広報・PR術入門/インタビュー

広報活動に他部署を巻き込むには? 伝統あるイトーキでの「着実に進める広報改革」

ビーコミ 加藤さんが今回インタビューした広報の方は、イトーキの川島さん。社内に広報活動を定着させるノウハウなどをお聞きしました。
広報経験があまりないという方のために、ビーコミ 加藤恭子さんが、活躍中の広報担当者にインタビューし、広報として役立つTipsを紹介する本連載。

他部署を巻き込むことは、広報の必須課題の1つ。広報活動を理解してもらい、目的意識を共有しながらネタ集めをする。そのための良いノウハウ、コツはあるだろうか? 今回、ビーコミの加藤さんが訪ねたのは、2019年1月に広報IR部の部長としてジョインしたイトーキの川島紗恵子さん。130年という伝統のある会社に入って数か月。すでにさまざまな部署を巻き込んで、注目を集めるプレスリリースを打つなど、広報活動を展開されている。その川島さんに、「社内に広報活動を定着させるノウハウ」を中心にお話をお聞きした。

今回、インタビューから得た主な知見は、以下の通り。それぞれの項目については、記事後半のインタビューで詳しく紹介している。撮影:永友ヒロミ

インタビュア加藤さんによる本インタビューまとめとアドバイス
広報の基礎知識アップ Tips

活動の意味を理解して動く「何のためにやっているか?」

広報活動にはクリッピングやプレスリリースのリライトなど様々な細かな業務がある。それを単に断片的に捉えてしまってはつまらない「雑用」になってしまうことも。そうではなくて何のための活動なのか(例えば、クリッピングは、自社記事がどのように取り上げられているか、ベンチマークしている他社の記事がどのように取り上げられているかを知り、自社の今までの広報活動を振り返り、来期に生かすための重要な活動)を理解して動くことで、仕事自体の意味がわかり、仕事を楽しめ、やりがいにつながってくる。やりがいにつながってくると仕事の面白さがわかり、自ずと仕事のクオリティも上がってくる。

社内で広報活動を定着させるには?
  1. 変化をゆっくり起こす
    全く広報活動のなかったところで初めての広報担当として広報活動を始めるケースも多くある。人は急激に変わることに恐れや嫌悪感を抱くことがある。そのため、何かを急に変えようとするのではなく、じわじわと変化させていく

  2. キーパーソンと会う(状況把握)
    キーパーソンと会って、今社内で起きていること、課題に思っていることなどをヒアリングする。

  3. 巻き込む、啓蒙する
    周りの人はまだ広報が何なのか、どんな役に立つのか、何に貢献するのか懐疑的なこともある。そんな場合、「よかった」「うまくいった」「頼っていいんだ」という体験をしてもらうと協力してもらいやすくなる。たとえばグループ会社がある場合、各社の広報担当を集めて外部講師を招いた勉強会を開いたり、定例で意見交換や報告をするなどして、グループ会社までを巻き込んだ活動を心がける。

PR TIMESなどのプレスリリース配信サービスをうまく使うには?

すっかり知名度を得たプレスリリース配信サービス。3万円程度でプレスリリースを配信してくれる優れもののサービスだが、今やそれ自体が情報を直接生活者に届ける「メディア(媒介)化」しつつある。画像や適切な見出しを入れることや、内容を工夫することで大きくバズりやすい。今年5月に配信された平安伸銅工業株式会社の突っ張り棒のプレスリリースが8,000いいねを獲得するなど、大きく話題になったのは記憶に新しいところ(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000019.000028043.html)。

主なプレスリリース配信サービスの種類と特徴

サービス名特徴
Digital PR Platform大手PR会社プラップジャパンが提供
News2u.net国内で最初に配信サービスを開始
PR newswire海外配信に強み
PR Times国内3万社、上場企業の3割以上が採用
Value Press!登録者数5万社
アットプレス記事化支援の仕組みが充実
ドリームニュース低価格
ビジネスワイヤ海外配信に強み
共同通信PRワイヤープレスリリースの記事化の多さが強み

載りたいメディアに取り上げてもらうには?

「ズバリ、そのメディアを想定してプレスリリースを書くこと」が大事。そのメディアに出ている記事とその記事の元になったプレスリリースを研究し、取り上げるテーマや、キーワードなどを工夫してプレスリリースを作り上げる。

社外との交流

社内で上司やチームメンバーの顔色ばかりを伺っていたら世間の流れに取り残されてしまう。そうなると全体を俯瞰する「鳥の目」を持つことが難しくなる。できるだけ社外のキーパーソンとも接点を持ち、交流する。

活動の意味を理解して動く~何のためにやっているか?~

加藤恭子氏(以下、加藤):略歴から教えていただけますか?

川島紗恵子氏(以下、川島):新卒で入社した日本信販(現三菱UFJニコス)で与信審査を担当したあと、IR室の社内公募に応募してキャリアチェンジをしました。IRが面白くなってきた頃、日本信販が三菱UFJニコスになって上場廃止になってしまったので、2008年にマーケティングリサーチ事業を展開しているインテージにいきました。

イトーキ 川島紗恵子さん
座右の銘は、お爺さまから教えられた山本五十六の「やってみせ 言って聞かせてさせてみて 誉めてやらねば人は動かず」

加藤:インテージのときに広報になられたのでしょうか?

川島:そうです。IR担当として入りましたが、IRと広報が同じ部門のときに、広報もやってみないかと誘われて兼務になりました。当時は伝統的な広報スタイルだったので、それを変えたいなと思って広報について独学しました。PR支援会社さんに話を聞いたり、セミナーを受講したり、PRプランナー試験も受けたりしました。PRプランナー試験は「自分のやっていることが一般的な広報として合っているのか」を確認するのに役立ちましたね。

加藤:「伝統的な広報」というのは、会社のブランドイメージを守ることが中心で、自分たちの発信をメディアに書いてもらうための積極的な活動はしていなかった、ということですか?

川島:そうですね。ニュースリリースの原文も、現場の人に書いてもらってテニヲハを直すだけでしたし、このままでは記者にささるリリースはできないと思いました。広報と現場の人とでは視座が違いますから。

加藤:インテージさん時代に、広報を変える活動をされていたのですね。その後インテージさんからイトーキさんに入られたわけですが、入って驚いたこととか、ありますか?

ビーコミ 加藤恭子さん(聞き手)
IT系月刊誌、オンラインメディアでの記者・編集者を経て、BtoBのIT企業でPR/マーケティングマネージャーを歴任。2006年に個人事業、2007年より株式会社ビーコミとして法人化。複数企業のPR/マーケティング支援を行うほか、各種媒体で執筆活動や企業・団体向けに講演活動もしている。PRSJ認定PRプランナー。日本マーケティング学会理事、サイバー大学客員講師(コミュニケーション論)。

川島:正直に言うと、入社前に聞いていたよりなかなか大変な状態でした。私は好奇心が旺盛なタイプなので、仕事に関しても「自分が今やっている事案は、最終的に何のためにやっているんだっけ?」というのを理解したい。だから事案の周辺領域のことも調べたりする。そうしないと自分のアウトプットに納得できないんです。これまでそうやって仕事をしてきました。でもメンバーは、断片的にしか仕事を下ろしてもらっていなかったうえに、ちゃんとした説明も受けていない。「誰々に確認してここに入れる数字を集めてリスト化して」というような、個々の仕事を達成する能力はすごく高いので、もったいないと思いました。

加藤:目的を知らされずに、上司から発注された断片的な仕事をしていたんですね。

川島:そうですね。それで、まずは私の部の直下にある広報IR室と販促PR戦略企画室の職務分掌をはっきりさせました。広報IR室はまだ収益は生まないけれど先駆的に取り組んでいる事案などを含めたコーポレートPRとBtoCの製品広報とIR。販促PR戦略企画室は、BtoBの事業にひもづく製品広報と販促。こうして分けることで、メンバーが自分は何について広報するのかを明確に理解できるようにし、1つの案件を最初から最後まで担当するような形に変えました。

それと、ニュースリリースを書く方法と配信方法を変えました。それまでは紙で印刷したものをPR支援会社さんに渡して配布してもらっていて、業界紙や専門誌には載るけれど、ウェブニュースにはなかなかならなかった。そこで効率よく画像や動画も送付できる点や費用対効果を考えてPR TIMESを使い始めました。

また、自分たちが広報したことが世の中にどういうふうに伝播しているのかを理解してもらうために、効果測定も開始しました。

社内で広報活動を定着させるには?

キーパーソンと会う(状況把握)

加藤:広報ではいろんな部署の人を巻き込んでネタを吸い上げなくてはいけないと思いますが、どのようにされたんでしょう?

川島:私の場合、幸いなことに前職のインテージがフラットな職場だったので、私が管理職になる前から社長以下キーパーソンの方々が気さくにヒアリングに応じてくれ、広報活動もわりとスムーズに進められていました。イトーキでも最初の1ヶ月は各部署や関連会社のキーパーソンに会いに行って、事業内容や現状についてヒアリングをさせてもらいました。そのときに、情報を与えてもらうだけではなくて、広報するメリットや意義、広報だからこそ言えることなどを伝えるようにしました。そのうち、「広報に相談してみようか」と徐々に連絡がくるようになってきました。ちなみに、私はヒアリングには部下を帯同させて、知識共有することを心がけていますが、そういう仕組みになっていない会社もあるかもしれません。そんなときはぜひ自分から上司に「これを○○さんに聞きたいので間に入っていただけないですか?」とお願いしてみてほしいですね。上司を巻き込むことも大事ですよ。

巻き込む、啓蒙する

加藤:インテージさんのときには、部署横断的な勉強会もされていたと聞きました。

川島:はい。グループ会社ごとに広報活動をしていたので、各グループ会社の広報担当者を集めた会を月1回開催して広報ノウハウを伝えたり、その時々のトピックスや取り組み内容を共有したり、よその企業の広報担当さんに外部講師をお願いしてレクチャーを受けたり、互いに勉強し合う場の提供を心掛けていました。

グループ会社では広報と他の業務を兼務している人が多く、最初は会になかなか参加してくれない(笑) でも、「前回学んだノウハウを使ってリリースを書いて、新聞に掲載されました」といった情報を共有することで、徐々にその会が役に立つと認識してもらえるようになりました。何かを持って帰れる場にしたんです。

加藤:そこで得られるものがあれば、参加した人も「行ってよかった、次も行こう」となりますね。

川島:グループ会社の新任の広報担当者から「リリースの書き方を教えてくれる場ってありますか?」という質問もでるようになって、「こんな外部セミナーがあるから行ってみるといいよ」と答えたりする機会も増えました。

加藤:巻き込みプランに力があって、皆さんの考えがじわじわと変わって、やる気も出てきたんですね。

川島:私が教えてあげられることには限りがあるので、今でも役立ちそうな情報が得られる場があれば「こういうのがあるよ」と教えたり、「セミナーがあるんだけど一緒に行きませんか?」と他部署の人を誘ったりしています。

加藤:新人広報の人も、自分が勉強して他部署の人に教えてなくてはいけないと思ってしまうと大変ですけれど、「自分がわかっていることは共有します、でも自分が知らないことは一緒に学びましょう」ということでよければ気が楽になりますね。

変化をゆっくり起こす

加藤:伝統のある大企業の広報部門では、伝統的なやり方からなかなか抜けられないと聞くことがあります。

川島:当社も来年130年を迎えるいわゆる「老舗企業」です。実際、待ちの姿勢でいてもなんらかの取材依頼はありますし、以前はリリースの相談がきても、収益に繋がらないネタなら広報は扱わなかったようです。

でも今は、スタートアップがどんどん出てきて、収益と直結しなくても認知度をあげるためにリリースを出していますよね。それって従来のPRのベーシックな価値観が変わってきているのでは? と思うんです。伝統に縛られずにいい意味でもう少し変わってもいいかなと。それで、少しずつですが、変えていっています。

加藤:急には変えられないですよね。

川島:積み重ねがあるほど変わることへの抵抗は大きいと思います。だから、少しずつです。変わることを楽しめる方が人生も楽しいはずだと思うので、私は「一緒にやりましょうよ」と、いろんな人を巻き込んでいます(笑)。

PR TIMESをうまく使う

加藤:PR TIMESは川島さんがイトーキに入られてから使い始めたんですか?

川島:そうですね。新本社のXORK(ゾーク)*ができたときに一定期間使っていたそうですが、今年から継続的に使っています。PR TIMESが記者とのリレーションに役立っているかというと必ずしもそうとは言い切れません。でも、それはそれでいいと思っていて、いろんなところに露出して生活者とのタッチポイントを増やす、そのためには有効だと思っているので使っています。
*2018年10月に移転した新本社オフィス「ITOKI TOKYO XORK(イトーキ・トウキョウ・ゾーク)」のこと。

加藤:クライアント先のPR TIMES上のプレスリリースのページがfacebookなどでシェアされて、それを見てメディアから問い合わせがくる、見込客から問い合わせが来るという経験をうちの会社もしたことがあります。PR TIMES自体のページビューも月間に2,000万近くあるので、PR TIMES自体がメディア(媒介)になっているように思いますね。

川島:私もそういうふうに捉えています。

イトーキの新本社オフィス「ITOKI TOKYO XORK」内の会議室にはそれぞれテーマがある。今回対談した会議室のテーマはORIGAMI(折り紙) 。左:加藤さん 右:川島さん

載りたいメディアに取り上げてもらうには?

加藤:今は積極的に画像を入れてPR TIMESを使われていらっしゃるということですが、この間拝見したゲーミングチェアのリリース、バズってましたね。

川島:BtoC製品のクロスフォーカスチェアのことですね。ここ数年は事業の方針に伴ってBtoB製品の広報に注力し、BtoC製品の広報にはタッチしていませんでした。しかし、若年層を中心にイトーキの知名度が低下していることや、BtoC製品のネット販売を強化していることから、新たに個人にもイトーキファンを増やしたいと思って広報支援を始めました。リリースタイトルに関しては、これまでは「~を発売」という定型の地味でまじめなものでしたが、BtoC製品なのでギリギリまで遊べるものを考えています。

加藤:プレスリリースのタイトルも、消費者にみてもらうと思うとユニークになりますけれど、メディア向けとなると「~を発売」という定型に落とし込みたくなりますよね。御社のプレスリリースの役割も変わってきているんですね。

川島:そうですね。PR TIMESがメディアであれば、リリースのタイトルがそのまま使われることもあると想定しています。

加藤:タイトル案は、A/Bテストのようなことをやられていますか?

川島:2案考えて、自分でA/Bテストみたいなことをやっています。作成にあたっては異業種も含めて近しい製品サービスのリリースがどんな表現で書かれているかチェックします。それと、たとえば「ねとらぼ」さんに取り上げてもらいたければ、「ねとらぼ」さんでニュース化されたリリースはどういうものだろうとかもみます。同業か否かにこだわらず、世の中でバズッているリリースを研究するようにしていますね。

加藤:出たいメディアは「ねとらぼ」と決めて、そこに取り上げられている内容はどこからきているのか、どういうタイトルにしているのかとかを調べる。掲載されるために逆算しているんですね。他社のプレスリリースからいろんなことを感じ取ったことを、自社のリリースにも活かしている。

川島:「エヴァンゲリオン チェア」のリリースのときも、エヴァの名言集をたくさん読みました(笑)。何か使えるコトバないかなあと調べて、「発売準備完了!」というワードをリリースに入れました。

イトーキのエヴァンゲリオン チェアのニュースリリース画面。エヴァンゲリオンの「発進準備完了!」というセリフを思い出すコトバを使っている(リリースを参照する

加藤:1つのプレスリリースを機械的に作るのではなく、すごく考えて作りこんでいるっていうことですか?

川島:タイトルは特に気をつけます。あと、今年出しているBtoC製品は在宅ワークをキーワードとしたラインアップなので、なぜこの形なのか、どんなコンセプトで作っているのか、そういった背景説明をしっかり入れるようにしました。その方が、メディアでも取り上げられやすいと思います。

社外との交流

加藤:ところで川島さんは外部に広報仲間がたくさんいらっしゃいますが、そういう仲間はどのように作られてきましたか?

川島:いろいろな勉強会に参加して、キーパーソン的な人に、どんな活動をしているのか聞いたり、相談したりしているうちに仲間が増えてきました。

加藤:積極的に動いているハブになっている方と交流をはかることは大切ですね。

川島:外に出て、自分と違う業界の人や異なる世代とつながる方が勉強にもなるし、糧になりますね。

広報初心者へのアドバイス

加藤:最後に、広報初心者へのアドバイスをいただけますか?

川島:広報に限った話ではないのですが、仕事の本質的な意味を理解できていなかったら的外れなことをしてしまうのは当たり前だと思うんです。なんのためにこの仕事をするのかを理解して取り組んで、成功体験を得られれば、もっとやってみたいとか、次はこうしてみようという欲が出てくると思います。

私のマネジメントスタイルは、最初は伴走して、自走できるタイミングで離すこと。自走できるようになったら、どんどんまかせて自分で考えて仕事ができるようにしています。自立して自分で考えて働けるようになると、仕事が楽しくなるはずです。

加藤:初心者広報の方も、上司に仕事をふられたら、ふられた仕事が「全体のなかでどういう意味をもつのか」を聞いた方がいいですね。全体がわかると仕事がおもしろくなりますよね。

――― 本日は、ジョインされて数か月というお忙しいなか、お話をお聞かせいただき、ありがとうございました!

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