SEO以外にも役立つコンテンツ監査、その有用性と始め方4ステップ
「コンテンツ監査」には、さまざまなものがある:
- SEO案件売り込みの一環として短いレポートを作成し、その後、忘れてしまうもの
- SEO監査の一部に組み込まれているもの
「コンテンツ監査」と一口に言っても、その意味するところはマーケターによってさまざまだ。プロジェクトに割り当てられる時間も、コンテンツ戦略をどれだけ重視しているのかによって違ってくる。
「コピーライティング」や「コンテンツマーケティング」がSEOというカテゴリに分類される場合があるのはたしかだ。しかし、最大限に活用したければ、コンテンツ制作を独立した一部門だと考える必要がある。適切に制作したコンテンツはSEO、PPC、ソーシャルメディアなどの戦略に役立つ。その一方で、コンテンツにはコンテンツとして役割と目的がある。
だから専門家として言わせてもらうが、
- コンテンツ監査
- コンテンツのSEO監査
は、まったく別のものなのだ。
わたしは、6年間デジタルマーケティングに従事してきた。SEO部門をゼロから立ち上げるのに協力したこともあるし、おそらくマルセル・プルーストよりたくさんのコンテンツを書いてきた。現在はコンテンツが100%であり、成功する確率を最大限にするためSEOの手法を取り入れてはいるが、何よりもまず書くものの質を重視している。
今回はこのような視点から、次の2つを中心に話を進める:
- コンテンツ監査の重要性
- コンテンツ監査の実施方法
(SEOチームの役に立つ活用法もいくつか取り上げている)
コンテンツ監査はなぜ有用なのか
コンテンツ監査でありがちな流れとして、次のようなものがある:
プロジェクト初期のさまざまな動きのウェブサイトがいま抱えている問題点を浮き彫りにするために1度だけコンテンツ監査を実施する。
その後は、より大きな戦略に組み入れてしまう。
しかし、このやり方では、短期間しか役に立たない。そうではなく、継続的に更新し、次なるステップのガイドラインとして活用するコンテンツ監査なら、次に挙げるようなことに使える。
1. サイトを引き継いだときに過去の情報を整理できる
ウェブサイトの管理を引き継いだものの、前任者と言葉を交わす機会がない場合があるかもしれない。サイトの所有者から情報を得ることはできるだろうが、それで全体像を把握できることはまれだ。
そんな時、補足情報をかき集めるのにコンテンツ監査が役立つ。たとえば、次のようなものだ:
ページのCTA(行動喚起)からは、前任者が何を達成したいと考えていたのかがわかる
コンテンツがサイトのどこにあるのかからわかる情報もある。
- 階層がいちばん上のページがファネルの終端であることはまずない
- プロダクトページは販売志向であることが多い
- サイト内リンクのあるブログ記事からは、前任者が何を強化しようとしていたのかがわかる
コンテンツのトピックが何に集中してきたのかを精査することで、前任のマネージャーやビジネスオーナーがどのプロダクトやサービスを重要視していたのかがみえてくる。その情報をもとに、
- その取り組みは継続に値するものなのか
- それとも別のやり方に完全に移行するべきなのか
を決めていくのだ。
2. コンテンツが取り上げられて成功するまでの期間を把握する
コンテンツのプロジェクトは、次のように判断される場合がある:
公開から数週間~数か月で成功がみえないならば、そのコンテンツは失敗だ。
しかし、広報PRと同じようにコンテンツは、公開時に失敗と判断されたものが後になって取り上げられることがある。自分の測定基準で「成功した」ことになるまでにかかる期間を把握することは、将来の戦略に役立つほか、現在、フラストレーションが高まるのを防ぐことにもなる。
3. 現在/未来の戦略のガイドラインにする
「過去に何がうまくいったのか」を知ることは、ターゲットオーディエンスが求めているもののさらなる理解につながる。こつこつと集めていけば、現在のコンテンツ戦略に活用できるトレンドがあるかもしれない。ターゲットオーディエンスの反応が良くなる構造やトピックがあるかもしれない。
こうした分析から、どのような施策や戦略をとるべきか判断できるようになる。たとえば次のようなものだ:
- パフォーマンスをもっと向上させられると思えるページを手直しする
- ほかのマーケティング手法を活用して一部のページをプロモーションする
- 何かを完全に廃止してやり直す
- 避けるべきトピックを判断する(魅力的にみえるが効果が見込めないなど)
また、現在のコンテンツに欠けているトピックを明らかにして、クライアント(事業部)と話し合うこともできる。そうした場では、「言い忘れていたんだが、実はそのトピックは扱いたくないんだ。これこれこういう理由だ」ということがなければ、欠けているトピックを埋める新しいコンテンツを作成し効果を測定することにゴーサインがもらえるかもしれない。
ここで言っておかなければならないのは、これだ:
コンテンツのパフォーマンス評価に使う指標は、慎重に検討するべき。
たとえば、階層の上部(購買ファネル入り口)にある情報や啓発のページは、ROIのみで測定しても意味がない。予約や購入に注力したページと比較してROIが悪くて当たり前だ。ファネル上部のページでは、エンゲージメント指標やコンバージョンのアシストを測定すると、実際のパフォーマンスがよくわかる。
4. レポーティングのツールにする
コンテンツ監査は、初回に手がける時こそ多くの時間がかかることもあるが、維持管理はわずかな時間で済む。とはいえ、そのわずかな時間でさえ貴重なものであり、ちりも積もれば山となるのはだれもが知るところだ。それに、実際に何かを作り出す作業をやらせるのを好むクライアント(や上司)はどうしてもいるもので、こうした「既存のものの管理」タイプのプロジェクトは価値をなかなかわかってもらえないことがある。
監査をレポーティングの一部に組み込むと、月初め(に限らず、レポート提出時)に時間を節約できる。レポーティングする週の前の監査に、分析と次のステップを加えるようにすればなおさら節約できる。
今おすすめのコンテンツ監査方法をGoogle検索のSERPに聞いてみた
Google検索で「コンテンツ監査のやり方」と検索して、検索結果ページ(SERP)上位の内容を調べてみた。共通点を知りたかったんだ。それぞれに独自のポイントがあったが、共通しておすすめされているものがあったので紹介しておこう。
グラフの形で示したが、これはなかなか興味深い。というのも、この図だけで「効果的なコンテンツ監査の実施方法に関する手順解説」になっているからだ。とは言うものの、検索結果で上位にあった大半のページは「SEOのためのコンテンツ分析」が中心だった。
これからわたしが紹介するコンテンツ監査の提案は、
- SEOのためのコンテンツ分析
ではない。そうではなく、
- SEOへの応用も可能なコンテンツ監査
ではある(記事の最後ではわたしの応用方法もいくつか挙げている)。しかし、わたしの手法が最も大切にしているのは、
- 読者の体験に関わるコンテンツの質の部分について、また、そのSEOへの影響について知ってもらうこと
なのだ。そのため、ここからの解説では掲載順位や被リンクなどには注力していない。
コンテンツ監査の始め方
たまったデータをエクスポートして詳しく調べることを考える前に、まずクライアント(事業部の人や上司)と話をすることから始めるべきだ。すでに述べたように、コンテンツ監査は時間がかかる可能性があり、このような分析に時間を費やすことにあまり熱心ではない人もいる。
相手をその気にさせるために話をしておくべき点が4つある。次のものだ:
- コンテンツ監査をする理由
- 監査するコンテンツの種類
- 重視する目標、CTA、指標
- 監査でどこまでさかのぼるのか
それぞれ解説していく。
1. コンテンツ監査をする理由
コンテンツ監査を実施する理由は、いくつかあるだろう:
- コンテンツ戦略のガイドにするため
- 古くなったコンテンツを削除したり、更新でパフォーマンスを高めてクイックウィンにしたりするため
- オーディエンスの反応が良いコンテンツの種類を把握するため
クライアントが特に重視するものを把握し、それに基づいて話を進めれば、監査にかける時間を抑えつつ、ゴーサインをもらえる可能性を高めることができる。
2. 監査するコンテンツの種類
だれだって、監査を実施しながら着実に変化が目に見えるタスクを進めたいはずだ。担当しているのが大規模なウェブサイトなら、次のようにするといい:
まず、コンテンツを種類に分ける。たとえば、次のような感じだ:
- ブログ記事
- ホワイトペーパーや解説
- サービスページ
- カテゴリページ
- 商品ページ
そして、どこから分析を始めるべきなのか、相手と話し合って一緒に決定し、作業スケジュールを策定するのだ。
監査をコンテンツの種類ごとに分割することで、まとまりのある分析とレポートに取り組みつつ、ほかのタスクに手を着けて、月ごとのコンテンツ戦略を強化するための時間を確保できるようになる。
3. 重視する目標、CTA、指標
ウェブサイトの主な目標を相手に尋ねて、単なる「販売増」にとどまらないところまで掘り下げよう。
もしかしたら、
- 購買に近いユーザーをターゲットとするコンテンツ
だけでなく、
- マーケティングファネルの各段階に対応するページ
を強化することで、ウェブサイトのユーザーを望ましいアクションに導いたり、購入前後の問題や質問に対処したりできるかもしれない。もし、そうしたページがなければ用意なければならない。
それに、クライアントが最も重視している指標を把握することは、コンテンツ監査とそこから生まれる戦略に磨きをかけるのに役立つ。
4. 監査でどこまでさかのぼるのか
- 1年以内に公開されたコンテンツに注力したい場合
- 可能な限りさかのぼりたい場合
など、さまざまだろう。クライアントはどう考えているのだろうか。また、クライアントはプロジェクトにどれくらいの予算を割り当てる気があるのだろうか。こうした点は、必ず監査に着手する前に聞いておかなければならない。
この記事は、前中後編の3回に分けてお届けする。今回は、コンテンツ監査の概要を説明するにとどまった。中編となる次回は、いよいよ初回の監査の方法について見ていく。
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