【レポート】デジタルマーケターズサミット2020 Summer

ブランド毀損や詐欺にあっているかも!? 広告主が知るべき「デジタル広告の不正問題」と対応策

デジタル広告は自動化・効率化が進むにつれて便利になる一方で、課題も浮き彫りに。「ブランドセーフティ」「ビューアビリティ」「アドフラウド」といった問題と、その対策となる「アドベリフィケーション」について解説する。
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デジタル広告は、自動化・効率化が進むにつれて便利になる一方だが、その反面、課題も浮き彫りになってきた。「デジタルマーケターズサミット2020 Summer」のセッションでは、日本アドバタイザーズ協会の小出誠氏が「デジタル広告の不正問題」について、その詳細と対応策について解説した。

日本アドバタイザーズ協会 常務理事
小出誠氏

2017年のP&Gブランド責任者のスピーチでデジタル広告の不正問題が世界的に問題視されるように

2019年、日本の広告費は、デジタル広告(インターネット広告)がテレビ広告を抜いた(電通「2019年 日本の広告費」より)。企業にとってデジタル広告の活用がますます重要になっているということだ。

日本の広告費の時系列推移。2019年にデジタル広告がテレビ広告を抜いた

まずはデジタル広告の不正問題について解説していく。デジタル広告の不正問題にはさまざまな問題があるが、特に最近話題となっているのが「アドフラウド」「ブランドセーフティ」「ビューアビリティ」の3つだ。今回はこの3つを中心に解説していく。

デジタル広告の不正問題は2010年代の前半頃から話題になり始めていたが、大きく問題視されるきっかけがあった。2017年に世界でも最大の広告主であるP&Gのプリチャード氏が、「広告主はデジタル広告の不正問題について認知し、それを正していくことに意識を払うことが大切だ」とスピーチで呼びかけ、この問題が世界の広告業界に広く認知されるようになった。

代表的な3つのデジタル広告の不正問題を解説

日本においても、週刊東洋経済やNHKの「クローズアップ現代+」で特集されるなど、課題認識が広まり始めている。小出氏はまず、「アドフラウド」「ブランドセーフティ」「ビューアビリティ」がどのようなことなのか解説した。

1.アドフラウド

自動化プログラム(ボット)などによって、クリック数やインプレッション数(広告の表示回数)が水増しされ、広告主に不当な広告費が請求されること。広告が”人”ではなく”ボット”によって閲覧やクリックがされているのに、広告料金が請求されるということだ。

アドフラウドとはボットなどによって無効なインプレッションやクリックを発生して不正に広告収入を得る行為

インテグラル・アド・サイエンス(IAS)の調査によると、アドフラウドの発生状況は、デスクトップディスプレイ(以下、デスクトップ)で2.6%、モバイルウェブのディスプレイ(以下、モバイル)が1.9%(いずれも日本の2019年下期のデータ)となっている。ただし、これは何らかの対策をしている場合の数値で、未対策の場合は約10%存在すると言われている。つまり、「仮に1億円のデジタル広告投資をした場合、1000万円程度、詐欺の被害に遭っている可能性がある」ということになる。

2.ブランドセーフティ

ブランドセーフティとは、デジタル広告によってブランドが毀損されるリスクがないこと。そのリスクには、2つの側面がある。ひとつは、広告主が被害者になるケースだ。例えば、アダルトサイトや暴力・違法薬物のサイト、ヘイトスピーチのサイトなどに広告が出てしまい、ブランドのイメージが毀損されるというもの。

もうひとつは広告主が加害者の立場になるケースで、海賊版や反社会勢力のサイトに広告が出ることで、間接的にとはいえ、その違法サイト運営者や反社会勢力団体に資金提供してしまうというもの。昨今、SNSでこういった不適切な場所に広告が掲載されていたという投稿は瞬く間に拡散され、お客さまセンターに電話がかかってくるケースも。ブランド毀損につながるだけでなく、社内で問題となる場合もある。

ブランドセーフティの発生状況についてIASの調査を見てみると、デスクトップで3.2%、モバイルで7.6%となっている。「数%とはいえ、仮に1000万インプレッションの広告であれば30万や70万という回数で表示されることになる。広告主自身が接触する機会がなかったとしても、かなりの数の広告が不適切なサイトに表示されている可能性がある」と小出氏は注意喚起する。

3.ビューアビリティ

ビューアビリティとは広告掲載のインプレッションのうち、実際にユーザーが閲覧できる場所に広告が表示された比率をいう。ユーザーは、閲覧したページを最後まで読むわけではない。広告がページ下部にあり、ユーザーの目には触れていない広告もある。IASの調査では、ビューアビリティ(ユーザーが閲覧できる場所に広告が表示された比率)はデスクトップで58.0%、モバイルで43.5%となっているので、デスクトップで言えば42.0%は見られていないのに広告費を請求されていることになる。

ビューアビリティとは広告掲載インプレッションのうち、実際にユーザーが見たインプレッションの比率

広告配信のメニューで「ビューアブル課金」というのもあるが、何も指定しなければユーザーの目に触れていなくても、ページ上で広告が表示されると課金されてしまっているという。

デジタル広告のテクノロジーの進化によって生まれた不正問題

では、これらの問題はなぜ生まれたのだろうか? まず、小出氏は「デジタル広告とマス広告では出稿の流れや仕組みがまったく違う」ことを意識して欲しいと言う。

デジタル広告の進化による“枠から人へ”のシフト

2000年代前半までのマス広告では、広告スペースという枠を買っていた。その枠を見る可能性が高いのはどのような人か、媒体プロフィールを見て、テレビであれば、どのテレビ局の何曜日何時のドラマの枠で何秒間と指定して枠を購入する。新聞であればどの新聞の何日の朝刊に何段の枠と指定して買う。その枠で効率を考えて広告を出稿するという、あくまでも枠を吟味して買うという方法だった。

現在のデジタル広告は、狙ったターゲットに広告を配信する。それがどのような場所なのか、いつなのかに関わらず、見せたいターゲットが見ている場所に広告を表示する。枠から人へのシフトだ。枠から人へのシフトは、広告の効率という面では革新的で素晴らしいことであるが、これがデジタル広告の不正問題を生み出す背景になっているという。

不正問題を生み出す背景となった昨今のデジタル広告の仕組み

その詳しい仕組みについて小出氏が解説する。現在のデジタル広告は、「コンテンツを出すルートと広告を出すルートが異なっており、媒体社はコンテンツを表示しているが、同じページに表示されている広告は別のところから入稿されるのが一般的な仕組み」だという。

以下の図で、ページ中の赤い四角の部分に広告が表示される時、ページ上のコンテンツ(記事や写真など)を表示しているのは、媒体社だが、広告を表示しているのはデジタル広告の配信会社であって、媒体社ではない。

多くのデジタル広告はコンテンツと広告が別に届けられる

マス媒体や初期のデジタル広告であれば、テレビ局や新聞・出版社などの媒体社がコンテンツを作り、広告の素材を広告主から受け取り、ページに掲載していた。そのため、広告が表示される場所をコントロールできていた。

しかし、現在のデジタル広告では、媒体社はどういう広告が、いつどのように届けられるのかわからないような仕組みとなっており、これがデジタル広告の不正問題を生み出す背景となっているという。

広告出稿まで多数のプレーヤーが介在するデジタル広告

小出氏はデジタル広告の出稿の流れの変化、アドテクノロジーの進化によるプレーヤーの変化も大きく影響しているという。マス広告であれば、広告主と媒体の間に広告会社がいて、広告に関してなにか問題が起きれば、広告主、広告会社、媒体社の3社で話し合うというシンプルな構図だった。

マス広告出稿の流れ。登場するプレーヤーは広告主、広告会社、媒体社とシンプルな構図

デジタル広告はテクノロジーが発展するにつれ、介在するプレーヤーが増えてきたという。デジタル広告は媒体数が非常に多いため、媒体ごとに広告掲載の交渉をするのは時間がかかる。そのため、「アドネットワーク」というネット広告のサイトを多数集めた広告配信ネットワークの仕組みができた。アドネットワーク業者が複数登場すると、それらを束ねる「アドエクスチェンジ」という仕組みが生まれた。

さらに、広告をターゲティングするためのデータを持っている「データエクスチェンジ」、メディアの要望と広告主の要望とをリアルタイムで自動的にマッチングさせ広告枠の売り買いをする「リアルタイムビッディング」など、アドテクノロジーがどんどん発展、進化していった。

アドテクノロジーの進化で変化するデジタル広告が出稿されるまでの流れ​​​

「広告主から広告出稿までの間にさまざまなプレーヤーが関わるようになり、一体誰がこの広告に関わっていたのだろうかがわからなくなっているのが、現在のデジタル広告の状況です」と、小出氏は言う。

デジタル広告がブランド広告の役割も担うようになり、不正問題が問題視されるように

デジタル広告の不正問題は、以前から存在していたが、最近になって問題視されるようになったのは、デジタル広告の使われ方が変化したためだという。以前は、デジタル広告が使われるのは主にダイレクトレスポンス広告で、コンバージョンや売上げが得られるのであれば、どこに広告が表示されていてもあまり重要視されなかった。

しかし、「この5~6年で、認知獲得などを目的としたブランド広告においても、デジタル広告の活用が増えてきたため、どこにどう広告が表示されるかが重要になってきた」と小出氏は言う。

デジタル広告が刈り取りに加え認知の役割も担うように

不正問題をどう防ぐ? ブランドセーフティの4つの対応策

不適切な広告出稿を防ぐために、広告の掲載内容の検証を行うことを、アドベリフィケーション(アドベリ)と呼ぶ。この「アドベリフィケーション」という言葉を知っているかどうか、日本アドバタイザーズ協会会員社と「宣伝会議」読者の広告業界関係者に2019年アンケートを行った。その結果が、以下の図だ。まだ十分にアドベリフィケーションへの理解が広がっているとは言いがたく、デジタル広告の不正問題を理解していても対応できていないという企業の方が多い。

アドベリフィケーションへの認識・理解

 

デジタル広告の不正問題に対する認識・対応

1.ブラックリスト

広告を掲載したくないサイトを指定する方法。ただし、好ましくないサイトはどんどん生まれるため、リストのメンテナンスに手間がかかる。

2.ホワイトリスト

広告を掲載するサイトをリスト化し、そのリストにないサイトには掲載しない方法。ブラックリストよりもリスクは低いが、ホワイトリストのサイトを偽装したものが出てくることもあるので、完全に安全とは言えない。また、ブラックリストよりも1インプレッション当たりの単価が上がってしまう点は留意しておきたい。

3.PMP(プライベートマーケットプレイス)

PMPとは、参加できる広告主とメディアが限定された広告取引市場のこと。ホワイトリスト以上に掲載媒体を絞り、ほぼ予約型に近い形で出稿するため安全度は高まるが、コストが高い傾向にある。

4.アドベリフィケーションツールの導入

アドベリフィケーションツールには、不適切なサイトに広告が出ていないかモニタリングする機能と、不適切なサイトに広告が表示されないようにする対策機能がある。対策機能には、プレビット(不適切なサイトの広告枠は買わない)と、ポストビット(不適切なサイトの広告枠を購入してしまった場合、白紙などを表示し、自社の広告を表示しないようにする)などの機能がある。効果は高いが、コスト的にも非常に高価なため、各社で対応が分かれるところだろう。

デジタル広告の不正問題の撲滅には、広告主の倫理観も大切

どの対策を選択するかは、自社にとってのリスクとコストのバランスを勘案する必要があるため、経営層との合意も必要だ。テクノロジーを使っているので完全に駆逐するのが難しいのが現状だが、仕方ないと諦めるのは広告主としてはよい姿勢とは言えない。そこで、日本アドバタイザーズ協会では、2019年11月に『デジタル広告の課題に対するアドバタイザー宣言』で、こういう世界を望んでいると表明をした。各課題に対してパートナーにとって欲しい行動や、広告主の姿勢について言及しているのでぜひ見てほしい、と小出氏。

デジタル広告の課題に対するアドバタイザー宣言

小出氏によれば、「安いから仕方ないと言っている広告主も、ゼロではない。アドフラウドの方が表面上、効率がいいこともある。やめると数値が落ちるので、このまま続けるという会社もある」という。

デジタル広告の不正問題を撲滅するためには、広告主の倫理観も大切(小出氏)

ということだ。

取り上げた3つの不正問題以外にも、デジタル広告にはいくつか課題がある。ひとつは、オンターゲット率(デジタル広告で配信した総インプレッションのうち、意図した性年代にリーチしていた割合)の課題だ。デジタル広告はターゲティングしているといっても、100%の精度ではない。ニールセン デジタルが2018年に発表した調査では、オンターゲット率はトータルで59.0%、約4割はターゲット外に配信されていることになる。アドネットワークのオンターゲット率は52.0%なので、約半分はターゲット外に広告が表示されているということだ。

また、インフルエンサーマーケティングでは「フォロワー1万人が1万円で買える」という報道や、「使用者の声を広告会社のスタッフが書いていた」というステルスマーケティングの報道もある。

小出氏は、「デジタル広告にはさまざまな問題があり、これらに対応するために、日本アドバタイザーズ協会、日本広告業協会、日本インタラクティブ広告協会で協力して、組織の立ち上げ準備を進めている」とセッションを締めくくった。

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