広報・PR術入門/インタビュー

時代に合わせ進化する! 成長し続けるバンダイナムコの広報姿勢

事業会社の広報体制を再構築し、常に新しい広報のやり方を探り続ける小野薫さんに話を聞く。
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広報経験があまりないという方のために、ビーコミ 加藤恭子さんが、活躍中の広報担当者にインタビューし、広報として役立つTipsを紹介する本連載。

広報/PR入門の第15回は、「太鼓の達人」や「機動戦士ガンダム 戦場の絆Ⅱ」などの大人気商品やアミューズメント施設を企画運営しているバンダイナムコアミューズメントの小野薫さんにお話を伺った。小野さんは、1992年からナムコの広報パーソンとして、コーポレートコミュニケーションに携わる中で、広報体制を再構築し、現在も新しい広報の在り方を探り続けている。

バンダイナムコホールディングス、バンダイナムコアミューズメントを兼務されている小野薫さん(右)と本連載のモデレーターであるビーコミの加藤恭子さん(左)
加藤さん

加藤さんTips
兼務、異動、現場の体験などから学ぶ

転職でも、1つの会社の中でもさまざまな部署を体験することで学べることがある。ものの見方が広がる。広報は特に広い視野をもって取り組む仕事なので、他部署の業務を理解することでパワーアップできる。

バラバラな発信は連携させるとより大きな力をもつ
部門ごと、製品ごと、サービスごとにバラバラに情報発信をすると、タイミングが悪かったりして効果が出にくい。発信の効果を最大化できるよう広報が旗振り役になって調整する。「管理される?」と思われると抵抗があるかもしれないが、それにより効果が最大限になったことを見せながら進めていく。

さまざまなツールを使って業務を効率化する
海外製、日本製ともに業務を効率化/仕組み化するツールが多数出てきている。コロナ禍で出社できないこともある中、業務を止めず、円滑に回すことがますます大事になる。ツール、クラウドサービスを使って効率化できる場合はその仕組みを積極的に取り入れ、活用していく。これ、使えないかな? 転用できないかな?と考えてみる。PR TIMESのようなプレスリリース配信サービス、記事クリッピングサービスだけでなく、さまざまなツールがある。ツールをうまく使えばメディアからの問い合わせも効率よく漏れなく複数担当者でも対応できるようになる。

プレスリリースだけじゃない。レベル感に応じて発信手段を使い分ける
企業の情報発信は何もプレスリリースだけではない。発信内容の重みに合わせてツールや発信先を工夫することでより情報が届きやすくなる。言い換えると重要度の低い情報、相手にあまり関係のない情報を毎回プレスリリースとして乱発してしまうと「あの会社のプレスリリースは大した内容じゃない」と記者に思われ、プレスリリースに目を通してもらえなくなるなど逆効果につながることもある。情報の重み付けが重要となる。

情報を相手が受け入れやすい形にするパッケージ力を磨く
情報は相手が受け入れやすい形式になっていないと読まれない。まずは会社の公式ではなく、自分の趣味の内容などでSNS投稿を行うと、何をどう選択して投稿するか吟味する力を養う訓練になる。Twitterやインスタグラムなどで限られたスペースに情報をまとめて出すことを繰り返すとスキルが高まっていき、そのスキルは業務でも生きてくる。

仕事ができるようになっても、最先端の学びを怠らない
基本を押さえれば、状況が変わっても応用が利くことが多い。だがその中でも書籍やセミナーなどによる最先端の業務知識やトレンドのアップデートを行っていくことが大事。PRの書籍に関しても新しく出たものも押さえておく。本質は変わらなくても変化していることも多い。業界団体(日本パブリックリレーションズ協会。略称PR協会など)、個人がやっている勉強会などにも良質のものがある。

*インタビュワー:加藤恭子さん インタビュイー:小野薫さん

はじめての広報活動はナムコ・ワンダーエッグのPR

―― 小野さんのご経歴から教えていただけますか?

新卒で入社したのは印刷会社で、企業・自治体などのPR誌のクライアントコーディネートを担当しました。そこで写真の扱いや文字校正といった編集業務を学び、その後、1992年にナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)に転職。開発部門に行く話もあったのですが、ちょうど二子玉川にナムコ・ワンダーエッグという都市型テーマパークを開業する時で、PRの人間が足りず、社長室の広報部門に行くことになりました。そして、そのまま企業広報として企業ブランド戦略業務に就いたんです。

最初は、現場で学びながら対応する状態でした。なかでも印象に残っているのはテレビ対応です。ちょうど小型の中継車が出始めたころで、内覧会には民放5社の中継車がきてくれました。ただし、どこが使われるのかはオンエアされるまでわからないんです。意図しないトーンや、伝えたい箇所じゃないところが取り上げられるケースもあることを学び、部内では「どういう打ち出し方をすればよいのか」を話し合ったりしていました。いろいろ反省点はありましたが、ワンダーエッグのPRは成功して、「広報もがんばったね」という会社からの評価をいただくことができました!

広報体制を強化し、広告換算費0.8億→58億に

―― そして、そのまま企業ブランド戦略の仕事に就かれたんですね。

そうです。90年代はゲーム市場が大きく変わる時代でした。83年にファミリーコンピュータ、94年にプレイステーションやセガサターンなどの次世代家庭用ゲーム機が出ています。家庭用ゲーム機だけじゃなく、ゲームセンターも変わり、ともに成長していった時期でした。その局面で会社も進化し、広報に求められることも変わっていき、私自身は企業協賛や企業ブランディングの仕事を多く行いました。

当時は創業経営者が健在で、カリスマ的な経営者のメッセージを視覚的にどうパッケージしてブランディングしていくか、創業経営者の分身みたいな位置づけのパックマンキャラクターのリニューアルはどうするかといったことを、社内外を巻き込みながら、創業経営者ともいろいろやりとりして進めていました。

―― 社員を巻き込みつつ経営者とやりとりして、会社のメッセージを伝えていらしたんですね。現在はどのようなお仕事をされているのでしょう?

ぼくは、バンダイナムコホールディングス(以下ホールディングス)という持株会社とバンダイナムコアミューズメント(以下アミューズメント)という事業会社を兼務しています。ホールディングスでは、コーポレートコミュニケーション室に所属して、グループ全体のブランド戦略策定とCSRマネジメントに携わっています。

アミューズメントは「太鼓の達人」や「機動戦士ガンダム 戦場の絆Ⅱ」などのアミューズメント機器の開発生産販売と、全国に展開する「namco」などのゲームセンターや「ナンジャタウン」「ガシャポンのデパート」などのアミューズメント施設の企画運営を行っている会社で、ぼくは企業広報を担当しています。「浅草花やしき」も弊社のグループ会社が運営しているんですよ。

バンダイナムコグループの小野薫さん(熊本県の大型商業施設「サクラマチクマモト」にオープンした「あそびパークPLUS」に於いて)。現在はバンダイナムコグループの事業会社と持株会社を兼務し、事業会社の危機管理を含む企業広報全般のほか、ブランドマネジメント、サステナビリティ政策などコーポレートコミュニケーション業務全般に携わっている

―― 広報部門の体制を教えていただけますか?

バンダイナムコアミューズメントでは、経営企画部が担当する「企業広報」と事業部門が担当する「販促PR」の2軸で展開していて、扱う案件で分けています。新製品や新施設など投資をしたアウトプットと、人や組織などに関することは企業広報が担当する、その他、キャンペーンや期間限定イベントなどは各事業の販促PRが担当するという具合です。

ただ、メディアリレーションのしくみやPRイベントは連携してやろうということになっています。隔月で連携会を開いて、広報成果を含め、各部門の販促活動を共有するようにしています。

―― 広報部門が分かれていると、お互いのやっている活動が見えないことが多いとよく聞きます。広報の体制をしっかり整えていらっしゃるんですね。

実はアミューズメントの広報部門は、一時期無くなったことがあったんです。マーケティング部門の中に吸収され、その後元には戻ったのですが、広報機能が脆弱だとの理由で新しいテーマパークの開業リリースは自社ではなくホールディングスから出すことになったんです。その時ぼくは広報担当ではありませんでしたが、忸怩たるものがありました。そして「体制を作らなきゃいけない」と、広報をまかせていただきました。まずはバラバラにやっている動きを束ねようと、メディアリレーション、販促リリースをぼくたちの広報がハンドリングすることにしました。

具体的に改革したことはいろいろありますが、たとえばリリースを出すタイミングを共有しました。それまでは、異なる事業部で同じ時間帯にリリースを打つこともありましたから、タイミングを調整するだけで成果が出てきたんです。成果が出てくると、各事業部も「広報をからめた方が得だよね」ということになって、露出も増えていき、当初の広告換算費0.8億が58億までになり、コーポレートコミュニケーション部署の人員も2名から7名になりました。

―― 2016年から3年間は、お客様相談業務と秘書業務の責任者も兼務されたとお聞きしました。広報業務への良いフィードバックもあったのではないでしょうか?

そうですね、特に業務フローの改善につながりました。お客様相談窓口いわゆるコールセンターでは、お客様から承ったご相談に迅速にお応えする仕組みをセールスフォースで構築していました。この仕組みを広報でも使えるのではないかと、お客様相談のフォームを改修して専用の取材対応システムを作りました。それまで広報では、問い合わせをメールとOutlookのタスク機能で管理し、共有はCCで行っていましたが、現在は必要なときにセールスフォースをみれば各案件の進捗や取材依頼の傾向が把握できて助かっています。コロナ禍でリモートワークへの移行が必須になったときにも、問題なく広報業務を行うことができました。

―― なるほど。他部署を体験することで便利なツールに気づかれ、取材依頼の進捗管理をデジタル化されたのですね! 広報業務の効率化にはデジタルツールの活用が便利ですよね。

複数企業のPR/マーケティング支援を行うほか、サイバー大学客員講師(コミュニケーション論)として若き広報パーソンの育成もしているビーコミ 代表取締役の加藤恭子さん(本連載モデレーター)

リツイート以上リリース未満を「インフォメーション」として発信

―― 広報業務は、メディアから入ってくる問い合わせ受けて適切に対応するのがメインでしょうか? メディアに取材を働きかけることもありますか?

案件によりますね。大型施設をオープンするときには、メディア向けの内覧会を開催しますし、段階に分けてプレスリリースを打つというように、「どのタイミングでどういうプロモーションをかけるのか」という設計をしています。バラエティ番組で施設を使わせてほしいといった撮影協力、ニュースで取り上げたいという取材、ゲームタイトルを番組内で紹介するので使用許可がほしいといった問い合わせは日常的に入ってきますので、その対応もしています。

リリースは、経営企画部による「広報リリース」、事業部による「販促リリース」、ツイート以上リリース未満の発信を担う「インフォメーション」の3種類があります。広報リリースは記者クラブにも必ず配布しますし、インフォメーションはPR TIMESを利用しています。

―― すごくいいなと思ったのがツイート以上リリース未満というところで、初心者広報の方の中には、小さな内容でもどんどん記者にプレスリリースを送ってしまい、「この会社のプレスリリースは余り内容がないな」と思われ、記者にあまり対応してもらえなくなってしまったケースもあるようです。これだったら記者クラブに配ろう、これはPR TIMESだけにしよう、という重み付けをされているんですね。

ぼくは記者クラブに配ってなんぼというカルチャーで育ってきたので、A4の中にどうリリースをおさめるか、というところを重視してきました。でも今はリリースをスマホでスクロールして読んだりしているので、リリースの書き方じたいが変わってきていると思います。PR TIMESでは、ヒートマップでリリースのどの部分が読まれているかがわかるんですよね。それを見ていると、A4で表現しているリリースとは世界が違うなと思います。

でも、記者クラブにまくものはA4に整えなくてはいけない。そのギャップをどう埋めたらよいのかが悩みどころとしてあります。リリース未満の内容でも、ある特定のメディアに伝えたいものがあるならチャレンジしてみようと、「インフォメーション」というジャンルを作りました。たとえば、タイミングを逸したけれど切り口を変えて出したい情報は、インフォメーションで行っています。

会社のありようを情報化してコミュニケーションにのせていく

―― 広報メンバーの中には初めて広報をされる方もいらっしゃったと思いますが、どんなアドバイスをされていますか?

ぼくはOJT(On the Job Training)で学んできたので、現場で学ぶことが尊いと考えています。業務の中で気づきとか問題意識をなるべく投げかけるようにして、体系的にここのスキルが足りないと思うところはセミナーをしています。

いつもメンバーに言っているのは、取材を受けるときや、リリースを書く際には「自分がイメージした人(コミュニケーションターゲット)にどう届いたかを常に考えましょう」ということです。「対話相手」と「コミュニケーションの到達点」をイメージして仕事を進めることで、仕事の精度が高まり、自身のキャリアの密度も高まると思うからです。

また、「広報は会社という生き物、ありようを情報化してコミュニケーションにのせていく仕事で、そのことで会社を成長させていく仕事」だと話しています。情報化で重要なのは、事象やありようをテキストや映像にする際の着眼点や編集力です。つまりキュレーションですよね。

特にTwitterはキュレーションメディアで、自社のことに限らず世の中の面白いと思うことを「中の人」がつぶやくことで、コミュニケーションが生まれて、その人なりのキャラクター、アイデンティティが生まれます。そして、その「中の人」が自社のことや商品・サービスについて語る様が、信頼関係を築いていく。こうしてコミュニケーションの価値が高まっていくと思うんです。まさに、「中の人」には、着眼点、情報を集める力、編集力というキュレーション力がスキルとして求められていると思います。それを意識して仕事をすれば、キャリアとして密度が高いものになるんじゃないでしょうか。

情報をコンテンツに加工してSNSで発信することを日常的にやっていれば、着観点が広がりますし、写真の撮り方や使い方もうまくなる。限られた文字数で効果的な文章を構成する力もつきます。若い人に文章がうまい人が多いのは、SNSの普及に起因しているのではないかと思いますね。

世の中の変化とともに、継続的に学び続けよう

―― 小野さんは、現在もPR協会のセミナーに出られたり、本を読まれたり、継続的に情報収集やご自身のスキルアップをされている印象があります。

世の中の変化に合わせた継続的な情報収集は、欠かせないと思っています。たとえば、アミューズメント事業ではゲームセンター以外にさまざまな遊びの場を開発してきました。そこで、カプセル玩具(ガシャポン)の専門店をやってみるというような、新しい業態のビジネスも起こしています。そうなると、ゲーム業界の特定メディアの方以外にも、より広い生活者の方々との関係を構築できるメディアとコミュニケーションをとる必要が出てきます。ですから、新しい情報の収集は必須なんです。

「ガシャポンのデパート」のオープン時には、各種メディアによる取材が入った

我々の会社は65年以上店舗ビジネスをやっているので広報活動も定型になりがちですが、アップデートは必要ですから、新しいやり方にも興味をもっています。特に最近は、スタートアップの一人広報の方の動きが気になりますね。 

―― そこに気づかれるのは重要なことだと思いました。たとえば、大企業の広報の方だと、一人広報の方とはやり方が違いますと言う方もいらっしゃいますが、小野さんは「違うやり方で自分たちができることはないかな」と広い視野で見られているんですね。一人広報の方とはどうやって接点を作られているんですか?

FacebookのグループやClubhouse(クラブハウス)を通してですね。そこでいろいろな方の話を聞く機会があり、ものすごく勉強になりました。一方で、ぼくも一人広報に近いところを経験しているので、一人広報の方ならではの悩みに共感してお話できることもあるんじゃないかとも思っています。

―― 最後に、初心者広報さんにおススメの本をご紹介いただけますか?

『ナラティブカンパニー 企業を変革する「物語」の力』(本田哲也著/東洋経済新報社刊)ですね。方法論よりも、ブランド論とか会社と人の在り方といったことを捉える本としておススメです。

―― 本日は、ありがとうございました。

※なお本インタビューは、オンラインで行っています。

小野薫 1988年共同印刷株式会社に入社、企業・自治体などのPR誌クライアントコーディネート業務を担当。その後、株式会社ナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント) 社長室にて企業広報、企業ブランド戦略業務に従事後、バンダイナムコホールディングスにて経営統合における企業理念、グループブランド戦略の策定を担当。現在はバンダイナムコグループの事業会社と持株会社を兼務し、事業会社の危機管理を含む企業広報全般のほか、ブランドマネジメント、サステナビリティ政策などコーポレートコミュニケーション業務全般に携わる。PRSJ認定PRプランナー、消費生活アドバイザー。

加藤恭子 IT系月刊誌、オンラインメディアでの記者・編集者を経て、BtoBのIT企業でPR/マーケティングマネージャーを歴任。2006年に個人事業としてビーコミュニケーションをスタート。2007年より株式会社ビーコミとして法人化。複数企業のPR/マーケティング支援を行うほか、各種媒体で執筆活動や企業・団体向けに講演活動もしている。PRSJ認定PRプランナー。日本マーケティング学会理事、サイバー大学客員講師(コミュニケーション論)。

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