウェブを使った調査を行った。
また、利用者へのアンケート調査は、個人および会社でレンタルサーバーを利用している2,050サンプルに対して行った。
『レンタルサーバー事業者調査報告書2007』に関する詳細情報や目次などは、こちらから。
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