音声検索への最適化が2021年のSEO計画に与える影響と対策――プラットフォームのシェアと具体的施策
音声とSEOを解説するこの記事は、前後編の2回に分けてお届けしている。後編となる今回も、前回に引き続いて、
- プラットフォームのシェア
- 「音声検索」と「音声操作」にSEOはどう対応すべきか
- ポジションゼロの獲得
- NAP情報を登録しておくべき先
- 音声スニペット機能
- どこまで最適化するか
などに関して、筆者の考えを見ていこう。
→まず前編を読んでおく
検索全体におけるデジタルアシスタントの市場シェア
本記事の執筆時点で、4つの主要なスマートアシスタントが音声検索リクエストの大半を処理しており、それぞれに独自の検索アルゴリズムがあるものの、一部は重複しており、共通するデータソースもある。
各アシスタントの市場シェアを把握すると、主な成長目標に対する最適化戦略に優先順位を付けるのに役立つ。これらのデジタルアシスタントはそれぞれアピールポイントやユーザー層が少しずつ異なるハードウェアブランドと結びついているため、ターゲットにしているオーディエンスに応じて、分析の追跡処理は1~2のプラットフォームに絞り込めるだろう。
マイクロソフトのThe 2019 Voice Reportでは、使用したことのあるデジタルアシスタントを挙げるよう回答者に求めており、これらの各エンジンから期待できる音声検索トラフィックを大まかに把握できる。アップルのSiriとGoogleアシスタントが同率1位で、市場シェアはそれぞれ36%だ。アマゾンのAlexaはデジタルアシスタントの利用率全体の25%を占めており、続いてマイクロソフトのCortanaが19%となっている。
ここで注目すべき興味深い点は、Cortanaに搭載されているエンジンが、Alexaとのパートナーシップに大きく依存していることだ。Cortanaは「コルタナ、新着メールを読み上げて」など、ノートPCやデスクトップPCに対する音声コマンド機能を備えるが、Alexaでは「電気をつけて」や「NPR(米国の公共ラジオ)を流して」など、スマートスピーカー向けのリクエストが多い。
音声操作への最適化 vs 音声検索への最適化
音声コマンドは、次の2つのカテゴリに分類される:
- 音声検索
- 音声操作
それぞれが異なる基準で、音声リクエストに対して最初に返す応答を判断する。コンテンツの処理方法がまったく異なるため、音声検索のSEO計画を評価する場合は、どちらを対象にするのかを明確にすることが非常に重要となる。
音声検索への最適化
音声検索は基本的に、検索フレーズをキーボードに入力する代わりに声に出すことでブラウザに結果が返されるものだ。たとえばスマートフォンのブラウザで「OK Google」コマンドなどを使用できる。
ユーザーが音声AIとやり取りする際、より会話に近い形でクエリを表現する傾向がある。つまり、どのようなキーワード(キーフレーズ)に対して最適化すべきかに影響を及ぼす可能性がある。
音声操作への最適化
一方、音声操作とは、
- スマートスピーカーでテイクアウトを注文する
- 車内で天気を確認する
のように、特定の音声コマンドや質問によって、特定のアプリや自動機能を呼び出すことを意味する。家庭用のスマートスピーカーや一部の車載アシスタントなど、画面のないデバイスでは音声操作を利用することになる。
通常の検索ではクエリに関連するいくつかの結果がランク付けして返される。しかしこれらのコマンドに対しては、次のものがシンプルに返されることが多い:
- 音声による結果1件
- さらなるアクションを促すプロンプト
たとえば、アマゾンの「Echo Dot」に天気を訊くと、あらかじめ設定されたソースから取得したデータに基づいて、天気予報を読み上げてくれる。検索エンジンの結果ページ(SERP)を表示する画面がないため、人気の高い天気予報サイトのリストを返すことはできない。これは重要な違いだ。
スマートアシスタントは、音声スニペットの結果を返すことが多い。そうした音声スニペットは、
- Wolfram|Alphaに数学的な変換を任せる
- Yelpにローカルビジネスのリスティングを問い合わせる
などして、二次的なサイトからデータを取得していることが多い。
そうした使用例の1つが、「ピザを注文する」場合の音声検索だ。このクエリはAIによってYelpやGoogleマップに転送され、音声による結果が1件、次のように返される:
Yelpで、近くに5つ星評価のピザ屋が見つかりました。このピザ屋Joe's Pizzaに電話して注文しますか、それとも行き方を調べますか?
これは「ポジションゼロ」と呼ばれることもある現象だ。検索エンジンは必ずしもユーザーをページに送り込むことなく、コンテンツ本文からの抜粋やスニペットを返すことで、直接的な質問に回答するのだ。
ポジションゼロの獲得はデバイスに左右される
音声検索でポジションゼロを獲得できるかどうかは、それらの検索結果がどこから取得されるかにかかっている。たとえば、特定の実店舗への行き方に関する音声検索で上位に表示されるようにするには、GoogleマップやYelpなどのリスティングサイトでそのビジネスのビジビリティを高められるかどうかで決まる場合が多い。こうした側面への最適化は、SEO計画の一環としてすでに行っている人もいるかもしれない。
データソースは、音声検索を実行するプラットフォームによって異なる。特定のカテゴリで情報を探す場合、次のような違いがある:
- グーグルおよびAndroid搭載デバイスでは、Googleローカルパックを利用して結果を返す
- Siriでは、Yelpから結果を返す
Alexaでは、Bing、Yelp、Yextからローカル検索結果を取得するため、これらのプラットフォームでプロフィールを登録し、確固としたリスティングを設定しておくと、Alexaの検索結果で上位を獲得する助けになるだろう。
各アシスタントは、NAP情報(ビジネスがオンラインでのリスティングに掲載している名称、住所、電話番号)も取得する。ロケーションベースの検索結果でNAPのプロフィールを取得するソースは、プラットフォームによってわずかに異なり、時には重複する部分もある:
- Siriでは、Yelp、Bing、Apple Maps、Trip AdvisorのNAPプロファイルから地域のおすすめ情報を取得する。
- AndroidデバイスとGoogleアシスタントでは、GoogleマイビジネスからNAPプロファイルを取得する。
- Alexaでは、Yelp、Bing、YextからNAPプロファイルを取得する。
- Cortana(Alexaを利用している)は、YelpとBingから取得する。
ビジネスページを音声検索向けに最適化したいと考えている人は、
といったリスティングすべてにビジネス情報を登録し、あらゆるプラットフォームで利用できるようにNAPプロファイルを記載しておくのがいいだろう。
ここでも、Moz Localなどのレピュテーションマネジメント製品は検索順位を上げようとしている企業の役に立つ。
音声スニペット機能を追求するべきか
繰り返すが、次のことは忘れてはいけない:
テキストベースのウェブ検索で1位を獲得するために用いる戦略の多くは、音声検索の最適化にも適用できる。
音声検索に特化してパフォーマンスを高め、SERP機能や音声スニペットで取り上げてもらうには、オンページコンテンツを構造化して抽出しやすくすることで、基本的には表示させたい強調スニペットをリバースエンジニアリングする必要がある。
ただし、SEO施策を進める際に、常に意識すべき問題がある。それは、次のことだ:
その施策は、意図した検索で実際に上位に表示されるのに役立つのか
その答は、最適化しようとしているページが何を目的としているかによる。
ページの目的が、地域の顧客により多くのピザを売ること ―― 答はイエスだ。GoogleマイビジネスからNAPデータを取得し、近くに停めた車の中でお腹を空かせている地元の人にピザ屋の電話番号を教えてくれる強調スニペットは、とてもすばらしい。あなたの目的に合致している。
ページの目的が、糖尿病管理に関するスポンサードコンテンツを提供し、血糖測定紙のアフィリエイトリンクへのクリックを促すこと ―― 答はノーだ。宿題をしている中学2年生の子に向けてSiriが2型糖尿病の定義を読み上げるページを作りたいとは思わないだろう。
コンテンツの見出しを質問で構成し、それ以降の段落で簡潔な回答を記載しておくと、ユーザーから同じような言葉で質問された場合に、Siriが所定のページのコンテンツを復唱してくれる可能性が高くなる。音声検索によるクエリに対して、デジタルアシスタントが最初に挙げる回答は通常、グーグルの「People Also Ask」(PAA:他のユーザーも行った質問)やナレッジグラフの結果といったSERP機能で表示されるのと同じ種類のスニペットだ。
つまり、「砂糖の化学的成分は?」という音声検索に対して、Siriが君のウェブサイトを返す可能性は低いが、「注意欠如・多動症(ADHD)の子どもにとって、砂糖は本当に良くないのか?」といった検索に対しては、強調スニペットで上位に表示される可能性がある。
あなたが求めているのが「検索結果ページで回答を提示する」ことではなく「ページへの訪問者を検索経由で増やす」ことならば、あなたにとって最も価値のあるコンテンツは、ひと言だけで回答するのは難しい質問に対応するようなコンテンツだ。
音声検索が成長しつつあった2016年、ランド・フィッシュキン氏は検索結果における音声スニペットの役割について予測を立て、それを中心にコンテンツを計画する方法について、このホワイトボードフライデーの記事でいくつかアドバイスした。
フィッシュキン氏によると、音声での回答によってユーザーを実際にページに送り込むことなくクエリにどれほど簡単に対応できるかによって、検索結果に表示させようとしているコンテンツが「安全」なゾーンにあるか「危険」なゾーンにあるかの判断が変わってくるという。
グーグルやアップル、アマゾンとAlexaなど、参入しているこれらのエンジンはすべて、単純なデータや回答のパブリッシャーを疎外し続けることになると思う。
つまり、こういうことだ:
あなたのコンテンツをグーグルやアマゾンが結果として提示し、わざわざユーザーがサイトに行かなくて済むようにできる ―― 危険ゾーン
あなたのコンテンツは検索結果内で完結するようなものではない ―― 安全ゾーン
フィッシュキン氏は、公開している情報の種類を自問してみるように助言している。次のような場合には、プラットフォームが自らやるようになると予測されるからだ:
- トラフィックにつながるクエリのX%をYワード未満で回答できる場合
- 「簡単な画像やグラフィック、数字」で回答できる場合
彼らは君を必要としていないし、はっきり言って、君より速い。彼らは君より速く、より直接的に回答できる。だからこそ、次のように考えてみる価値はあると思う。
現在公開しているコンテンツや今後のコンテンツ計画について、自分はこの戦略的枠組みの安全な部分と危険な部分のどちらにいるだろうか?
結論
音声対応デバイスは、消費者の日常生活に徐々に浸透してきている。
しかし、まるで音声が従来の検索エンジンの結果ページを凌駕しつつあり、SEOの役割における文章にすべて取って代わろうとしているかのように考えて、コンテンツの優先順位を付けるべきだというわけではない。
スマートアシスタントや音声対応デバイスは年を追うごとに普及が進んでいるとはいえ、現時点では、ほとんどの消費者の技術的ガジェットのエコシステムにおいて、比較的ニッチな役割を果たしているにすぎない。
音声AIがさらに洗練され、ガジェットに話しかけることがもっと普通のことに感じられるようになるにつれて、こうした状況は変わるかもしれない。しかし依然としてこの業界は、成長に伴う大きな苦しみを抱えている。
音声検索や音声操作の技術は、本当に面白い用途がこれから登場しつつあるところであり、マーケターはすでにハンズフリー体験に自社のブランドを組み込む賢い方法を見出している。音声検索に合わせてコンテンツを最適化することは、そうしたパズルの1ピースにすぎない。
音声検索は2021年にどこへ向かうのか、みんなの自由な意見や大胆な予測をコメント欄で教えてほしい!
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