1年で月間アクティブユーザーを3倍に! 事業成長を加速させるSEOコンサルタントの正しい活用法
「集客さえうまくできれば、この事業は多くのユーザーに受け入れられる」――そう考えるマーケティング担当者や事業責任者は少なくありません。そこで頼りになるのが、検索エンジン経由の集客増加を担う「SEOコンサルタント」の存在です。
特に近年は、Googleのアルゴリズムアップデートが頻繁に行われ、SEOに関しては、1年前の情報ですら役に立たないことがあります。そのような変化に対応し、サイトに有益な改善施策を見極められるSEOコンサルタントの存在価値は高まっています。
しかし一方で、SEOコンサルタントを活用できていないケースとして以下のような場合があります。
SEOコンサルタントからの提案が事業方針とずれていた
SEOの改善提案が、技術的な問題で実装できなかった
PVは増えたが、売上に貢献するユーザーを獲得できなかった
検索エンジンからの流入を獲得するためにコンテンツを制作したが、サイトの世界観と合っていなかった
これらのケースを、ヨーロッパ有数の経営戦略コンサルティング会社「ローランド・ベルガー」出身で、Amazonでのサイト運営経験もあるスマートショッピング林英俊代表は、「コミュニケーションの問題」と話します。SEOコンサルタントの正しい活用法について、詳しく話を伺いました。
ローンチから1年でインハウスSEOに限界を感じた
――スマートショッピングの課題は、どのようなものがありましたか?
林氏「スマートショッピング」は、日用品の価格比較と購入がまとめて行えるサービスです。
サイトのローンチから1年間は、自分たちで情報収集し、インハウスのSEO施策でわりと成果が出ていました。それが1年経ったあたりから急にユーザー数が伸びなくなり、伸びるどころか減ることもありました。
私は前職のAmazonでECサイトの運用を経験していたので、なにがSEO上の課題なのか、採るべき改善策は何なのか、という大まかな状況は理解していました。しかし、巷にあふれる不確定な情報を根拠に社運を託すような判断をすることはできず、ナイルにSEOコンサルティングを依頼することにしました。
SEO施策の優先度をハッキリ言ってもらえたのがありがたかった
――具体的には、どのような課題と改善策を想定していたのですか?
林氏2016年1月当時、スマートショッピングのサイト課題と解決策は、10くらいの候補に絞り込めていました。しかし、Amazonのような大手がやるべき施策と、我々のような小規模のサイトがやるべきことが、Webでは同列に語られることも少なくありません。そのため、課題や解決策の目論見はついているものの、何をどういう優先度で手を付けるべきか、判断できない状況でした。
糸田川結論としては、カテゴリ設計の見直しが最優先でしたね。
林氏事業戦略にも絡んでくるレベルの課題を最初にハッキリ言ってもらったのは、非常にありがたかったです。
具体的には、検索キーワードに対応した商品カテゴリの設計を最初に整備すべきで、そのうえで商品情報を各カテゴリへ適正に拡充していくという順序が正しかったわけです。
通常、カテゴリの再設計には、貴重なエンジニアリソースを数ヵ月にわたって投入しなくてはなりません。さらに、成果が出るのは半年後……となると、我々のような小規模スタートアップにとって、その判断を間違えることが致命傷になりかねません。そのため、判断できずにいました。
それをナイルさんは、最初に「絶対ここからです」と言ってくれて、私たちもそれを信じることができたので「これだけ調査して成果が出ないなら仕方ない」と決めることができました。
結果として、最初から取り組んだカテゴリ設計の見直しが半年ほどで成果につながり、1年後にはMAU(月間アクティブユーザー)を3倍まで引き上げることができました。
SEOコンサルタントを有効に活用するために大事なこととは?
――SEOコンサルタントを活用するために、どのようなことを心がけましたか?
林氏私たちは当時、4名でスタートしたばかりのベンチャー企業だったので、予算が潤沢にあるわけではありませんでした。100万円や200万円といった予算でも、十分に吟味する必要があります。
だからといって、コンサルティングの費用を安くしてもらうことは、結果として現場に負荷をかけ、生産性が悪くなることも理解していました。私自身がコンサルタント出身なので、そのような現場の生産性を下げるダメなプロジェクトや、非効率な依頼を数多く経験していたのです。
コンサルタントを正しく活用するために必要なことは、彼らが価値を最大限に発揮する環境を整えることです。そのためには、的確なコミュニケーションが必須です。
経営コンサルをしていた当時、最初にクライアントと握ったはずの期待値が、コミュニケーションをとらない間に少しずつズレていくということは、少なくありませんでした。ですので私は、クライアントが忙しいときは無理やりにでも時間を作ってもらい、こまめに認識の擦り合わせをしていました。少しでも違和感があったときは、即座にコミュニケーションをとっておくことが大事なのです。
コンサルタントというと、願いをなんでも叶えてくれる魔法のランプみたいに考えている方もいますが、そんなことはありません。最後はクライアントが動かなければ、問題は解決しないからです。なので、クライアントは業務に関わる社員の能力まで考慮して、最終的に実現できるプランとして落とし込む責任があります。
「魔法のランプ」を期待してコンサルに任せきりにすると、理想論を詰め込んだピカピカの提案資料が上がってきます。そして、最後の実装段階で「提案された改善を実装するのは技術的にどうしても無理」と問題が発覚し、実現されることなくプロジェクトが頓挫したりするのです。
そういう事態を避けるためには、泥臭くても実現性の高い改善案を「クライアントも一緒に探す」というスタンスで取り組むことが重要です。
きれいな資料作成は時間の無駄。その時間を使って改善を進める
――コミュニケーションを密にとるかとらないかの違いで、コンサルタントのパフォーマンスが大きく異なるという経験をしていたわけですね。
林氏私が経営コンサルをやっていたときの話ですが、解決策はだいたい2週間で見つかります。ただ、解決策をきれいな提案資料にまとめるのに、そのあと3週間が必要になったりします。
ただ、今はクライアント側の私にとって、コンサルタントが資料をまとめている時間は無駄でしかありません。彼らが発見したアイデアを手書きでも共有してもらって、改善を進める方がはるかに価値は高いのです。
ですので、ナイルのSEOコンサルタントの糸田川さんとは、毎週必ず電話やチャットツールでコミュニケーションを取るようにしていました。「どんな感じですか?」と10分連絡するだけで、あとから調整が必要になるリスクを回避できます。
――コンサルタントが持つ情報の価値共有を最優先したのですね?
林氏そうです。ですので、ナイルが資料作成に時間を使いすぎないよう、契約時に依頼しました。逆にSEOの専門知識やノウハウを最大限に活用できるように、定期的なコミュニケーションを必ず行い、認識がズレないよう取り組みました。
また、改善施策は全体の25%までを一緒に対応して、ある程度の法則をつかんだら自分たちで再現できるよう努めました。前職のAmazonにいたときも同じでしたが、Webサイトの改善はやってみないとわからない部分があります。なので、小さくテストして、うまくいったら大きく展開するという2ステップを踏んで進めるようにしました。
こまめに途中経過を教えてもらう
――具体的にはどういうコミュニケーションをすることが多いんですか?
林氏たとえば、「途中経過でもいいので、どういう状況か教えてもらうことはできますか?」とか「対象範囲が複数あれば、終わったところは今どういう状況ですか? できたところから、改善点をもらえますか?」といった具合です。急かしているわけではなく、「途中経過を教えて」というスタンスです。
「資料にまとめる必要はないから、Excelのデータを見せてよ」とか、「データがそろってなくてもいいから送って」とかもありましたね(笑)。
――価値のある情報のためにリソースを集中してもらう感じですね。
林氏改善方針に関する議論ができればそれで十分ですからね。私は決裁権があるので、稟議に承認をもらう必要もないですし、資料を見て判断できれば十分なわけです。
ただ、決裁者を通す必要がある場合は、もう少し社内のコンセンサスを得るための資料作りが必要になるかもしれません。そのときに「社内コンセンサスを得るための資料作り」を対応してくれるクライアントは良いクライアントです(笑)。
社内稟議を通すための資料やコミュニケーションは会社ごとに異なりますから、社内の人間が調整したほうが早いはずです。クライアントが巻き取れるなら、そのぶんだけコンサルタントのリソースを本質的な課題解決に向けることができますからね。
「できないこと」は早めにコンサルに伝えておく
――その他に、コンサルタントを活用するために気をつけたほうが良い点はありますか?
林氏どうしても不可能なことは早めに伝えておくべきです。
技術的な制約でどうしても対応できないとか、ビジネス上の理由でこういうことはできないとか、そういう「できないこと」は早めに伝えておかないと、小さなコミュニケーションの行き違いでやり直しになるのは、時間と労力がもったいないです。
システムやオペレーション、あと会社のカルチャーとして対応できないとか、そういうクリティカルなものは早めに伝えるようにすると違います
糸田川今回のプロジェクトは、資料を整える手間を削減していただいたことで、非常にスピード感のある対応ができました。また、林様はシステムについての理解もあり、課題と施策を即座に判断できるので、さらに速度がドライブできたと思います。
林氏権限を持つ人がプロジェクトに加わっている、というだけで進行速度は違います。
一般的に、サイトの改善はマーケティング領域だけにおさまらず、エンジニアにシステムとして対応可能か確認する必要があるとか、広報にも企業スタンスとしてOKか確認しなきゃいけないということがあります。
ですので、チーム横断の調整が必要な一般担当者は、各チームを担うリーダーの上にいるマネージャーに形だけでもオーナーとしてプロジェクトに加わってもらうと、社内調整にかかる時間は大きく削減できます。マネージャーが「エンジニアの誰それがわかるから伝えておくよ」「広報の誰それと相談しなよ」と交通整理するだけで、施策を進めるマーケ担当者のパフォーマンスは大きく違ってくるからです。
糸田川SEOの課題を解決しようとすると、特にエンジニアと連携を取る場面は多くあります。マネージャーの参加が難しければ、エンジニア部門だけでも巻き込んでおけると、プロジェクトの進捗は変わりますね。
SEOでの集客を基盤に、ビジネスとしてさらに飛躍を目指す
――最後に、スマートショッピングの今後の展望を教えてください。
林氏今は、カテゴリの整備がほぼ完了したので、カテゴリに適応したコンテンツを拡充していこうという段階です。
コンテンツの編集長を新たに招き、制作体制を整えながら少しずつでも価値のあるコンテンツを充実させているところです。
たとえば、コーヒー豆を紹介する企画では、実際に全種類を飲み比べてレポートするというような記事を書いてもらっています。ライターも実際にコーヒーが好きな人やこだわりがある人、ユーザーの代表のような人に執筆してもらうようにしています。
コーヒーの専門家や、コーヒーのプロに執筆してもらう方向性もありますが、スマートショッピングではユーザーと同じ視点に立ちながら情報発信できるライターとコンテンツを展開しています。
また、サービスを向上させるために「スマートマット」というIOTツールを開発し、2018年末ごろにサービス開始予定です。
スマートマットはテレビのニュース番組にも取り上げていただいて、今の事業と関係性が低い製造業の企業からご相談をいただくこともあります。機械の組立工場で使うネジや部品の在庫管理が、スマートマットのしくみなら自動で簡単に解決できるというものです。
「スマートショッピング」は「いつもの買い物をもっと楽にしたい」という想いから生まれたサービスです。なので、今後も安く、便利に、簡単にお買い物ができるよう、サービスの質を向上させていきたいと考えています。
また、内側のサービス向上とあわせて、サイトの外に向けた情報発信や集客としてSEO施策は基盤となる部分なので、より多くのユーザーから信頼いただけるように引き続き力を入れていきたいですね。
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