知っておきたい法律関係

10月施行「ステマ法規制」何をしたら違反? 5年前の投稿でも違反になる!? 参考にすべきガイドライン

ステマはインフルエンサーだけの問題ではない。処罰されないため、すべての事業者が知っておきたい「WOMJガイドライン」とやるべきことを紹介する。

ステルスマーケティング(以下、ステマ)が2023年10月1日から、景品表示法により規制される。ここで注意しておきたいのが「施行前に掲載されたものであっても、10月1日以降は規制の対象になる」という点だ。5年前だろうが10年前だろうが関係なく、理論的にはネット上で閲覧できる過去すべての膨大な投稿が規制の対象になる。施行まで残り数か月、早急な対応が求められる。

では具体的にどのようなものが対象となり、その対象とならないためにはどうすればいいのだろうか。消費者庁の「ステルスマーケティングに関する検討会」委員であり、WOMマーケティング協議会の山本京輔氏に聞いた。

WOMマーケティング協議会 副理事長 山本 京輔氏

ステマが法規制の対象に、何をしたら違反になる?

「ステマ」とは、インターネット上などで広告と明らかにせずクチコミや感想を装って宣伝することを指す。

消費者庁は2023年3月、景品表示法(正式名称: 不当景品類及び不当表示防止法 以下、景表法)が禁じる「不当表示」に2023年10月からステマを追加することを発表した。これにより、事業者が第三者を装って商品を宣伝したり、第三者に宣伝やPR、クチコミ投稿を指示したりした場合、広告表示が必須になる。たとえ金銭授受が発生していなくても、法規制の対象となる場合がある

違反すれば行政処分の対象となり、措置命令が行われる。規制対象は広告主で、インフルエンサーや一般の投稿者は処分されない。

クチコミを書いてくれたらプレゼント → PRなどの表記が必要

たとえば飲食店などで、「この場でお店のクチコミを書いてくれたら、〇〇をプレゼントします」などと言われたことのある人は多いだろう。2023年10月からは、そのクチコミには「PR」などと記載しなければ違反になる可能性がある(記事末で表記ルールを記載)。

献本されて感想を書く → “献本である”旨の表記が必要

ほかにも、書籍の献本にも注意が必要だ。一般人やインフルエンサーがSNSに感想などを投稿する場合、それが献本されたものであれば、「献本された」とわかるように表示しなければ、違反になる可能性がある。「献本相手の投稿まで確認するのは難しい」という声が聞こえてきそうだが、管理上必要な措置として、事前説明や確認が必要になる。

 

つまりこの法規制は、すべての事業者に関係があると言えるのだ。

WOMJのガイドラインを参考にすべし

では、具体的に何をどうすればいいのか。参考になるのが、WOMマーケティング協議会(以下、WOMJ:ワムジェー)が公開している新ガイドラインだ。

WOMJのガイドラインは、消費者間コミュニケーションを扱う業界の健全な発展のために2010年に定められたもの。これまでに何度か改定しているが、今回の消費者庁からの発表に伴い、再度改定。大幅な変更点が加えられた新ガイドラインとなり、2023年10月1日から適用される。

山本氏は、WOMJのガイドラインについて「景品表示法をより具体的な内容に落とし込んだもの」だと説明する。

業界団体の自主規制として定めているものなので、消費者庁が発表している運用基準よりも厳しい規定ですが、インフルエンサーマーケティングなどのクチコミマーケティングでは、これを守っていれば景表法に抵触することはありません(山本氏)

では、WOMJのガイドラインには具体的にどんなことが書かれているのか。山本氏によれば、特に重要なのは「関係性の明示」だという。本ガイドラインの本文を紹介しながら、ポイントを確認していこう。

関係性の明示のポイントを解説!

関係性の明示とは?

3.関係性の明示

ア. 次のいずれかに当てはまる場合、マーケティング主体と情報発信者との間には「関係性がある」とする。

  • a. 情報発信者に対して、WOMマーケティングを目的とした重要な金銭・物品・サービスなどの提供が行われる場合
  • b. マーケティング主体または中間事業者が、情報発信者の発信する情報内容の決定に関与する場合
  • c. マーケティング主体または中間事業者と、情報発信者との間に契約関係や取引関係などの「係わり」があることにより、情報発信者から発信される情報内容が「情報発信者の自主的な意思によるもの」と客観的に認められない場合
  • d. 情報発信者が自身の所属する組織や利害関係にある組織に関する情報を発信する場合

イ. 関係性がある場合、マーケティング主体および中間事業者は、情報発信者に関係性明示をさせなければならない。ただし、マーケティング主体と情報発信者との間に「関係性がある」ことが情報受信者にとって社会通念上明らかである場合には、関係性明示を省略することができる。

金銭・物品・サービスを提供していない場合 → 関係性があれば広告などと表記

以前は、広告主からインフルエンサーなどに重要な金銭・物品・サービスの提供があれば、両者は「関係性がある」とし、その場合、広告主はインフルエンサーに関係性を明示させねばならなかった。しかし今後は、“情報発信者の発信する情報内容の決定に関与する場合”も、関係性があると判断される。つまり必ずしも金銭・物品・サービスを提供していなくとも、WOMJガイドラインが定める「関係性がある」とする場合に該当するなら、広告や宣伝であると明示しなければならない

ちなみに「金銭・物品・サービスなど」には、次のものを含む:

  • 商品券、電子マネー、会員専用ポイントその他の有価証券
  • 商品購入時の値引きや割引クーポン券
  • イベントへの招待、イベントに参加できる特典
  • その他、経済上の利益と考えられるもの

消費者庁はa~dを総合的に見て関係性を判断するとしていますが、WOMJではより厳密に、a~dにひとつでも該当する場合は『関係性がある』と定めることにしました。ただし例外として、関係性があることが社会通念上明らかである場合には、関係性明示を省略することを許容します(山本氏)

関係性明示の方法について

3.関係性の明示

ウ. 関係性明示は「マーケティング主体」と「関係の内容」の両方を、情報受信者が容易に認識かつ理解できる方法で示さなければならない。

  • a . 主体の明示 : マーケティング主体の名称(企業名・ブランド名など)を明らかにすること
  • b . 関係内容の明示 : マーケティング主体と情報発信者との間に、どのような関係性があるのかを明らかにすること。具体的な関係の内容を言葉で説明する他に、「関係タグ」を使用することもできる

関係性明示における「景表法」と「WOMJガイドライン」の違い

景表法では、広告主の名前を記載することまでは求められていない。一方、WOMJガイドラインでは「マーケティング主体の名称」と「関係性の内容」を明示することを義務付けている

これは景表法と本ガイドラインの大きな違いです。消費者の正しく情報を知る権利を尊重する観点からすれば、どこかの企業・団体がインフルエンサー等の投稿内容に関係しているということだけがわかっても、その肝心の広告主(マーケティング主体)がわからないのは、ちょっとどうなのかなと。両方が揃ってはじめて十分な「正しい情報」になるとWOMJでは考えています(山本氏)

WOMJガイドラインにおける推奨「関係タグ」

また関係性の内容を明示させる方法として、WOMJでは、次の4つの「関係タグ」を設定した:

  • #プロモーション
  • #PR
  • #宣伝
  • #広告

仮に「#PR」というハッシュタグを付けていたとしても、複数のハッシュタグの中に埋もれているのでは、違反とみなされる可能性がある。複数のハッシュタグとともに使う場合は、「関係タグ」を先頭に配置しなければならない。ただし「〇〇のプロモーションに参加しています」など関係内容を明瞭に記載できる場合は、必ずしも「関係タグ」は必須ではない。

◇◇◇

WOMJガイドラインは本来、WOMJの会員が関与する日本国内かつオンラインの消費者間コミュニケーションのマーケティングに適用される。

しかし、他の業界団体も本ガイドラインを基準にしており、消費者庁「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示(案)」に関する公聴会に、公聴人として出席された一般社団法人日本アフィリエイト協議会(JAO)代表理事の笠井北斗氏によれば、アフィリエイト関係者もWOMJガイドラインに大いに注目しているのだという。

ガイドラインを制定している団体は他にもありますが、規模や実績等を鑑みれば、WOMJさんのガイドラインを参考にするのがいいと思います。このガイドラインを遵守している限り、少なくとも、今回の法規制で処罰される第1号になることはないでしょう(笠井氏)

このように、ステマの法規制は多くの事業者に関係するものであるため、WOMJガイドラインを一読しておくことをおすすめする。また、消費者(情報受信者)側にも一定の理解が浸透していないと徹底が難しいものだとも言える。自分の仕事や日々の行いが、ステマの法規制とどのように関わっているか。早めに見極め、対処することが求められている。

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