国内1700サービスの統計にみる
レンタルサーバーを利用するにあたり、費用は安いほうがよいと考えるのはユーザーにとって当然のことだ。そうした中で「初期費用0円」というのは魅力的に映るが、そこには何らかのカラクリがあるはず。
また、同じサービスでいくつかのコースが用意されていることも多い。このコースの違いは何なのかを明らかにすることで、レンタルサーバーの費用について検証しよう。
TEXT:レンタルサーバー完全ガイド編集部
コースにより、サービスの内容により費用が異なる
レンタルサーバーには、1つのサービスに複数のコース(「プラン」と呼んでいる場合もある)が用意されている場合がほとんどだ。これらの違いは、サービスの内容によるのだ。たとえば、ディスク容量が違うとか、独自のCGIやデータベースなどが使用できるかといった違いがある。そうした違いが費用に反映され、より多くのサービスが利用できるほうが費用が高く設定される。
では、値段が高ければよいかといえば、必ずしもそうではない。たとえば、複数のメールアドレスが使用できるとかマルチドメインが使用できるかどうかということで、コース分けされているサービスもある。こうした違いは、用途によっては欠かせない条件となる場合もあるものの、不要な場合もあるだろう。そこで、各コースの相違点を見極めるとともに、必要・不要を判断して適切なコースを選択する必要がある。
まずは、レンタルサーバー費用の状況を知るところから
レンタルサーバーの内部経費構成は「初期費用+月額費用+人件費+利益」となる。レンタルサーバー事業者にとって初期費用は、サーバーの購入費や初期設定に関わる人件費などに充てられ、月額費用はiDCやラック、回線、管理維持のための人件費などに充てられる費用だ。
こうした中で「初期費用0円」というサービスも珍しくない。ウラを読めば、レンタルサーバー事業者はどこかで初期費用分を回収しないと事業を維持していけない。そこでサービス費用の設定を見てみると、ほとんどの場合、「初期費用0円」のサービスは、月額費用が高めに設定されている。つまり、「長期に渡って利用してもらえれば、初期費用分は月額費用によって得られる利益でまかなえる」とレンタルサーバー事業者が計算しているのだ。
仮に、最低利用期間を1年以上とした場合、レンタルサーバー事業者としては月額利用料金×12か月分は売り上げが見込めるので、その間で必要となる費用を捻出するとともに利益が見込めれば、初期費用を計上しなくても事業として成り立つ。
さて、それでは月額費用の相場はどのあたりにあるだろうか(グラフ1)。
共用サーバーでは、3割弱が「2,100円以下」で低価格なサービスが全体の約1/3程度を占めている。専用サーバーでは、「31,500円~52,500円」と「52,500円~105,000」がそれぞれ3割弱。仮想専用サーバーでは、共用サーバーや専用サーバーと異なり、「10,500円以下」と「31,500円以下」の2つで半数以上を占めている。
ボリュームゾーンとなる価格帯に値頃感
もう一度グラフ1を見てほしい。各サーバータイプにおける費用の相場が見えるとともに、ボリュームゾーンが見えてくる。
このボリュームゾーンは、レンタルサーバー事業者の競争が激しいことを意味する。そこで、各レンタルサーバー事業者は、ユーザーを獲得するために、サービスの中に何らかの特徴を出そうとする。たとえば、共用サーバーの同じサービスで2,100円以下のコースと5,250円以下のコースが用意されているとする。そこでスペックを比較すると、月額費用は倍になるものの、使用できるディスク容量は5倍になるものもある。
費用は、最低利用期間を含めて
それでは、何を基準に価格の判断を行えばよいか。これには、一定期間の費用総額を比較すればよいだろう。そこでサーバータイプごとに3年間の費用総額の分布を見てみよう(グラフ2)。
共用サーバーでは、30万円未満のサービスが70%以上を占める。専用サーバーでは、200万円以上が半数近くとなるが、100万円~200万円という範囲でも3割ほど。仮想専用サーバーでは、50万円~100万円というのが3割強を占めるが、50万円未満の占有率をすべて合わせると4割以上となることから、この価格帯もねらい目といえるだろう。
「お試し期間」と「基本サポート」も要チェック
「お試し期間」の有無と期間、「基本サポート」の内容も軽視できない。「お試し期間」は、契約前に一定期間、無償でサーバーを利用できるものだ。ただし、「お試し期間」の終了時、お試し期間中に使用していた環境が継続的に使用できるとは限らない。契約後、改めて設定し直しになる場合もあるのだ。
「基本サポート」は、問い合わせやトラブル発生時の対応に関するものだ。ほとんどのサービスでは、メールによるサポートは標準的に行われる。サービスを利用する段階では、トラブルが発生することはあまり考えないが、「いざ」というときのためのことを考え、契約前にレンタルサーバー事業者に確認すべきだ。
トラブル発生時には、メールおよび電話で対応を行うという契約であったにもかかわらず、夕方にトラブルが発生し、トラブル対応にはあたったものの、解決しないまま「サポート時間が過ぎたので、続きは明日の営業時間に行います」といった対応をするレンタルサーバー事業者もある。
契約してからサービスインまでのリードタイムは?
見落としがちなのが、契約完了からサービス開始までに要する時間だ。
共用サーバー、専用サーバー、仮想専用サーバーともに、契約が完了したら即時サービスを提供するというのは1割前後であり、それ以外は利用開始まで時間を要するか、非公グラフ3 利用開始までの時間開となっている。
一般にユーザーは契約が済めば即座にサービスが利用できると思いがちだ。その前提に立って事業計画を行っていると大変なことになる。そこで、全体の傾向をみるため、利用開始までの時間がどのようになっているかを調べた(グラフ3)。
共用サーバーでは、2日未満、3日未満で半数を占めるが、1週間以上かかるところも約2割ある。専用サーバーでは、1週間未満と2週間未満の2つで約6割だが、それ以上というのも3割以上を占める。これは、契約が成立してから、サーバー(ハードウェア)の発注を行っていることが推測される。
仮想専用サーバーでは、3日までで7割を占める。これは、レンタルサーバー事業者が設定する時間に要するリードタイムである。
この記事で紹介したレンタルサーバーの調査データは、インプレスR&Dの発行する『レンタルサーバー事業者調査報告書2007』に掲載されているものをベースにしている。
調査報告書『レンタルサーバー事業者調査報告書2007』では、レンタルサーバー事業者を、サービス内容に応じて、専用サーバー、共用サーバー、仮想専用サーバーに分類し、さらに価格帯、ハードウェア仕様、ネットワーク仕様、運用体制、セキュリティー関連サービス、アクセスログ解析機能、ショッピングカートや決済代行などの付加サービスを詳細に分析、前年度データを使った時系列の分析も行っている。
調査対象企業一覧とそのサービス内容も掲載しているため、レンタルサーバー業界の需要や傾向はもちろん、提供事業間のサービス競合研究などにも役立つ。
本調査は、事業者に対する調査とユーザーに対する調査の2つからなっている。事業者調査は、2006年12月に、国内のレンタルサーバー事業者280社(1,733サービス)に対して、ウェブを使った調査を行った。
また、利用者へのアンケート調査は、個人および会社でレンタルサーバーを利用している2,050サンプルに対して行った。
『レンタルサーバー事業者調査報告書2007』に関する詳細情報や目次などは、こちらから。
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