Web広告研究会セミナーレポート

NEC、資生堂、ポーラ美術館など有名サイトの舞台裏を担当者が解説、Webグランプリフォーラム(前編)

2017年度のWebグランプリフォーラムを受賞したポーラ美術館・NEC・資生堂の担当者たちが制作秘話を語った
Web広告研究会セミナーレポート

この記事は、公益社団法人 日本アドバタイザーズ協会 Web広告研究会が開催およびレポートしたセミナー記事を、クリエイティブ・コモンズライセンスのもと一部編集して転載したものです。オリジナルの記事はWeb広告研究会のサイトでご覧ください。

企業Webサイトの担当者たちが、互いのサイトを相互評価してたたえるWebグランプリ「企業グランプリ部門」の受賞企業が、サイトの成果や舞台裏を語るWeb広告研究会のWebグランプリフォーラムが2月6日に開催された。

ポーラ美術館、NEC、資生堂、モリサワ、KDDI、日清など、有名サイトの担当者はどのような考えでサイトを運営しているのかが明かされた。

この記事で紹介している事例

スチューデント賞 グランプリ――ポーラ美術館
美術への興味・関心を育成する

ポーラ美術館「ルソー、フジタ、写真家アジェのパリ」展・特設サイト
http://www.polamuseum.or.jp/sp/paris_2016/

箱根町・仙石原にあるポーラ美術館は、モネ19点、ルノワール15点、ゴッホ3点、ピカソ19点、藤田嗣治176点を収蔵し、豊かなコレクションを持つ美術館だ。ポーラ美術館のサイト全体の役割は、「集客への貢献」「美術への興味・関心の向上と顧客の育成」「顧客との関係強化」「法人顧客サポート」を対象としたマーケティング活動全般にわたる。

公益財団法人ポーラ美術振興財団ポーラ美術館
中西 由里香 氏

ポーラ美術館は豊かなコレクションを誇るが、森に囲まれた環境の良い美術館である一方、交通の便が悪いという問題があり、気軽に立ち寄ることが難しいことがPRの課題だった。

そのため中西氏は、Webサイトを通して「環境が良く、四季折々の自然を満喫できる」ことのメリットを感じてもらい、「小さな美術館ではなくて、日本屈指のコレクションを収蔵する美術館であると認知もらう」ことを目指したという。

一方、スチューデント賞を受賞した企画展サイトの役割は、目的の2番目にあたる「美術への興味・関心の向上と顧客の育成」であり、日常的な情報収集を経て、美術に興味を持ってくれた人を対象にしている。

興味を持った人に企画展の情報や学びのコンテンツを提供し、「予習して来館することでより楽しんでもらうこと」「実際に企画展を見た人が後から復習して楽しんでもらうこと」が役割だ。

来館前から来館後までの流れ

限られたリソースで成果を上げるコンテンツ活用術

ポーラ美術館のサイトは、「来館未経験者を来館経験者にする」という短期的な見込み客を育成する役割がある。一方、企画展はより詳しく知りたい人への情報提供による「優良顧客育成」を目的としているが、予算と人員という2つのリソース不足が課題だった。

これを解決するために考えられたのが、コンテンツ活用と外部パートナー協力の最大化だった。ポーラ美術館は、約1万点のコレクションという豊富なコンテンツを持っている。ニュースリリースのほか、学芸員が書いていた既存の情報を活用しつつ、必要に応じて顧客視点のストーリーで書き直していった。

企画展を担当するキュレーターは、ストーリーを作り、作品を選んでいるが、これをWebサイト上にも展開したのだ。初めて企画展に触れる人の気持ちになり、企画展のストーリーを理解するための入口を提供して、情報の深度を徐々に増すように気をつけながら、検索エンジンから流入した人が求めていそうな情報を充実させた。

たとえば、「ルソー、フジタ、写真家アジェのパリ 境界線への視線」という企画展では、タイトルになっている3人の画家の情報を入口として、プロフィールや美術用語などの基本情報を押さえながら、エピソード情報などを加えていった。

基本情報をきっかけに検索して訪れた人へ、情報の深度を深くしながら、企画展のタイトルにある「境界線」の趣旨を伝えていくようにサイト内の動線を設計し、SNSとも連携してサイトの外から企画展サイトに流入させるような投稿も行った。

外部パートナー協力では、企画展のコンセプトやサイトで強調したい要素を制作会社と共有したうえで、企画展の世界観を表現し、期待感を醸成するデザインを目指したという。また、無駄な作業の発生を未然に防ぐため、制作会社や社員との調整と確認を行い、できることと、できないことを明確にしながら進めるように心がけたという。

スチューデント賞のグランプリ受賞結果について、美術に初めて接する人にもわかりやすい表現を心がけた結果ではないかと中西氏は話す。

また、審査員のコメントをもとに、今後は、WebサイトのみにとどまらないPR施策の充実、美術に興味のない人が、興味を持つきっかけとなるようなPRイベントの実施や、コアファンを軸に友人知人を美術館へと誘う「人を誘う人」を育成して、クチコミしやすくなるコンテンツを提供していくことを課題として挙げた。

浅川賞(アクセシビリティ)グランプリ受賞――NEC
グローバル市場での企業価値向上に向けたブランドサイト

NEC Vision for Social Value Creation
http://jpn.nec.com/profile/vision/
日本電気株式会社
高嶋 浩一 氏

NECが2014年に立ち上げた「NEC Vision for Social Value Creation」(以下、NEC Visionサイト)は、NECグループの考えや取り組みを発信する情報サイトだ。ブランドステートメント「Orchestrating a brighter world」掲げ、社会価値創造型企業として情報を発信し、グローバル市場でのブランド価値向上に取り組んでいる。

また、冊子の「NEC Vision Book」を発行しており、冊子や検索エンジンからNEC Visionサイトに流入させ、各事業のサイトへ誘導するハブ的な機能を持っている。

NEC Visionサイトと冊子のコンテンツは、「グローバルメガトレンド」「NECが目指す社会価値創造」「テクノロジービジョン」「お客様とともに創る未来」の4つで構成される。2050年の地球の姿を紹介したメガトレンド、NECが目指す7つの社会価値創造テーマとそれに関連する読み物コンテンツ、社会価値創造レポート、ケーススタディなどを掲載している。

NECグループは、グローバル企業であるため多言語でサイトを運営している。NEC Visionサイトは日本語と英語(グローバル)の1対1でコンテンツを用意し、ボタンで切り替えることができる。今後さらに対応言語を増やしていく予定だ。

NEC Visionサイトのアクセス比率は、PCが71%、モバイルが29%となっており、学校法人からのアクセスが多いという。リファラーは、ブックマークや直接入力のノーリファラー(参照元不明)を除くと、検索エンジンからの流入が多く、SEOやアクセシビリティの取り組みが検索エンジンからの流入につながっていると高嶋氏は分析する。

90年代からアクセシビリティに取り組み続ける

グランプリを受賞したWebアクセシビリティの取り組みについて、「平等」と「公平」の違いを意識していると高嶋氏は説明する。利用者全員に対して同じ踏み台を用意するのではなく、それぞれに合わせて踏み台の高さを変えるという考え方だ。

公正なアクセシビリティを意識

Webサイトがアクセシビリティに対応するメリットとして、高嶋氏は「コンタクトポイントの拡大」「CSR強化とブランド向上」「SEO強化」を挙げる。NECでは、NECの公式サイトを立ち上げた1994年からアクセシビリティを意識しており、2000年からはWebアクセシビリティに本格的に取り組み、ガイドラインの作成やテンプレートの開発をしてきたという。

現在は各部門にWebの責任者を置き、定期的にミーティングを行うことで情報を共有し、マニュアルを整備したり、グローバルヘルプデスクが支援したりすることで、アクセシビリティを推進している。

NECグループのWebサイト運営体制

これらの活動によって、NECの各サイトは2011年や2012年の企業ウェブグランプリ(現在のWebグランプリの前身)でも浅川賞を受賞してきたと話す高嶋氏は、今回のグランプリ受賞もNECのWebサイト全体が評価された結果だと説明する。

今後は、サイトの利用者を意識したコンテンツによってブランド価値向上を図り、「社会価値を調べるならNEC Visionサイト」といわれるようなオーソリティサイトを目指すことが目標だという。講演の最後、高嶋氏は「Webアクセシビリティは、0か1の対応ではなく、できることから地道に積み重ねることで成果や評価につながる」と話した。

ソーシャルサイト賞 グランプリ――資生堂
デジタルで掘り起こす若者のプチギフト需要

資生堂「マジョリ画」(公開は終了)

ソーシャルサイト賞グランプリの「マジョリ画」は、大学生中心の若年層をターゲットとしたギフトサービス。資生堂のメーキャップブランド「マジョリカ マジョルカ」を、オリジナルの似顔絵を添えてプレゼントできる。

資生堂ジャパン株式会社
朝倉 萌 氏

マジョリカ マジョルカは、ファンタジックな独自の世界観と、手に取りやすい価格帯でありながら高品質の商品として支持されてきたブランドだが、販売開始から14年が経ち、課題を抱えていた。

低価格メーキャップ市場は店頭販売チャネルの競争環境が激しく、ブランドエクイティや想起量が低下していたのだ。そのため「スピーディな売上拡大とブランディングの両立がミッションだった」と朝倉氏は話す。

ただし、新製品の開発期間はなかった。そこで朝倉氏は、ミッション達成のための資源として、「コアファンの存在」と「パッケージの評価が高いこと」に着目した。独自性の高いブランディングによって得てきた、これらの資源を有効活用することを考えたという。

また、ブランドのターゲットである若年層の特性を考え、「SNSの拡散力」「プチギフト習慣」「サプライズ好き」という点を企画に盛り込もうと計画。若者の特性を考えた結果、ギフトのエモーショナルな価値を活用したブランドエクイティの向上が戦略として考えられた。

具体的には、若年層のプチギフト需要をデジタル上で掘り起し、友人という第三者からのオススメをきっかけに、ブランドへのトライアル機会を創出することを目指した。ポイントは、友人を介してブランド体験を生み出すことだと朝倉氏は説明する。

施策の位置づけは、ギフト機会の創出による新規ユーザーとの接触およびブランドイメージの形成とし、店舗販売への間接的な寄与も計画した。また、CRMを活用したギフト利用者のリピート獲得、既存商品のWeb販路拡大も狙っている。

マジョリ画の施策は、化粧品市場だけではなく、ギフト市場からも新規を獲得する狙いがあったと朝倉氏は説明する。そのため、他社のギフトサービスと比較して、新規性や独自性を持つこと、モノ+体験であることなどを差別化のポイントとした。

プチギフト施策で目指すストーリー

広告色を出さずブランドの世界観に没入してもらう

こうして生まれたのが、似顔絵ジェネレータ機能を備えたギフトサービスのマジョリ画だ。ギフトを購入すると、似顔絵イラストがギフトボックスとともに届けられるほか、似顔絵を無料ダウンロードしてシェアすることもできる。

サービスのコンセプトは、「あげたいのは、私の思う“かわいいあなた”。もらったのは、私の知らない“かわいいわたし”」。イラストレーターの宇野亞喜良氏とのコラボレーションによって、ブランドの世界観を深めるコンテンツが作られた。

マジョリ画のコンテンツは、広告色を前面に出さない作りになっている。これは、世界観に没入して「ブランドを知らない人・忘れている人」に楽しみながらブランドを体験してもらい、体験者人数を増やすことを優先したためだ。

また、似顔絵ジェネレータのバリエーションが非常に多く、似顔絵で使った絵具(化粧品)をそのままギフトとして自然な流れで購入できることも好評だったと朝倉氏は説明する。

作った似顔絵を無料でダウンロード可能にしたことは、広告費をかけずに認知度を向上させることにつながった。「友達といっしょにできる」「今だけ」「宇野さんのだから」「似顔絵を美化しすぎない」など、シェアしたくなる文脈があったことも成功要因だったと、朝倉氏は説明する。

余白のあるコンテンツでユーザーのシェアを生み出す

こうした一連の施策の結果、2016年7月~12月のマジョリカ マジョリカのEC売り上げ(資生堂オンラインショップ ワタシプラス)は前年比219%、新規顧客の割合は74%となり、購入者の77.4%が友人へのギフトとしていることから、第三者によるトライアル機会の創出につながった。

1人当たりの購入単価は1.3倍となり、マジョリ画を体験した人の約20%が店頭でも購入していることが調査でわかった。目標としていたブランドエクイティの向上は計画比120%、ブランド好意度も22ポイント向上した。

また朝倉氏は、ユーザーのシェアによる自走型の認知獲得を目指したと話し、キャンペーンを次のように振り返る。

共創のようにユーザーと一緒に創るマーケティング手法もあるが、今回はコンテンツに余白を持たせて、ユーザーに委ねたことが重要だったと思っている。マジョリ画の似顔絵を使ってノートやクッキーを作ったという投稿も多く、自然な形でブランド接触とイメージを向上できた施策だった(朝倉氏)

結果、マジョリ画のサイト訪問者は340万ユニークユーザー、200万以上の似顔絵が作成され、SNSのシェア拡散は延べ7,200万件以上、200以上の記事がメディアに掲載された(2016年11月時点)。広告費に多くをかけられないなか、自走型の施策によって計画を大きく超える成果が得られたという。

Webグランプリの審査員からは、「ターゲットをとらえて、デジタルならではの体験とブランドの世界観をうまく融合させた施策」と評価されている。これを受けて朝倉氏は講演の最後、次のように話した。

今回の施策では、あらためて若年層をターゲットとした広告の形について考えさせられた。若年層は広告嫌いと言われているが、それは真意ではない。広告かどうかではなく、面白いかどうかが若者の関心ごとであり、今後の施策や広告に多くの示唆を得る結果だった(朝倉氏)

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