【レポート】Web担当者Forumミーティング 2013 Autumn

CPAやコンバージョンよりも大切なブランドセーフティ、大和ハウスが経験したブランド毀損の危機とは

広告の効率化にばかり気をとられ、配信先をコントロールできなくなるとブランド毀損の危険がある

気づかないところで自社の広告が法律や公序良俗に反したサイトに掲載されていたとしたら……。DSPなどのアドネットワークが急速に普及したことで、こうした現象が起きており、掲載面をチェックするアドベリフィケーション(Ad Verification)も登場している。大和ハウス工業の大島 茂氏は、コンバージョン率やCPAを良くすることだけにフォーカスすると、重大なブランド毀損の可能性があると指摘する。

はじまりは2ちゃんねるの自社スレッド

大和ハウス工業株式会社
総合宣伝部
第一事業販促企画室
室長
大島 茂氏

自社の広告が適切な場所に掲載されているかどうかについて、常に考えている担当者は少ない。大島氏が強く意識するようになったきっかけは、2ちゃんねるの自社に関するスレッド、それもひどい悪口のページに自社の広告が表示されていることが指摘されたときだった。調べると、大和ハウスに限らず、ナショナルクライアントと言われるような大企業のスレッドには、その企業の広告が掲載されていた。もちろん、2ちゃんねるのすべてが不適切だというわけではないが、「少なくとも大和ハウスとしてはそこには広告を出したくないと思う場所だった」。

原因を調べると、その広告は某社が独自に無料配信しているものだった。自動化してターゲティング配信を行っていたため、大和ハウスについて書かれていた、2ちゃんねる内のページにも掲載されていたのだ。当然、大和ハウスは広告の掲出をやめるように申し入れたが、「無料なのだから言われる筋合いはない」と相手にされない。ブランド毀損につながる一大事だとは認識されず、親会社に申し入れてもらちがあかなかった。

結局、その企業の株主である大手広告会社を通じて対応してもらったという。このことが示しているのは、デジタル広告業界では、広告掲載に関する基本的なモラルについて教育を受けていない人が少なくないということだ。

従来であれば、テレビや雑誌の広告枠に企業として広告を出していいか内容を吟味して考えていたはず。今、デジタル広告の世界では自動化が行われているが、基本的なモラルが教育されていないところがある(大島氏)

たとえば新聞広告の場合、記事の内容によってはこの広告は出さないでおこうと、新聞社側が気を利かせてくれる。テレビや雑誌の場合は、どのような場所に広告を出すのかを考えて出している。しかし、デジタルマーケティングの世界では、テクノロジーによる自動化が進んだ結果、そのようなモラルについてはほとんどケアされない状況が増えている。

こんな場所には広告を出したくない

自社の悪口が書いてある以外にも、アダルト、薬物、暴力表現などのページや、著作権に違反したコンテンツを提供しているページには広告を出したくないと、広告担当者なら考えているだろう。しかしそういう場所に出てしまうのは、配信先が明確でないアドネットワークを使っているためだ。

DSP、アドエクスチェンジのリスク

広告枠を買う場合、媒体を直接買うプレミアム枠と、いくつかのメディアを集めて配信するアドネットワークがある。アドネットワークには掲載する媒体を明示しているものもあるが、伏せているものもある。売れ残った媒体をまとめているアドネットワークもあるし、DSPが他のDSPに配信している場合や、わざと掲載先がわからないようにしている悪質なものもあるという。

こうしたトラブルを回避するため、プレミアム枠に絞ることも考えられるが、安心度が高くなれば価格も高くなる。

一般的な広告枠のランク
  1. プレミアム枠(媒体を直接買う)
  2. 配信先が明確なアドネットワーク(プレミアム系)
  3. 一般的なアドネットワーク(売れ残った媒体をまとめているケースも)

表示してほしくないページに広告が掲載されるのは、配信先が明確でないアドネットワークやDSPを使った場合が多く、他にも、リターゲティング広告の場合も可能性が高い。また、米国での調査によれば、CPAが良い媒体、アドネットワークには危険なサイトが含まれている確率が比較的高いと言われている。たとえば、違法サイトを見るのに抵抗のないリテラシーの低い人は、どのようなリンクか考えずに何でもクリックしてしまう傾向にあるということかもしれない。

明らかに不適切なケース以外にも、そのサイト自体は優良サイトだが、記事の内容によっては出したくない場合がある。たとえば大和ハウスならば、住宅火災など、住宅に関してネガティブな記事が出ているページには広告を出したくない。また、トップページは問題ないが、中の掲示板やグラビアページには出したくないといったケースもある。ドメイン名でブロックすることが有効ではないケースがあるということだ。

ブランドを守る、リスク回避のポイント

ブランドを守りつつ、アドテクノロジーを活用していくにはどうすべきか。「配信先をコントロールできるかが鍵」(大島氏)となる。大和ハウスでは、以下のような方針で広告配信を行っているという。

  1. 配信先が確定しているプレミアム枠のみ買い付ける
  2. 配信先を開示していて、配信先として納得できるプレミアムアドネットワークを活用する
  3. 配信先は開示できないが、ホワイトリスト、ブラックリストを設定でき、配信先をコントロールできるアドネットワークを活用する
  4. DSPを使いたい場合は、ホワイトリスト、ブラクックリストを設定できるDSPを活用する

一番安心なのはもちろん1番だが、コスト的には高い。鍵は配信先をコントロールできるかどうかである。たとえば、グーグルのGDN(Googleディスプレイネットワーク)はホワイトリスト設定の機能が元から備わっている。グーグルだからと過信せずにきちんと設定することが肝心だ。実際にチェックしたところ、数%程度は不適切なページがあったという。また、現状ではホワイトリスト・ブラックリストの設定が可能な日本のDSPは非常に少ない。

リスクとコストはトレードオフなので、やみくもに安全を求める必要はないが、自社のポリシーに従って使い分けるのがいいだろう。

メリット・デメリットを考慮し、使い分けることが重要

リスクを回避するテクノロジー

もし、違法サイトに自社の広告が表示されている画面をキャプチャーされてそれがソーシャルメディアに流れたら、広告担当者としては重大なミスとされるだろう。こうしたリスクを未然に防ぐためのツールが「アドベリフィケーション」だ。DSPやアドエクスチェンジで広告の枠を買うときに、どういうサイトなのかチェックし、もし不適切ならNG用(社名が入っていないものなど)の広告と差し替えてくれるものだ。その結果によってホワイトリスト・ブラックリストを生成し、配信先の精査を行うこともできる。

また、アドベリフィケーションツールを使うと、ブランド毀損以外にも以下のような問題を解決できる。

  • クラッター

    同じページ内に大量のバナー広告枠がある、密集しているなどの場合は、見ているユーザーの意識に残りにくいと考えられ、広告価値が低い。

  • 同載広告

    同じページに複数あるバナー広告枠に、意図せず自社広告が複数出る。リターゲティングの場合に発生しやすい。バナーがいくつ表示されても見ている人は1人だが、インプレッション課金の場合は表示された数だけ課金が発生する。さらに見ている人には「しつこい」という印象を与える。

アドベリフィケーションツールは、不適切だったり、非効率だったりするサイトをチェックしてNG用と差し替えてくれるが、配信先精査のための運用はそれなりに負荷が高い。また、NG用と差し替えるためブランド毀損は防げても、その時点で配信コストは減らない。ツール代も含めるとそれなりのコストがかかるため、結局はプレミアム枠だけを買う方が安上がりになることもあり得る。

配信先をコントロールするより、
プレミアム枠を買う方が安上がりになる可能性も

大和ハウスでは、アドベリフィケーションの主要な3ツール「BrandShield」「AdSafe」「ComScore AdEffx」を使い、2013年5月から11月にかけ、複数期間に分けてテスト運用をしている。その結果、配信先に2ちゃんねるのまとめサイトが多く含まれること、トップや主要ページに問題のないサイトでも配信したくないページが含まれることなどがわかったという。今後はブロックレポートをもとに、配信先を精査することで、より広告効果を上げていく方針だ。

配信先が担保されないのなら、コストと労力がかかるため、ペイできないというのが現状。DSPやアドエクスチェンジの効率が良いという話はよく聞くが、効率がいくら良くても、不適切な掲載の可能性があることを理解してもらいたい。ブランドを守りながら、さらに効率良く広告配信するにはどうするかを考えなくてはいけないし、広告主がそういった意識を持てば代理店も気づいてくれ、仕組みも変わってくると思う(大島氏)

日本の現状は、広告主も代理店もデジタル広告の効率にばかり気を取られ、危険がともなっている。しかし、配信先をコントロールできなければ重大なブランド毀損の恐れがあることを忘れてはならないと大島氏は最後に語った。

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