良い記事は、書き手の個性が作る。 はてながオウンドメディアの記事作りで心がけている3つのこと
「ライターさんに依頼しても、どれも似たような記事になってしまう」
「個性的な記事ってどうやって作ればいいの?」
オウンドメディアで、このような悩みに直面したことはありませんか?
はてなでは、企業のコンテンツ発信を支援するコンテンツマーケティングサービスを提供しており、クライアントが運営するオウンドメディアで書き手の個性を生かした記事を制作しています。
たとえば楽天さんの「それどこ」の記事や、リクルート住まいカンパニーさんの「SUUMOタウン」の一部の記事は、はてなでブロガーさんやライターさんにお願いして制作・編集したものです。ブロガーさんやライターさんと一緒に記事の制作を進めていく編集者と、クライアントへの提案や確認を行うビジネスディレクターの二人三脚でオウンドメディアのコンテンツ制作に取り組んでいます。
本記事では、書き手の個性を生かした記事を作るために、はてなではどのようなことを心がけているか、ビジネスディレクターである私から実際の事例を踏まえて解説します。
- 記事制作前に必ず打ち合わせをする
- 編集者の役割としての手間を惜しまない
- 公開時にも書き手の力を生かす
完璧な書き手なんていない。個性を生かせるかは発注者次第
オウンドメディアに記事を執筆してもらう書き手をアテンドする際に、優先すべきは「書けることがある人=コンテンツを持っている人」かどうかです。
文章の上手い下手は、必ずしもいい書き手の条件ではありません。
書き手に読み応えのある記事を書いてもらうために、発注者であるわれわれは何をすべきでしょうか? それは「書き手が持っている面白いコンテンツを実際に記事に落とし込む」といったアウトプットのお手伝いです。
そのために、オウンドメディアへの寄稿をお願いする際、はてなでは書き手1人1人に対して担当編集がつき、執筆前の打ち合わせから記事完成までをフォローしています。
記事を書いてください! それも最初から完璧に!!
上記のような丸投げのオーダーではいい記事はできません。
誰にどんな内容を書いてもらい、成果物をどのようにブラッシュアップするか。それらを考えるのは発注者のあなたが行うべきことです。
アウトプットのお手伝いのために、はてなでは以下のことを行っています。
ポイント1:発注
書き手と記事制作前に必ず打ち合わせをする
~最初にゴールをしっかり共有。契約関係もきっちりと

はてなではどうしても都合がつかない場合を除いて、寄稿をお願いするブロガーさんやライターさんとは、最初に打ち合わせをするようにしています。
時間と手間はかかりますが、最初に打ち合わせでお互いの意識をすり合わせておくことで、結果的に後の進行がスムーズになり、負担軽減や記事の質の担保につながるからです。
また、書き手の個性や性格を把握すれば、より個々の書き手に寄り添った進行ができるようになります。
「細かくフォローをした方が安心して執筆に専念できる人だな」「この人は今が忙しいタイミングなのだな」といったことがわかれば、余裕をみてスケジュールを組むといった対応が事前にできるからです。
実際の打ち合わせで留意すべきポイントとして、次の3つがあります。
「なぜあなたに頼んだのか」「どんな読後感を与えたいのか」
「誰に記事を届けたいのか」を明確に伝える
寄稿のオファーを受けた側にとって、打診された背景がわかったほうが寄稿を引き受けるか否かを判断しやすいため、「なぜあなたにお願いしたのか」をメディアの趣旨と一緒に説明します。
また、その際に「どんな読後感を記事で与えたいのか」、書いた記事を「どんな人に届けたいのか」といった企画の主旨を意識的に強く伝えるようにしています。執筆時にこれらを意識することで、記事の仕上がりや面白さは大きく変わってきます。逆にこれらを意識しないと、記事の目的がぼやけてしまう恐れがあります。
数値にとらわれすぎないように気を付ける
PVやSNSのシェア数などの目標数値を伝えると、数字を意識しすぎて、記事から書き手の個性が薄れてしまうことがあります。私たちは普段ブロガーさんのブログを読み、その文章やブロガーさんの視点、表現方法に魅力を感じてオファーしているので、その個性を出してもらえるよう、あえて目標数値は伝えていません(ただし、プロのライターさんに依頼する場合や書き手のスタンスによっては、課題意識を共有するために目標数値を伝えることもあります)。
その代わり、先述した「記事の読後感」や「誰に届けたいのか」という点は必ず意識してもらうようにしています。
文字数や謝礼、契約などはフォーマット化して漏れなく伝える
記事の制作のための必要項目は、伝達漏れや認識ミスがないようにあらかじめフォーマット化して伝えます。特に権利や謝礼は明確にしておく必要があります。これは、後述する書き手との信頼関係づくりのためにも大切なことです。
伝えるべき事項としては次のようなものがあります。
伝えること | 詳細 |
---|---|
媒体の概要 | URLや運営元情報 |
今後の進め方 | 記事案作成~公開前の確認までの一連の流れについて説明 |
テーマ | 媒体や記事のテーマ |
記事中で使用する画像について | 記事に使用したい画像の有無 |
文字数 | しっかり内容のあるものを書いてもらうための最低限の文字数 |
原稿の受け渡し方法 | Word、Googleドライブ、ブログへ直接下書きするなど進めやすい方法を確認 |
謝礼 | 著者に対価として支払う謝礼 |
スケジュール | 打ち合わせの際に話し合いながら調整。一般のブロガーさんは本業もあるので土日を入れるようなスケジュールを設定 |
契約や著作権について | 納品した記事の著作権の扱いや、どのような契約を締結するかを事前に説明 |
記事の紹介 | 公開した記事が広く読まれるよう、可能な範囲でSNSでも紹介してもらえるように依頼 |
記事の寄稿をお願いする際は、必ず契約書の締結をお願いしています。記事の掲載場所が企業のオウンドメディアであるという性質上、記事の書き手とメディア運営企業の間でトラブルになるのを防ぐためです。
契約書では、「記事の著作権は企業に属すること」を定めています。一方で「書き手も記事を利用できること」を定めており、企業と書き手のどちらも守ることができるようにしています。また、秘密保持についても取り決めています。
これらは以下のようなトラブルを避けることが目的です。
- 公開前の情報が第三者に漏れてしまう
- 企業のオウンドメディアで公開した記事を、書き手の一存で取り下げたり、競合のオウンドメディアや企業のブランドを毀損するようなメディアに勝手に転載されてしまう
- 記事を公開した後、オウンドメディアの移転やクローズ、別媒体に記事の転載を行いたい場合に、オウンドメディアの運営企業が裁量を持って判断ができなくなる
契約書の締結に法務確認などのコストはかかってしまいますが、こうした手間のかかる作業を、間に入るはてなが行っておくことで、書き手もメディア運営企業も安心して記事制作に集中できます。
ポイント2:制作
編集者の役割としての手間を惜しまない
キーワードは「完読」と「読者目線」
書き手から原稿を受け取った後は、意図や懸念点を伝えて、書き手と一緒にクオリティを高めていきます。これは発注者であるあなたが行う必要があります。
テンポや読みやすさを意識して「完読」を目指す
せっかくの面白い記事でも、読者が途中で離脱したら無駄になってしまいます。記事を読んでいる最中に、読者が離脱しないように「読みやすさ」の調整を行います。
記事の骨格をとらえやすく工夫したり、読みやすく行間や間の取り方を意識してリズムを作ったりと、完読されるように細部までこだわった編集をほどこします。
たとえば次の記事ではフォントサイズの大小で記事にメリハリを付け、リズム感を出しています。些細なことですが、ちょっとした工夫が離脱防止につながります。

また、シチュエーションや目的別に構成されていたり、時系列に話が進んだりする記事の場合は、冒頭に目次を配置し、読者が内容を選んで読めるようにすることもあります。

インターネットにおいて「人にどう読まれるか」を意識するのであれば、読者がどのような環境で読むのかを考えて、レイアウトも含めた文章の「空間を編集する」ことも求められます。
今回は詳しく触れませんが、Webでの「改行」や「行間」については、はてな編集部が運営するブログ「編む庭」でも解説しているので参考にしてください。
- 改行のはなし(はてな編集部ブログ「編む庭」)
http://editor.hatenastaff.com/entry/2017/01/18/140000
編集者役の人は「読者目線」を忘れずに全体を俯瞰する

記事を読む際に、「読者視点に立って客観視する」のは編集にとって大切な仕事です。記事に対して思い入れが強い分、書き手自身は気が付かないことも多いものです。
次のようなことに気を付けながら冷静に読みつつ、書き手にフィードバックしたり、編集を加えたりします。
- 読み手に意味が伝わる文章になっているか
- 内輪ネタになっていないか
- 読みやすく負担のないレイアウトや改行、見出しの整理がなされているか
- 読者を不愉快にしたり傷つける表現がないか
- 事実と異なること、間違ったことが書かれていないか(事実確認)
自社でオウンドメディアを運営する際に「編集なんてやったことない! そもそも自分の文章に自信がない」という人もいるかと思います。
Webで読まれる文章を書くための本も出ているので、そうした本を読んでみると自分の文章のクセなどに気付くことができます。
元ナタリーの唐木元さんが執筆されている書籍『新しい文章力の教室 苦手を得意に変えるナタリー式トレーニング』(インプレス)は、Webで完読される文章を書くための基本がわかりやすく学べる、おすすめの一冊です。
ポイント3:公開
公開時にも書き手の力を生かす
書き手と協力して記事を拡散&媒体のファンを増やす
記事が完成しても、それで終わりではありません。個性を生かすために、公開時にも書き手の力を借りましょう。
ファンの多い書き手はSNS向けのタイトルに名前を入れると○
編集作業が完了したら、最後に記事のタイトルを考えます。
タイトルは、読者と記事の最初のタッチポイントであり、読まれるかどうかを決める大切な要素です。できあがった記事をあらためて読み返し、内容に合致するタイトルを付けます。
タイトルを決める際に、SEOを意識してキーワードを盛り込むことがあります。しかし、SEOを気にしすぎると、意味が通りにくい無機質なタイトルになってしまいがちです。
そのため、記事の内容が読者に伝わるタイトルであることを一番に優先し、SEOは+αとして考えることが大切です。
また、はてなで提供するオウンドメディアCMS「はてなブログMedia」では、記事のタイトルと別に、ソーシャルメディアでシェアされたときのタイトルを設定することができます(og:titleの設定)。
この設定を使うと、本来の記事タイトルと、SNSでシェアされたときのタイトルを分けることができるので、よりSNS上での記事拡散を狙いやすくなります。
プロのライターさんなど知名度の高い書き手の記事では、SNS向けのタイトルにあえてその人の名前を入れて読者の興味を引くきっかけを作るといったテクニックもあります。


関係者に拡散に協力してもらうための事前のお願いや連絡も大切
記事の公開日が決まった段階で事前に連絡しておくことはもちろん、記事の公開後は書き手にも迅速に報告します。また、Twitterなどのソーシャルアカウントを持っている書き手であれば、無理のない範囲でSNS上でも紹介してもらえるようにお願いしています。

「こんな記事を書いたよ!」と書き手がソーシャルメディア上で発信することで、書き手のフォロワーにも届き、さらなる拡散にもつながりやすくなります。
はてなのユーザーは、Twitterの平均フォロワー数が日本人の一般平均の約2.7倍というデータもあります。書き手であるはてなブロガ―さんにも、Twitterで多くのフォロワーがいる方がたくさんいらっしゃいます。
はてなのブロガーさんに記事をお願いする場合、ブロガーさんを巻き込んで媒体のファンを増やしていくことができるように意識しています。
書き手に「書いてよかった」と思ってもらえるか?
はてながオウンドメディアで書き手に仕事をお願いするなかで大事にしていることは、最終的に書き手本人に「記事を書いてよかった」と思ってもらえるかどうかです。
はてなでは、自社サービスのユーザーであるブロガーさんを巻き込んで仕事をお願いするため、このことをとても大事にしています。
これを意識することで、書き手と依頼主の間で気持ちよく仕事ができますし、結果として記事の質や、公開後の拡散にもいい影響が出ます。「書いてよかった」「また書きたい」と思ってもらえ、継続的な関係ができるとその後のオウンドメディア運営もスムーズになります。
オウンドメディア運営とは、まさに「コンテンツを通してファンを増やすこと」であり、そのためにはまず自分たちの仲間である書き手から尊重していくことが大事なのではないでしょうか。
はてなでは記事の制作とはてなの広告枠を、必ずセットで提供しています。オウンドメディア運営で大切なことは「コンテンツの制作」だけでなく「コンテンツの流通」も含めて設計を行い、課題解決することだと考えるからです。その流通の起点となるのが、はてなブックマークです。
記事を公開後、すぐに「はてなブックマークネイティブ広告」に掲載を開始します。記事の公開と広告掲載タイミングを合わせることで、はてなブックマークに面白いコンテンツを探しにきたユーザーが、はてなブックマークを付けてコメントしたり、あわせてTwitterやFacebookに投稿してくれたりと、記事の初動に大きく影響します。
はてなブックマークが集まると、Web上での拡散の起点になりやすいため、はてなブックマークのネイティブ広告は現在リピート率70%を超えるメニューとなっています。
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