【レポート】デジタルマーケターズサミット2020 Summer

A/BテストでCV率125%アップを実現した2つの施策とは

Webサイトの使い勝手を検証する手段として広く用いられているABテスト。しかし効果的な結果を得るためには「見えないユーザーニーズ」を探し当てなければならない。年100回超のテストでコンバージョン率125%アップを成し遂げたエイチームフィナジーとギャプライズの実践例から学んでみたい。
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A/Bテストは、Aパターン・Bパターンを用意し、「どちらがより良い成果を出せるか」を検証するための手段として広く用いられている。特に、ユーザー自身が入力していく「入力フォーム」は、設定する項目名やその数によってもコンバージョン率が大きく変わるためA/Bテストが欠かせない。

Webサイト「ナビナビ住宅ローン」では、このA/Bテストを1年で実に100回以上実施。コンバージョン率改善を成し遂げたという。「デジタルマーケターズサミット2020 Summer」では、その舞台裏について、同サイトの運営元である株式会社エイチームフィナジーの木村佳史氏と、そのコンサルティングを行う株式会社ギャプライズの鎌田洋介氏が講演した。

ギャプライズ
株式会社ギャプライズ コンサルティング部 部長 鎌田洋介氏(左)
株式会社エイチームフィナジー 金融メディア事業部カードローングループ 兼 住宅ローングループ マネージャー 木村佳史氏

勝率67.6%、CV率125.8%アップ
年100回超のA/Bテストで得られた大きな成果

鎌田氏が所属するギャプライズは2005年に設立。海外発のマーケティングサービス・技術の日本市場向け販売を行っており、顧客体験分析ツール「Contentsquare(コンテントスクエア)」やA/Bテストツール「Optimizely(オプティマイズリー)」などの製品を取り扱っている。

そして、これらのツール類を用いた各種コンサルティング業務も、ギャプライズの得意分野である。エイチームフィナジーはギャプライズのコンサルティングサービスを受ける立場で、2019年6月から「ナビナビ住宅ローン(旧・住宅ローン比較窓口)」のコンバージョン率(CV率)改善に共同で取り組んでいる。

「ナビナビ住宅ローン」はその名の通り、複数の住宅ローン会社の金利や貸し付け条件をワンストップで比較し、申込まで行えるサービス。このサイトの利用率を高めるため、約1年2か月に亘って125回のA/Bテストを行ってきた。

一連のテストにおける“勝率”は67.6%。Optimizely社によれば、A/Bテストの平均勝率は約25%であるという。それを踏まえると非常に優秀な成果と言える。

A/Bテストの成績
「ナビナビ住宅ローン」で実施したA/Bテストの成績

鎌田氏は、こうした結果を出すためには何よりも「ユーザーを徹底的に知ること」が重要だと指摘。具体的に行った施策の中から2つをピックアップして紹介した。

事例1
ポップアップアンケートでユーザーニーズを把握

エイチームフィナジーの木村氏によれば、2019年6月にCV率改善プロジェクトを立ち上げた当初は、サイトを利用するユーザーの情報を完全に把握しているとは言えない状況だったという。そこで1つ目の施策として、サイト訪問者に対してポップアップメッセージによるアンケートを実施した。

ポップアップメッセージを表示したアンケート
ポップアップメッセージを表示したアンケート

この時点ではユーザーの“解像度”がまだ低かった。そこで、どんなニーズがあるのか、運営側がどうすべきかを明確にするところから出発した(木村氏)

このポップアップ調査によって、全回答者のうち買う家が決まっている層、買う家が決まっていない層、借り換えの検討層がそれぞれ何割の比率で来訪しているかが判明。そして、CV率(サイトを通じてローン比較の申込を行ったユーザーの割合)にも目を向けると、買う家が決まっていないユーザーのCV率は、決まっているユーザーと比較して大きな差があることもわかった。

優先すべきユーザー層を洗い出すポップアップのアンケート
CV率改善で優先すべきユーザー層を、ポップアップのアンケートを通じて洗い出した

このテスト結果を総合すると、サイト運営で優先すべきは買う家が決まっているユーザーだと結論付けることができた。ここまで方針が決まれば、立案するマーケティング施策もより具体的・効果的になることが期待される。

これがまさに「ユーザーを知る」ということ。買う家が決まっている・決まっていないで、ここまでCV率に開きがあることを理解しないまま施策を打っていたら、CV改善効果は薄かったはずだ(鎌田氏)

正しい仮説を立てる秘訣は「ユーザーの気持ちになりきること」

とはいえ、この段階へ至るには「CV率は、買う家が決まっているかどうかで大きく変わるのではないか?」という仮説を捻り出し、さらに実際の調査も行わなければならない。言葉で言うほど簡単ではなさそうだ。

“正解に近い仮説”を立てる秘訣について、木村氏は「ユーザーの気持ちになりきること」が基本中の基本だろうと語る。

鎌田氏ともよく「イタコになる」「憑依する」といった話をする(笑)。住宅ローン比較サイトを訪れるときの気持ちや、その後どんなサービスをどんなモチベーションで使うのか。そうしたセグメント立てを意識するとよいのではないか(木村氏)

また、ポップアップによるアンケートはユーザー理解に有効だが、運用には注意が必要だ。「ナビナビ住宅ローン」においても、ポップアップウインドウから「×ボタン」(閉じるボタン)を消して強制回答にしたところ、直帰率が1.7倍も上がってしまったという(×ボタンが用意された状態では直帰率の悪化が見られなかった)。

「×ボタン」の有無が直帰率に大きく影響
「×ボタン」の有無が直帰率に大きく影響

事例2
検索項目テストで仮説の正誤を検証

住宅ローン比較サイトにおいては、ユーザーの希望に沿うサービスを検索するための機能も当然重要となる。そこで2つ目の施策として、検索項目の内容や入力してもらう項目がCV率に与える影響を調査した。

仮説検証1:「希望の仮審査期間」を含む3つの検索項目を追加

1つ目の調査の結果で、買う家が決定しているユーザーのほうがCV率が高い傾向にあることがわかった。そこで「購入が決まっているならば、住宅ローンの仮審査(事前審査)の結果を素早く返してくれるサービスが必要とされているのではないか?」という仮説を立案。「希望する仮審査期間」「借入金額」「毎月の返済希望額」(いずれも4択式)を検索項目に追加した。しかし、最終CV率は10%以上ダウンしてしまった。

仮説を検索項目に反映させたものの、CV率はダウン
仮説を検索項目に反映させたものの、CV率はダウン

検索の利用状況を精査してみると「希望する仮審査期間」の項目では「こだわらない」を選択するか、未回答のユーザーが多く、一方で「借入金額」「毎月の返済希望額」については多くのユーザーが何らかの項目を選択していた。

テスト結果からまた別の仮説を立てる
テスト結果からまた別の仮説を立てる

仮説検証2:「希望の仮審査期間」を廃し「借入金額」を数値入力へ変更

この結果から、ユーザーは審査の期間にはそれほど重点を置いておらず、あくまで「払える金額の中で(金利が)最も安いところを探したいのではないか?」というまた別の仮説を導き出すことができた。

新たな仮説をもとにしたテストではCV率が改善した
新たな仮説をもとにしたテストではCV率が改善した

そこで「希望する仮審査期間」の項目を廃し、「借入金額」を選択式ではなく数値の直接入力などに変えたところ、最終CV率は当初の125.8%に改善した。「Contentsquare」を用いたサイト利用状況のヒートマップ分析でも、ユーザーがより時間をかけて検索項目を熟慮していることがわかったという。

「Contentsquare」を使ったヒートマップ分析
「Contentsquare」を使ったヒートマップ分析

効果的なA/Bテストを実施するには、ユーザー行動に関する仮説を明確にすることだと鎌田氏は主張する。

住宅ローンであれば、さきの結果からわかるように、買う物件が決まっているかどうかでCV率が大きく違う。他のジャンルのサイトでも「ユーザーがどんなタイミングで来ているか」は特に意識すべきではないか(鎌田氏)

最後にA/Bテストのアドバイスとして以下の3点をまとめ、講演を終えた。

  • ユーザーの仮説、特に「どんなタイミングでサイトに来ているのか?」を明確にする
  • 初期テストは「成果」を求めず「仮説検証」を目的として実施する
  • ユーザーが違えば最適化の方向性も違う
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