高成果で人気急増中のデータフィード広告、運用で工夫すべきことは?
効果がバツグンといわれるフィード広告だが、メディックスの齋藤氏は、気づきにくい落とし穴があるという。
数多くのフィード案件を見続けてきた視点で、高成果を上げるための手法を「Web担当者Forum ミーティング2017秋」で、「うんざりするほどフィード案件を見続けて分かった『フィード広告』の『落とし穴』」と題し、現場担当者ならではの視点で解説した。
効果バツグンのフィード広告、ならば運用に手間をかける必要はない?
メディックスは1984年に広告制作プロダクションとして創業。その後、1998年頃にインターネット広告専門の広告代理店へと業態転換し、現在に至る。
齋藤氏自身は運用型広告のディレクターを長年務めた後、2006年にメディックス入社。ここ3年ほどは、フィード広告(データフィード広告)関連の業務をほぼ専門的に手がけている。
齋藤氏は「毎日のようにフィードや媒体の管理画面とにらめっこしている。この3年で関わったフィード広告案件は100社以上
」と自己紹介し、その業務から得られた知見を講演で明らかにしていった。
講演のテーマでもある「フィード広告」とは、自社サイトの商品データなどをもとに、外部サイトで広告を表示する仕組みのこと。一般的な静止バナーとは異なるため、ユーザー1人1人に応じて表示する商品を変えられ、だれにでも同じくクリエイティブを表示する既存のバナー広告と比べて効果が高いのが特徴。
データフィード広告の代表的なものとしては、次のようなサービスがある。
- Googleショッピング広告
- Criteo
- Facebookダイナミック広告(DPA)
齋藤氏によれば、「フィード広告は効果が大きく、広告市場における存在感も近年特に高まっている
」という。しかし、それゆえに
すでに効果が高いのだから、日々の運用で改善できることは少ないのでは?
媒体側の学習機能が優れているのだから、むしろ何もしないほうがいいのでは?
という間違った認識が広まっていると齋藤氏は指摘する。
フィード広告運用3つのポイント
しかし齋藤氏は、フィード広告においても運用による改善の余地は十分にあると語る。そのポイントとして挙げたのが次の3つである。具体例を見ていこう。
- クリエイティブ
- キーワード
- グルーピング
1. クリエイティブの改善方法
フィード広告は、広告主が提供する商品データをもとに、最終的な広告の見栄えが決まってくる。
たとえば不動産の広告の場合、数十文字にわたるキャッチコピーがマスターデータに登録されていても、フォーマットの制限で広告では表示しきれない場合が多く、「新築一戸建て見晴ら……」というように途中でカットされ、キャッチコピーの一部が省略されるケースもある。
ならば「○○駅徒歩5分」のように、ユーザーが求めている情報を短く表現した専用のクリエイティブを用意するのも1つの手だ。
また、求人サイトのフィード広告ならば、どのような求人情報かが一目で想起できるようなタイトルを付けるようにすると良い。
2. キーワードの改善方法
Googleショッピング広告は、ユーザーがGoogleで検索したキーワードに反応して表示される検索連動型広告であるが、通常の検索連動型広告とは異なり反応するキーワードを登録することはしない。フィードのデータ内に含まれた文言と関連性が高いと判断された場合に広告が表示されるのである。そのため、たとえば米のECサイトが「米」のキーワードに連動する広告を出すとして、そのタイトルを「おいしい新潟産コシヒカリ」とするのは、実は悪い例だと齋藤氏は指摘する。
なぜなら検索キーワードである「米」が含まれていないからだ。ユーザーが探している言葉・文言をフィードのデータにうまく含めることで、広告の表示回数の増加が期待できるという。今回の例では「おいしいお米 新潟産コシヒカリ」とするのが正解だ。
3. グルーピングの改善方法
同じくGoogleショッピング広告の例だが、紳士物のシャツを販売するとして、その商品には
- メンズ
- トップス
- カットソー
のように階層別に複数のグループ分けをしておく。こうすることで、入札調整がしやすくなる。
広告レポートで見るべきポイント
これらの例を挙げ、齋藤氏は次のようにコメントした。
フィード広告で運用ができないかというとそんなことはない。ただし、広告主がフィードを自社で日常的にメンテナンスするには限界もあるため、メディックスが提供しているフィード広告のマネジメントサービス(M-Feed)なども活用してほしい
また、広告のレポート検証でも工夫すべき点はある。
フィード広告は一般的に、商品のカテゴリーごとにレポートが集計される。アパレル分野のECサイトであれば「トップス」「シューズ」といった具合にレポートが分かれており、CPA(Cost Per Action)やROAS(Return On Advertising Spend)の善し悪しもそのカテゴリー別に判断する。
そのため一般的には「シューズのCPAが良かったので広告の入札を30円から倍の60円に上げてみよう」といったPDCAサイクルがとられる。
しかし齋藤氏は、単にカテゴリーだけで判断することなく、より細かな商品単品の分析にも目を向けるべきだといい、次のように説明する。
求人サイトならば、ゲーム業界の人気が高いので入札を上げようという発想にもなるだろう
ただ、ゲーム業界の中でも人気の企業とそれほどではない企業に分かれている
(データ分析を元に)人気企業の入札を上げ、それ以外の企業の入札を下げたら、効果が非常に改善した例もある
ダイナミックリターゲティング広告で新規ユーザーを獲得できるのか?
フィード広告の1種である「ダイナミックリターゲティング広告」は、ユーザーのサイト閲覧履歴をもとに、おすすめ商品を具体的に提示する広告だ。しかし逆の観点からは「サイト訪問履歴のないユーザーに対して表示すべき広告がない」ともいえる。つまり、既存ユーザーを誘引する効果はあっても、有望な新規ユーザーを増やしたいといった場合には不向きとも考えられる。
ただし齋藤氏は、既存ユーザーに対して広告配信するリターゲティングだけではなく、新規ユーザーの獲得を目的とした場合であってもフィードを利用したダイナミックディスプレイ広告は効果を上げられるはずだと説明する。
そのことを証明する1つの例として齋藤氏は、「フィード広告“風”のバナー広告の効果が高かったこと」を例示した。実際には単なる静止バナーなのだが、1つの広告枠内に複数の商品を表示するなどして、フィード広告のような見た目に仕上げたもので、A/Bテストでも非常に良い結果が出た。
メディックスではこの結果を、「1つの広告枠内に複数の商品を表示し、ユーザーが選べるようになっている」こと自体が、従来の広告とは一線を画すものと認識された可能性が高いと分析している。
よって、必ずしもユーザー別だけでレコメンドすることなく、「売れ筋」「新商品」などユーザーの目を引く商品に限定したフィードで配信したり、あるいは地域別配信機能を利用して地元の不動産広告を出すといった方法をとることで、ダイナミックリターゲティング広告による新規ユーザー獲得は十分可能だろうと齋藤氏は指摘する。
フィード広告はその効果の高さから利用が増えている一方、技術的にはまだまだ進化の余地がありそうだ。齋藤氏は次のように呼び掛けた。
ぜひ成績のいい今のうちからさまざまな施策にトライしてノウハウをため、数年後のさらなる改善を目指してみては
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