個の行動分析による貢献度測定の実例&データをアクションにつなげる9のステップ/メディックス
訪問単位ではなく、人の行動ベースの「個の行動分析」が話題になっているが、実際にはどのように分析し、そのデータを基にどのような施策を立てればよいのだろうか。メディックスの於保真一朗氏は、GoogleアナリティクスやAdobe Analyticsなどのツールが進歩することで、個の行動分析が行いやすくなっていることを示し、事例とともにデータをアクションへつなげていく方法を解説した。
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「高速PDCAサイクルを実現させるアクションチームの作り方」
人に注目した“個の行動分析”へ
アクセス解析において重要なのは、1回のWebサイトへの訪問だけでなく、2回目、3回目とつなげて複数の訪問を分析することだ。バナーや検索キーワードなどの複数の流入チャネル、複数の利用デバイス、複数のメディア、オムニチャネルの複数の店舗、オンライン/オフラインの複数の営業接点など、さまざまな要素を個に落とし込んで行動分析することが重要である。
これまではモノ視点であったものがヒト視点へと変わって、気持ちや興味関心、行動などを分析するようになってきている(於保氏)
また、部分最適から全体最適となり、全体の組み合わせ、順番、伝えることなどを最適化することで、獲得数の最大化やROIの最適化が行われるようになったことも、変化の1つだ。
こうした「個の行動分析」が話題になってきている理由として、マーケティングの成熟と技術の進歩が挙げられる。於保氏は、これまでは憶測するしかなかった部分がデータでわかるようになることで本質が見極めやすくなり、より適切な対応を行うことで精度の高いマーケティングや獲得数確保、ROI向上が期待されると説明する。
Googleアナリティクスを使ってアトリビューションモデルを活用する
一方で、これらの分析を行うには手間がかかり、集計が大変で情報に埋もれてしまうという懸念もある。だが於保氏は、GoogleアナリティクスやAdobe Analytics、DMPなどの技術を活用することで、個の行動分析が身近になってきていることを強調する。そのうえで、技術に対応して効率化できる仕組みを作り、組織的に役割分担してアクションにつなげることが重要だとした。
「実際に個の行動分析を行った事例を紹介したい
」と話す於保氏は、1つ目の事例として「複数のチャネル」のケースを示し、アトリビューションモデルによる広告効果測定について、「複数訪問でのコンバージョン状況の把握」「アトリビューションモデルによる評価」「態度変容の流れの分析」の3つのステップがあると説明する。
これらの分析には、Googleアナリティクスに追加されたアトリビューションモデル機能が活用できる。機能追加によって、「終点」「起点」「線形(均等配分)」などの選択をして変化率をチェックできるようになっており、チャネルグループやキーワードなどの粒度で見ることができるという。また、GoogleアナリティクスとAdwordsの獲得コストなどの指標を自動連携させることも可能だ。
アトリビューションモデルで基準とするモデルは、「終点」「起点」「線形」で比較してみて納得感のあるものを選ぶのが重要であり、役割を把握するには「起点」も重要なモデルだと於保氏は説明する。
また、こうした施策の全体のゴールとしては、獲得母数の確保とROIを全体最適化することを意識することが重要だとした。
訪問者軸で本質的な行動分析を行いオフラインデータも活用する
2つ目の事例は、1回の訪問のみでコンバージョンに至らない「複数の訪問」のケースだ。この場合、コンバージョン直前のラストクリックだけでなく、複数訪問をまたいで貢献度を評価する必要がある。
あるアパレルECサイトの事例では、「貢献率レポート」を使ってゴール(コンバージョン)への貢献率が高いページを見つけ出した。トップページから深い階層にある小物関連のページが、訪問者数は少ないながらも貢献率が高いことを分析し、導線を強化するための特集ページを用意すると、ユーザーの訪問回数が増え売上アップにつながったという。
しかし、貢献率は同じ訪問内でゴールに至ったものしか含まれないため、3回目の訪問でゴールに至った場合、初回訪問や2回目訪問はゴールに貢献していないことになってしまう。これを避けるためには、「訪問ベース」と「訪問者ベース」を分けて見る必要があると於保氏は説明する。たとえば、Adobe Analyticsの「フォールアウトレポート」(ページごとの離脱率を分析するレポート)で「訪問者」軸を見ていくことでより本質的な行動分析を捉えられる。
貢献率レポートでは、どのコンテンツを経由した場合にゴールに至るケースが多いかを比較したり、どの順番でコンテンツを見せるのがよいかなどを比較することで、導線設計を組み立てて誘導を強化できる。訪問者軸で評価を行うことによって、複数訪問でコンバージョンに至っていることがわかり、コンテンツを見せる最適な順番もわかってくる。昔のアクセス解析のように、訪問者ベースを見ずに訪問ベースだけで判断すると、実は見誤ってしまう可能性があると於保氏は説明する。
また、今後は集客のアトリビューションとコンテンツのアトリビューションを組みわせて考える必要があると話す於保氏は、複数回訪問のなかで異なるキーワードで訪問するユーザーに対して、異なるコンテンツを示すような取り組みも行っていることを明かした。
オフラインの成約につながるコンテンツを分析
3つ目の「オンライン×オフライン」では、あるリード型サイト企業の事例が紹介された。この企業では、オンラインのデータにオフラインの営業活動と成約データをつなげることで、四半期ごとのリード獲得時期によって質が異なることを発見した。特定のターゲット層を集める場合、7~9月はCPAが悪くてもROASが高いことがわかり、この時期はCPAが割高でも獲得を狙ったほうがよいことがわかったという。オフラインの成約に至るまでの貢献率を分析し、評価するモノサシが変わった事例だ。
Adobe Analyticsでは、オフラインデータとコストアップロードを自動化する仕組みが搭載されており、ブラウザのレポート画面でオフラインデータの効果測定ができるようになっている、と於保氏は説明する。さらに、Adobe Analyticsでは、オフラインデータを使ってどのコンテンツがリードを獲得し、コンバージョン(成約)に至りやすいのかを貢献率レポートで見ることができる。成約につながるコンテンツの最適化も可能だ。
セグメントごとのアプローチを最適化
4つ目の「セグメント分析」では、靴下専門ブランド「靴下屋」を展開するタビオのECサイトの改善事例が紹介された。タビオでは、男性顧客層へのアプローチの効果を最大化するにはどうすればいいのか、さまざまな分析を行った。「データから何を読み取り、具体的にどんな対策を実施するか」と話す於保氏は、レポート分析などの現状分析と定例会やワークショップなどの企画案の両方をバランスよくアプローチすることが重要だと話す。
ECサイトのアクセスデータからは、現状分析で男性向けの商品ページの貢献率が最も高く、訪問回数のアップが課題となっていることが明らかになった。さらに詳細な分析から、男性向けの機能系商品の貢献率が最も高く、こちらの訪問回数のアップも課題だった。また、購入商品分析で男性比率の高い商品群を分析し、これらのデータを基にサイトの関係者を集めてワークショップを開き、サイトの課題・解決案。分析要素を話し合ったという。
- リアル店舗とウェブの役割が不明瞭なのではないか
- ウェブでは、機能系(加圧、抗菌など)の商品が売れやすいのではないか
- 店舗では、男性層は商品の良さ(素材・履き心地・機能性)を理解して買ってもらえた
これらのワークショップの意見や、店舗販売経験者の男性層の傾向などをヒントにコンテンツを作り直したECサイトでは、男性層向けに特集コンテンツの拡充を図り、トップページに男性訴求のモジュールを目立つように配置したり、グローバルナビにメンズを目立たせて配置したりするなど、ナビゲーションを強化している。
これらの施策検証には、Googleアナリティクスの新機能「訪問者セグメント」を活用して、全体訪問者、特定の特集訪問者、特定の特集非訪問者、全特集の訪問者を比較して、特集の効果を測定している。
データをアクションにつなげる9つのステップ
また、於保氏は、データからアクションにつなげるためには「9つのステップがある」と話し、以下の図を示す。
特に3つ目の「とる」から7つ目の「する」まではドミノのように順番に倒していく必要があり、途中で1つでも欠けてしまうと8つ目の「価値」につながらないと於保氏は解説し、3~7をPDCAで回していくことが重要だと話す。
最後に於保氏は、「世の中に新しい創造などない。あるのはただ発見である
」というアントニオガウディの言葉を引用し、参加者へとメッセージを贈った。
ひらめきやアートな発想が大事だと言われるが、これに対して身構える人も多い。データからアクションにつなげるときには、ひらめきやアートな発想というよりも、現状分析から課題を“見つけ”、仮説からやってみて施策を“見つける”と考えたほうが楽かもしれない(於保氏)
- レポートにも登場する、タビオがゲストのウェブ解析&最適化セミナー 1/30東京開催
「高速PDCAサイクルを実現させるアクションチームの作り方」
株式会社メディックス
http://www.medix-inc.co.jp/
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