長ーーーいランディングページを、アニメで手軽に、コンパクトに、自由に、効果的に!
広告で集客しても、商品の良さを理解してもらえなければ購買には結びつかない。商品理解を促進し、さらに広告の費用対効果を上げたい――そんな課題を持っていたサンスターのトクホ飲料『緑でサラナ』は、ランディングページ(LP)にアニメを掲載することで、本商品購入者数をグッと増やした。なぜアニメだったのか。アニメを採用したことによって何が見えたのか。サンスターの松﨑由美子氏と、このLPの企画・制作を担当した益田啓光氏にお話をうかがった。
取材メモ
LPにアニメを導入後、引き上げ率が1.6倍に!
商品の良さをたくさん伝えたいけど、文字と画像のLPでは伝えきれない。そこでコンパクトに伝えられるアニメを使ってみたところ、商品の良さをしっかり伝えることができ、自分の問題解決の手段として考えてもらえた。広告表現には薬事法の制限があり、文字に頼らないアニメなら表現の幅が広がる!
アニメは、実写と違って撮影のやり直しなどがなく、修正が楽で自由度も高く、制作期間は従来のLPと同程度で、予算的にもほぼ変わらない。販売本数などが増えても修正しやすいように、アフレコの際に複数パターン収録するとよい!
『緑でサラナ』の場合、動画の長さによる離脱の差はなかった。
伝えたいことはたくさんあるのに、普通のLPでは伝わらない!
この『緑でサラナ』は1日2本飲んでいただく商品で、1本あたり約200円という、決して安くはない商品です。だから、商品の良さをもっと理解していただくためには、LPでただ文字を読んでもらうだけではなく、アニメでわかりやすく説明した方が良いと思いました。
あと、トクホ(消費者庁許可特定保健用食品)商品ということもしっかり伝えたかったのですが、これも文字だけでは伝わりにくいんです。だから、ストーリーで伝えられるアニメを採用したんです(松﨑)。
薬事法の制限のため、“絶対にコレステロールが下がる”など、効果効能を保証する強い表現はできません。そのため文字だけで表現すると、どうしても訴求が弱くなってしまうんです。しかし、アニメだったら幅広い表現ができるので、見る人の感性に訴えかけられます。さらに、同じ動画でも役者さんに演じてもらう実写よりも、アニメの方が制作期間やコストも抑えられます。だから一度チャレンジしてみたいと思っていました(益田)。
確かに、どんなに売り手側が熱い思いをLPにぶつけても、文字ばかり、派手な画像ばかりのLPでは読む気になれない。しかし、説明が少なすぎても商品の良さを理解してもらうことは難しいだろう。たくさんある商品の良さをコンパクトに伝えたい。そんな思いとアニメがぴったりはまったようだ。
アニメ制作はプロにお任せ。時間と費用も調整可能
アニメはどうやって制作するのだろうか。大まかな流れは下記の通りだ(図1)。
①…全体の流れやキャラクター設定と絵の案(PowerPoint2枚くらい)
②…テキストベース。登場人物、どんなことをどんなシーンで話すのがここで決まる。動画の長さは文字数で調整する
③…シーンごとのラフな絵とセリフを文字で表記。この絵が本番のベースになる。内容や絵柄の調整はここで行う
④…レイヤー分けして絵コンテに色を付けていく
⑤…演出・エフェクト。このあたりで声優を決める
⑥…声優がスタジオで録音
⑦…スタジオで録音
赤い数字で示した部分はすべて制作側の作業で、発注側は各段階で確認するのみ。今回のケースの場合、制作期間は最初の提案からできあがるまでおよそ2か月。一般的な文字と画像によるLPでも新製品だとそれくらいかかるため、アニメだからといって特別時間がかかるわけではない。
文字と画像だけのLPを作るのに比べて、当然アニメを作成する時間がプラスされるのだが、アニメを入れると確認しなければならない文字数が減り、校正の時間が節約できる。そのため、最終的な制作期間は変わらなかった。
このアニメでは時間もコストも一般的なLPと同じくらいになるように調整できました。実は、アニメを選んだのもそこが理由の1つなんです。同じ動画でも、アニメなら実写に比べて制作、修正などが簡単ですから(益田)。
変更を見越して音声を多めに録っておくのがコツ
松﨑氏にとっても益田氏にとっても、アニメをLPに取り入れるのは初めての試み。アニメゆえに苦労した点はなかったのだろうか。
アニメの終わりの方に、登場人物が健康診断の再検査の結果を見るシーンがあるのですが、そこで登場人物の驚き方でお客様に与える印象が変わってくるので、音声を何パターンか録音しておきました。公開する前に社内規定をクリアしなければなりませんが、制作のシンフィールドさんが修正を見越して“音声は何パターンか録っておいた方がいいですよ”とアドバイスしてくれたのは良かったです(松﨑)。
実写よりは手軽とはいえ、ナレーションなどは声優がスタジオで録音するため、すぐに変更できるわけではない。完成してからも変更しなければならないこともある。だからこそ、いろんな可能性に備えることが必要なのかもしれない。
アニメで見えたお客様の姿
動画の長さはどれくらいであるべきか、というのもアニメ制作においては大きな問題だ。
お客様に誤解を与えてはいけないと思い、商品の説明を増やしていったら、最終的に8分くらいの長いアニメになってしまったんです。8分は長過ぎるということで、今度はどこをカットするかを調整しました。結局、5分のバージョンと3分のバージョンを作成してもらいました(松﨑)。
5分バージョンと3分バージョンでコンバージョンに影響が出るのかテストしてみたが、ほとんど差は出なかったそうだ。長い方は離脱が高いだろうと予測していたが、やってみると変わらなかった。
意外な結果だが、これはコレステロール対策という『緑でサラナ』の性質上、問題意識を持った人が見に来ているためで、多少長いくらいでは離脱が増えなかったのではと考えている。アニメをやってみたからこそ見えた消費者の姿だ。
引き上げ率が1.6倍に。商品の良さをどれだけ伝えられるかが鍵
このアニメは2012年6月に作成された。効果はどうだったのだろうか。モニター商品と本商品を合わせた全体のコンバージョン率自体はほとんど変わらなかった。しかし、本商品を申し込む割合が1.6倍に向上したという。これはかなりの効果だ(図2)。
商品理解の重要性は商品の価格によって異なります。安価なモニター商品に比べ、数千円の本商品は、商品の魅力がしっかり伝わらない限り購入していただけません。既存のLPは文字と画像の長いものでしたが、ページをスクロールしてもらっていても、中身を読んで理解してもらえているか疑問がありました。
それに対して、このアニメは3分程度です。なんとなく観ていてもストーリーを通して商品理解が進みやすいんだと思います。だから、アニメのLPでは今までより多くのお客様に“本商品を買ってみよう”と思っていただけたんだと思います(益田)。
従来のLPでは、商品自体をアピールしていましたが、アニメではお客様をイメージさせる夫婦が登場して、コレステロールについての悩みを解決していきます。商品のアピールだけでなく、商品がお客様にどんな効果をもたらすかを伝えることができたため、お客様にご自分のこととして考えていただけたのではないでしょうか(松﨑)。
このアニメが制作から約2年間の長期に渡って使用されているのは、商品理解を促進する効果が続いているからにほかならない。
使い方は未知数。まだまだ可能性は広がる
最後に、これから自社のLPにアニメを取り入れてみたいと考える人にアドバイスをいただいた。
アニメはストーリー性を持って商品を訴求できるのが強みです。もし既存のLPをベースに作るのであっても、LPのコンテンツを切り貼りしたスライドショーにしてしまうのではなく、ストーリー性のある新しいアニメを作ることをオススメします。 また、広告LP内でのアニメの使い方にも色々な方法が考えられます。
アニメのみのLP、既存の長いLP + アニメ、アニメのキャラクターをLP内でも挿絵的に使う、などです。商材やアニメの内容によって最適な使い方があると思いますので、テストしてみてください。僕らも日々色んなアイデアを出しながら多くのテストを実施しています(益田)。
アニメは掴みが大事だと思います。サラナの場合は健康診断から入るんですが、お客様の悩みをつかんで、解決するための方法として自社の製品を提示するというストーリーの流れを作るとやりやすいと思います(松﨑)。
両者とも、今後もアニメは積極的に活用していきたいという。現在は既存のアニメを超える新作を制作中。次回はどんなアニメになるのか楽しみだ。
関連リンク:アニメーション制作
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