事例

「ROAS改善→売上減少」失敗事例に学ぶ、ネット広告の正しいアトリビューション分析

コンバージョンに至る各段階のアトリビューション(成果貢献)を正しく分析できず失敗した事例から、「ネット広告の正しい改善の仕方」を考えます

広告費は抑えて、売上は最大化したい!

と広告主であれば、誰もが思い、「広告の費用対効果(ROAS)を改善」するための施策を行っているでしょう。しかし広告の現場では、次のようなことが実際に起きています。

デジタル広告の出稿先や予算を調整したところ、獲得単価(CPA)が良くなったのだが、それは一時的だった。

時間とともにサイト全体の来訪ボリュームが減っていき、最終的には全体の売上がダウンしてしまった!

この記事では、こうした失敗事例をもとに、デジタル広告の改善プロジェクトで注意すべき「アトリビューション(広告の成果貢献)」判断で大切なポイントを解説します。

なお、広告主であるお客様もアトリビューションの重要性は認識していたものの、当時は費用対効果改善への意識が非常に強く、「思い切って検証してみたい」ということで実施に踏み切った事例がもとになっています。

本記事はイー・エージェンシーのブログに掲載されたアドテック東京でのセッションレポートを、許諾を得て再編集し掲載しているものです。

オリジナル記事:アトリビューション分析に欠かせない2つの視点とは? ~ アドテック東京2017でAZ様と”ここまで話して大丈夫?”なトークセッション(株式会社イー・エージェンシー)

本レポートは、10月17日~18日に東京国際フォーラムで開催された「アドテック東京2017」のイー・エージェンシー出展ブースで行われた、イー・エージェンシー井上陽介氏とAZ藤堂ちどり氏のトークセッションをもとにしたものです。

事例ステップ1
CPAとROASは改善したが、売上はダウン
~ アトリビューションを考慮しなかった場合

事例全体は2段階あります。

最初は、もともとお客様が感じていた「CPAが悪い媒体があるのでは?」「CV(コンバージョン)が重複しているのでは?」という疑問からサイトを分析し、施策を検討しました。

この段階ではお客様の強い要望により、広告の「最終コンバージョン(ラストタッチ)への関与の度合い」と「CPA」をもとにして媒体を再評価しました。その結果から、評価の低い媒体への広告を停止・抑制し、CVの確度の高い媒体に集中して広告を出稿していきたいというお客様の判断から、広告出稿を配分し直していきました。

その結果、1か月後は売上・CV数とも維持したまま、CPAは抑制されて、ROASも向上します。「大成功か」とお客様が思ったのも束の間、1か月半後にはセッションが減少し始め、それにあわせて売上もダウンしてしまったのです。

※CV(コンバージョン): サイトが目的とする行動を顧客が行うこと(ECでは購買完了など)

※CPA(顧客獲得単価): ここではコンバージョン1件を獲得するのに何円の広告費が必要だったかの指標(低いほうがいい)

※ROAS(広告費用対効果): 投下した広告費がどれだけのビジネス価値を生んだかの指標(高いほうがいい)

※セッション: ここではECサイトへの訪問数を表す(原則として高いほうがいい)

<1ヶ月後> CPAが抑制され、ROASも向上! 大成功!?
→ <1.5ヶ月後> セッションが減少し、売上もダウン!

調べてみると、次のような状況になっていました。

  • 自然検索からの訪問で売れていると考えていた重要商品の売上がダウンし、重要商品を含むカテゴリ全体の売上もダウン。

  • 自然検索、とくにCVの多かったYahoo!からの流入が日に日に減少。

  • 自社リスト(メルマガ会員)の売上が、配信数を増やしたにもかかわらずダウンし、客単価もダウン。

※自然検索: グーグルなどの検索エンジンで、検索連動型広告ではない通常の検索結果

さらに調べてみると、次のような状況も見られました。

  • 戦略外商品(トップページにバナーを置かない商品)の売上がダウン。

  • サイト内検索の検索回数が減少。

獲得単価を下げようと「購買につながる確度が高い広告出稿」に絞ったら、広告から直接ECサイトに来て購買するわけではない顧客が減り、結果として、ECサイトで最も重要な「売上」が全体として減ってしまった ―― まさに大惨事と言ってもよい状況に陥ってしまいました。

事例ステップ2
CPAを悪化させずに売上をアップ
~ アトリビューションを考慮して広告予算を配分しなおし

こんな悪夢のような状況を改善するために、あらためて施策を見直しました。

KPIの見直し ~ アトリビューションを考慮する前に

そこで、そもそも何が間違っていたのか、次の3視点でKPIの見直しをしました。

  1. 指標の変化を比較(ビフォー&アフター)
    広告を抑制した時期を基点に、どこがいちばんインパクトを受けたのか?

  2. 本当のKPI
    売上予算(目標)に対して、各指標でどのくらいの数字が必要か?

  3. 耐えられるKPI
    リカバリーするために、どのくらいの数字まで許容できるか?

※KPI: ビジネスゴールに結びつく先行指標。この数値の状況によって、最終的なゴール(売上など)がその後どうなるかを判断できる(たとえばサイト訪問数など)

こうして、改善しやすいところや改善しにくいところなどを見極めた結果、そもそもファネルの大きさがシュリンク(縮小)しているという結論に至りました。

  • ※ファネル: 「知る→調べる→検討する→購買する」などの顧客の購買行動全体(のボリューム)

左:株式会社イー・エージェンシー アカウント戦略本部 アカウントプランニング2部 部長 井上 陽介 氏 右:株式会社AZ マネージングディレクター 藤堂 ちどり 氏

スケールとパフォーマンス ~ アトリビューション分析に欠かせない2つの視点

事業にはスケール(量・規模)とパフォーマンス(質・効率)のバランスが大切です。つまり、売上を上げるには、一定の広告費はかかるわけです。

今回のように、広告費を下げることが目的になってしまうと、そもそも売上を維持できるだけの露出量やセッション数が減少し先細りして、立ちゆかなくなってしまいます。

今回、下がってしまった売上を回復させるために、次のような視点で広告費の配分方法(アロケーション)を練り直しました。

  • スケール
    アトリビューション的発想を取り入れて、媒体単位ではなく施策単位で役割や連携、バランス、タイミングを考えて流入を増やす

  • パフォーマンス
    ファネルの段階ごとのモチベーションに沿ったコミュニケーションプランを策定し、ファネルのスケールを活かせるようにCVRや休眠率など改善しにくい指標にもテコ入れする。

技術的にも計測の一元化やパラメータの整理、レポート頼みではなくダッシュボード構築による見える化・わかる化を推進しました。

※CVR: コンバージョン率。ここでは、ECサイトを訪問した人のうち、どれぐらいが購買完了したかの率(高いほうがいい)

※休眠率: 過去にサイトやサービスを利用していたが、現在はそうした行動を行っていない顧客の率(原則として低いほうがいい)

施策としては、広告費をどのように使うかの配分変更(リアロケーション)をやり直し、改善していきました。

まずは売上をもとに戻すためのリアロケーションを行いました。具体的には、コンバージョンへの貢献度として「潜在顧客にECサイトを知ってもらい、まず興味をもってもらう最初の段階の接触」として効果が高かった広告出稿を復活させました。

この対応により、購買に至る流れに乗る顧客を増やすことができ、売上は回復しました。しかし、全体としての広告費が増えたため、ROASは悪化してしまいました。

そこで、ROASを改善するためのリアロケーションを行いました。具体的には、最初の接触からコンバージョンの背中を押す最後の接触までの各段階で、想定したKPIに合った成果になるように広告費の配分を調整していったのです。

こうして、ようやく売上とROASを元の状態に回復させることができました。

2回のリアロケーションを経て、ようやく元の状態に回復

「広告を見直して費用対効果を改善したい」 ~ そんなとき役に立つのが「アトリビューション分析」という考え方

今回紹介した事例は「広告を見直して費用対効果を改善したい」というお客様の要望から実施したことでした。

事例紹介の冒頭でも記載したように、そもそもお客様は「CPAが悪い媒体があるのでは?」「CVが重複しているのでは?」という疑問を持っていました。

その疑問をもとに施策を検討したのですが、最初のステップでうまくいきませんでした。その背景には、次のようなことがありました。

  • CPAが悪い媒体があるのでは?」という疑問への対処

    確かに、ターゲットに合ってない施策や改善の余地がある施策は、見られました。

    とは言うものの、それぞれの施策の目的に見合った結果を媒体ごとに集計しても、その数字だけで媒体を評価できるわけではありません。媒体単位ではなく施策単位で考える必要があるのです。

  • CVが重複しているのでは?」という疑問への対処

    顧客がコンバージョンまで自社の広告に何回接触しているかを確認したところ、直近90日で発生したCVのうち約70%で複数回の接触が起こっていました。

    この点に問題があるのではないかと考えたのですが、実際にはこうしたCVの重複が起きるのは当然のことでした。

    なぜなら、ラストタッチより前に広告接触が複数回あったうえで顧客がコンバージョンした場合、広告システムの管理画面では、それぞれの広告出稿でCVがカウントされるものだからです。リターゲティング広告が一般化した今ではなおさらです。

    ※ラストタッチ: 顧客がコンバージョンしたサイト訪問がどのような経路だったか

    実際、このECサイトで顧客がたどった経路の上位100パターンほどの傾向を見ましたが、施策の組み合わせから考えても妥当な重複状況でした。

    参考までに、弊社が担当することが多いECや不動産で考えると、ECでは65~66%、不動産では68~70%くらいが重複しています。重複する事情はそれぞれ異なりますが、

    • ECサイトではリターゲティング広告(ダイナミック含む)を活用している
    • 不動産サイトではブランドパネルなどの純広やティザーを配信している

    といった理由から広告の接触回数が増える傾向が強く、重複は当然のように起こるものなのです。

    CVの重複自体が問題なのではありません。レポートされているCVの重複が、施策の組み合わせに対して適切な程度かを考える必要があるのです。

つまり、今回のそもそもの発端となった2つの大きな疑問に対して、アトリビューション分析という視点を取り入れて十分考慮し、対処することができなかったために、最初のステップでは広告費の抑制が売上ダウンにつながってしまったのです。

左:井上 陽介 氏 右:藤堂 ちどり 氏

まとめ・今後の展望 ~ アトリビューション分析で最適なコミュニケーションを

本来の事業の目的を果たすために、

  • スケール(量・規模/売上・顧客など)
  • パフォーマンス(質・効率/購入率・CVR等)

という2つの視点が不可欠です。今回の事例で、立て直すために考えたことは次のとおりです。

  1. 本来のビジネスの目的に立ち返る(スケール&パフォーマンス)
  2. KPIの設定
  3. アトリビューション的発想
  4. コミュニケーションプラン
  5. 技術的な環境を整える

広告の良いところは、「態度変容を起こさせる」ことにあります。お客様を区別するのではなく、適切な人に、適切なときに、適切な情報を届けるという最適なコミュニケーションが必要とされています。

Webがメジャーになってダイレクトなレスポンス(ラストタッチ)ばかりが重視されてきましたが、アトリビューション分析はそうした広告本来の役割と効果を最大化できる考え方なのではないでしょうか?

2010年代の初め頃にアトリビューション分析という考え方が注目されるようになって以来、テクノロジーの進化によって、アトリビューション分析に限らず様々なデータを収集できるようになっています。次の一手としては、それらのデータを整理・統合して分析したり、機械学習による最適化を取り入れたり、あらゆる可能性にチャレンジしていけたらと考えています。

登壇者紹介

株式会社AZ (エーズィー)
マネージングディレクター
藤堂 ちどり 氏

メーカー、SIer、外資系人材、外資系コンサルティングファームなどを経て、2013年より現職。広告主側の立場で広告出稿のリアロケーション(再配分)、計測環境の構築、アトリビューション(貢献度)分析の導入などを含めたプロモーションコンサルティングに従事。

最も実績が多いのはメーカーや多ブランド展開企業のECで、EC化や、CRM、DMPなどの導入支援なども行っている。

株式会社イー・エージェンシー
アカウント戦略本部 アカウントプランニング2部 部長
井上 陽介 氏

ADK九州支社ICR(デジタルマーケティング支援部門)立ち上げメンバーとして、単品通販事業社向けのWebマーケティング支援に従事。年間300回以上の最適化テストやCRM施策など、約20商材の販促・マーケティング支援を手掛ける。

2012年よりGoogleやOptimizelyをはじめとするエンタープライズ製品のセールスを担当。

▼関連サービス

Googleアナリティクスを活用したアトリビューション分析支援サービス
https://www.e-agency.co.jp/services/google_analytics_attribution

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