カスタマージャーニーが複雑化した今、SEOもキーワード調査も進化すべきだ(後編)
SEOを単なる検索順位の問題と考えず、そこから「認知」「ブランディング」「リストビルディング」「トラフィック」「コンバージョン」「競争での勝利」「サポートコストの削減」「アップセル、クロスセル、顧客の成功」などの価値を得るためのモデルを解説するこの記事は、前後編の2回に分けてお届けしている。後編となる今回は、購入ファネルの「解決策の比較」から先を見ていこう。→まず前編を読んでおく
④解決策の比較
確立された市場では、直接にせよ間接にせよ、競争が存在する。競争がなければ、それは一般によくない兆候だ。通常、そんな市場では、SEOは最適なマーケティングチャネルとはならない。SEOは需要を取り込むための戦術であり、ゼロから生み出すものではないことを忘れないでほしい。
問題の解決策を比較する場合も人々は検索をするので、比較のためのキーワードを見つければ、人々に適切にリーチできる。こうした検索は、(一例を挙げれば)「marketo vs hubspot」のようなものになることが多い。
キーワードを探すには、Keyword Tool IOに「[自分のブランド] vs」と入力するだけでよい。
たとえば、Mozの場合は次のようになる。
これらのキーワードは、最適化する対象として興味深い。通常、これは誰かが購買ファネルの下層に向かっていることを意味するからだ(また、アフィリエイトの最適化にとっても、すばらしいキーワードリストだ)。
競合相手がわかったところで、では、どうアプローチすべきだろうか?
大胆なことに、競合相手と自社の比較ページをサイト上に作成している企業もある。
たとえば、HubSpotは次のように、Marketoと比較したページを用意している。
こういうやり方に抵抗がある場合は、これらのキーワードで検索する人が適切な選択を行えるように、コミュニティに協力してもらう方法を考えてみるのがいい。
このやり方に抵抗を覚えるブランドは多いし、商法が異なる国では、こうした比較が違法になる場合もある。そのため、このような戦略を始める際は、必ず前もって弁護士に相談するほうが賢明だ。
ここで利用できる道具としては、以下のようなものがある。
- ツールに関する投稿記事を書いているアフィリエイターや友好的なブロガー
- G2 CrowdやTrustRadiusなどの比較サイト
- Quoraなど、ランク付けに積極的なQ&Aサイト
次の図が示すように、B2Bの購入ユーザーが求めているのは偏見のないレビューだ。そのため、ここでは、第三者のサイトをおおいに活用することが理にかなっている。
ヒント NPSデータがある場合は、NPSの数値が高い顧客に、製品についてこれらのサイトに情報提供してもらうよう依頼してみるのはどうだろうか。それによって、製品を本当に気に入っている顧客の気持ちが潜在顧客に伝わる。
ここでは、(抵抗さえ感じなければ)競合相手のファネルに踏み込むことも可能だということにも留意しておきたい。ほとんどのSaaS検索では、「[ブランド名] alternative(代替)」という構造のキーワードが表示される。小規模で挑戦的な新興企業なら、超大手の競合に代わる選択肢であることを示すページを作成するのも一策かもしれない。
⑤購入
前の段階と同様、ここでも人々はファネルの最下層に達しており、製品を使い始める前にいくつか確認しておきたいことがあると考えていることが多い。
これは、スムーズで優れた購入体験を提供できる、すばらしい機会だ。
たとえば、ウェブホスティングならば、サービスを利用しようとする人々は、サーバー管理ソフトとしてcPanelか同等のシステムを利用できるか知りたいと思うかもしれない。
その疑問に応えるページをサイト上に用意しておくことが、きわめて重要な場合もある。
以下に可能な対応を挙げる。
UberSuggestでブランドの検索キーワードを見る
すでに何度も紹介しているが、これは本当に驚くべき手法だ。人気の高いクエリすべてについて、対応できるページやコンテンツを用意しているだろうか?
既存のコミュニケーションログを見る
たとえばチャットなどでサポートを提供しているのならば、そこからオンラインマーケティングに関する知見が得られる。サポート部門などのチャットログを入手したら、内容に目を通してみよう。同じ質問が何度も出てくるなら、それらに対応するコンテンツをどこかに作らなければならない。問い合わせこそしないものの疑問を抱いている人々が他にも存在することを意味するからだ。
サポートリクエストおよびサポートチケット
オンラインチャットログと同様、これらのサポートリクエストには通常、顧客が何をしようとしているかや、どこで混乱しているかについて、具体的な声が含まれている。こうした声は、製品の使用方法や体験の改善に役立てるだけでなく、ソリューションに重点を置いたコンテンツのキーワードマップとしても活用するべきだ。
⑥実装、顧客の成功、アップセリング
さあ、少なくともトライアル客にはなる顧客を獲得したところで、一息ついて何か飲むものを取ってこよう。初めて、ささやかな勝利を収めたと言える。
ただし、SaaSなどのサブスクリプションビジネスを手がけているのなら、シャンパンはまだ早い。コーヒーにとどめておこう。この先にはまだ大変な仕事が待ち受けている。毎月継続して売り上げを獲得しなければならないのだから。
僕だったら、自分のブランドに関連する検索に目を向ける。顧客がサポートチケットを使う前に対応できないだろうか? こちらから自発的に対処できる共通の問題はないだろうか?
たとえば、人気の高いヒートマップツールCrazy Eggは、「crazy egg behind login」などのキーワードで頻繁に検索されている。つまりユーザーは、ログインの必要なサイトにCrazy Eggをインストールできるかどうか疑問に思っているのだ。
見てのとおり、Crazy Eggのチームは実際、この疑問のために最適化されたページを作成している。購入前の疑問やサポートチケットで頻繁に寄せられる質問を、ウェブサイトで簡単に解決できるようにしたのだ。
これこそが、SaaSの顧客ライフサイクルだ。
ただし、最後にもう1つ、考慮すべきことがある。
ランディングページの枠を超えて考える
僕たちはSEO担当者として、キーワードマーケティングを多少シンプルに考える傾向がある。つまり、特定のキーワードがある場合、ウェブサイト上のページがそのキーワードで検索順位の上位に表示されるようにしなければ、存在しないも同然だと考えてしまうのだ。
しかし、キーワード検索が意味するものを、「トラフィック」ではなく、問題を解決して何かを購入する目的意識を持った「人」だと考えると、この戦略が別の観点から見えてくる。そして実際のところ、検索上位にはまったく表示されないキーワードはたくさんある。
しかし、あるキーワードで上位に表示できないかもしれないからといって、影響を及ぼすことができないわけではない。ランド・フィシュキン氏は「Barnacle SEO」(フジツボ式SEO)を取り上げているが、この考え方を他のページにも応用してみるといいだろう。
次のようなことはできないだろうか。
検索上位にあるサイトとアフィリエイトパートナーシップを結ぶ
そうすれば、SEOに投資するよりも、多くの場合はペイ・パー・リードや顧客獲得に応じて、人々に影響を及ぼすことはできる(ベストな選択肢ではないが、1つの手段ではある)。
PRをして、サイトの知名度を上げる
特に新興企業の場合は、オーガニックな手段では上位に表示させられないかもしれないキーワードですぐに順位を上げられる、すばらしい方法だ。
サイトに署名入りのコンテンツ(ゲスト投稿と呼ばれることもある)を寄稿する
上述の考え方とよく似ているが、ブランディングの面でもメリットがある。
(GoogleディスプレイネットワークやBuySellAdsなどのサービスを通じて、または直接)広告枠を購入し、そのサイトやページ、ひいては検索キーワードに自分の場所を確保する。
検索ユーザーにリーチする選択肢はたくさんある。SEO担当者は往々にして、SEOの枠を超えて考えることができず、キーワードではなく人々へのマーケティングを行うことができていない。
まとめ
カスタマージャーニーが複雑化するなかで、僕たちは、「認識以前の状態」から「認知」「解決策の比較」、さらにはその先へと、カスタマーサイクル全体を調整し活用できる。
僕たちが独創性を発揮すれば、これらの検索キーワードを使ってすばらしい体験をもたらすことができるだけでなく、購買サイクルの早い段階で顧客を捕まえられるし、サポートコストを削減することもできる。
健闘を祈る。SEOを楽しんでほしい。
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